ソーシャルリクルーティング

幅広いターゲットにアプローチでき、採用精度も高められる手法として、ソーシャルリクルーティングが注目されています。この記事では、ソーシャルリクルーティングを行うメリットや具体的な導入方法などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

ソーシャルリクルーティングとは?注目されている背景

ソーシャルリクルーティングとは、X(旧Twitter)やFacebook、YouTube、InstagramなどといったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した採用手法のこと。

自社の魅力や最新情報などを発信し、自社のファンを作れるため、新たな採用手法として注目し、活用する企業が増えています。

株式会社リクルートが実施した「中途採用に関する人事担当者向け調査(2021)」(※)によると、中途採用において「SNSを活用したことがある」と回答した企業は15.0%でしたが、「今後活用したい」と答えた企業は19.4%に上っています。

現在では、「比較的簡単に着手できるうえ、特に20代~30代向けに訴求するには重要な手法」と認識されており、SNSの拡大とともに企業の興味関心が高まっています。

なお、似たような言葉に「ダイレクトリクルーティング」があります。ダイレクトリクルーティングは、企業が求職者の応募を待つのではなく、企業側から直接求職者にコンタクトを取る採用手法のことを指します。したがって、SNSを通じてターゲットとなる人材と直接コミュニケーションを取るソーシャルリクルーティングは、「ダイレクトリクルーティングの手法の一つ」と言えます。

(※)出典:株式会社リクルート「中途採用に関する人事担当者向け調査(2021)

ソーシャルリクルーティングを行うメリット

企業がソーシャルリクルーティングに注力するメリットをご説明します。

直接候補者とコミュニケーションが取れる

SNSのメッセージ機能などを使って、ターゲットとなる人材に企業側から直接コンタクトを取れます。

転職エージェント経由でのやりとりや、求人サイトからの応募者とのやりとりよりも、より気軽かつスピーディーに双方向コミュニケーションを取れるため、相互理解が進みやすいというメリットがあります。

幅広い層に情報発信、PRができる

転職エージェントや求人サイトの場合、アプローチできるのは転職顕在層に限られますが、SNSは求職者以外も見る可能性があるため、転職潜在層や自社を知らない層も含め、幅広いターゲットに情報を届け、自社をPRできるでしょう。

採用にかかる費用を抑えられる

転職エージェントや求人サイトは、採用成功報酬や広告掲載料などがかかりますが、SNSは無料でアカウントを作ることが可能。SNSを通じた自社のPRや採用広報活動、求人募集などは、他の採用手法に比べ、費用を低く抑えられるでしょう。

ソーシャルリクルーティングのデメリット

活用メリットが多い一方で、ソーシャルリクルーティングにはデメリットも存在します。

手間がかかる

採用にかかる費用を気にすることなく、気軽に着手できる一方で、効果的に活用しようと思うとかなりの手間と工数がかかるのがソーシャルリクルーティングの特徴です。

例えば、ターゲット設定、担当者の選定、投稿・発信内容や頻度、社内の各部署との協業、チェック体制の整備、対応フローの設定など、活用に当たって決めるべきことは数多くあり、「アカウントは開設したものの、いくつか投稿しただけで放置してしまっている」という企業は少なくありません。

すぐに応募につながるとは限らない

転職を検討している転職顕在層や、多少なりとも転職を意識している層に対しての情報発信とは異なり、ソーシャルリクルーティングでは全く自社のことを知らない・興味がない層や、転職を全く考えていない層も含めて広く情報発信することになります。

情報が拡散され多くの人の目に触れたとしても、それが必ずしも応募・採用につながるとは限りません。すぐに応募を増やしたいなど即効性を求める企業は、他の採用手法も検討するとよいでしょう。

専門知識を有する担当者を配置する必要がある

専門知識を有するソーシャルリクルーティング担当者を配置することは、ソーシャルリクルーティングで成果を出すポイントの1つです。

前述のように、ソーシャルリクルーティングはすぐに効果が出るものではなく、数カ月単位、数年単位で継続的に情報発信することで自社のファンを増やすことが求められます。発信する内容の質を担保し続ける必要もあるため、人事担当者が普段の採用業務を行いながらソーシャルリクルーティングを担当するのは難易度が高いでしょう。

ソーシャルリクルーティングに活用されている代表的なSNSとその特徴

ソーシャルリクルーティングで活用されることの多いSNSについてご紹介します。

Facebook

実名制のSNSであるFacebookは、発信内容、経歴、つながりなどを情報として獲得できるほか、実名だけにその精度も高いと考えられています。自社とマッチするかどうかを測る情報も得やすいでしょう。

他のSNSとは異なり文字数に制限がないため、企業情報やPRをじっくり伝えることが可能です。

X(旧Twitter

140文字の短文テキストと画像などが投稿できるXは、若手からベテラン層まで全年代の利用率が高いのが特徴。情報収集ツールとして利用しているビジネスパーソンも多く、注目できる内容、面白い内容は拡散されやすいのも特徴です。

