求人広告

人材採用にあたり求人広告を出す場合、書き方によって反響や応募者の顔ぶれが変わってくるでしょう。応募者をより多く集めるためには、書き方を工夫する必要があります。求人広告に必ず記載しなければならない項目をはじめ、求人広告の書き方の手順、気をつけたい表現、応募を集めやすくするポイント、求人広告の種類などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

求人広告に必ず入れなければならない項目

まずは、求人広告を作成する際に、必ず入れなければならない項目を押さえておきましょう。職業安定法では、募集において明示しなければならない労働条件が指定されています。
以下の項目について、求職者に誤解を与えないように明記する必要があります。

項目 記載例 注意事項 
業務内容 一般事務 「一般事務」と記載されているのに、実際に就労すると「営業」「製造」「運送」などの実際の業務と乖離する名称とすることは禁止されています。 
契約期間 期間の定めなし
試用期間 試用期間あり(3カ月)
就業場所 本社(住所:−) 支社での就業の場合は、「△支社(住所:−)」と記載します。また、就業場所に変更の可能性がある場合は本社または△支社(住所:−)と記載します。
就業時間 8:30~17:30 労働基準法など、労働関係法令に違反していないか確認した上で記入します。 
休憩時間12:00~13:00 労働基準法など、労働関係法令に違反していないか確認した上で記入します。 
休日土日、祝祭日(年末年始を含む) 労働基準法など、労働関係法令に違反していないか確認した上で記入します。 
時間外労働あり(月平均15時間) 労働基準法など、労働関係法令に違反していないか確認した上で記入します。 
賃金 月給:25万円 
(ただし、試用期間中は月給20万円) 
固定残業代の場合は、基本給と残業代の区別がない表記は禁止されています。また、「モデル収入」を記載する場合は、必ずもらえると誤解されないように「平均給与」を記載するなどの配慮が必要です。 
加入保険 雇用保険、労災保険、厚生年金、健康保険 
受動喫煙防止措置 屋内禁煙 喫煙場所を設ける場合は、「喫煙場所(特定屋外喫煙場所)あり」などと記載します。 
募集者の氏名または名称○○株式会社 求人募集元の企業名のみを記載します。グループ会社名など、読み手が混乱する情報の掲載は避けます。 
雇用形態 正社員派遣労働者として雇用する場合は、「派遣労働者」と記載します。 

求人広告を作成する場合は、上記の労働条件に加えて、募集職種名やポジション、求める能力・経験などの情報も掲載するケースが多いようです。

参考:厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html)

求人広告の書き方の手順

応募者に興味を持ってもらいやすい求人広告を書くためには、事前の準備が重要です。準備のステップの一例をご紹介します。

求人広告に必要な情報・要素を集める

募集する職種・ポジションについて、上記で挙げた「求人広告に必ず入れなければならない項目」の情報を整理します。さらに、採用部門の責任者にヒアリングを行い、求める経験・スキル・資格などについても明確に記載できるようにしておきます。

さらに、「風土・カルチャー」「人事評価制度」「教育体制」「働き方」など、さまざまな観点で自社の特徴を洗い出しましょう。求職者が働くイメージを描きやすいように、職場や社員などの画像素材も用意すると訴求力が増す可能性があります。

競合他社の求人を研究する

採用競合となる他社の求人も見て、求職者が比較して見たときに魅力を感じてもらえるかどうかを研究すると良いでしょう。自社では強みだと思っていることも、求職者から見て「他社と同じ」「他社より劣る」と感じられてしまうと、アピール材料として効果を発揮しなくなる可能性があります。「差別化」を意識して、訴求ポイントを明確化しましょう。

ターゲットとペルソナを明確にする

求人広告を書く前に、募集職種・ポジションの「ターゲット」と「ペルソナ」を明確にしておくことも大切です。

ターゲットとは、「職種」「経験・スキル」「収入レベル」など、人材に求める要件です。一方、「ペルソナ」は、ターゲット人材の「仕事への価値観」「キャリアへの志向」「ライフスタイル」などの細かなパーソナリティまで設定します。

具体的な人物像を描いておくことで、「求人で重視する要素」「企業や仕事に魅力を感じるポイント」が見えてきます。ターゲットとペルソナを意識して、求人広告の表現を工夫しましょう。

