AIやビッグデータの活用などIT業界の技術革新が進む中で、プログラマーなどのエンジニア人材の不足が続いています。DXなどのIT需要によって、エンジニアの採用活動でも競合となる企業が増えており、各社がエンジニア採用の難しさを実感していると考えられます。
本記事では、エンジニア採用が難しい理由や採用を成功させるポイントなどについて解説します。
目次
エンジニア採用の市場動向
エンジニア採用の市場動向は、人材の需要は旺盛ながら供給が追いついていない状況が続いており、今後もその傾向のまま推移すると考えられています。
総務省の『情報通信白書(令和4年版)(※1)』によると、世界のICT市場の規模は2016年以降増加しており、2021年には465.2兆円に達しています。DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進され、IoT化やAI、ビッグデータ活用による第4次産業革命への対応が求められる中で、エンジニアをはじめとした先端IT人材の不足が特に深刻化しています。
経済産業省の委託事業として、2019年にみずほ情報総研株式会社が行った『IT人材需給に関する調査(※2)』によると、第4次産業革命に対応したIT人材の供給数は2030年まで順当に増加し、113.3万人に到達するとされています。
ただし、IT業界自体の需要も、DXの推進やAIなどの先進技術の発展などに伴って伸び続けると考えられています。エンジニアをはじめとするIT人材は、IT需要が最も高い状態で推移した場合、2030年に最大で78.7万人が不足するという試算結果が出ています。
そのため、各企業のエンジニア採用はこれからも難しい状況が続くでしょう。
(※1)参考:総務省「情報通信白書(令和4年版)」
(※2)参考:みずほ情報総研株式会社「IT人材需給に関する調査」
エンジニア採用が難しいとされる理由
エンジニア採用は、なぜ難しいとされているのでしょうか。考えられる理由をそれぞれ解説します。
経験者重視の採用傾向
IT業界は需要が拡大しているだけでなく技術の進歩が早いため、即戦力となる経験者の採用が重視される傾向にあり、結果的にエンジニアの確保が難しくなっています。
人材が不足しているならば、未経験者を採用して人材育成するという方法もありますが、資金面および時間面での余裕がない企業も少なくありません。そのため、既に自社事業に関連するプログラミング言語などを習得している即戦力人材を求めることになり、そもそも少ないエンジニア人材を競合企業同士で取り合う事態となっています。
採用担当者にも専門知識が必要
エンジニア採用では、採用活動に関わる担当者にも専門知識が必要なため、企業によっては、採用人事が不足しているという問題もあります。
自社に必要なエンジニアの経験やスキルを判断し、選考でその人材を見極めるには、開発現場や市場の状況などに対する理解が欠かせません。非技術者の採用をメインに行ってきた人事担当者だけでは、ミスマッチが起こってしまう可能性があります。
現職のエンジニアが採用も担うことは少なく、適正な採用担当者の確保の難しさが、そのままエンジニア採用の困難さにつながっています。
給与・待遇面でのミスマッチ
エンジニアは専門職ということもあって、給与や待遇は一般的な職種に比べて高めに設定されている場合が多いです。
しかし、経済産業省の『我が国におけるIT人材の動向(※3)』の日本とアメリカのIT人材の処遇比較によると、20代・30代の年収の中央値は日本よりもアメリカの方が2.5倍ほど高くなっており、国際的に見て日本のエンジニア人材の給与待遇は高いとは言えません。
また、中小企業は大手に比べてエンジニアに対して満足な給与額を提示することが難しい傾向にあり、給与や待遇面でのミスマッチによって人材採用がうまくいかないことも少なくありません。
(※3)参考:経済産業省「我が国におけるIT人材の動向」
働き方の多様化
近年では、働き方の多様化が進んでおり、同じ会社で働き続けるのはもちろん、そもそも会社に所属すること自体を必須と考えていない人も増えています。
エンジニアは、業務内容によってはリモートワークだけでも対応ができます。クラウドソーシングのような個人事業者向けの業務委託サービスも普及しているため、エンジニア経験がある優秀な人材は、会社に属さずにフリーランスとして自ら仕事を獲得して働くことも少なくありません。
エンジニア採用を成功させるためのポイント
では、エンジニア採用が難しい状況の中で、採用を成功させるためにはどのような施策を行えば良いのでしょうか。
ペルソナ設定を明確にする
エンジニア採用を成功させるには、まずは自社にとって必要な人材のペルソナを明確にしましょう。
ペルソナとはマーケティングにおける「架空のユーザー像」のことで、商品・サービスの販売目標達成のために欠かせません。人材採用においても、必要な人材の経験やスキルはもちろん、求職活動のスタイルを想定しておくことが、具体的で効果の高い採用活動につながります。
ペルソナを採用担当者間で共有することで、選考試験での人材選定のミスマッチを防ぐこともできるでしょう。
人材採用におけるペルソナは、年齢や必要なスキルなどを明確にした上で、仕事で重視していること、経験年数や役職、転職情報をどういった媒体から入手するかといった視点まで盛り込むことが大切です。
