募集要項を検討してるビジネスパーソンのイメージ

人材採用を行う際は、法律によって明記を義務付けられた「募集要項」を記載する必要があります。自社サイトへの採用情報の掲載や求人媒体への募集広告の出稿、転職エージェントへの人材紹介の依頼などが該当します。募集要項に必要な項目、注意すべき禁止表現、募集要項作成のポイントについて、社会保険労務士の岡佳伸氏監修のもと解説します。

募集要項とは

募集要項とは、人材採用を行う際、求人情報に記載する項目です。例えば、募集職種とその業務内容、求める経験・スキル・資格、給与、勤務条件などです。募集要項の中には法律により明記を義務付けられている項目があり、漏れなく記載しなければなりません。2024年に新たに追加された項目もあるため、確認しておきましょう。

募集要項に必要な項目

「職業安定法」では、虚偽の表示禁止はもちろん、求職者に誤解を与えない情報掲載が義務付けられています。以下のような事項について、正確かつ最新の情報掲載が求められます。

業務内容

募集を行う職種と、その業務内容を記載します。求職者が、自身が働く姿をイメージしやすいよう、具体的に記しましょう。業務内容に入社後に実際に行う仕事と乖離する職種名を記載することは禁止されています。

契約期間

雇用契約期間が設定されているかどうかを記載します。定められていない場合は「期間の定めなし」などとします。雇用契約期間に定めがある場合、設定している期間や更新条件を明記します。

試用期間

試用期間の有無を記載します。試用期間を設けている場合は、「試用期間あり(3カ月)」といった期間のほか、「試用期間終了後の業務の際の有無」なども明記します。

就業場所

主な就業場所を記載します。「本社(住所:*****)」「○○支社(住所:*****)」など、住所と共に記載します。他の事業所で就業する可能性がある場合は、その場所も併記しておきます。就業場所が変更する可能性がある場合は、「本社(住所:*****)」または「○○支社(住所:*****)」などとしましょう。

就業時間

「8:30~17:30」など、始業時間・終業時間を記載します。シフト制・交替制などの場合、就業時間を複数パターン示しておきましょう。就業時間は、労働基準法などの労働関係法令に違反していないか確認した上で記入してください。

休憩時間

「12:00~13:00」など、休憩時間を記載します。休憩時間も、労働基準法などの労働関係法令に違反していないか確認した上で記入します。

休日

「週休2日制/土日、祝祭日」など、週あたりの休日や曜日などを記載します。シフト制・交替制などにより複数のパターンがある場合は併記しましょう。

時間外労働

残業について「あり/なし」を記載します。残業がある場合、例えば「あり(月平均20時間)」などと月あたりの平均残業時間を明記しましょう。労働基準法など、労働関係法令に違反していないか確認が必要です。

賃金

給与額を記載します。試用期間中は給与額が異なる場合は、試用期間中の賃金を併記します。例としては「月給:25万円 (ただし、試用期間中は月給20万円) 」などです。

なお、固定残業代の場合は、基本給と残業代の区別がない表記は禁止されています。また、「モデル収入」を記載する場合は、必ずもらえるという誤解を生まないように「平均給与」を記載するなどの配慮が必要です。

加入保険

「雇用保険」「労災保険」「厚生年金」「健康保険」など、加入する保険の詳細を記載します。他にも福利厚生制度があれば、記載してアピールすると良いでしょう。

受動喫煙防止措置

受動喫煙を防ぐための対策がなされているかどうかを記載します。喫煙場所を設ける場合は、「敷地内禁煙 (特定屋外喫煙場所あり)」などと記載します。

参考:「『受動喫煙防止』に向けた取組について」(厚生労働省)

募集者の氏名または名称

募集を行う企業名を記載します。なお、「知名度が高い」などの理由から、親会社やグループ会社の名前を自社名よりも目立たせるなどすると、読み手が混乱したり、誤認されたりする恐れがあります。情報掲載の際には表記の仕方に注意しましょう。

雇用形態

「正社員」「契約社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」など、雇用形態を明記します。

2024年4月に追加された明示事項

2024年4月から、募集に際して求職者に明示しなければならない労働条件として、以下の事項が追加されました。

  1. 従事すべき業務の変更の範囲 ※
  2. 就業場所の変更の範囲 ※
  3. 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)
    ※ 「変更の範囲」とは、雇入れ直後にとどまらず、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、締結する労働契約の期間中における変更の範囲のことをいいます。

参考:「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」(厚生労働省)

募集要項での禁止表現に注意が必要

募集要項においては、虚偽の記載や誤解を与える表現のほか、労働基準法などの労働関係法令に反する記載も禁止されているため、注意が必要です。一例をご紹介します。

労働条件・職場環境のルール違反(労働基準法)

