中途採用 給料

中途採用を行う場合、給料の決め方は重要な要素のひとつです。場合によっては、給料を理由に内定辞退されてしまったり、トラブルを招いたりする可能性もあります。給料については社内でルールを策定するなど、十分な検討が必要です。この記事では、給料決定の方法やフロー、注意すべき点などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

中途採用者の給料の基本的な考え方

まずは、同じように使われることの多い「給料」と「給与」の違いについて触れておきましょう。

一般的に、「給料」は基本給を差し、「給与」は基本給に残業代や各種手当を加えたものとされています。

実際、国税庁では、給与について「給与所得とは、使用人や役員に支払う俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有する給与に係る所得」と定義しています。

(出典)国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2508.htm)

中途採用を行う際には、自社の賃金テーブルを考慮しつつ、中途採用者の前職での実績などを加味して基本給である「給料」を決定します。中途採用者が得られるあらゆる賃金のベースとなるものであり、公正な判断のもとに決定する必要があります。

中途採用者の給料を決める際の「4つの視点」

中途採用者の給料を決定する際には、次の4つの視点で考えるのが一般的です。

(1)自社の賃金テーブルに基づいて決める
(2)前職の給料や希望給料から検討する
(3)競合他社の給与水準と比較する
(4)応募者の業績や成果、実績をもとにする

考え方のベースとなるのは、(1)の「自社の賃金テーブル」です。給料を設定する際の基準となる表のことで、新人の現場社員から幹部クラスまで等級別に振り分け、その等級を基準にして給料を決める仕組みです。まずは中途採用者の等級をこの賃金テーブルに当てはめたうえで、(2)の前職での給料実績や本人の希望給料を考慮し、プラスアルファが可能かどうか検討します。ハイクラス人材になるほど、競合他社から好条件のオファーを出されている可能性もあるため、(3)の競合他社の給与水準も確認しておく必要があるでしょう。乖離がある場合は、選考途中の辞退につながる可能性もあります。
そして最終的に、選考過程で確認した(4)応募者の業績や成果、実績をもとに、給料額の調整を行います。

給料決定までStep紹介

応募者に提示する給料額を決定し、本人に提示するまでのステップは、大きくわけて次の5つです。

Step1:求人票や求人広告に載せる給料額、雇用条件を確認する

募集要項欄に記載する賃金を決定します。基本給(給料)や手当などを加えた給与、月給、年収、年俸など、記載方法も決めておきます。

Step2:採用選考を行い、応募者のスキルを見極める

書類選考、筆記テスト、適性検査、面接など、採用選考の各段階でスキルを見極めることで、給料決定の判断材料にします。

Step3:選考過程で応募者の希望を確認する

選考フローの中で、応募者の具体的な希望年収額を確認します。応募時や一次面接の段階で確認する企業もあります。

Step4:条件面談を設け、希望をすり合わせる

必要があれば、内定前に条件面談の場を設けて、できるだけ自社と応募者双方が納得できる額をすり合わせます。例えば希望額が前職の給料を上回る場合は、その理由を確認したうえで最終判断します。こちらから額を提示する場合は、決定額の根拠を示すことが大切です。

Step5:決まった額をもとに、労働条件通知書を発行する

社内協議や応募者とのすり合わせを経て決まった金額を社内稟議に通し、労働条件を記載した「労働条件通知書」を発行します。応募者に採用を内定した旨を通知する「内定通知書」とともに送られるケースが多いようです。

中途採用者の給料を決める前に確認すべきポイント

上記のステップに則って中途採用者の給料を決める際には、いくつか確認しておいたほうがいいポイントがあります。

オファー金額を決める際のフローやルールを決めておく

前述のような「給料決定のステップ」をあらかじめ決めておき、ある程度のフローやルールを決めておくことは大切です。例えば、応募者から給料の上乗せ交渉をされた場合、どうしても採用したい人材に内定辞退されそうな場合など、イレギュラーなシーンも想定して、動き方を決めておくといいでしょう。例えば、誰がどのタイミングで最終決定を下すのか、オファー金額を上げるときはどこまでを上限とするか、給料以外の手当などのオプションはどうするのか、などです。