求人広告の規定に従って作成する

求人広告に記載する項目やフォーマットは、出稿する媒体によって異なります。媒体の規定に従って必要項目を入力し、求人広告を作成します。

求人広告で気をつけたい表現

求人広告の作成にあたっては、次の内容や表現に気をつけましょう。法律に抵触する表現もありますので、注意が必要です。

年齢制限

労働施策総合推進法により、募集および採用において、年齢制限を設けることは禁止されています。例えば、「30歳以上」「40歳以下」といった記載は認められません。

ただし、厚生労働省令では「年齢制限が認められる例外事由」が規定されており、これに該当する場合は年齢制限を設けた募集が可能です。その場合は例外事由を求人票に明記しましょう。

参考:厚生労働省のホームページ (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/topics/tp070831-1.html)

性別に関する規制

男女雇用機会均等法において、男女の性差によって特定の職業への就労を制限することが禁止されています。「男性のみ」「女性のみ」など、性別を限定した募集は原則できません。

ただし、「適用除外職種」の募集、または「ポジティブ・アクション」の募集については、男性のみ、または女性のみの募集が可能です(ポジティブ・アクションは女性のみ)。

参考:厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/rule.pdf)

差別表現

労働基準法において、求人広告で特定の人を差別または優遇するような表現は禁止されています。差別の意識がないとしても、求職者が不快感や苦痛を抱くような用語・表現を使用しないように注意しましょう。

【NG例】本人に責任のない事項の把握

  • 人種・民族・国家・国籍
  • 心身的な条件や性格
  • 出身地・居住地・通勤時間での排除・制限
  • 家庭環境に言及する表現
  • 本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
  • 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
  • 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
  • 生活環境・家庭環境などに関すること

そのほか「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握」「採用選考の方法」も差別につながる恐れがあります。詳しくは厚生労働省のホームページを参考にしましょう。

参考:厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm)

著作権・肖像権・氏名権の侵害

他社・他者の著作物、または肖像・氏名・キャラクターを無断で使用することは禁じられています。 著作権・肖像権・氏名権を侵害することのないよう、配慮して表記しましょう。

根拠のない過剰な表現

「No.1」「トップ」「世界初」「第一号」「我が社だけ」など、根拠のない過剰な表現は「誇大広告」と見なされます。客観的証明物が確認でき、事実に基づく情報であれば表記しても問題ありませんが、公平なデータに基づかない情報の記載は避けましょう。

応募を集める求人広告のポイント

以下のポイントを意識して求人広告を作成することで、求職者に興味を持たれ、応募者が集まりやすくなる可能性があります。

差別化できる要素を強調する

採用競合となる他社と差別化を図れるよう、自社ならではの魅力を強調してアピールすると良いでしょう。アピールポイントを打ち出すにあたり、項目の一例を以下にご紹介します。これらの観点で、自社の強みや優位性をピックアップしてみましょう。

  • 成長率
  • シェア
  • 顧客ラインナップ
  • プロダクトの先進性
  • 裁量権
  • 昇進スピード
  • 経営陣や同僚の経歴
  • 年収アップ
  • 副業
  • 教育プログラム
  • 資格取得支援
  • リモートワーク
  • フルフレックス
  • ワーケーション
  • オフィス内の福利厚生
  • 部活動 など

ターゲットのニーズに合わせる

自社の強みとして打ち出す要素は、人によって受け取り方が異なります。同じ内容を発信しても、「魅力的」と感じる求職者もいれば、そうでもない求職者もいるでしょう。そこで、募集するターゲット人材がどのような情報を求めているか、どのようなポイントに魅力を感じるかを考え、その要素をアピールすることが大切です。

自社内で、募集する職種・ポジションに該当する人、あるいはそれに近い人にヒアリングを行い、ターゲット人材のニーズをつかむと良いでしょう。

要素を詰め込みすぎない

自社のアピールポイントをなるべく多く伝えたいと思うのは当然ですが、一貫性のない要素を詰め込みすぎると逆に強みとなるポイントが伝わらず、印象に残りにくくなる可能性もあります。

ターゲット人材のニーズに合わせてある程度要素を絞り込み、そのポイントを厚めに訴求することも大切です。

画像・動画でも魅力を伝える

文字情報だけでは伝わりにくい魅力もあるかもしれません。出稿する媒体の規定にもよりますが、画像の掲載や動画へのリンクを記載できる場合は、ビジュアルも活用して働く姿をイメージできるようにすると良いでしょう。例えば、オフィスの風景や社員が働く様子、社内の活動、社内イベントなどが挙げられます。

