【転職準備】初めての転職活動の進め方|流れやスケジューリングのコツ、お悩み別の解決策紹介

社会人経験が豊富なビジネスパーソンにとっても、初めての転職活動はどんなことをしたら良いのかわからないものです。ここでは、初めて転職活動を行うにあたって必要な準備や心構えを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職活動は準備が重要

転職活動を進めるにあたっては、その流れやスケジュール感の把握はもちろん、応募する前に自己分析や情報収集などの準備が必須です。

特に自己分析やキャリアの棚卸し、業界・企業・職種に関する情報収集は、今後のキャリアの方向性や企業選びの基準を決めるためのベースとなるものであり、かつ、応募企業にアピールできる自身の経験・スキルなどの強みについて知るためにも重要です。これらを整理できていないと、自分に合う企業に出会うことも、選考で適切に自分をアピールすることも難しくなります。

望み通りの結果を得るために100%に近いパフォーマンスを発揮できるよう、必要な準備を把握して転職活動に臨みましょう。

転職活動の流れとスケジュールの目安

転職活動の流れとしては、まず転職準備として「自己分析・キャリアの棚卸し」「情報収集」、「書類作成・応募」を行います。書類選考に通過したら「面接対策・面接」の段階に入り、最終選考を経た後に「内定・内定承諾」となります。

在職中に転職活動をしている場合は、この後に「退職交渉・引き継ぎ・入社準備」を行い、退職後に「入社」します。

転職活動にかかる期間の目安は、トータルで「3カ月程度」となるケースが多いです。自身の経験・スキルや転職先に希望する条件、退職交渉の進み具合などによっても、かかる時間は変化すると考えましょう。

以降で、転職活動の流れに沿って、段階ごとにやることのポイントを解説していきます。

【転職準備1】自己分析・キャリアの棚卸し

今後のキャリアの方向性を見定め、企業選びの基準や、選考で伝えるべき自身の強みを整理するために、自己分析やキャリアの棚卸しをしましょう。

自己分析を行う際には、以下の2点について考えてみましょう。

転職理由:「なぜ転職したいのか」
転職の目的:「転職することで何を実現したいのか」

自己分析を行った上で、キャリアの棚卸しを次の3つのステップで行います。

1:これまでの経験を振り返り、獲得してきた能力やスキルをすべて書き出す
2:書き出した経験・スキルから共通点を探り、自身の強みや得意分野を明らかにする
3:自己分析と、1と2の結果をふまえて、転職先を選ぶ基準を決める。キャリアの方向性や取り組みたい仕事に加えて、年収やポジションの希望も整理し、優先順位づけまで行う

【転職準備2】情報収集

情報収集では、「転職市場の相場観」「志望する業界・興味のある業界」「応募する個別企業」について、順を追って調べることで全体像を把握しやすくなります。

まずは「転職市場の相場観」を把握するために、現在、どのような求人があるのか、どのような企業、どれくらいの企業が自身の経験・スキルを求めているのか、また、自身の持つ経験・スキルにどのくらいの価値があるのかなどを確認し、年収条件や待遇などの相場観も調べてみましょう。

次に、「志望する業界・興味のある業界」について調べ、業界全体の相場観を把握した上で、自身の希望条件や経験・スキルにマッチする求人や企業を探します。
条件に合う「個別企業」を複数見つけたら、それぞれについて詳しく調べた上で、応募するかを検討してみましょう。また、応募書類を作成する際にも、調べた内容を参考にすることができます。

【求人情報を収集する方法】

・転職サイトやビジネスSNSなどで求人情報を検索する
・転職エージェントに登録し、求人の紹介を受ける
・スカウトサービスを利用し、企業や転職エージェントからスカウトを受け取る
・ハローワークの職業相談・職業紹介サービスを利用する
・転職支援企業や業界団体などが主催する転職イベントに参加する
・友人や知人にリファラル採用について相談し、紹介を受ける

転職市場の相場観について調べる際には、厚生労働省が発表する求人倍率推移なども参考になるでしょう。また、転職エージェントでは、転職市場の相場観に対し、求職者の市場価値なども踏まえた上で、相互にマッチする可能性がある企業の紹介を受けられます。

業界や個別企業について調べる場合は、下記のような方法もあります。

【業界・個別企業を調べる方法】

・企業の特色や各種データをまとめている雑誌や各社のホームページ、IR情報などで、個別企業の業績や年収、業界ランキングなどを調べる
・新聞、業界紙、ニュースサイト、ビジネス雑誌、web記事などで、業界トレンドや注目の企業を調べる
・上場企業について調べる場合は、日本取引所グループサイトのアナリストレポートも参考にできる
【日本取引所グループ・アナリストレポート】
https://www.jpx.co.jp/listing/ir-clips/analyst-report/01.html
・志望する企業にカジュアル面談を申し込み、現場の責任者や社員に直接話を聞く
・企業の口コミサイトなどで、良い評判と悪い評判を確認する

