中途採用 ミスマッチ

中途採用において、入社後にミスマッチが発生し、早期離職につながってしまうことがあります。ミスマッチが起きる原因は、選考段階や入社後など、さまざまなフェーズにあります。ミスマッチの原因と防ぎ方、ミスマッチの解消法について組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

中途採用における「ミスマッチ」とは?

中途採用活動における「ミスマッチ」とは、採用企業と入社者のニーズが合致しない状況を指します。
企業側としては、「即戦力」を求めるケースが多いため、短期間での成果が見えないと、「入社したら活躍してもらえると思ったが、期待と異なっていた」と捉えることがあります。一方、中途入社者側では「仕事内容が想像と異なっていた」「社風になじめない」といった違和感を覚えてしまうこともあるでしょう。こういった状態に陥ることも、「中途採用におけるミスマッチ」の一例です。

中途採用でのミスマッチが起こる原因

中途採用でのミスマッチが起こるのはなぜでしょうか。代表的な3つのケースをご紹介します。

選考段階での情報提供不足

選考の段階で、企業側から「任せたい仕事内容や役割」「仕事の進め方」「期待する成果」「風土・カルチャー」といった情報を十分に提供していない場合、応募者は正しく理解しないまま入社に至り、後になってミスマッチに気づくことになります。

人材要件の確認不足

採用するポジションの業務遂行にはどのような経験・スキルが必要なのか、詳細まで明確化しないまま選考を行うと、入社後に業務を行う段階になってミスマッチが生じます。

また、豊富な経験や実績を持っていても、前職とはリソースや環境などの条件が異なるものです。「自社のリソースや環境で再現できるのか」という観点が抜け落ちていると、「期待したほど活躍してもらえない」という事態に陥ることが多くなります。入社者側も成果を挙げられなければプレッシャーを感じ、早期離職につながってしまいます。

企業側の選考に課題がある

採用する職種やポジションに合った選考手法を用いていないことで、正しく評価できないこともあります。例えば、ITエンジニアであればコーディングテスト(コードを書く問題に回答してもらう試験)を行う、事業企画職であれば事前に課題を出して解決策をプレゼンしてもらう、未経験者を対象としたポテンシャル採用であれば適性検査を行う……といった選考手法が考えられますが、そうした手段を活用できていないケースです。

また、「評価基準」を設けておらず、1次面接~最終面接のそれぞれの面接担当者の評価の視点がバラバラで、主観によって評価していることもあります。あるいは、面接を行う人が一部に限定され、複数の人の視点で選考を行っていないため、適正な評価ができていないケースもあります。

スキルのみを重視して人物タイプ面のマッチングを軽視している、あるいはその逆という偏った選考も、入社後のミスマッチにつながる原因の一つです。

中途採用でのミスマッチを解消する方法

中途採用でのミスマッチを解消する方法として、以下が挙げられます。

人材要件を現場とすり合わせる

採用ポジションで期待するパフォーマンスを出せる人とは、どのような経験・スキルを持っている人なのか、配属先の責任者と十分にすり合わせを行い、人材要件を定義しておきましょう。このとき、経験・スキルの観点だけでなく、「自社のカルチャーにフィットするか」という観点も合わせて検討することが大切です。

実際の選考においては、面接担当者には応募者の経験・スキルを正しく評価できる人を選定することが大切です。

網羅的に情報を提供する

応募者が自社を十分に理解しないまま入社に至ることのないよう、「仕事内容・役割」「仕事の進め方」「風土・カルチャー」など、さまざまな角度からの情報提供を行うことが有効でしょう。採用ピッチ資料や動画作成、メリットだけでなくデメリットも包み隠さず伝えるなど、自社の情報を網羅的に伝えるようにしましょう。

職場見学など確認の機会を増やす

職場を見学してもらったり、現場で一緒に働くメンバーと対話したりする機会を設けるのも有効な手段の一つと言えます。疑問や不安を感じるポイントを確認でき、働くイメージが明確になれば、入社後の「想像と違った」を防ぐことにつながります。

