中途採用 定着しない

ようやく採用した中途採用の社員が、もし早々に離職してしまうと、また一から採用をやり直さなければなりません。早期離職を防ぐためにはどうしたらいいのでしょうか。中途採用の社員が離職してしまう理由、早期離職が企業に与えるデメリット、離職率を改善する方法について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

中途採用の社員が定着しない代表的な5つの理由

まずは中途採用の社員が早期に離職してしまう理由について、よく見られるケースを5つご紹介します。

1)雇用条件面のミスマッチ

よくあるのは、入社前に提示された雇用条件と現実にギャップがあったり、いったんは雇用条件に納得して入社したものの、入社後に不満が生じたりするケースです。

内定時に提示する条件には、「給与」「役職・ポジション」「働き方(リモートワークの可否など)」「休日休暇」「福利厚生」など、さまざまな項目がありますが、働き出した後に、例えば、「想定より残業が多い」「リモートワークを活用したかったが出社を強要される」など、本人が重視する条件が実態と異なっていると判断されると、離職につながりやすくなります。

2)社風や人間関係のギャップ

経験・スキルが活かせると判断して入社したものの、実際に働いてみると「社風」になじめず、居心地の悪さを感じてしまうこともあります。また、人間関係がうまくいかず、ぎくしゃくしてしまうこともあります。ひとくちに「人間関係が良くない」といっても、「性格タイプが合わない」「価値観や考え方が合わない」「コミュニケーションスタイルが合わない」など、さまざまなケースが考えられます。

3)仕事内容・業務量が不適切

入社前に想定していた仕事内容と、入社後に任された仕事内容が異なるケースがあります。「自身が得意とするスキルが活かせない」「望んでいた経験ができず、描いていたキャリアプランからかけ離れてしまう」などと判断した場合、早期離職につながりやすくなるでしょう。

また、仕事内容に不満はなくても、業務量が多すぎて想定以上の残業を強いられると、心身に負荷がかかるため、続けていくのが難しいと判断されることもあります。

4)経営方針へのギャップ

選考段階ではお互いに「目先のミッション・業務に対する即戦力性」ばかりに注目していて、中長期的な経営ビジョンに言及しないこともあります。その場合、入社後にギャップを感じてしまうことがあります。

あるいは、スタートアップやベンチャー企業などの場合、短期間で戦略を転換するケースも考えられます。入社時にはマッチすると判断した方向性やビジョンが、違う方向へ大きく変わることで離職につながりやすくなります。

5)フォロー不足

中途入社者は新卒入社者と異なり、「即戦力」を期待されることが多いため「手厚くフォローする必要はない」と考える企業もあります。しかし、フォローが十分になされていないと、新たな環境や仕事のやり方になじめず、成果を挙げられず、いたたまれなくなって離職に至るケースも見られます。

特に経験やスキル、実績を評価されたり、高年収・高待遇を条件に入社したりした場合、なかなか成果につながらないとプレッシャーを強く感じてしまいます。

中途採用の社員の早期離職が企業に与えるデメリット

中途採用の社員が早期に離職することは、企業にとっては次のようなデメリットがあります。

現場の負担が増加する

離職者の担当業務を残っている現場メンバーが引き継ぐことになるため、業務の負荷が増し、それによってさらなる離職を招いてしまう可能性があります。採用し直したとしても、再度、自社のやり方や慣習などを一から教える手間と時間を要してしまいます。

採用コストがかかる

採用をやり直す必要があるため、採用活動のコストが発生します。採用だけでなく、教育・研修のコストもかさむことになります。

組織や事業にも影響を及ぼす

離職した中途入社者が組織運営や事業運営のコア部分を担うポジションに就いていた場合、組織が円滑に機能しなくなり、事業そのものの推進が停滞してしまう可能性があります。それにより、組織全体のモチベーション低下につながるかもしれません。

