中途採用は構造的な人材不足が常態化しています。リクルートの「2022年度下半期 中途採用動向調査」では、採用が未充足だった企業は79.4%という結果となっています。
人材採用のハードルが上がるなか、「スカウトサービス」を活用する企業が増えています。しかし「どのように始めればよいか分からない」「利用しているが応募につながらない」といった悩みも聞こえてきます。こうした課題に対して、スカウト代行サービスを利用することで改善できる可能性があります。スカウト代行サービスの種類、利用するメリット・デメリット、依頼できる業務、サービス選定のポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
スカウト代行とは?注目されている背景
スカウト代行とは、企業の採用業務の一部もしくは全般を代行する「採用代行(RPO)サービス」の一種です。採用活動のうち「スカウト」に関する業務を担い、スカウト媒体の選定から候補者抽出、スカウトメール文の作成・送信・返信対応まで代行します。
スカウト代行が注目されている背景には、労働力人口の減少による人材採用難があります。従来のように求人媒体に広告を出稿したり転職エージェントに依頼したりして「応募を待つ」だけでは、採用目標の達成が難しくなりつつあります。そこで、「攻め」の姿勢に転じ、企業自ら求める人材に直接アプローチする「ダイレクトリクルーティング」を導入する企業が増えてきました。
ダイレクトリクルーティングの手法の一つが「スカウト」です。データベースに登録してある求職者のスキルや経験などを見て、企業から求職者にスカウトメールを送信してコンタクトを取ります。しかし、スカウト送信までの工数が多いこと、成果を挙げるにはノウハウが必要であるため、自社社員だけで行うことが難しい企業もあり、スカウト代行サービスへのニーズが高まっています。
スカウト代行の種類
スカウト代行サービスには複数の種類があります。また、企業によっては「新卒採用」「中途採用」や、「ITエンジニア」「マーケター」「クリエイティブ職」「管理部門職」といった職種、「CxO」と呼ばれる経営層など、特定のターゲットや領域を強みとするケースもあります。
スカウト代行特化型
採用関連業務のうち、スカウト代行のみを行います。採用代行(RPO)サービスと比較すると、スカウトに関する専門ノウハウが豊富であり、スカウト業務だけに限られるためリーズナブルに利用できます。
なかには、スカウト型の採用プロセスのなかで、「スカウトメール送信」のみを代行するサービスもあります。
採用アウトソーシング型
採用代行(RPO)として採用業務を全般的に対応しますが、サービスの一環としてスカウト関連業務も代行します。採用目標に応じて、求人媒体や転職エージェントなどの手法と組み合わせてスカウトサービスを活用します。採用職種・ポジションなどによって手法を使い分け、採用目標の達成を支援します。
フリーランス依頼型
個人で活動している、フリーランスの採用のプロフェッショナル人材に、スカウト関連業務を委託するスタイルです。比較的低価格で依頼することができ、柔軟に対応してもらいやすいのがフリーランス依頼型の特徴です。
スカウト代行のメリット
スカウト代行サービスを活用するメリットとして、以下のポイントが挙げられます。
採用工数を減らすことができる
スカウト型の採用活動には多数の工程があります。「採用戦略策定」「求める人材像の設定」「スカウト媒体の選定」「候補者の選定」「スカウトメール作成・送信」「候補者からの返信への対応」「面談・面接の日程調整」「面接・面談の実施」「採否判断」「効果測定・報告」などが挙げられます。これらの業務をすべて自社の採用担当者で行うとなると負担が大きいため、全般あるいは一部を代行してもらうことで、自社内での採用工数削減が可能となります。外部に代行を依頼することで、自社社員が戦略立案などのコア業務に集中しやすくなるでしょう。
スカウトに関するノウハウを得られる
スカウト業務の専門知識・ノウハウを持つスカウト代行企業のサービスを利用することにより、その知識・ノウハウを学んで自社に取り入れることができます。ノウハウと経験が蓄積すれば、自社独自でスカウト型採用を運用していくことも可能になるでしょう。
スカウト代行のデメリット
スカウト代行サービスの利用にはデメリットもあります。利用を検討する際には、下記のポイントを意識しておきましょう。
コストがかかる
スカウトを含む採用代行サービスを利用すればその分コストがかかります。採用目標と照らし合わせ、適切な費用対効果が望めるかどうかを検討する必要があります。
開始まで時間がかかることがある
スカウト代行サービスの利用を開始する際には、自社の採用課題や募集ポジションなどの説明から始める必要があります。また、採用目標の共有、費用の見積もり、スケジュール調整などで、想定以上の時間がかかる可能性があるため、採用を急いでいる場合には注意が必要です。
役割分担が難しい
先にも触れたとおり、スカウト型採用活動には多くの工程があります。どの業務を自社で行い、どの業務をスカウト代行企業に任せるのか、業務の切り分けや役割分担に悩むこともあります。代行企業に任せようと思っていた役割が思うように任せられず、想定より自社内で工数がかかってしまうケースもあるようです。
自社に知見が蓄積しない
