電話 面談

採用活動において、応募者、あるいは自社への応募を検討している求職者とのコミュニケーションに「電話面談」の活用が有効であるケースがあります。電話面談の目的や活用場面、電話面談のメリット・デメリット、電話面談の流れ、注意点やポイントについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏が解説します。

電話面談を行うタイミングと目的

採用活動においては、「面談」を活用することが有効な場面もあります。「面談」は「面接」と異なり、主に情報交換の場と捉えることが多いでしょう。求職者・応募者と企業がお互いにリラックスした状態で対話し、相互理解を深めるものであり、「カジュアル面談」と呼ばれることもあります。

「面談」を行うタイミングや目的はさまざまです。求職者・応募者の要望に応える場合もあれば、採用企業の意図で設定することもあります。

面談で話す内容が、対面面談やオンライン面談を設定するほどでもない場合で、かつ、メールではなく口頭でニュアンスを伝えたいときなどは、日時の調整がしやすい電話面談が活用されます。

なお、転職エージェントを介しての応募者に対して、採用担当者から応募者とコンタクトをとる場合には、事前に転職エージェントに連絡し、確認してから行うようにしましょう。


ここでは、電話面談を行うタイミング別に、面談の目的・ケースをご紹介します。

応募前の電話面談

スカウトメールを送った求職者から、応募前の(カジュアル)面談希望、などのレスポンスがあった場合や、転職エージェントから求職者が(カジュアル)面談を希望している、という打診を受けた場合などに、面談を行います。

求職者が応募するかどうか迷っている場合

求職者が企業に興味を持っているものの、「もっと理解を深めた上で応募したい」と考えているときなど、求職者の疑問や不安に答える形で面談を行います。

企業側が応募を喚起したい場合

企業が応募者を増やしたい場合やスカウトメールでアプローチした人にどうしても応募を決断してほしいときなど、応募意欲を高めるために、面談で情報提供したりコミュニケーションをとったりします。

応募後/選考中の電話面談

求職者が応募した後、選考途中の段階で、状況に応じて面談を設けます。

企業が追加情報を伝えたいとき

企業が面接で伝えそびれた情報、あるいは面接中に応募者から質問を受けたもののその場で答えられなかった情報などを伝えることで、入社意欲を高めてもらえるようにします。

条件についてすり合わせたいとき

給与・役職などをはじめ、入社条件や勤務条件について応募者の希望と自社の考えをすり合わせたい場合に面談を設定します。こうした「条件面談」は、通常は内定前後のタイミングで行われますが、応募者によって選考を進めるかどうかの判断の決め手になるような条件であれば、早い段階で話し合いを設けることもあります。

応募者が企業理解を深めたいとき

応募者が、面接担当者とは異なる社員(一緒に働くメンバーや自身と同じバックグラウンドで転職してきた人など)との対話を望んだ場合、面接とは切り離した形でコミュニケーションの機会を設けることもあります。

電話面談のメリット

面談を電話で行うメリットとしては、次のようなものが挙げられます。

スケジュールが調整しやすい

電話面談であれば、求職者・応募者は、自宅をはじめ、終業後の帰宅途中、出張先での終業後など、さまざまな場所・タイミングで行うことができます。移動に時間をかけず、手が空いた「スキマ時間」などに電話面談のアポイントを入れることも可能です。そのため、スケジュールの調整がしやすいといえます。

遠方でも面談の設定ができる

電話面談を行うことで、遠方に住む求職者・応募者に、わざわざオフィスへ足を運んでもらわなくてもしっかりコミュニケーションをとることができます。その結果、多少なりとも応募意欲が高まったり、企業理解が深まったり、あるいは選考の途中辞退も起こりにくくなったりすることが期待できるかもしれません。

求職者に気軽に応じてもらいやすい

求職者としては「応募して面接を受ける」となると身構えてしまうものです。電話面談からのスタートであれば、心理的ハードルが下がり、気軽に応じてもらいやすくなる可能性があります。電話面談で最初の接点を持つことで、応募へつなげられる確率が高まることが期待できます。

タイミングを逃さずフォローができる

求職者・応募者は複数企業での選考が同時に進んでいることも多く、さまざまな情報に触れることで志望度の順位が入れ替わることもあります。応募者が迷っていそうなタイミングで、早急に電話面談で具体的な情報提供などのフォローを行うことにより、選考辞退を防げる可能性があります。