労働基準法で定められた「労働時間(時間外労働を含む)」「休日(有給休暇の取得日数も含む)」「休憩時間」など、労働条件のルールに反する内容は記載を禁じられています。

「賃金」についても、最低賃金を下回る雇用は禁止されており、毎年10月頃に変更される各都道府県の最低賃金に合わせ、求人広告の掲載内容も更新する必要があります。

特定の人に対する雇用制限(労働基準法)

雇用に際し、特定の人を差別または優遇することは、労働基準法で禁止されています。以下にNGとなる一例を挙げますが、これらに限らず、求職者が不快感を抱くような表現を使わないように配慮する必要があります。

【NG例】
人種・民族・国家・国籍(NG例:日本国籍の方、○○国出身の方)
心身的な条件や性格(NG例:明るい方、身長○○cm以上の方)
出身地・居住地・通勤時間での排除・制限(NG例:○○県にお住まいの方限定)
家庭環境に言及する表現(NG例:既婚者限定)

参考:「公正な採用選考の基本」(厚生労働省)

性別による雇用制限(男女雇用機会均等法)

男女雇用機会均等法では、男女の性差によって特定の職業への就労を制限することを禁止しています。例えば、「男性限定」「女性のみ応募可」といった記載はNGです。「募集人数:男性3名、女性1名」ではなく、「募集人数:4名」と記載しなくてはなりません。

ただし、女性専用サロンのスタッフや、守衛・警備員など防犯上の要請から男性に従事させることが必要な職種、女性活躍推進のために女性の採用を増やす「ポジティブ・アクション」としての採用である場合など、例外が認められることもあります。

また、「セールスマン」のように性別を限定するような表記も禁止されているため、「営業職」「営業スタッフ」などと記載しましょう。

参考:「男女雇用機会均等法のあらまし」(厚生労働省)

年齢による雇用制限(労働施策総合推進法)

募集要項において応募者の年齢を制限することは、労働施策総合推進法で禁止されています。「○歳の方まで」「○歳以上の方」といった年齢制限の表記は認められないため、「年齢不問」と記載します。

なお、厚生労働省が定めた「例外事由」に該当する場合、年齢の制限を認められますが、募集要項での表記には注意してください。

参考:「募集・採用における年齢制限禁止について」(厚生労働省)
参考:「その募集・採用年齢にこだわっていませんか?」 (厚生労働省)

差別的な雇用制限(障害者雇用促進法)

障害者差別による雇用制限も、「障害者の雇用の促進等に関する法律」によって禁止されています。障害者の応募を制限する表現、障害者のみに特別な資格の取得を応募要件に加えるといったことは避けましょう。

効果的な募集要項作成のポイント

募集要項は法律に基づいて記載するだけでなく、求職者の興味をひき、応募意欲を喚起するような内容を盛り込むことをお勧めします。工夫したいポイントをご紹介します。

ペルソナを設定して表現を工夫する

採用活動を始める際には、求める人物像=「ペルソナ」を設定すると良いでしょう。年齢や経験・スキルだけでなく、仕事をする上で大切にしている価値観やライフスタイルなど、「パーソナリティ」を具体化するのです。

そのペルソナに対し、自社のどのような情報を伝えれば魅力を感じてもらえるのかを考え、募集要項の表現を工夫してアピールしましょう。

数値を交えて実績や待遇などを伝える

魅力的な制度や待遇を用意していても、それが運用・活用されていることが伝わらなければ求職者に響かないかもしれません。そこで「育児休暇取得率100%」「有給消化率80%以上」など、数値を交えて実績を示すと良いでしょう。

理解が深まるよう項目を追加する

法律で義務付けられていない項目も追加し、募集・選考に対する求職者の理解が深まれば、安心して応募してもらえる可能性が高まります。

例えば「応募資格(求める経験・スキル・資格など)」「応募方法」「選考の流れ」「選考スケジュール」などを記載しても良いでしょう。また、「テレワーク制度やフレックスタイム制など、柔軟な働き方が可能」「キャリアパスが多彩」「教育・研修プログラムが充実」といったように、求職者が魅力を感じる特徴などもアピールするのも一案です。

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この記事の監修者

岡 佳伸(おか よしのぶ)氏 

大手人材派遣会社にて1万人規模の派遣社員給与計算及び社会保険手続きに携わる。自動車部品メーカーなどで総務人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険適用、給付の窓口業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として複数の顧問先の給与計算及び社会保険手続きの事務を担当。各種実務講演会講師および社会保険・労務関連記事執筆・監修、TV出演、新聞記事取材などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

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※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。