フレックスタイム制とは?仕組みやメリット・デメリット、導入企業の特徴など解説

求人に記載されている「フレックスタイム制」とは、どのような制度なのでしょうか。具体的な仕組みや導入率の高い企業や職種の特徴、メリット・デメリット、フレックスタイム制を導入している企業へ転職する際の注意点などを、株式会社日本総合研究所の吉田賢哉氏、社会保険労務士の岡佳伸氏が解説します。

「フレックスタイム制」とは?

フレックスタイム制とは、一定の期間(精算期間)においてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。従業員は個々の事情に応じてワーク・ライフ・バランスを図りながら、効率的に働くことができます。

「フレックスタイム制」の仕組み

一般的なフレックスタイム制では、「コアタイム」と「フレキシブルタイム」が設定されています。コアタイムは就労義務のある時間帯で、始まりの時間にいなければ遅刻扱いになり、途中で帰ると早退扱いになります。フレキシブルタイムは従業員が自らの選択で出退勤を自由に決められる時間帯で、フレキシブルタイムの途中で中抜けすることも可能です。さらに自由度の高い働き方ができる制度として、コアタイムの設定が無い「スーパーフレックスタイム制」もあります。

通常の労働時間制度(イメージ)

通常の労働時間制度(イメージ)

フレックスタイム制(イメージ)

フレックスタイム制(イメージ)

スーパーフレックスタイム制(イメージ)

スーパーフレックスタイム制(イメージ)

フレックスタイム制での時間外労働

フレックスタイム制は通常の労働時間制度とは異なり、「1日8時間・週40時間」という法定労働時間を超えて労働しても、ただちに時間外労働(残業)とはなりません。精算期間(※1)を終えた時点で法定労働時間の総枠(※2)を超えた時間分が時間外労働となり、時間外手当(残業代)として精算します。なお、時間外労働を行うには36協定(労働基準法36条に基づく労使協定)の締結が必要です。

(※1)最長1ヶ月だった精算期間が、労働基準法改正で2019年4月から最長3ヶ月間まで延長が可能となり、長期スパンでの労働時間の過不足処理ができるようになりました。
(※2)精算期間における法定労働時間の総枠 = 1週間の法定労働時間 × 精算期間の暦日数/7日

フレックスタイム制の活用例

一例にはなりますが、フレックスタイム制を活用した勤務事例を紹介します。

夫婦で勤務時間を調整して保育園の送り迎えを分担

7:008:009:0016:0017:0018:00
出勤勤務時間退勤保育園迎え
保育園送り勤務時間退勤

家族の介護(通院サポート)と仕事の両立

8:0014:0018:0019:00
月曜通院に付き添い勤務時間(14:00〜19:00)
火〜木曜勤務時間退勤
金曜勤務時間退勤/通院に付き添い

自己研鑽のため、勤務時間を調整して大学院へ通学

8:009:0017:0018:00
月・火・木曜勤務時間(9:00〜18:00)
水・金曜勤務時間(8:00〜17:00)大学院へ

スーパーフレックスを活用して実質週休3日制を実現、水曜日に副業又は自己研鑽

8:0019:00
月・火・木・金曜勤務時間として1日10時間労働(休息1時間)
副業を行う、自己研鑽としてスクールへ

「フレックスタイム制」の導入率が高い企業や職種の特徴

厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査(※3)」によると、フレックスタイム制を導入している企業は8.2%(前年調査 6.5%)です。企業規模が「1,000人以上」で31.2%、「企業規模300人〜999人」は17.0%と、企業規模が大きいほど導入率が高い傾向が見られます。業界でいうと「情報通信業」「学術研究、専門・技術サービス業」「金融・保険業」「電気・ガス・熱供給・水道業」、職種では「システムエンジニア」「プログラマー」「デザイナー」「企画職」「事務職」などに適用されるケースが多いようです。共通している特徴は、比較的時間や場所にしばられずに作業ができ、自身のペースで業務を進められるという点です。
出典:(※3) 厚生労働省 「令和4年就労条件総合調査」

「フレックスタイム制」のメリット・デメリット

フレックスタイム制の企業で働く場合、以下のようなメリットとデメリットがそれぞれあります。

メリット

自分の事情に合わせて勤務時間帯を変えられることで、時間の調整がしやすくなる点が最も大きいメリットと言えるでしょう。例えば、通勤ラッシュを回避できたり、子どもの送り迎え(保育園や習い事など)や家族の介護(通院の付き添いなど)がしやすくなったりするでしょう。また、役所や銀行など平日昼間のサービスが利用しやすくなる、趣味や自己研鑽のための時間をつくりやすくなるなどのメリットもあります。

