職務経歴書はなぜ必要?提出不要や任意の場合の対応法も解説

書類を見ながらノートパソコンを操作する人

転職活動で求められることの多い「職務経歴書」。どのような役割があり、なぜ必要とされるのでしょうか。職務経歴書が必要な場合と不要な場合の対応、職務経歴書を提出する理由や職務経歴書の役割、書類選考の通過率を高めるための職務経歴書の活用法、作成のポイントなどについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏にアドバイスいただきました。

転職活動では職務経歴書が必要とされる

転職活動では、履歴書と職務経歴書の2つを求められることが一般的です。なぜなら、履歴書と職務経歴書はそれぞれに役割や目的、記載内容が異なるからです。

履歴書は、応募者の氏名や住所などの基本情報や所属企業名・部署・職種・在籍期間などのプロフィールを企業の採用担当者が確認する書類です。一方の職務経歴書は、応募者が取り組んできた具体的な仕事内容や得られた経験・スキルを把握し、募集している求人にマッチしているのかを採用担当者が判断する役割を持っています。

そのため転職活動では、基本的に履歴書に加えて職務経歴書の提出が求められます。特に、スキルや経験が豊富な管理職や専門職などのハイクラス人材の場合は、数あるスキルや経験の中から自身のアピールポイントを具体的かつ明確に示す必要があるので、職務経歴書を入念に作成することが大切です。

また、ある程度フォーマットが決まっている履歴書に比べて、職務経歴書には決まりがありません。自身のアピールしたい情報を自由に記載することができるので、応募企業の求める経験やスキルに合わせて、記載する項目をカスタマイズするといいでしょう。

「履歴書のみ必要」と指定された場合

応募企業によっては職務経歴書を求めず、応募書類に「履歴書のみ必要」と指定されることもあります。その場合は、履歴書だけの提出で問題ありません。企業が職務経歴書不要とする理由は、幅広く応募者を集めることと、面接を重視していることが考えられます。

ただし、職務経歴書を作成することは自分のスキルや強みを整理したり、把握したりすることにつながります。面接での自己PRにも役立ちますので、提出の有無に関わらず、作成しておくことも一案です。

「任意提出」と書かれていた場合

任意提出の場合は、提出してもしなくてもどちらでも構いません。もし企業への熱意や入社意欲を伝えたいと考えている場合は、職務経歴書を提出してもいいでしょう。

職務経歴書が不要な場合の履歴書の書き方

応募企業が職務経歴書を不要とする場合、書類選考では経験やスキルをあまり重視しない可能性があります。「自己PR」や「志望動機」欄がある履歴書を選ぶなどし、自身のアピールポイントや意欲を伝えるといいでしょう。

職務経歴書の役割とは

職務経歴書の主な役割は次の通りです。職務経歴書の役割を意識することで、自身のアピールポイントを最大限活かせるように作成しましょう。

具体的な経験・スキルを伝えることができる

職務経歴書では、これまで担当してきた仕事内容を具体的に伝えるほか、成果や実績、仕事において工夫してきたポイントなどをアピールすることができます。職務経歴書を読むことで、採用担当者は応募者のこれまでの仕事ぶりがつかめるため、自社で活躍するイメージを描きやすくなります。

履歴書の「資格欄」には書けないスキルをアピールできる

履歴書では保有資格や検定試験合格などの記載にとどまりますが、職務経歴書では、資格以外のスキルをアピールすることができます。

前述の通り、職務経歴書のフォーマットは基本的には自由です。そのためスキルをアピールしたい場合は、職務経歴を一通り記載した後、「自己PR」あるいは「活かせる経験・知識・技術」などの欄を設けて記載します。応募企業の求人情報から求められているスキルをつかみ、それに合致している自身の保有スキルを記載すると効果的です。

なお、未経験の業界・職種に応募する場合は「ポータブルスキル」を記載することも有効です。ポータブルスキルとは、あらゆる業種・職種に活かせる「持ち運び可能な汎用スキル」を指します。例えば、コミュニケーション力、課題発見力、交渉力、調整力、数値分析力といったものです。これまでの経験で身につけたポータブルスキルのうち、応募企業で活かせそうなスキルを職務経歴書に記載し、その根拠となるエピソードと成果を補足しておくとプラス評価につながるかもしれません。

自己PRで強みや人柄を伝えることができる

履歴書にも「自己PR」欄が設けられているフォーマットがありますが、スペースが限られています。職務経歴書であれば、具体的なエピソードも盛り込んで自己PRを記載することも可能です。
例えば、「仕事において大切にしていること」「仕事に取り組む姿勢」などを伝えることで、人物面の魅力や強みが伝わる可能性があります。未経験の仕事にチャレンジする場合は、学ぶ意欲や向上心を伝えるのも有効です。すでに勉強を始めていることなどがあれば記載しておくといいでしょう。

