中途採用 時期

中途採用は人材が必要となったタイミングで実施するのが一般的ですが、ほかにも「組織の年齢構成のバランスを整える」「ダイバーシティを実践する」など、中長期視点で中途採用を計画することもありますが、「採用活動に適した時期」はあるのでしょうか。年間の中途採用の動きと時期ごとの採用活動のポイント、中途採用のスケジュールなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

年間の中途採用動向

厚生労働省が公表している「有効求人数・有効求職者数」(2023年)を見ると、求人数・求職者の数は季節や月によってそれほど大きく変動するわけではありません。しかしながら、求人数・求職者数ともに、11月~12月にやや減少し、1月から3月に向けて増加している傾向が分かります。

有効求人数・有効求職者数(パート除く)2023年

出典:厚生労働省ホームページ「一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001199181.pdf

求職者が転職を考えたり転職活動を開始したりする「理由」については、時期によって特徴が見られます。個々によって転職する理由はさまざまですし、常に環境は変化しますが、一般的な転職のマーケットの時期による大まかな傾向をご紹介します。

1~3月

1~3月は、年間を通じて最も求人数の増加する時期です。
求職者側も、1月から増加する傾向にあります。この時期に転職活動をする人が増えるのは、賞与や年末年始の長期休暇、年度末に向けた区切りの良さが挙げられます。

賞与については、例えば12月の冬季賞与支給を受け、自身の評価に不満を抱いたり、会社の業績への不安が生じたりする、冬季賞与支給後であり、退職によって一時的に収入が途切れても経済的にゆとりがあるなどの理由が考えられます。また、年末に年末調整が実施され、転職に影響する事務手続きが終わっていたり、年末年始に親族や友人とゆっくり話す機会があり、転職を検討し始めたりするという理由もあるでしょう。年度末を見据えて、現職に区切りを付けて新たな環境でスタートとしたいと考える人もいるかもしれません。

一方、企業側も新年度スタートに向けて組織体制を整えるほか、年度内に退職者が増加するため、欠員補充のために積極採用を始めます。

4~6月 

冒頭でご紹介した厚生労働省のデータによると、求職者は4月~5月頃をピークとして、その後減少に向かっています。転職の意向は継続しているものの、年度始めの4月は組織体制の変更や異動などで慌ただしく、転職活動の動きが鈍る傾向も見られます。また、4月から新たな部門に異動したり新たな職務に就いたりした人が自身の希望とのギャップを感じ、転職を検討し始めるのもこの時期の特徴といえます。

企業の人事担当者は、4月は新入社員の受け入れなどで採用活動に手が回らないこともあるでしょう。新年度がスタートしたばかりで、人員に関する課題がまだ明確化していないことから、採用活動も保留となるケースが多く見られます。

7~9月

求職者側は、6月の夏季賞与支給後に転職活動を本格的に開始する人が見られます。また、9月~10月は上期・下期の節目であり、このタイミングに現職での区切りをつけて転職したいと考える人もいます。

企業側は上期の業績を踏まえて組織体制の見直しを行い、下期の体制整備のため採用活動に動く時期です。年間で採用計画を立てている企業は、この時期に上半期の採用活動の振り返りを行い、下期に向けて採用活動をリスタートするケースもあります。

10~12月

求職者側は、10月は人事異動の時期のためか、やや増加する傾向にあります。

企業側としても、7~9月は下期に向けて採用活動を始める企業が増えるため、冒頭の厚生労働省のデータでも10月から求人数が増加していることが分かります。ただし12月になると繁忙期に入る業界も多く、採用活動・転職活動が進まないためかデータでも求人数・求職者数ともに減少しています。

中途採用に適した時期とは? 

中途採用に適した時期は、業界や企業によって異なります。景気や社会情勢などにも左右されます。そのため「この時期に採用活動をすると良い」とは一概には言えません。常に変わっていく求人市場動向を観察し、自社にとってのベストタイミングを見極めることが大切です。

とはいえ、一般的には「求人数が少なく、求職者数が多い時期」を狙うと、比較的採用がしやすいと考えられます。採用を行っている企業が少なく、転職活動をしている人が多ければ、自社に応募してもらえる確率が高まり、母集団形成が比較的スムーズに運ぶことが期待できます。