採用代行企業が持つ専門知見・ノウハウを自社に取り入れられるメリットがありますが、代行サービスに任せきりにしてしまうと、自社内に知見が蓄積されません。サービスの契約終了後に自社での運用を検討している場合は、主体性を持ってスカウト業務に関わり、ノウハウを獲得していく姿勢が必要です。
スカウト代行に依頼できる業務
スカウト代行サービスに依頼できる業務をご紹介します。もちろん、企業によって手がける業務内容・範囲は異なるため、自社がどの業務のサポートを必要としているのかを判断し、そのサービスを提供している企業を選ぶといいでしょう。
採用戦略の策定
現状の採用課題の分析、求める人材像の設定、ターゲット人材に対する自社の訴求ポイントの整理・言語化など、採用戦略の策定のサポートを受けられます。
スカウト媒体の選定
多様なスカウトサービスのなかから、自社の採用ターゲットにマッチした媒体を提案してもらうことができます。ただし、サービス運営企業が提供するスカウト代行を利用する場合は、その企業の媒体に限られるため、データベースに登録している人材が自社のターゲットと一致しているかどうかを確認しましょう。
候補者の抽出
スカウトサービスに登録している人材のデータベースから、自社が求める条件に合う候補者を抽出します。専門性が高い人材を求めている場合は、スカウト代行のプロの抽出力に任せることにより、よりスピーディに求める人材を選び出すことが可能になるでしょう。
スカウトメール文面の作成
代行企業には、送信するスカウトメールの文面の作成も依頼できます。スカウトメールの開封率を高めるためにどのような件名が効果的か、自社の求人に興味を持ってもらうためにどのような情報を提供すればよいかなど、専門ノウハウを活かしたメール作成が可能です。
スカウトメールの送信
スカウトメールは送信タイミングによって開封率が変わる傾向があるため、業種・職種などに応じて適切なタイミングを見計らって送信することが重要です。
なお、一般的なスカウトメール送信には、要件にマッチする人材に同じ文章のスカウトメールを一括で送信する「一斉送信」と、候補者一人ひとりに合わせて内容の異なるスカウトメールを送る「個別送信」があります。スカウト代行サービスの場合は「個別送信」が多く、ターゲットが興味を持ち魅力を感じるメッセージを工夫しています。
候補者からの返信への対応
スカウトメールを送信した求職者から返信が届いた場合、早急に次の対応が必要です。企業への興味や応募意欲が高まっていれば、なるべく早いタイミングで面談や選考の案内を行うことで、応募につながりやすくなります。スカウト代行サービスに任せることで、返信しそびれたり返信までにタイムラグが生じたりすることを防げる可能性があります。
面接・面談の日程調整
スカウトメールに返信があり、応募に至った場合の面接、あるいは応募を決意する前のカジュアル面談などを実施する場合、面接日程の調整を依頼することも可能です。代行サービスによっては、面接前日のリマインドメール送信、面接終了後の内定通知なども行います。
効果測定・振り返り
スカウトメールの開封率・返信率・面談設定率・応募率などのデータに基づき、効果を検証します。こうしたレポートは、社内報告でも活用できます。データから課題を分析し、求める人材要件の見直しやメール文章の修正など、改善の提案を受けるケースもあります。
サービス選定のポイント
スカウト代行サービスにはそれぞれ特徴があるため、自社に合うサービスを選ぶことが大切です。以下のポイントに注目して判断してください。
ターゲット領域への知識があるか
業種・職種をはじめ、「新卒」「中途」「リーダー・マネジャー層」「経営層」など、自社が採用ターゲットとしている人材へのスカウトに関し、豊富な知識やノウハウ、実績を持っているかどうかを確認しましょう。ホームページに事例が記載されていることもあります。
スカウトサービスを熟知しているか
特定のスカウトサービスだけを使用している代行企業の場合、他のサービスに関する知識が少なく、期待した成果が出ない可能性があります。また、人材サービス企業が事業の一環としてスカウト代行を手がけている場合、スカウトサービスの機能や特性についての理解が浅く、十分に活用できないことも考えられます。希望するスカウトサービスにどの程度精通しているかをチェックするといいでしょう。
強みが自社ニーズにマッチしているか
前述のとおり、スカウト型の採用活動には多くの工程があります。「戦略策定もサポートしてくれる」「マッチする候補者を見つけ出してくれる」「候補者一人ひとりに応じたスカウトメールを作成してくれる」など、自社の採用部門のリソースや課題に応じ、自社が必要とするサポートを得意としているかに注目しましょう。
金額や料金体系が自社の採用計画にかなっているか
採用するポジションによっては、求人広告や転職エージェントを利用した方が1人あたりの採用コストを抑えられる可能性もあります。採用計画に対するコストパフォーマンスも意識してください。
「月額固定制」「従量課金制」など料金体系も多様であるため、自社の採用予算に応じて無理なく運用できるサービスを選ぶといいでしょう。
リクルートダイレクトスカウトならスカウト送信代行も相談可能
リクルートダイレクトスカウトの場合、初期費用が無料で導入時の費用がかからない上に、スカウトの送信代行も相談可能です。導入コストや工数を最小限にしたい場合は、リクルートダイレクトスカウトをご検討ください。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。