社長やCxOに転職は可能?経営層の転職のポイント

今後のキャリアを考えた時に、「経営に携わりたい」、そして「より大きな裁量権を持ちたい」なら、目指すポジションは「CxO」や「社長」です。では、CxOや社長の経験がなくても、これらのポジションに転職するチャンスはあるのでしょうか。組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に解説いただきました。

社長やCxOなど、経営層の採用ニーズ

「社長」「CxO」への転職を目指す場合、どのようなチャンスがあるのでしょうか。昨今よく見られる採用ニーズをご紹介します。

企業ステージの変化に伴うニーズ

スタートアップやベンチャー企業が成長を遂げ、IPO(新規株式公開)への準備にとりかかるフェーズでは、「CFO(最高財務責任者)」をはじめ、組織体制の整備を担うCxOのニーズが発生します。例えば、監査法人でのパートナー経験者をCFOとして採用したり、金融機関での情報システム部長経験者をCISO(Chief Information Security Officer=最高情報セキュリティ責任者)として採用したりする事例があります。

もちろん、IPO準備に伴うニーズだけに限りません。あるスタートアップは、売上拡大を図る際に、従来の直販だけでなくパートナーセールスの強化を目指し、パートナーセールスの分野で実績を持つ方を、CRO(Chief Revenue Officer=最高収益責任者)として採用したという事例もあります。

一方、老舗企業が「事業再生」「第二創業」に向かう際、事業変革を担う経営ボードを採用するケースもあります。ある中小規模の老舗印刷会社では、デジタル化を推進するため、電子書籍ビジネスの経験者をCDO(Chief Digital Officer=最高デジタル責任者)として迎えた事例があります。このように、企業が新たな成長ステージに移行する際、CxOのニーズが生まれやすいといえます。

事業承継に伴うニーズ

事業承継時期を迎えた企業では、新たな経営ボードを採用するケースが多数あります。そのパターンは複数あります。

一つは、社長が引退して子息などに事業承継するにあたり、経営陣も入れ替えるパターンです。次世代社長のパートナーとして、足りていない専門知識・スキルを補えるCxOの採用を行います。

もう一つは、承継者がいない企業を投資ファンドが買収し、ファンドが社長やCFOを採用して投資先企業に送り出すパターンです。

近年、地方企業でも事業承継に伴う経営幹部の採用事例が増えています。地方には経営幹部候補となる人材が少ないため、首都圏で経営やマネジメントの経験を積んだ人材が、地方企業の経営幹部としてIターン転職や単身赴任をするケースが多数見られます。「社長」「CxO」への転職を目指すなら、地方企業にも目を向けてみると、チャンスが広がるでしょう。

「社長未経験」で社長に転職した事例

社長の経験がないにも関わらず、社長に転職することはできるのでしょうか。該当する事例を紹介します。

中小運輸会社・副社長 → 不動産会社・社長

中小規模の運輸会社で副社長を務めたことがあるAさん(40代)は、不動産会社の社長候補として採用され、入社後まもなく社長に就任しました。その不動産会社の前社長もまだ40代でしたが、新規事業への意欲を燃やし、別会社の設立準備を進めていました。「新規事業に集中したいので、既存の不動産事業は他の人に任せたい」と、Aさんを迎えたのです。

大手外資系営業管理職→中堅英会話事業運営会社社長

大手外資系企業で営業の管理職として活躍していたBさん(40代)は、ファンドの推薦を得て中堅の英会話事業の運営会社の社長に就任しました。Bさんが在籍していた外資系企業はBtoCビジネスを展開しており、BtoC向けのマーケティングや営業ノウハウがあり、英会話事業のターゲットと年齢や年収、志向性などに共通点がありました。また、人材を含めた店舗管理や店舗展開にも豊富な経験があったため、「異業界であってもノウハウや経験を活かすことができる」と評価され、経営者としてのキャリアを歩み始めました。

未経験でも、社長・CxOに転職できる可能性はある

上記の事例からも見てとれるように、社長やCxOの経験がなくても、社長・CxOに転職できる可能性があります。大手企業で事業部門責任者などを務めた方が、前職よりも規模の小さい会社にCxOとして転職し、組織整備や仕組み作りのプロジェクトを主導するケースは少なくありません。これまでの特集記事からご紹介します。

ファンドの投資先企業で社長に転職するケース

参考記事:「ファンドの“投資先企業”でCxOや経営企画として働く」キャリアの魅力とは

「対象はプロ経営者に閉じていません。CxO経験のない方でも事業会社の然るべきポジションで経験を積んでこられた方や、投資銀行やプロフェッショナルファームでの経験をお持ちの方などが、実際に投資先企業でCxOとして活躍されています。30~40代でキャリアチェンジする方も増えていますが、経営者としてオールマイティである必要はありません。なぜなら財務や経営などの分野は我々投資ファンドが得意とする領域。いくらでもサポートが可能です。

それよりも、プロフェッショナルとしての知見や、人を動かすマネジメント力は、その道で能力を磨いてきた方こそが有するもの。こうしたスキルを活かして、CxOや経営企画としてキャリアチェンジをしたい、という方にはまさに投資先企業は一つの選択肢になるのではないでしょうか」

ベンチャー・スタートアップでCFOに転職するケース

参考記事:CFOとして転職するには?求められる役割と必要スキル

「我々がご紹介しているのは、基本的にはCFO実績をお持ちの方ですが、未経験でも実力とチャレンジしたい気持ちがあって可能性を感じた場合は、積極的に企業にアピールしたいと考えています。

伸び盛りのベンチャー、スタートアップ企業の場合は、完成された方よりもカルチャーに共感して一緒に成長してくれる方を重視する傾向にあります。もちろん上場を目指すとなれば、会計が分かるCFO経験者で内部監査体制を作って…となりますが、外部の会計専門企業を上手に使うという方法もあるので、会計知識にはこだわらず、論理的思考や分析力、優れた人柄が評価されてスタートアップ企業のCFOに転職した事例もあります。経営の主体者として責任あるポジションを目指したい方は、CFOというキャリアを選択肢のひとつにしてみてはいかがでしょうか」

このように、社長・CxOの経験がなくても、これまでの経験・スキル、そして企業側の考え方によっては、CxOとして迎えられる可能性もあります。転職エージェントからも情報を得ながら、チャンスを探ってみてはいかがでしょうか。

経営層への転職を実現するために

経営層への転職を目指しているのであれば、その実現に近づくための経験を現職で積んでおきましょう。

  • より大きな裁量権を持って組織マネジメントを行う
  • 新しい事業を生み出し、育てる経験を積む
  • 「改善」「変革」のプロジェクトをリードする経験を積む

大手企業では、裁量権を持ったマネジメントポジションに就くのは難しいかもしれませんが、例えば「子会社出向」を申し出るなどすれば、機会を得られるかもしれません。「現職の会社にそんなチャンスはない」と諦めず、チャレンジする道を模索してみてはいかがでしょうか。

新規事業プロジェクトの立ち上げまでは叶わないとしても、現在の業務の課題を探し、改善・変革の取り組みを提案することから始めるという方法もあります。主体的にアクションを起こして成果を挙げることができれば、そのキャリアは将来のポジションアップにつながるでしょう。

また、現職で模索したもののチャンスがない場合は、これらの経験ができる企業に転職し、段階を踏んで経営ポジションに近づいていくというステップもあります。経営層の転職支援に強みを持つ転職エージェントに相談し、この先どのような経験を積んでいくのが有効か、経験を積むならどのような転職先の選択肢があるか、情報を得てはいかがでしょうか。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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