【転職準備3】応募書類の作成・応募

応募する求人が決まったら「履歴書」「職務経歴書」などの応募書類を作成します。

「履歴書」の「職歴」欄には、原則、これまで在籍したすべての企業の入社・退社歴を省略せずに記載します。転職回数が多い場合でも省略せずに書くことが大事です。

「職務経歴書」は、A4サイズ2枚程度にまとめるのが一般的ですが、様式に決まりはありません。職務経験が多い場合や、転職回数が多い場合は、時系列ではなく、職務内容や分野ごとにまとめる「キャリア式」を選択し、よりアピールしたい内容に重点を置くと良いでしょう。

企業は応募書類を通して、「入社意欲の高さ」「入社後に活躍・貢献できるか」「長く定着して働けるか」などを判断しています。「自己PR」欄や「志望動機」欄などに記載する内容も精査し、アピールできる経験・スキルを的確に伝えましょう。

【転職準備4】面接日程の調整・面接対策・面接

書類選考を通過したら、面接日程を迅速に調整し、面接選考に臨みます。

面接でよく聞かれる質問については、「自己紹介」「転職理由」「志望動機」「自己PR」「逆質問」などが挙げられます。これらに対する回答内容を整理してまとめた上で、口頭でスムーズに伝えられるように準備・対策しておくことが大事です。

それぞれの質問について、押さえておきたい回答のポイントも参考にしましょう。

【自己紹介】

「氏名」「略歴」「アピールしたい強みと実績」「入社意欲」「入社への意気込み」などを1分程度で端的に伝える

【転職理由】

・現職(前職)に対する不満や批判などは伝えず、転職によって実現したいことなど、前向きな理由を伝える

【志望動機】

「応募企業に魅力を感じているポイント」「応募企業で活かせる自身の経験・スキル」 「入社後に実現したいことや、目指したいキャリアパス」を簡潔に伝える

【自己PR】

「自分の強み」「根拠となるエピソード」「強みを活かして挙げた成果・実績」「入社後にどのような領域でその強みを活かせるか」を簡潔に伝える

【逆質問】

求人情報や企業ホームページなどに掲載されている情報を質問することは避ける。面接担当者のポジションに応じて、質問の切り口を変えることもポイント

【転職準備5】内定・内定承諾

企業から内定が出たら、承諾するかどうかを検討し、企業が指示した期限までに回答します。判断に迷った場合は、企業に面談を設定してもらい、気になっていることについて確認する方法があります。他社の選考を並行している場合は、回答期限を延長してもらえるか相談したり、選考中の企業に面接日程を前倒しにしてもらったりすることもできます。

また、内定承諾の際には、十分に納得した上で入社を決めることが重要です。内定承諾書を提出する前に、やっておきたいことを以下にご紹介します。

【内定承諾の前にやっておきたいこと】

・「選考中の他社に転職する」「現職にとどまる」などの選択肢と比較検討する
・家族やパートナーと話し合い、同意を得る
・「労働条件通知書」の内容をきちんと確認し、認識に齟齬があった場合は、再度、内的企業に確認する

【転職準備6】退職交渉、引き継ぎ、入社の準備

内定承諾をした後は、企業と入社予定日の調整を行います。現職に在籍中の場合は、引き継ぎ期間なども踏まえた上で、無理のないスケジュールにできるよう相談しましょう。
入社予定日が決定した後は、在籍中の企業との退職交渉に入ります。強く引き止められ、退職交渉が長引くケースも少なくないので、しっかりと準備しておくことが大事です。

トラブルを避け、円満退職するためにも、以下のポイントをあらかじめ押さえておきましょう。

【円満退職するためのポイント】

・就業規則で「退職の申し出」を行う時期や、退職届を提出する時期などのルールを確認しておく
・繁忙期などを避け、できるだけ退職しやすいタイミングを選ぶ
・退職理由を聞かれた際には、現職に対する不満・批判は伝えず、「現職では実現できないこと」をポジティブに伝える
・感謝の気持ちを持ちつつ、毅然とした姿勢で転職する意思が固いことを伝える

また、退職の際に必要な手続きや入社準備に必要な書類などについても、きちんと確認しておきましょう。

転職活動のスケジューリングのコツ

転職活動のスケジューリングのポイントや注意点は、大きく4つあります。

希望の退職時期から逆算して、余裕のあるスケジュールを組む

退職時期の目安をある程度決め、そこから逆算して、いつまでに内定を得ておきたいか、応募しておく必要があるかなどの大枠のスケジュールを組んで動きましょう。

「転職活動そのものが順調に進まない」「家族に反対される」「現職に退職を申し出た際に強く引き留めをされる」などの事態に陥るケースは少なくないため、余裕のあるスケジュールを組むことがポイントです。

複数企業の選考を同時に受けられるように応募する

複数企業の選考を並行して受けることで比較検討ができ、納得のいく選択がしやすくなります。特にハイクラス層の場合は、企業から「すぐにでも入社してほしい人材」と判断され、短期間で選考を進める流れとなったり、選考途中で強く口説かれたりすることもあり、比較検討の選択肢がないまま入社を決めてしまうケースがあります。