中途採用の社員の離職率を改善する方法

中途採用の社員の離職を防ぐための施策の一例をご紹介します。自社の課題と照らし合わせ、試してみましょう。

選考方法やプロセスの見直し

入社後にミスマッチに気付いて離職につながってしまうのは、選考段階に問題がある可能性も高いといえます。以下の観点を意識して、選考の方法やプロセスの見直しを行いましょう。

  • 採用ポジションで活躍できる人とは、どのような経験・スキル・志向を持つ人なのか、「人材要件」を明確化する
  • 人材要件の明確化では、「スキルフィット」だけでなく「カルチャーフィット」の観点も意識する
  • 人材要件を明確化し判断基準を決めたら、1次面接~最終面接の各面接担当者全員に共有し、評価がぶれないようにしておく
  • 特に専門性が高い職種の場合、応募者の経験・スキルのレベルを適正に評価できる人を面接担当者として選定する
  • 応募者が、人事担当者・部門長・役員クラスだけでなく、現場のメンバーとも対話する機会を設け、現場で働くイメージをつかめるようにする

採用にRJPを導入する

選考段階で、企業が応募者に提供する情報が不足していたり偏っていたりした場合、応募者が企業理解を十分に深められず、入社後にミスマッチに気付くケースがよく見られます。

それを防ぐため、「RJP」を導入するのも有効です。RJPとは「Realistic Job Preview」の略であり、直訳は「現実的な仕事情報の事前開示」です。求職者に対し、自社に関するポジティブな情報だけでなく、あえてネガティブな情報も開示し、理解したうえで応募した人を選考・採用するという考え方です。応募者は「十分に情報を得て入社を決断した」という納得感を持てることから、入社後に不満を抱きにくくなります。

面談を設けてギャップを解消する

疑問や不安を抱いている応募者に対しては、「選考」を目的とする面接とは切り離した形で、「面談」の場を設けるのも有効です。

採用ポジションや疑問・不安の内容に応じ、「入社後に一緒に働くメンバー」「バックグラウンドが似ている中途入社者(同じ業界の出身者/育児をしながら働く従業員など)」「経営トップ層」など、適切な面談相手を設定することが大切です。

入社後フォローを徹底する

入社直後から適切なフォローができるよう、「オンボーディング」の体制やプログラムを整備しましょう。「オンボーディング」とは、航空機や船に乗り込むことを意味する「on board(オンボード)」から生まれた人事用語で、入社者が早く仕事や職場になじんで活躍できるように支援することです。
「オリエンテーション」「研修」「コミュニケーション促進」「定期面談」「メンター制度」など、さまざまな手法があります。

近年は「メンター制度」を導入する企業も多く見られます。「メンター」とは「指導者」「助言者」の意。同じ部署の先輩や上司などではなく、他部署の社員が「メンター」として、悩んだときなどの相談に乗る仕組みです。直属の上司には言いづらいことも話せるため、不安・ストレスの解消、モチベーションアップの効果が期待できます。

なお、「入社後すぐに成果を求めない」ことも重要です。過度の期待により、入社者がプレッシャーや焦りを抱き、本来の力を発揮しづらいこともあります。ある程度中長期の視点を持ち、入社から数カ月~半年程度は人事担当者や上司が定期的に面談を行って困りごとや悩みを聞き、課題の解決を図るといいでしょう。

中途採用の社員の離職率の改善は現場を巻き込んで実施しよう

中途採用の社員の離職率の改善は、人事担当者だけで成し得るものではありません。配属予定部門との連携が必要です。採用の目的や方針について現場としっかり目線を合わせ、採用計画から一緒に進めていくことが大切です。

そして、当然ながら入社後のフォローは配属先のメンバーの協力が欠かせません。採用した人をどのように育成していくか、働きやすい環境を整えるか、現場と話し合いながら進めていきましょう。人事と現場が一丸となって採用に取り組んでこそ、中途採用の社員の活躍につながります。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。