
選考の結果、採用を見送ることになった応募者には不採用の旨を通知します。多くの場合はメールで連絡しますが、書き方によっては自社に対してマイナスの印象を抱かれる可能性もあります。そこで、不採用通知の文面構成、書き方のポイント、送付時の注意点などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。選考段階ごとの例文も紹介します。
目次
不採用通知とは?
「不採用通知」とは、書類選考や面接の結果、不採用となったことを応募者に伝える通知です。
不採用通知は、選考結果を伝えるだけでなく、内容によっては応募者が自社に抱く印象を左右する可能性があるものです。選考が不採用だとネガティブな感情を抱きやすい上に、通知の文面に誠意を感じられないとマイナスイメージを与えてしまうかもしれません。
自社に入社しないとしても、応募者が自社の製品・サービスの顧客となったり、取引や協業の相手となったりする可能性もあります。なるべく心証を害することのないように配慮しましょう。
不採用通知の送付方法
不採用通知を送る手段として、メールや電話、郵送や転職サービスのメッセージ機能があります。それぞれの手段を用いる場合のポイントをお伝えします。
メール
メールでの通知は、「採否判断後、早急に通知できる」「通知したことが文書として残る」という点でメリットがあります。
しかしながら、応募者がメール着信に気づかず、開封されない可能性もあります。メールの件名は、見落とされにくい文言にするなど、工夫が必要です。
電話
いつ開封されるかわからないメールと比較すると、電話はなるべく早いタイミングで応募者に伝えることが可能です。
しかし、電話は応募者から不採用理由や再選考の可能性を聞かれるなど、予期せぬ反応を受けて回答に窮してしまうこともあります。質問を受けた場合にどのように答えるかを整理した上で連絡すると安心でしょう。
また、確実に不採用通知を行った記録を残すため、通話後にメールも送っても良いでしょう。
郵送
不採用通知を郵送する場合は、応募者本人以外に開封されることがないよう、「親展」と記載します。封筒には「選考結果通知 在中」などの記載をせず、必要に応じて速達や書留で送りましょう。
なお、応募書類を返却する場合は、不採用通知に同封します。
転職サービスのメッセージ機能
転職サービスを利用して応募者とやり取りしている場合は、メッセージ機能を活用するという方法もあります。すぐに送信でき、履歴が残るというメリットはメールと同じですが、不採用通知などのテンプレートが準備されているケースが一般的です。
ただし、テンプレートをそのまま利用すると事務的な印象を与えてしまうかもしれません。テンプレートを修正して応募への感謝の文言を追加するなど、オリジナルの要素を入れておくと良いでしょう。
送付するタイミング
応募者は、緊張や不安を抱いて選考結果を待っていると考えられます。また、選考結果を受けて、転職活動の次のアクションを判断することもあるでしょう。「できるだけ早く結果を知りたい」という気持ちを汲み、選考後はなるべく早く通知しましょう。ただし、選考終了からあまりにも早く通知すると、「丁寧に選考されていない」と不信感を抱かれるかもしれません。
可能であれば2~3日以内、遅くとも1週間以内に通知することが望ましいでしょう。
どうしても選考に時間がかかってしまう場合は、事前に結果連絡の期日を伝えておくか、1週間以内のタイミングで選考が遅れている旨を連絡しましょう。
不採用通知の構成
不採用通知の文面は、選考結果を明確に伝え、かつ心情に配慮しながら作成しましょう。文面の構成について、一例を紹介します。
件名
「採用選考結果のご連絡」「面接結果のご連絡」など、用件が一目でわかるようにタイトルを明記します。
宛名
応募者のフルネームを記載します。くれぐれも誤字がないようにしましょう。
差出人名
会社名と部署名、必要に応じて担当者名を記載します。
挨拶・御礼
挨拶とともに、多くの企業から自社を選んで応募してくれたことへの感謝の意を伝えます。
選考結果
選考の結果、不採用になった旨を簡潔かつ丁寧に伝えます。「ご希望に添えず申し訳ございません」など、受け取る応募者の心情に配慮したメッセージも添えると良いでしょう。
応募書類の取り扱い
応募書類について、「返却」もしくは「自社で責任をもって破棄」など、自社の規定に沿って取り扱い方法を記載します。
締めの言葉
締めくくりに、応募者の今後の活躍を祈念する言葉を添えます。
連絡先(署名)
会社名と部署名、担当者名、連絡先(メールアドレス/電話番号)を記載します。
【選考段階別】不採用通知メールの例文
不採用通知メールを送る際には、応募者に配慮したわかりやすい文面を意識する必要があります。ここでは、選考段階に分けて例文を3つ紹介します。
書類選考
書類選考段階での不採用通知では、丁寧な表現を意識しつつ、あまり冗長にならないように手短に結果を伝えましょう。
件名:【書類選考結果のご連絡】○○(会社名)
○○ ○○(フルネームで記載)様
○○(会社名)採用担当でございます。
この度は、弊社求人にご応募いただきまして、誠にありがとうございました。
慎重に書類選考を行った結果、
誠に残念ながら今回についてはご期待に添えない結果となりました。
なお、お預かりさせていただいた応募書類は郵送にてご返却いたします。