新しい採用プロセスを導入する

これまでの採用とは異なる手段、プロセスを導入する方法もあります。以下は一例です。

リファラル採用

リファラル採用とは、自社社員が友人・知人を人事に紹介し、選考する採用手法です。社員が自社のカルチャーに合うと判断した人に声をかけること、自社のリアルな情報を伝えることから、ミスマッチが起こりにくい手法といえます。

紹介予定派遣の活用

紹介予定派遣とは、人材派遣会社が「派遣期間満了の後、派遣先企業に直接雇用される」ことを前提としてスタッフを派遣するものです。企業と派遣スタッフ双方が、派遣就業期間中に仕事・社風にマッチするかどうかを見極めることができます。

副業者・兼業者の受け入れ

まずは「副業」「兼業」といった雇用形態で受け入れ、仕事をするなかでお互いに対する理解を深め、マッチしていると判断したら社員として迎えるのも一つの手法です。

中途採用でのミスマッチを防ぐためのポイント

中途採用活動を行うにあたって意識しておきたいポイントは、「現場との連携」です。
人材要件の定義を行うにしても面接で評価するにしても、人事担当者と経営陣だけで進めると、現場との乖離が発生してしまいます。

中途採用者の配属部署の責任者と採用の目的や方針、求める人物像について目線を合わせ、一体となって進めていくことが重要です。採用の目的や方針について現場に共有し、採用計画から一緒に進めていきましょう。

これまでの採用事例から、現場でどのような人が活躍し、どのような人が活躍できなかったのかのフィードバックも受け、次回の採用に活かしてください。このサイクルを繰り返すことで、マッチングの精度が高まっていくでしょう。

入社後のミスマッチの原因と解決する方法

選考段階に問題がなくても、入社後にミスマッチが発生するケースもあります。その原因を知り、対策をしておいてください。

入社後にミスマッチが起こる原因

選考段階でミスマッチを防止する対策を講じたとしても、入社後の対応やフォローが不適切であることから、結果的に入社者がミスマッチを感じて離職に至るケースもあります。
例えば「十分な研修が行われない」「職場になじめるようにするためのフォローがない」「入社後に生じた不安や悩みについて相談する機会がない」といった状況に不満を抱き、会社への不信感につながってしまうことが考えられます。

入社後のミスマッチを解決する方法

入社後に抱く違和感や不満に対応できるよう、「オンボーディング」の体制や仕組みを作っておくといいでしょう。「オンボーディング」とは、航空機や船に乗り込むことを意味する「on board(オンボード)」から生まれた人事用語で、入社者が仕事や職場に慣れて早期に活躍できるように支援することを指します。

例えば次のような方法があるので、入社者の状況に合わせて対応するといいでしょう。

  • 職場のルールや慣習に関するオリエンテーション
  • 職場で使用するツールなどの研修
  • 職場のメンバーとの会食やミーティングなど、コミュニケーションの促進や関係構築の支援
  • 人事担当者との定期面談や上司との1on1(入社から数カ月程度は頻度高く実施する)
  • 目標設定・ミッションについて、具体的・丁寧・定期的なすり合わせ
  • メンター制度の活用(他部署の社員がメンターとなり、悩んだときなどの相談に応じる)

入社後のミスマッチを防ぐポイント

経験豊富な人材であっても、環境が変わることで戸惑ったり、スキルを発揮できなかったりすることもあるものです。一定期間は過度なプレッシャーをかけない、悩みや不安などを都度確認する、閉じた関係性ではなく複数の窓口(上司・メンター・中途入社の同期・人事・社内キャリアコンサルタントなど)を設けることで、徐々にパフォーマンスが上がっていく可能性があります。

人によって、「早期にキャッチアップするのが得意」「じっくり考えてから実行するので時間がかかる」など、成長のスタイルは異なります。適性を見極め、ある程度の時間をかけて育成しましょう。

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この記事の監修者

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。