精算期間内であれば、仕事が少ない時期は労働時間を短縮し、仕事が多い時期は労働時間を長く設定できるなど、メリハリのある効率的な働き方を実現もできます。

デメリット

デメリットとしては、コミュニケーション不足に起因する問題が起こりやすくなる点です。勤務時間帯のずれは、メンバーが同時にそろう時間帯が少ないことを意味します。日常的に全員で顔を合わせる機会が減ってしまうと情報伝達にタイムラグや漏れが発生し、業務に支障をきたすこともあるでしょう。外部からの連絡が多い部署においては、時間帯によっては人員が手薄となり、組織としての対応力を問われるような事態に陥る可能性もあります。そのためフレックスタイム制の導入においては、部署の実態を踏まえて適切なコアタイム設定等の配慮が必要となります。

また、個々の時間管理能力に左右される点もデメリットといえるでしょう。フレックスタイム制は、仕事量が多い部署では長時間労働になりやすいリスクがあります。時間管理が苦手な人にはルーズさを助長させてしまい、生産性が低下するリスクがあります。精算期間内で労働時間が足りなければ、賃金カットの扱いを受けることもあります。

「フレックスタイム制」を導入している企業に転職する場合の注意点

求人に「フレックスタイム制あり」と記載があっても、全社員に適用されるとは限りません。外部との関わりが多い部署やお客さまと対面で行う仕事など、業務内容によってはフレックスタイム制の導入が難しいケースがあります。ある部署でフレックスタイム制の適用が確認できた場合でも、他部署とは制度内容が異なっていることもあります。転職活動で求人情報確認するときにはコアタイムの有無など、自分が希望する働き方ができるかどうか、応募時に必ず確認しておきましょう。

「フレックスタイム制」以外の柔軟な働き方

フレックスタイム制の他にも、柔軟な働き方があります。

裁量労働制

「裁量労働制」は、実際の労働時間ではなく、あらかじめ決めた労働時間分を労働したものとみなす制度です。従業員側で労働時間をある程度自由に決められる点はフレックスタイム制と同じですが、時間外労働という概念がないため、原則として時間外労働に対する割増賃金は発生しません。

変形労働時間制

「変形労働時間制」は、繁忙期や閑散期など、業務にかかる時間が月や週ごとにバラつきがある場合に、月単位・年単位で労働時間を調整できる制度です。繁忙期等に労働時間が増加しても時間外労働としての取扱いを不要としますが、法律で規定された労働時間を超えた分は残業代が支払われます。

時短勤務

「時短勤務」は、1日のうちに定められた労働時間よりも短く働く勤務形態のことです。主に育児や介護など、一時的に労働時間を短縮したいケースで利用されます。労働時間を短縮した分、給料を減額されることがあります。

時差出勤

「時差出勤」は、1日の労働時間そのものは変えず、あらかじめ定められた範囲の中で出退勤の時間をずらせる制度です。主に通勤ラッシュの緩和を目的としています。

テレワーク

「テレワーク」はTele(離れて)とWork(仕事)を合わせた造語で、情報通信技術(ICT)を活用してオフィスに出社せずに業務を行う勤務形態です。自宅で仕事をする「自宅利用型テレワーク(在宅勤務)」、本拠地以外の施設で仕事をする「施設利用型テレワーク(サテライトオフィス/コワーキング)」、移動中や出先で仕事をする「モバイルワーク」、バケーションを楽しめる地域で仕事をする「ワーケーション」などがあります。

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株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー 吉田賢哉氏

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了後、日本総合研究所に入社。新規事業やマーケティング、組織活性化など企業の成長や、産業振興・地域振興・地方創生などを幅広く支援。従来の業界の区分が曖昧になり、変化が激しい時代の中で、ビジネスの今と将来を読むために、さまざまな業界のビジネスチャンス・トレンドについて多角的・横断的な分析を実施。

監修

岡 佳伸(おか よしのぶ)氏

大手人材派遣会社にて1万人規模の派遣社員給与計算及び社会保険手続きに携わる。自動車部品メーカーなどで総務人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険適用、給付の窓口業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として複数の顧問先の給与計算及び社会保険手続きの事務を担当。各種実務講演会講師および社会保険・労務関連記事執筆・監修、TV出演、新聞記事取材などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。