ペルソナを設定することによって、自社に必要な人材像だけでなく、求人を出す際に提供する企業情報や求人の記載内容、利用する求人媒体や採用手法なども明確になるでしょう。
募集要項、採用フローを見直す
他の職種と同じように採用活動を進めるのではなく、募集要項はもちろん、採用フローもエンジニア採用に合わせて見直すことが大切です。
例えば求人の募集要項には、自社が必要なエンジニア人材像だけでなく、そもそもエンジニア人材が興味を持つような情報の記載が必要です。ペルソナが知りたいであろう、具体的な業務内容や技術面で期待すること、職場環境や待遇、キャリア支援制度の情報など、求職者目線で記載することを意識しましょう。
選考についても、求めているスキルや人物像を見極めるために適切なフローとなっているか確認したうえで、書類や面接などの選考内容だけでなく、面接担当者が適任であるかどうかなども見直すことも大切です。
また、求人を出して応募者を待つだけの採用活動では限界があります。スカウトサービスに登録して自社から積極的にアプローチをしたり、リファラル採用を導入して社員からの紹介も検討したりするなど、さまざまな角度から自社に合う人材を獲得する方法を考えてみましょう。
エンジニア経験者を採用チームに加える
採用活動のプロジェクトに、エンジニア経験者を加えることも有効です。
自社のエンジニア採用に応募してくる人材の多くは、給与待遇や職場の人員構成以外にも、入社後に担当する業務やプログラミング言語、開発環境なども知りたいと考えています。
採用担当者にエンジニア経験者を加えることで、業務の具体的な説明ができるのはもちろん、採用面接などで応募者のスキル適性も把握できます。また、応募者からの技術的な質問に対しても、エンジニア経験者ならば的確な回答ができるでしょう。
さらに、エンジニア経験者に転職フェアや会社説明会など外部での採用活動にも参加してもらうことで、早い段階で求職者と自社とのマッチ度を見極められるというメリットもあります。
もしも、社内のエンジニアが採用活動に関わることが難しいならば、エンジニアの転職サポート実績が豊富な転職エージェントやスカウトサービスの活用も検討してみましょう。
労働環境を整える
求職中のエンジニアに自社を魅力的だと思ってもらえるように、労働環境を整備することも欠かせません。
働き方の多様化が進む中では、フレックスタイム制の導入はもちろん、自宅やサテライトオフィスでのリモートワークの推進なども検討の余地があります。エンジニアの生産性向上につながるハイスペック端末の導入など、職場の設備を見直してアピールすることで、興味を惹くこともできるでしょう。
また、最先端のITに取り組むデジタル系人材はスキルアップに意欲的であり、業務に関連する資格取得に対する報奨金支給やセミナー参加費の補助など、自己啓発支援制度を充実させることも、採用と定着に有効かもしれません。
エンジニア採用にはスカウトサービスの活用がおすすめ
エンジニア採用が難しい中で、自社に必要な人材を採用するためには、スカウトサービスのような外部の転職サービスの利用がおすすめです。
スカウトサービスのメリット
スカウトサービスとは、サービスの登録者の中から自社の採用要件に合う人材に対して、スカウトメールなどの方法で直接アプローチができるサービスです。
スカウトサービスの登録者の中には、積極的に転職活動は行わず、「今よりも好条件のオファーがあれば転職したい」「キャリアアップの話があれば検討したい」などと考えている転職潜在層も見られます。特に、さまざまな企業や業界から需要の高いエンジニアの場合、その傾向が高く、他の転職では出会えない人材の採用につながる可能性もあるでしょう。
スカウトサービスを利用する場合の注意点
スカウトサービスを利用する場合、自社での採用と比べると費用がかかります。サービスの利用料(月額や年額)だけを支払う場合もあれば、求職者を採用して入社した後に成功報酬を支払うサービスもあります。そのため、コストに見合うだけの効果が得られるか、事前に見積もることが欠かせません。
また、利用しているサービスにエンジニアの登録者数が少なければ、そもそもスカウトに値するレベルの人材を確保できない可能性もあります。そのため、エンジニアに特化したサービスを利用するなど、スカウトサービスの登録者実績や、得意な業界・業種なども考慮しましょう。
いずれにせよ、「エンジニア採用を成功させるためのポイント」の施策を行なったうえで、採用活動をより効率化させながら効果を最大化するという目的で利用することが大切です。
エンジニア採用はリクルートダイレクトスカウトがおすすめ
リクルートダイレクトスカウトは、ハイクラスな人材の転職支援に特化したサービスです。エンジニアとしての専門知識を有する業務経験豊富な人材へのアプローチも可能なため、エンジニア採用がなかなか思うように進んでいない場合に利用を検討してみてください。
自社で設定したペルソナに合致した経験やスキルを持ったエンジニアを選定し、他社にはない自社の魅力を伝えることで、エンジニア採用を円滑に進める助けとなるでしょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。