応募が集まりにくい求人広告の傾向

次のような求人広告は、「応募が集まりにくい」という傾向があるようです。可能な範囲で改善を図りましょう。

他社と比べて条件が悪い

給与・勤務時間・休日など、採用競合となる他社と比べて条件が見劣りする場合、求職者から選ばれにくくなるでしょう。特に近年は、人手不足に伴い賃上げに動く企業が増える傾向があります。気づかないうちに、同業他社に比べて給与水準が低くなっている可能性もあります。また、リモートワークやフレックスタイムなど、柔軟な働き方の制度を導入する企業もあるので、外部労働市場の動向にアンテナを張り、可能なかぎり自社も適応させるようにすると良いでしょう。

応募条件が厳しすぎる

求める経験・スキルの要件が多い、あるいは非常にレベルが高いなど、応募条件が厳しすぎる場合、求職者は応募を躊躇する可能性があります。

「○○の経験は必要だが、△△の経験はあれば尚可とする」「○○のスキルについては、入社後にキャッチアップしてもらえば良い」など、応募が集まらない場合は条件を見直して調整を図りましょう。応募条件を緩和して求人広告に記載すれば、求職者は応募に踏み切りやすくなるかもしれません。

仕事内容がわかりにくい

求人に仕事内容が詳しく書かれていないと、入社後に働くイメージを持てず、応募意欲が湧かない可能性があります。特に、未経験者なども採用対象としている求人にもかかわらず、仕事内容に専門用語を多用している場合は注意が必要です。

詳細な仕事内容に加え、チーム体制や仕事の進め方などの情報も発信すれば、入社後の活躍をイメージしやすくなり、応募意欲を喚起できる可能性があるでしょう。

求人広告の媒体には、さまざまな種類があります。広告媒体の種類と特性をご紹介します。
募集媒体によって広告制作規定が異なり、媒体側で制作するケースと、自社で制作して入稿するケースがあるため、規定を確認した上で利用すると良いでしょう。

転職サイト

転職サイトは、あらゆる業界・職種の求人を網羅的に掲載する「総合型転職サイト」と、「IT」「医療」「外資系」など特定の業界や領域を専門とする「特化型転職サイト」があります。

スマートフォンでの閲覧も可能であり、求職者が希望条件を登録しておくと新着求人が通知される機能などもあり、多くの求職者の目に留まる可能性があります。

求人検索エンジン

求人情報に特化した検索エンジンに求人広告を掲載する方法もあります。求人検索エンジンは、求職者が求人検索エンジン上でキーワード検索(業種・職種・勤務地・希望条件など)を行うと、キーワードに合致する企業の求人広告が表示される仕組みです。無料でも利用できますが、有料枠を利用すると検索結果に表示されやすくなり、応募数の増加が期待できるでしょう。

紙系の求人メディア

紙の求人メディアには、求人情報誌、フリーペーパー、新聞の折り込みチラシなどがあります。特定の地域で配布されるケースが多く、その地域に住む人・その地域で働きたい人の募集に適しています。

ただし、印刷工程をはさむため、Web系の求人メディアと比較すると、求人広告の掲載を申し込んでから掲載・発行されるまでに時間がかかります。また、発行後に募集条件などの変更・追記もできません。急ぎの募集や、募集要件が変動しやすい求人には不向きといえるでしょう。

リクルートダイレクトスカウトをご利用いただくと、日々の時間をかけなくても候補者を確保できたり、独自のデータベースから他では出会えない即戦力人材を採用できる可能性が高まります。初期費用も無料ですので、ぜひご検討ください。
この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

この記事の監修者

岡 佳伸(おか よしのぶ)氏 

大手人材派遣会社にて1万人規模の派遣社員給与計算及び社会保険手続きに携わる。自動車部品メーカーなどで総務人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険適用、給付の窓口業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として複数の顧問先の給与計算及び社会保険手続きの事務を担当。各種実務講演会講師および社会保険・労務関連記事執筆・監修、TV出演、新聞記事取材などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

※文中の社名・所属等は、取材時または更新時のものです。