YouTube

総務省「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(※)によると10 代から 40 代で 90%超える高い利用率となっています。動画の制作には手間や工数がかかるものの、訴求力の高い情報が発信できる点がメリットと言えるでしょう。経営陣や従業員のよりリアルな姿を伝えられるかもしれません。

Instagram

写真や動画の投稿がメインのSNSで、特に女性の利用率が高いのが特徴。画像やリール動画など視覚面からの訴求に向いているでしょう。

ビジネス特化型のSNSもある

LinkedInなど、ビジネス特化型のSNSをソーシャルリクルーティングに活用するケースもあります。

30~50代のビジネスパーソンが多く、転職を含めたキャリアアップの機会を積極的に求め、情報収集している層が多いのが特徴。登録者は自身の職務経歴やスキル・実績を登録しているため、登録者の属性やスキルレベルが把握しやすいというメリットがあります。

(※)出典: 総務省ホームページ「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書

ソーシャルリクルーティングの具体的なやり方

新たにソーシャルリクルーティングを行う場合、どのようなステップで導入すればいいのか、具体的なやり方についてご説明します。

Step1:求める人材像の設定とペルソナ設定

まずはターゲットを決め、ペルソナを設定しましょう。

ターゲットにより、どのような情報を発信すべきか、どのSNSを活用すべきかが変わってくるため、初めにしっかりターゲットを定めることが大切です。

Step2:発信情報の整理

設定したターゲットに魅力を感じてもらえるような、独自性のある情報を発信することが重要。事業内容、仕事内容、社風、制度や福利厚生、働く社員、オフィス環境など、発信したい内容を考え、ターゲットに合わせて整理しましょう。

Step3:SNSの選定と運用ルールの整理

自社の採用活動に合うSNSを選定しましょう。そのうえで、更新頻度、投稿内容、チェック体制など運用ルールを決めておきましょう。あらかじめこれらを決めておかないと、安定運用ができず忙しさにかまけて放置してしまったり、投稿の炎上リスクが高まったりする恐れがあります。

Step4:SNSで定期的に情報を発信し定期的に効果検証を行う

更新頻度が低いと、数ある投稿の中にすぐに埋もれてしまいます。自社の採用活動に合うコンテンツを、継続的に発信していきましょう。

そして数週間ほどたった後、効果を検証を。一つひとつの投稿への反応・反響を分析し、発信内容を見直すことが重要です。

Step5:ターゲットに直接アプローチを行う

SNS上で気になる人材に出会ったら、メッセージ機能などを活用して直接アプローチを行います。

カジュアルに意見交換しながら、自社の魅力や仕事のやりがいなどを伝え、候補者の興味を醸成し、選考プロセスに進めましょう。

ソーシャルメディアを活用した効果的なコミュニケーションの方法

気になるターゲットへのアプローチや、ターゲットからの質問や問い合わせなどに対するアプローチなどにおける、効果的なコミュニケーションの仕方についてご紹介します。

投稿へのアクションはこまめにチェックする

投稿に対して「いいね」や「リポスト」、「シェア」などをしてくれた人は、自社に対して興味関心が高い人と考えられます。

これらのアクションをチェックし、プロフィールや投稿内容などに目を通して、採用要件に合致するかどうかをこまめに確認することが大切。合致する部分があれば、アクション内容に沿ったメッセージを送るといいでしょう。

アプローチには迅速に対応を

候補者からアプローチがあった場合は、できるだけ迅速に対応するのが採用成功のポイントです。

転職顕在層とは異なり、転職・採用にあまり関係のない「問い合わせ・質問」のようなケースもあると思いますが、それらを見落としてしまったり、「採用に関係ないのであれば後回しにしよう」などと放置したりしてしまうと、自社に対する評価を下げてしまうかもしれません。将来的に有力な候補者になり得る人材を逃してしまう可能性もあります。

担当者の負荷は増えますが、自社のファン(=候補者)を確実に増やすためにも、どんなアプローチにも何らかのアクションを行う姿勢が大切です。

定型文ではなく個別のメッセージを意識する

ソーシャルリクルーティングは対象者が広く、届くメッセージや質問内容は多岐に渡ると予想されます。質問などに対して迅速にアクションすることは大切ですが、定型文を用いて機械的な回答をしてしまうと、興味を持って連絡をくれた人のモチベーションが低下してしまう可能性があります。

対象者のSNS情報を確認するなどして、質問の意図をくみ取り興味関心をより喚起するような、個別性の高いメッセージ対応を行うのが採用実現のポイント。そのためにも、ソーシャルリクルーティングの専任者を置き、きめ細かい対応を行うことが重要です。

リクルートダイレクトスカウトをご利用いただくと、日々の時間をかけなくても候補者を確保できたり、独自のデータベースから他では出会えない即戦力人材を採用できる可能性が高まります。初期費用も無料ですので、ぜひご検討ください。
この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。