よろしくご査収ください。/弊社で責任をもって破棄いたします。
末筆になりますが、○○様の今後一層のご活躍をお祈り申し上げます。
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会社名
部署名
連絡先
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面接(最終面接以外)
最終面接以外の面接で不採用となった応募者に対しては、面接に参加してもらったことに感謝しながら、丁寧な表現を心がけてメールを送りましょう。
件名:【面接結果のご連絡】○○(会社名)
○○ ○○(フルネームで記載)様
○○(会社名) 採用担当(必要に応じて名前を記載)でございます。
先日はお忙しい中、面接にお越しいただき、誠にありがとうございました。
慎重に社内で検討を重ねました結果、誠に残念ながら今回についてはご期待に添えない結果となりました。
今回の選考では思いがけず多数の応募があり、弊社としましても苦慮した上での判断となりました。
大変恐縮ではございますが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。
なお、お預かりさせていただいた応募書類は郵送にてご返却いたします。
よろしくご査収ください。/弊社で責任をもって破棄いたします。
末筆になりますが、○○様の今後一層のご活躍をお祈り申し上げます。
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会社名
部署名
担当者名
連絡先
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最終面接
最終面接で不採用になった応募者に対しては、これまで複数回の選考に参加してもらったことに謝意を述べつつ、丁寧に伝えるようにしましょう。
件名:【面接結果のご連絡】○○(会社名)
○○ ○○(フルネームで記載)様
○○(会社名)採用担当(必要に応じて名前を記載)でございます。
この度は、多数の企業の中から弊社にご応募いただきまして、誠にありがとうございました。
また先日はお忙しい中、最終面接にお時間を割いていただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。
厳正なる審査の結果、誠に残念ではございますが、今回は採用を見送らせていただくこととなりました。
何度もご足労いただいたのにも関わらず、ご希望に添いかねる結果となり恐縮ではございますが、ご了承くださいますようお願いいたします。
なお、お預かりさせていただいた応募書類は郵送にてご返却いたします。
よろしくご査収ください。/弊社で責任をもって破棄いたします。
末筆になりますが、人事部一同、○○様の今後一層のご活躍をお祈り申し上げます。
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会社名
部署名
担当者名
連絡先
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不採用通知メールの書き方のポイント
不採用通知を行う際は、応募者への配慮が必要不可欠です。ここでは、不採用通知メールを書く際のポイントについて紹介します。
件名はひと目で差出人・内容がわかるものにする
メールの件名は、応募者が差出人や内容を一目で理解できるように書きましょう。
応募者は同時に複数の会社に応募している可能性が高く、多くのメールを受け取っていることが考えられます。メールの件名で差出人や選考結果についての連絡と判断できなければ、他のメールに埋もれて気づかれない恐れがあります。
「【選考結果のご連絡】○○(会社名)」のように、【】(すみつきかっこ)などを用いて目立たせる工夫も大切です。
選考結果は丁寧な言葉遣いで端的に記載する
選考結果は、端的かつ丁寧な言葉遣いで書きましょう。
不採用の連絡を受けると、応募者は少なからず気持ちが落ち込んでしまい、今後の転職活動に影響する可能性もあります。丁寧な言い回しを意識するのはもちろん、「ご期待に添えない結果となりました」など、配慮をしつつ伝えることも大切です。
不採用理由の記載は不要
不採用通知をメールで送る際、理由の記載は基本的には不要です。
選考結果の通知内容について法的な定めはなく、不採用にいたった理由を伝えなくても問題ありません。
再選考の可能性について考慮する
現時点の選考結果では不採用でも、再選考の可能性があるならば通知内容にも配慮が必要です。
例えば、不採用にいたった理由が以下のようにやむを得ない理由だった場合、再選考の実施についての記載も考慮しましょう。
- 経験やスキル、人柄ともに採用したい人材だったが、年収条件だけが合わなかった
- 1名採用枠でやむを得ず不採用にしたが、採用したい人材であるため別部署の選考に参加してほしい など
このような場合は、メールで不採用にせざるを得なかった理由を伝えた上で、別途面談などを行いたい旨などを追記し、再選考への参加が可能か問い合わせると良いでしょう。
応募書類の取り扱いについて明記する
応募書類の取り扱いについても、応募者に不安を抱かせないように明記します。
