「人員配置」において、従来のやり方を変える必要性を感じている企業が増えています。その背景には、社会や企業の環境変化に伴うスキルの高度化・多様化に加え、従業員のキャリアに対する考え方の変化があります。人員配置の目的や種類、配置を行う手順・ポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

人員配置とは?

人員配置とは、従業員一人ひとりの業務経験・スキル・適性などを踏まえた配属や異動を行うことを指します。

株式会社リクルートが企業で働く人事担当者を対象に行った「企業の人材マネジメントに関する調査2023 人材配置・異動編(※)」によると、人材配置や異動について、「制度を変えたり、従来のやり方を見直す必要性を感じている」と回答した企業は半数以上に達しました(強く感じている=12.2%、やや感じている=39.0%、計51.2%)。

人材配置について制度を変えたり、従来のやり方を見直す必要性を感じているかのグラフ

なお、人材配置の見直しが必要と考える理由として最も多く選択されたものは、「従業員のスキル・経験と現場で任せている仕事内容にミスマッチが発生しているため(46.7%)」。次いで「従来のやり方では、従業員の納得感が得られにくくなっているため(45.7%)」、「従業員のやりたい仕事やキャリアパスを一層重視する必要があるため(41.2%)」が選ばれています。多くの企業が人員配置に課題を抱え、改善・解決への取り組みが急務となっている状況が分かります。

人材配置のやり方の見直しが必要と感じている理由のグラフ

(※)出典:株式会社リクルート「企業の人材マネジメントに関する調査2023 人材配置・異動編」(2023年9月)

人員配置の目的

人員配置の最適化を図る目的は、企業によって異なりますが、主には以下が挙げられます。

事業方針・事業目標達成のため

事業方針の実践・事業目標の達成に向けて、その業務遂行に必要な経験・スキル・適性を持つ従業員を配置することで高いパフォーマンスが発揮されます。また、生産性の向上にもつながるでしょう。近年は事業を取り巻く環境がめまぐるしく変化しているため、変化に柔軟に対応する配置が重要となります。

従業員の成長・活躍のため

従業員一人ひとりの能力を活かすと同時に、さらなる成長・活躍を促すことを目的とします。従業員が配属先の業務を通じて自己成長を感じることができれば、モチベーションの向上にもつながります。
また、異動や職種転換などを機に新たな業務を経験することで、新たな能力が開発されたり適性に気付いたりすることもあります。

人件費・コスト最適化のため

各業務に対し、経験・スキルや適性がある従業員を配置すれば、最小限の人員数・稼働時間で業務を遂行できる可能性が高まります。それにより人件費や運営にかかるコストの抑制・最適化を図れるでしょう。

組織の活性化のため

組織間で人員を入れ替える、あるいは組織に新たな人員を投入することで、組織の停滞を防ぎ、成長を加速するケースもあります。組織内の人員が固定化されると、既成の習慣からの脱却が難しくなるものです。他部署から異動したり新たに採用されたりした従業員の客観的な視点を取り入れることで、非効率なやり方や習慣などに気付き、業務の見直し・変革につながることもあります。

また、配置転換によって新しいメンバーと一緒に働くことは、お互いに刺激を与え合うことにもなり、組織の活性化につながります。

人員配置の種類

人員配置の手段として、どのような種類があるかをご紹介します。

配置転換

人材配置は、所属する部門やチームを変える「異動」、あるいは勤務する地域・拠点を変える「転勤」といった「配置転換」が主流です。また、従業員の所属部署や担当職務を定期的に変更する「ジョブローテーション」を行っている企業もあります。

昇進

従業員を昇進・昇格させることも、人員配置の一手段といえます。成果や能力が評価され、昇進によってより責任あるポジションを任せられれば、従業員のモチベーションアップにつながります。新たなリーダーやマネジャーの就任を機に、マネジメントの手法やスタイルが刷新されれば、組織が活性化することも期待できるでしょう。

人材採用

既存の従業員にはない経験・スキルを持つ人材を外部から採用することで、新たな取り組みや業務の改善・変革が可能になります。既存の従業員に新たな視点や考え方をもたらし、成長促進につながる可能性もあります。

