採用手法の一つとして、企業が求める人材に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」を導入する企業が増えています。求人媒体への出稿や転職エージェントの利用といった従来手法と比較すると採用コストの抑制を図れますが、「スカウトサービス」を利用する場合、システムの使用料や成功報酬などの費用が必要となります。スカウトサービスを利用する場合の料金形態、費用相場、サービス選定のポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
ダイレクトリクルーティングの料金形態
ダイレクトリクルーティングの料金形態は、大きく分けて2種類あります。「成功報酬型(従量課金)」と「定額型(定量課金)」です。それぞれの特徴をご紹介します。
成功報酬型(従量課金)
成功報酬型とは、採用に至った人数に応じて料金が発生する、変動型の料金形態です。成功報酬型のサービスでは、スカウト活動の段階では無料で利用でき、一般的には候補者が内定を承諾したタイミングで費用が発生します。そのため、「多額のコストを投じても成果が得られない」というリスクを回避することができます。ただし、サービスによっては新たにシステムを導入する場合の初期費用やデータベース利用料などのコストが発生するケースもあります。
成功報酬型には「入社者1名につき○○円」という定額方式、「入社者の理論年収(※)の○○%」という定率方式があります。新卒採用では定額、中途採用では定率が使われることが多いようです。このほか、「成功報酬の課金タイミングが候補者の応募時」「職種・勤務地によって金額が変動」「内定辞退の場合は料金の一部を返金」など、各社によって料金体系が異なります。
※理論年収/企業に1年間在籍した場合の想定年収。一般的には、月額固定額(基本給+諸手当)×12カ月+賞与(基本給×会社が定める支給月数)で算出されます。詳細は各サービス提供会社に確認ください。
定額型(定量課金)
定額型の場合、採用に至った人数に関わりなく、サービスの利用期間に応じて定額の料金を支払います。つまり、採用人数が増えるほど1人あたりの採用単価を低く抑えられ、逆に1人も採用に至らなくても固定費用がかかります。ベースとなる料金は毎月のシステム利用料などで、ほかに初期の導入費用が必要となることもあります。「月額利用プラン」「年額利用プラン」などがあり、採用活動のスケジュールに応じて適切なプランを選ぶことが重要です。
ダイレクトリクルーティングの費用相場
スカウトサービスを利用してダイレクトリクルーティングを行った場合にかかる費用の相場をお伝えします。
具体的な費用の目安
利用料は各社によって異なりますが、相場としては「システムの基本使用料+成功報酬(理論年収の15%)」が一例に挙げられます。
一方、転職エージェントも成功報酬型です。料率は理論年収の30%~40%で設定されているところが多いようです。仮に理論年収1000万円の人材を採用した場合の成功報酬は、転職エージェントの場合1000万円×35%=350万円、ダイレクトリクルーティングの場合1000万円×15%=150万円。基本使用料と合わせても、ダイレクトリクルーティングの方がコストを抑えられる可能性が高いでしょう。
また、転職エージェントでは、採用難易度の高い職種の場合は、成功報酬の料率を高め(40~100%など)に設定しているケースもあります。つまり、採用ターゲット人材の年収が高いほど、ダイレクトリクルーティングの方がコストの軽減につながりやすいといえるでしょう。また、採用人数が多くなるほど1人あたりのコストが下がることになります。
リクルートダイレクトスカウトの料金
リクルートダイレクトスカウトの場合、導入時の初期費用は無料です。採用決定手数料は、入社時の理論年収×15%です。幅広い職種のハイキャリア人材が登録されており、スカウト送信数に制限はありません。高年収人材の採用に活用することで、採用単価を下げられる可能性があります。
費用対効果を上げるサービス選定のポイント
ダイレクトリクルーティングで費用対効果を上げるために、サービスの選定で意識しておきたいポイントをお伝えします。
採用規模に合わせたプランを選択する
採用予定人数が少ない場合は「成功報酬型」の方が採用単価は低くなり、採用予定人数が多い場合は「定額型」の方が採用単価は低くなる傾向があります。スカウトサービスによって初期費用やデータベース利用料が異なるため、それらも踏まえたトータルコストのシミュレーションを行い、自社の採用人数に適したプランを選びましょう。
ターゲット存在率の高いサービスを選定する
スカウトサービスごとに、登録している人材の業種・職種分野、年代、役職などの属性に傾向があります。自社の採用ターゲット人材が多く登録しているサービスを選ぶことで、より多くのターゲットの抽出、スカウトが可能になり、採用確率の向上や採用活動期間の短縮が期待できるでしょう。
自社に必要なフォローサービスの有無を確認する
導入や運用にあたってのフォロー内容は、スカウトサービスによって異なります。「ダイレクトリクルーティングの知識・ノウハウがない」「ダイレクトリクルーティングを運用していくためのマンパワーが足りない」など、自社の事情に合わせてフォローがあるかを確認するといいでしょう。フォローを受けることで採用確率が上がれば、費用対効果も高まると考えられます。
スカウトサービスを使って採用条件に合う人材を見つけよう
スカウトサービスは、ターゲット一人ひとりに合わせ、細やかで柔軟な対応ができるのが特徴です。ターゲットが興味を持ちそうな情報を提供したり、志向に合わせて自社の魅力をアピールしたりと、アプローチの工夫によってスカウト返信率を高めることができます。
スカウトサービスならではの特徴を活かして自社の採用活動に取り入れ、マッチする人材と出会える機会を増やしましょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。