履歴書や職務経歴書、ポートフォリオなどの書類には、応募者の住所や氏名、生年月日、学歴などの個人情報が記入されています。個人情報の漏洩というコンプライアンス上のトラブルを避けるために、応募書類の「破棄」および「郵送での返送」など、取り扱いについて自社の規定に沿って明記しましょう。
不採用通知メールの送付時の注意点
不採用通知の対応内容によっては、応募者が会社の対応に不満を感じてしまうこともあります。ここでは、不採用通知のメールを送付する際の注意点を3つ紹介します。
最低1週間以内に送付する
不採用通知のメールは、選考が終了してから最低でも1週間以内に送付しましょう。
応募者は連絡が遅くなるほど不安になるのはもちろん、その後の活動が後ろ倒しになり、会社の対応に不満を感じることもあります。
応募者への配慮が足りなかったことが、結果的に自社の信用を損なう事態に陥ってしまう恐れがあるので、不採用通知のメールを送る際は最低でも1週間以内を意識し、少しでも早く送付できるように心がけましょう。どうしても選考に時間がかかってしまう場合は、事前に結果連絡の期日を伝えておくか、1週間以内に選考が遅れている旨を連絡するという方法があります。
宛名・送り先の確認を必ず行う
不採用通知メールを送付する前に、宛名や送り先を必ず確認します。
送り先に誤りがあればメールが届かないのはもちろん、送られてきたとしてもメールの宛名に間違いがあれば、会社の配慮のなさを不愉快に感じてしまうかもしれません。また、誤送信によって個人情報が漏洩する恐れもあります。
メールを書く際には応募書類を参考にし、宛名はフルネームで記載し、送り先のメールアドレスは以前送付したメールなども確認しながら正確に記入しましょう。また、メールを送付し終わったら、正常に送付されているかをメールシステムの「送信済み」フォルダで確認することも大切です。
転職エージェントを経由している場合は、転職エージェントの担当者に連絡する
転職エージェントから応募者の紹介を受けた場合は、転職エージェントの担当者に不採用通知をしてもらいましょう。
転職エージェント経由の募集をしている場合、基本的に応募者と企業が直接やり取りをすることはありません。不採用通知に限らず、応募者に伝えたいことがある際は必ず転職エージェントを通すようにします。
また、転職エージェントに応募者が不採用になった理由を伝えることで、今後紹介を受ける人材の基準について擦り合わせる機会にもなります。
候補者と接点を持ち続けたいならタレントプール登録も活用
近年、「タレントプール」を活用する企業が増えています。タレントプールとは、「人材(タレント)の蓄積(プール)」を意味し、短期~中長期的に自社の採用候補者となり得る人材の情報をデータベース化することを指します。
今回の選考では不採用にした応募者も、タレントプールに登録しておき、いずれかのタイミングで声をかけて再応募を促す方法もあります。例えば、応募者に不採用通知を送った後、内定辞退者、あるいは新たな退職者が出て、欠員補充を行う必要が生じる場合もあるかもしれません。今回は採用枠が限られていたため不採用としたものの、今後新たに採用を行う際にはぜひ迎え入れたい人材である場合などにも、タレントプール登録を活用しましょう。
タレントプールに登録したい場合、不採用通知を送る際、補欠採用の可能性や、今後も接点を持ち続けたい意向を伝えておいても良いでしょう。以下の例文を参考にしてください。
件名:【面接結果のご連絡】○○(会社名)
○○ ○○(フルネームで記載)様
○○(会社名)採用担当(必要に応じて名前を記載)でございます。
この度は、多数の企業の中から弊社にご応募いただきまして、誠にありがとうございました。
また先日はお忙しい中、最終面接にお時間を割いていただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。
厳正なる審査の結果、誠に残念ではございますが、今回は採用を見送らせていただくこととなりました。
何度もご足労いただいたのにも関わらず、ご希望に添いかねる結果となり恐縮ではございますが、ご了承くださいますようお願いいたします。
今回は採用枠が限られており、残念ながら○○様をお迎えすることが叶いませんでしたが、
今後、採用枠の追加が生じた場合など、再度募集のご案内を差し上げてもよろしいでしょうか。
この度のご縁を大切に、今後もつながりを継続できれば幸いに存じます。
末筆になりますが、人事部一同、○○様の今後一層のご活躍をお祈り申し上げます。
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会社名
部署名
担当者名
連絡先
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応募者に配慮した不採用通知の作成を
不採用通知の連絡手段はさまざまですが、メールで連絡する際には応募者への配慮が特に必要です。一目でわかるタイトルをつけ、応募してもらったことに対する謝意を添えた上で、丁寧な文面の作成を心がけましょう。
採用活動を通して自社の信頼性を高める意識を忘れず、応募者の心情に沿った対応をすることが大切です。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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