電話面談のデメリット

電話面談には次のようなデメリットもありますので、注意して対策する必要があります。

お互いの感情・熱意・意図などが伝わりづらい

対面・オンラインでの面談であれば、お互いの表情や身振りが見えますが、電話では相手の姿が見えません。その分、感情や熱意、メッセージの意図などが伝わりにくいことがあります。自社が採用にかける熱意が伝わらず、応募意欲・入社意欲の喚起につながらないかもしれません。

また、求職者・応募者の感情の動きをつかみにくく、次にどのようなアプローチをすればよいか判断がつきにくいこともあるでしょう。

視覚的な情報が伝えにくい

対面面談であれば、資料を手元に置いて一緒に見ながら話せますし、オンライン面談なら資料を画面に映して話す箇所をポインターで示すことが可能です。

しかし、電話面談で一つの資料を別々に参照しながら話すと、どの部分を指しているのか共有がしづらくなることもあり、お互いにストレスを感じるかもしれません。また、対面面談のようにオフィスの雰囲気から社風を感じ取ってもらいにくいともいえるでしょう。

電話面談の流れ【例文付き】

応募前の求職者と初めて電話面談を行う場合、どのように進めていけばよいか、流れとトークの一例をご紹介します。

事前準備

電話面談前に、説明に使用する資料や事前に目を通しておいてもらいたい資料を送付しておくといいでしょう。また、求職者から事前に質問を受けている場合は、現場部門に確認するなどして、提供する情報を用意しておきます。

自己紹介とあいさつ

採用担当者から自己紹介をし、面談の時間を取ってもらったお礼を述べます。面接ではないため、相手に経歴の説明を求めることは控えてください。アイスブレイク的に、自社に対して抱いているイメージや興味を持っているポイントを聞いてみてもいいでしょう。

【例文】
「○○会社人事部で採用を担当しております、○○と申します。本日は面談の時間をいただき、ありがとうございます」
「差し支えなければ、弊社のどういったところに興味を持って面談に応じていただいたのか、お聞かせいただけますでしょうか」

面談の目的・ゴールの設定や認識共有

今回の面談は「選考」ではなく、相互理解を深めることを目的としている旨を伝えます。気軽に質問ができる雰囲気作りを心がけてください。

また、求職者がすでに知っている企業情報を長々と説明しても、時間のロスとなり、応募意欲の喚起にもつながりにくいといえます。求職者がこの面談で何を知りたいと思っているのか、目線を合わせておきましょう。面談の流れ、所要時間なども伝えておくと、安心感を持ってもらえます。

【例文】
「本日の面談は、選考ではなく、お互いの理解を深めることを目的としています。気になることがあれば遠慮なくお尋ねください」
「弊社については、どの程度ご存じでしょうか。今日、お聞きになりたいことはございますか」
「これから○○について○分ほどご説明します。その後、質疑応答の時間を○分ほどとり、○時までの終了を予定しています。よろしいでしょうか」

企業紹介・募集職種や仕事内容の紹介

求職者がコーポレートサイトや求人サイトなどの情報をどの程度入手しているかを確認した上で、今回の求人に関する情報提供を行います。一方的な説明にならないよう、ところどころで相手の興味のポイントを確認しながら双方向のやりとりを心がけるといいでしょう。

また、単なる情報提供にとどまらず、採用担当者自身の事業や採用に対する思いや、自社に魅力を感じているポイントなども伝えると、興味を高めてもらえる可能性があります。

【例文】
「今、募集しているポジションは○○部門の○○職です。取り扱うサービスとしては○○、○○、○○などがありますが、興味をお持ちのものはございますか」
「この取り組みは、弊社にとって新しいチャレンジです。今は次の成長に向けての変革期のタイミングですので、メンバーのモチベーションも高く、活気に満ちています」