求職者が活発化していない時期の採用活動のポイント

4~5月/8~9月/12月など、求職者の動きが比較的落ち着いている時期であっても、転職に備えて情報収集を続けている人はいるでしょう。特にゴールデンウィーク、夏季休暇、年末年始休暇などの期間中は、応募には至らなくても、時間にゆとりがあるため転職情報の収集をしていると考えられます。こうした時期に情報発信を継続することで、より多くの求職者の目に留まりやすくなり、どこかのタイミングで応募につながる可能性があります。また、応募者が少ない時期は、その分、一人ひとりに対して丁寧な情報提供やフォローを行うことにより、入社に至る可能性が高まるでしょう。

なお、スカウトサービスの場合は、長期休暇前に送信することで、休暇中にしっかりと読んでもらえたり自社を調べて理解を深めてもらえたりすることも期待できます。

求職者が活発化している時期の採用活動のポイント

1~2月/6~7月/10~11月など、求職者の動きが活発な時期の採用活動は「スピード」が重要です。年末・年度末・上期末など、節目のタイミングでの転職を考えている求職者の場合は、転職活動を長引かせたくない気持ちがあります。また、複数の企業に応募し、同時期に選考が進んでいる場合、「早期に内定を得た企業に入社を決め、他の応募企業の選考を辞退する」という傾向があるため、選考後はスピーディに採否を判断して伝えた方がよいでしょう。

求職者の多くは複数企業を比較検討しています。自社に魅力を感じて選んでもらうために、多様な角度からの情報提供が必要です。選考中に迷いや不安を抱いている様子が見えたら、面接とは別に「面談」をセッティングし、不安解消や入社意欲の向上を図るのも有効です。

中途採用の基本的なスケジュール

自社にとっての適切な時期に採用活動を進めるためには、基本的な採用スケジュールを把握しておくことが重要です。下記の工程を経ることを前提として、いつから動き始める必要があるかを判断し、スケジュールを組み立てましょう。

採用計画

経営戦略・事業戦略を踏まえ、採用が必要な職種・ポジション・人数・ターゲット像を明確化します。どのタイミングまでに入社してもらう必要があるのか、目標時期を設定し、スケジュールを立てましょう。また、求める人材にアプローチするために、どのような採用手法・採用媒体が適切なのかも検討します。検討した手法や媒体を使用するにあたって必要な予算を算出し、確保しておきます。

並行して、「選考方法」「面接回数」「面接担当者」なども決めておきましょう。入社してほしい期日から逆算して募集を開始するタイミング、面接を実施する期間などを検討します。

事前準備

採用活動を円滑に進めるためには、配属部門との連携が欠かせません。配属部門の責任者と協議し、採用ターゲット像・募集手段・選考スケジュールなどを確認しておきます。「繁忙期や長期出張と重なり、面接日程を確保できない」といった事態に陥らないよう、調整を図りましょう。

なお、求人情報で発信している内容と面接担当者が話す内容が異なったり、面接担当者が主観で評価したりすることのないように、方針や情報を共有し、目線合わせをしておくことも大切です。必要に応じて面接担当者のトレーニングも行っておくとよいでしょう。

母集団形成

準備が整ったら、計画段階で選択した手段で募集を開始します。
役割分担を決め、進捗管理と数値管理を行うことが重要です。

  • 採用ページを公開する
  • SNSなどで求人情報を発信する
  • 求人メディアに広告を出稿する
  • 転職エージェントに求める人材要件を伝え、紹介を依頼する
  • スカウトサービスを使って求職者にスカウトメールを送付する
  • 採用説明会を開催する
  • 転職フェアなどのイベントに出展する

選考活動

いよいよ選考活動です。書類選考からスタートし、通過した応募者と面接の日程を組みます。方針や採用ターゲットによってはWebテストや筆記試験、適性検査なども実施します。面接においては、応募者の経歴に応じ、適切な面接担当者を選定することが重要です。

面接後、採否が決定したら、なるべく早く選考結果を通知しましょう。内定を出すタイミングで、条件面の提示・すり合わせも行います。

内定者フォロー

求職者は複数企業に応募していることも多いため、内定を出しても辞退される可能性があります。面談を実施する、一緒に働くメンバーとの懇親会を設けるなど、不安点を払しょくできるようにフォローしましょう。

自社の採用戦略に合わせて逆算しよう

中途採用市場の動向を踏まえて採用戦略を立てるのも一つのやり方ですが、自社の経営戦略・事業戦略をベースとして採用戦略や採用活動計画に落とし込んでいくのが基本です。求める人材像や採用難易度などに応じて、母集団形成や面接に要する期間、退職交渉・引き継ぎに要する期間などを想定し、入社してほしい時期から逆算して採用活動を開始することが大切です。また、内定を出して終わりではなく、戦力になってもらうまでの期間も考え、オンボーディングや研修などの体制も整えましょう。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。