また、「他社も見てから決めたい」と伝えた場合には、企業が第二候補の求職者を採用する方向に切り替えるケースもあります。自身が対応できる範囲で、複数の企業の選考を同時進行で受けられるように応募することがポイントです。

条件や興味にある程度合っている求人には、積極的に応募する

条件や興味に合う求人には積極的に応募しましょう。特にハイクラス層の場合、採用人数が1人の枠を競う場合も多いため、ある程度希望に合う求人や興味を持てる求人に出会ったときは躊躇せずに応募しなければ、次の機会はないかもしれません。

入社するかどうかは選考の過程で慎重に検討すべきですが、応募のタイミングは逃さないようにしましょう。

面接日程の調整は迅速に行う

在職中に転職活動を進めている場合は、業務時間内の面接が難しく、日程調整を先送りにしてしまうこともあるでしょう。しかし、中途採用の選考は、面接日程の調整ができた応募者から順次進めていくため、早期に採用枠が埋まってしまう可能性もあるので、迅速に調整することも大事です。

また、企業によっては、業務時間外の面接にも対応してくれるケースもあるので、在職中の転職活動であることを伝えた上で相談してみるのも良いでしょう。

転職活動でよくあるお悩みと解決策

初めての転職活動をする方や転職経験が少ない方などに、よくあるお悩みと解決策をご紹介します。

未経験の職種・業界に転職できる?

未経験職種・業界にも転職できる可能性はあります。過去の経験・スキル・実績の中から応募職種や応募企業にアピールできることを伝えましょう。ただし、ハイクラス層が狙う役職・ポジションなどに応募する場合は、ライバルも強力な可能性もあります。段階を踏んで目指すキャリアを実現していく方法もあるので、希望条件に合わせて応募企業を絞り過ぎず、多くの選択肢を持つことが大事です。

多様な応募経路を確保し、採用の可能性がある多くの企業に応募してみると良いでしょう。

転職活動と仕事の両立はどうしたらいい?

時間をつくったり、進め方を工夫したりすることで、両立する方法を考えてみましょう。以下に、参考例をご紹介します。

・長期休暇中に情報収集や書類作成を進め、応募は一気に短期集中で行うなどで時間を確保する
・業務が落ち着くタイミングを選んで活動する
・3〜6カ月間という一般的な転職活動期間にこだわらず、じっくりと時間をかける
・転職エージェントを活用し、求人情報の検索や面接対策、面接の日程調整などを任せ、企業との条件交渉などへのアドバイスも受ける

上記のように、転職活動の一部を担ってくれる転職エージェントもあります。また、応募書類の作成についても、強みの洗い出しや、一部の項目の添削などに応じてくれる場合もあります。

転職活動を長期化させないコツは?

まずは自己分析と情報収集を行い、キャリアの方向性や企業選びの基準を明確にしておくことが重要です。また、最初から選択肢を絞り過ぎないこともポイントです。より多くの選択肢を持った上で、選考が進む中でマッチするかどうかを判断していきましょう。

ただし、3カ月ほど活動してもうまくいかないときは、原因の分析と改善することが大事です。

転職活動をしていることは会社にバレない?

転職活動が現職の企業にバレる原因には、例えば、服装が変わった(業務で必要ないにもかかわらずスーツで出社しているなど)、早退や有休取得数が増えた、社内に公開している個人スケジュールでブロックしている時間帯が増えた、仕事への熱量の低下が見て取れる、などがあります。これらの変化が顕著に表れないようにするのが、バレないためのコツです。また、同僚などにうっかり話してしまわないようにもしましょう。

ハイクラス人材の転職準備のポイント

ハイクラス人材の転職準備において特に重要なのは「自己分析・キャリアの棚卸し」と「情報収集」です。

企業がハイクラス層を対象とした求人を出す際は、求める経験やスキル、人物像を絞り込んでいることが多くあります。自己分析や情報収集が不十分な場合、「応募しても書類選考を通過しない」「書類選考を通過しても面接が進まない」ということになりかねません。

また、転職に求めるものや役職、年収などの条件について優先順位をつけておくことも大事です。「内定は出たものの、希望の役職や年収ではないので辞退して活動をやり直そう」という事態に陥るケースもあります。

ミスマッチや、転職活動の長期化を防ぐためにも、自己分析・キャリアの棚卸し・情報収集は念入りに行いましょう。情報収集の際は、非公開求人や企業の実態などの情報も持っている転職エージェントも活用するとよいでしょう。

転職エージェントやスカウトサービスを利用することも有効

転職活動をこれから始める場合は、転職エージェントを活用するのも一つの方法です。

転職エージェントは、転職先の紹介だけでなく、転職活動を進める中で、段階に合わせてやるべきことをサポートします。転職活動全体のスケジュール感の把握にも役立ち、退職の申し出時期や退職理由の伝え方なども相談できるので、会社から引き留められることが不安な場合にも安心できるでしょう。さらに、応募書類の書き方や面接対策、退職交渉などについてアドバイスを受けることもできます。

また、スカウトサービスの利用は、情報収集に役立つことはもちろん、自身に興味を持ってくれる企業の傾向をつかみやすくなるでしょう。

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粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。