求職者の転職理由・希望条件などを確認

転職を考えている理由や目的、希望条件などを知りたい場合は、「面接ではない」ことを意識しつつ、婉曲的な聞き方をしましょう。

【例文】
「もし差し支えなければ、転職を考えていらっしゃる理由や、転職先に希望することをお聞かせいただくことは可能でしょうか」

求職者との質疑応答

応募前の求職者との面談では、相手からの質問の受付・回答が中核となります。相手が遠慮なく質問できる雰囲気を作りましょう。質問がなかなか出てこないときは、応募者からよく受ける質問例を挙げて糸口を提供するのも一つの手です。

【例文】
「これまでのご説明で分かりづらかったこと、気になっていることなどはありますか。どのようなことでも遠慮なくお尋ねください」
「弊社に応募される方々は、○○に興味を持って質問されることが多いのですが、こちらについてはいかがでしょうか」

今後の流れを説明

面談の終盤では、募集に関する今後の流れを案内します。

【例文】
「ご応募いただける場合は、○日までに履歴書と職務経歴書をメールでお送りください」
「書類選考を行い、面接に進んでいただく場合は、○月中旬頃に面接を設けたいと思います」

最後のあいさつ

締めくくりには、応募を歓迎する旨のメッセージを伝えるといいでしょう。

【例文】
「ぜひご応募いただければうれしく思います」
「気になることが出てきましたら、電話やメールでお気軽にお問合せください」

電話面談担当者としての心構え

電話面談では相手の表情や身振り手振りが見えず、意欲の有無が見えにくい面もありますが、実際は興味を持っていたり、高い意欲を持っていたりするケースも少なくありません。

採用可能性を高めるための電話面談のポイントとして、まずは「求職者が気になっていること」に対して「自社の具体的な情報をできる限り伝えること」を意識すると、求職者の応募意欲が高まるでしょう。

電話面談を行う際の注意点と、意識しておきたいポイントをご紹介します。

通信環境が良く、静かな場所で行う

携帯電話やスマートフォンで通話する場合、電波状況の良い場所で、端末を十分に充電して臨みましょう。また、なるべく静かな個室で行うのが理想です。

オフィス内でも、周囲の雑音が少ない場所を選びましょう。雑音があると、お互い会話に集中しづらい上に、重要な情報を聞き漏らしてしまう可能性もあります。

相手が聞き取りやすいように話す

お互いの姿が見えない電話面談では、声のトーンや話し方によって与える印象が左右されます。また、電話を通した声は、対面で話すときに比べてこもって聞こえがちなので、普段よりもゆっくり、はっきり、大きな声で話すように意識してください。

会話の間の取り方を意識する

矢継ぎ早に説明を続けてしまうと、求職者の理解が追い付かなかったり、情報を整理できなかったりすることもあります。適度に間を取り、相手の反応や状況を確認しながら進めましょう。

ハンズフリー機能を使う

ハンズフリー通話にすると両手が空くため、話しながらメモを取ったり資料を見たりしやすくなります。マイク付きのイヤホンやヘッドホンを使用すれば、周囲の音を入りづらくすることもできるでしょう。

面接・選考ではないことの周知徹底に留意する

求職者から事前に受けた質問に答えるため、人事ではなく現場の担当者が面談を行うこともあるでしょう。その場合、「面接・選考ではない」ことをしっかり認識しておいてもらうことが大切です。

面接のような質疑応答になってしまうと、求職者がネガティブな印象を抱くこともあり、クレームにもつながりかねないため、注意が必要です。

求職者からの事前質問・要望は現場に確認しておく

求職者から事前に「◯○について知りたい」などの要望があれば、現場部門などに確認して回答を用意しておきます。専門性が高い職種であれば、念のため同席してもらうと安心です。

面談の「FAQ」を社内で資料化・共有する

「○○職は、○○を気にする人が多い」「○○職からは○○について質問を受けることが多い」といった情報を採用部門とすり合わせ、回答例を準備しておきましょう。

面談を重ねていくと「FAQ」がある程度溜まってくるため、資料化して社内で共有しておくとスムーズに運びやすくなります。

電話面談の活用で、採用活動を活性化させよう

場所の確保や事前準備に手間がかかる対面面談・オンライン面談と比較し、電話面談はスピーディに手軽に組めるというメリットがあります。

対話の内容やタイミングに応じてうまく取り入れれば、採用活動が停滞することなく前に進みやすくなり、活性化につながるでしょう。対面・オンラインとの使い分けを考えながら、活用してみてください。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。