採用担当者に「会いたい」と思わせる職務経歴書の書き方

職務経歴書は、採用担当者に「この人を面接に招いて直接話を聞きたい」と思われるように作成する必要があります。作成時には下記のポイントを押さえておきましょう。

求める要件を満たしていることを最大限伝える

採用担当者が知りたいと思う情報を網羅することが大切です。例えば、次のような項目で構成しましょう。

職務要約

経験が豊富な方ほど記載する職務経歴のボリュームが多く、「強み」が伝わりづらいことがあります。職務経歴の中でも特にアピールしたいポイントを、冒頭で要約してまとめておくといいでしょう。

職務経歴

在職期間・会社名・所属部署・担当業務内容・実績を記載します。会社名や部署名だけではなかなか伝わりづらい場合や異業界から転職する場合などは、規模や事業内容も記載しておきます。また、実績はなるべく数字で示します。

活かせる経験・スキル

特に異業界・異職種に応募する場合、自身の経験・スキルの中で、応募企業で活かせるものをピックアップして記載するのも一つの方法です。適切なアピールをするためには、企業研究を行い、応募企業が求めている要素をつかむことが前提となります。

自己PR

成果を挙げるために工夫したこと、日々の業務で心がけていたことなどを記載します。人柄や価値観などが伝わるエピソードを選ぶといいでしょう。

メリハリをつけ、読みやすさを意識する

長々と書かれた文章は、見た瞬間に「読むのに時間がかかりそう」と感じさせるものです。「箇条書き」を取り入れることで紙面にメリハリをつけ、読みやすい印象に仕上げましょう。

先ほども触れたとおり、職務経歴のボリュームが多いと強みが伝わりづらいため、アピールしたいポイントが目に留まりやすいように情報を整理してください。例えば、担当職務内容を文章にて記載した後に、次のような項目を立てます。

  • 活動内容が伝わる数字(担当顧客数、プロジェクトの規模・期間など)
  • 成果が伝わる数字(売上高や目標達成率など)
  • 独自に工夫したこととその成果

そして、冒頭に「●」をつけたり、項目を【 】で囲んだりして、それぞれの内容を簡潔に記しましょう。ただし、すべての記載事項を箇条書きで羅列すると「素っ気ない」印象を与えることもあります。文章と箇条書きのバランスをとることが大切です。

内容に具体性があり、イメージしやすくする

例えば、プロジェクト経験を記載する場合、プロジェクト名だけでなく、目的・内容・規模(予算・人数)・自身が果たした役割などまで記載してください。読み手である採用担当者は経験をより具体的にイメージすることができます。

「マネジメント経験」も同様です。マネジメント対象層・人数のほか、マネジメントスタイル・育成方針などまで記載すると、企業側は自社のマネジメント方針にマッチするかどうかを判断しやすくなります。

業界が異なっても、マネジメントスタイルを活かせることが評価されて採用に至るケースは多々あります。マネジャーとしての姿が具体的にイメージできるように記載しましょう。

職務経歴書の提出に関連するQA

職務経歴書の提出に関して、よくある質問をご紹介します。

Q.職務経歴書不要と書かれているけど、提出してもいいのか?

「職務経歴書不要」と応募企業から指示があった場合、職務経歴書の提出は必要ありません。しかし、応募企業に自身の熱意を伝えたり、アピールしたい経験・スキルがあったりする場合は、職務経歴書を提出したいと考える方もいるでしょう。そのような際は、提出しても問題はありません。

郵送の場合は、履歴書の送付時に職務経歴書も同封し、送付状に職務経歴書を一緒に送付している旨を伝えます。面接に持参する場合は、「職務経歴書は提出不要と伺っておりましたが、お伝えしたいことがありましたので持参させていただきました」などと伝えるといいでしょう。

Q.職務経歴書不要の場合の送付状や添え状はどう書けばいい?

職務経歴書不要の場合は、送付する応募書類は履歴書のみとなりますので、送付状や添え状に記載する際は、以下のように記載しましょう。

【応募書類】
・履歴書 1枚

転職活動を行いながら、職務経歴書は磨き込むことが大切

職務経歴書は、履歴書のように形式が定められていない分、作り手の工夫次第で印象がガラリと変わります。企業のニーズに合う経験・スキルを持っていても、書類上でアピールできなければ面接に進むことができません。そのため、読み手の立場に立って職務経歴書を作成するように心がけましょう。

また、転職活動の面接で一般的によく確認される項目や質問事項があれば事前に職務経歴書に記載しておくなど、転職活動中に気づいたことは職務経歴書にも反映し、磨き込んでいくことも大切です。

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粟野友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。