事前にフローやルールを決めておかないと、イレギュラーなことが起こったときに場当たり的な対応になってしまい、「同じタイミングかつ同じ職級での採用なのに、AさんとBさんでは給料額が異なる」などの事態が生じる可能性があります。また、社内で相談したり議論したりしている間に、内定辞退され競合他社に入社を決めてしまった、というケースも少なくないので注意しましょう。

応募者の希望金額とその根拠、他社選考状況などを把握する

応募者の希望額を確認するのは大切ですが、その額の根拠も併せて確認しましょう。人によっては特に根拠がなく高めの希望額を設定しているケースもあります。前職の給料額と希望額に乖離がある場合は特に、なぜその額なのかもヒアリングしましょう。
なお、根拠を示す際に前職での実績や成果を挙げる人が多いと思われますが、選考過程で判断し切れない場合は、直近3カ月分程度の給与明細や、源泉徴収票を提示してもらうという方法があります。応募者のスキルレベルとずれた額を提示しないためにも、不安点がある場合は書面で確認しましょう。

一般的な賃金相場を把握する

実際は自社の賃金テーブルと本人の前職給料と希望額、競合他社のオファー金額などを考慮するケースが多いですが、一般的な給与相場を把握しておくのも重要。迷ったときの参考になるでしょう。
転職エージェントや求人情報サイトが情報を提示しているケースがあるほか、厚生労働省の「中途採用者採用時賃金情報」も判断材料になります。

なお、当然のことではありますが、国が定めた「最低賃金」を割り込んだオファー金額は法令違反に当たります。最低賃金法に基づき罰金に処されることを、念のため覚えておきましょう。

※参考:厚生労働省「中途採用者採用時賃金情報」(令和4年10月~令和5年3月)
厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧 令和5年度地域別最低賃金改定状況」

応募者への説明方法を決めておく

オファー金額を提示する際には、伝え方や説明する担当者もあらかじめ決めておきましょう。特に、応募者の希望額に比べて低い額を提示する場合などは、根拠を持って説明することが重要。例えば、「実績を考慮したうえで賃金テーブルに上乗せしたものの希望額には至らなかった、入社後の活躍次第で成果給を予定している」など、応募者が納得のいく説明を行いましょう。
そして、相手に与える印象は大きく変わるので「誰が伝えるか」も大切。人事採用担当者ではなく、採用予定部署の責任者や役員など、給与決定権のある人に任せるなどの方法が考えられます。

中途採用者の給料を決定する際の注意点

中途採用者の給料を決める際には、いくつかの注意点があります。多くの企業が見落としがちなポイントでもあるので、事前にチェックしておきましょう。

内定オファー後に減額はできない

応募者が内定を受諾した後に、自社が求めるスキルレベルに達していないことが判明するケースもあるかもしれません。だからといって、提示額から一方的に減額することはできません。内定を伝えた時点で労働契約が成立していると捉えるのが一般的であり、その後に一方的に提示額を変更するのは労働契約法に触れる恐れがあります。
不要なトラブルを生まないためにも、選考過程で十分にスキルの確認を行うことが重要です。

公平性を保たないと、既存社員の不満が生じる恐れがある

中途採用者の給料額を決める際には、公平性を確保しないと、既存社員の士気を下げてしまう恐れがあります。「いま人材が不足しているから」「どうしても欲しいスキルがあるから」などの理由で、安易に金額を上乗せすると、例えば「自分よりも経験が浅い中途採用者のほうが高い給料をもらっている」など既存社員の中で不満が生まれ、強い反発を招きかねません。
どうしても採用したい人材であっても、公平かつ透明性をもった額の設定を徹底しましょう。場合によっては入社祝金や入社支度金など、一時金で対応する方法も考えられます。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。