社内公募制度

「社内公募制度」「社内異動希望制度」を取り入れる企業も多いようです。これは、人員を必要とする部署が社内に向けて募集情報を公開し、その部署への配属を希望する従業員が手を挙げて立候補する仕組みです。通常の人員配置は会社側が主導するのに対し、従業員自らの意思で配置転換への行動を起こすため、実現すればモチベーション高く働けることが期待できます。

人員配置を行う手順

最適な人員配置を実現するための、手順の一例をご紹介します。

経営戦略に沿った組織体制の明確化

まずは経営戦略に基づき、その実行のためにどのような組織体制にする必要があるのかを検討します。各部門が担う役割と、必要な業務経験・スキルなどを定義し、人員を配置するポジション・人数を明確化します。

従業員の経験・スキル・タイプなどの可視化

従業員一人ひとりについて、保有している業務経験やスキル、性格や志向のタイプを可視化し、データ化します。また、これからどのようなキャリア形成を希望しているかを把握することも重要です。

管理職などへのヒアリング・シミュレーション作成

各部署の管理職に対し、組織課題の解決や目標達成のため、どのような人材を必要としているかをヒアリングします。調査結果をもとに、理想とする組織を作るための人員配置のシミュレーションを作成。現実と理想にギャップがある部分を明確にし、社内異動や既存社員の育成によってギャップを埋めることが可能なのか、外部からの採用が必要なのかを判断します。

人員配置の計画立案

描いた人員配置図に基づき、異動・昇進・採用などの計画を立案します。どの時期に誰を異動させるのか、あるいはどのような人材を何人採用するか、具体的な計画に落とし込みます。このとき、異動・採用後の研修やフォローについても計画を立てておくといいでしょう。

人員配置の実施・効果検証

計画に基づき、人員配置を実施します。実施後は効果の検証を行いましょう。異動・採用した従業員が想定したとおりのパフォーマンスを発揮しているか、本人が納得感を持って働けているかを、上長へのヒアリングや本人との面談などを通じて確認し、問題があればそのままにせず対策を講じます。

また、事業方針や環境の変化に応じて見直しを行い、変化に対応する人員配置を検討しましょう。

最適な人員配置を行うポイント

最適な人員配置を行うために、意識しておきたいポイントをお伝えします。

人材情報を一元管理する

従業員一人ひとりについて、保有する能力・スキルのレベル、業務経験、資質、キャリア形成の意向などの情報を一元管理します。これは「タレントマネジメント」とも呼ばれ、近年、力を入れる企業が増えています。

タレントマネジメントを行うにあたって、専用のシステムやツールを活用するのも有効です。多様な種類があるため、「自社が必要とする機能」「運用中の人事管理システムとの連動性」「操作性」「費用対効果」などの観点で比較検討し、自社に適したサービスを選ぶといいでしょう。

管理職との連携を徹底する

人事担当者が単独で進めるのではなく、各部署の管理職と密にコミュニケーションをとり、人員に関する情報共有を行いましょう。現場では常に変化が起きているものです。状況や課題をリアルタイムでつかみ、スピーディに人員配置を最適化するためにも、現場管理職との連携を徹底することが重要です。

社内公募制度を活用する

先にも挙げたとおり、社内公募制度は従業員自らの希望によって配置転換が行われるため、モチベーションを高める効果が期待できます。人事担当者が把握しきれていない個人の強みや適性を活かせる機会が広がるため、制度の活用を検討してみるのもおすすめです。

「適材適所」を実現するために

人員配置によって「適材適所」を実現するためには、従業員一人ひとりの情報を正確につかみ、データとして蓄積することが大切です。管理職や本人へのヒアリングを行うと同時に、データの管理・活用の仕組みを整えましょう。

そのうえで、事業戦略を遂行できる人材が社内におらず、育成も難しいと判断した場合は、外部人材の採用も検討してください。人員配置のシミュレーションをする過程で、求める経験・スキルが明確化できていれば、スカウトサービスを活用して転職市場からマッチする人材を探し、直接アプローチするのも有効な手段です。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。