履歴書や職務経歴書に記載する項目の一つである「自己PR」は、選考が進むと面接でも求められることがあります。応募企業にどのように自己PRを伝えると、相互理解に繋がるでしょうか。履歴書・職務経歴書での自己PRの書き方や、面接での伝え方のポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
自己PRとは
まず、転職活動における自己PRの意味と役割について確認しておきましょう。
自己PRの意味
応募書類や面接で求められる自己PRとは、自身の「強み」や「スキル」「仕事に取り組む姿勢」などを掘り下げて伝え、応募企業で活躍・貢献できるポイントをアピールするためのものです。
「強み」と似た言葉に「長所」がありますが、「強み」は仕事に活かせる力やスキルを、「長所」は仕事に活かせるかどうかにかかわらず、人柄や資質、性格において優れている点などを指すことが一般的です。応募先の企業で活かせることを、具体的な根拠を持って伝えられるのなら、自己PRでアピールするのは「強み」でも「長所」でもどちらでも構いません。
一方、面接の冒頭で求められることが多い「自己紹介」は、自身の経歴などを要約して伝え、面接担当者に興味を持ってもらい、人となりや特徴を理解してもらうことを目的としています。「自己PR」との役割の違いを認識しておくと、面接で聞かれた際に混同せずに答えられるでしょう。
自己PRの役割と企業が見ているポイント
企業の採用担当者は、応募者の自己PRを通して、募集している職種やポジション、企業風土へのマッチ度合いや、入社後の活躍可能性などを判断することが多いようです。
したがって、履歴書・職務経歴書、面接で伝える自己PRでは、自身の強みを応募先の企業でどのように発揮し、貢献できるのかということや、仕事への意欲を伝えることが重要になるでしょう。
自己PRでアピールする強み・長所の見つけ方
自己PRの内容は、履歴書・職務経歴書も面接も同じで構いません（伝え方の違いは後述）。具体的には、次の【1】～【3】の手順で検討してみてください。
【1】キャリアを振り返り、強みを洗い出す
これまで経験してきた業務を改めて振り返り、周囲から評価されたことや、得意としている業務・分野などを洗い出します。具体性を持たせるためにも、当時のエピソードなどを含めてできるだけ詳しく思い出すようにしましょう。もし強みが思いつかなかったら、周囲の人にヒアリングをしてみると、ヒントが見つかることがあります。
【2】応募企業が求めている人材要件を確認する
応募企業の募集内容を確認し、企業が求めている人材要件と【1】で洗い出した自分の強みの共通点を探りましょう。それが、その企業にアピールできる強みです。
【3】強みを言語化して文章にまとめる
企業が求めている人材要件にマッチする強みについて、エピソードを交えて文章にまとめます。文章の構成などは、次項で説明します。
履歴書・職務経歴書の自己PRの書き方
履歴書・職務経歴書に書く自己PRを文章にまとめる際には、次の構成と手順でまとめると良いでしょう。
自己PRの構成
自己PRを文章にまとめる際は、次の【1】〜【3】の順で書くと、読み手に伝わりやすいものになります。
【1】仕事におけるこだわりや強み、得意としていること
【2】具体的なエピソードと得られた成果
【3】【1】を活かしてどのような貢献ができるか
まず、仕事におけるこだわりや強みを端的に述べ、それを裏づける具体的なエピソードと成果を記載します。そして、アピールした自身のこだわりや強みなどを応募企業の業務にどのような形で活かしていくのか、どのような貢献ができるのかを、自分なりに考えて記載すると、説得力が増すでしょう。
まず職務経歴書用の文章を作成する
一般的に自己PRは、履歴書と職務経歴書の両方に記載します。記入欄が小さく限りのある履歴書に比べて、職務経歴書は文字量の制約が少ないため、まずは職務経歴書用に文章を作成するのがおすすめです。文字量はおおむね200～400字が目安です。
次に履歴書用のサマリ版を作成する
履歴書には、職務経歴書用に作成した自己PR文を簡潔にまとめたものを記載しましょう。この方法を用いることで、履歴書と職務経歴書の自己PRの内容に齟齬が生じることもありません。履歴書に書く文字量は100～150字程度が一般的です。
職務経歴書の文章から、履歴書用のサマリ版を作成した場合の例を、以下にご紹介しましょう。
職務経歴書用の自己PR文例
・国内およびアジア圏でのマーケティング経験
現職では、消費財の国内及び、東南アジア向けのマーケティングに12年間携わってきました。直近2年間は、東南アジア向けのマーケティングチームのリーダーとして、メンバーや現地法人のスタッフ、協力会社などと連携して特にデジタルマーケティングに注力しました。また、チームの総力を上げるためにメンバーとの定期的な勉強会による知見の共有を行うなどして、毎年○％ずつ売上を伸ばしています。
これらの経験と培った知見を活かして、御社が目指している国内および東南アジアでの市場拡大を牽引する役割を担いたいと考えております。
履歴書用のサマリ版自己PR文例
12年間に渡り、消費財の国内・東南アジア向けのマーケティングを経験しました。直近2年間は、対東南アジアのチームリーダーとして、メンバーや現地法人のスタッフ、協力会社と連携し、特にデジタルマーケティングに注力。メンバーとの定期的な勉強会による知見の共有などにより、毎年○％ずつ売り上げを伸ばしてきました。
履歴書・職務経歴書の自己PR文を書く際の注意点
自己PRの文章をまとめる際は、次のような点も意識するとより伝わりやすくなります。
具体的なエピソード・数字を盛り込む
強みを裏づけるエピソードは、具体的に記載しましょう。その強みがどのような場面で発揮できるのかを詳しく伝えることで、「入社後の活躍・貢献」をよりイメージしてもらいやすくなります。
記載するエピソードには、「規模感・難易度」「成果・実績」など、具体的な数値と客観的な事実を交えて根拠を示すと、説得力が増します。「どのような背景の中、どういった視点・姿勢を持って取り組んだのか」や、工夫・努力した点なども合わせて伝えると良いでしょう。
志望動機と一貫性を持たせる
自己PRと志望動機を紐づけて伝えると、入社意欲の高さのアピールになります。志望動機で伝える「入社後に実現したいこと」や「活かせる経験・スキル」と、自己PRで伝える強みに齟齬がないよう気をつけましょう。
職務経歴書では見出しでアピールする方法も
例えば「顧客との調整によるプロジェクト遂行力」や「論理的思考力」など、自己PRで最も伝えたい実績や自身の強みなどを見出しにすると、文章のテーマが一目でわかり、読み手に伝わりやすくなります。
面接での自己PRの伝え方
応募書類だけでなく面接でも、自己PRやそれに準ずる質問をされることが多くあります。例えば「あなたの強みを教えてください」「ご自身の○○部長（○○課長）としての特長をどうお考えですか？」といった尋ね方です。その際は、次のような点に留意して自己PRを伝えましょう。
内容と構成は職務経歴書と共通でOK
面接で自己PRを聞かれたときの回答は、基本的に職務経歴書に記載したものと共通で構いません。例えば、次のような構成で伝えると良いでしょう。
【1】最初に「結論＝自分の強み」を端的に伝える
【2】その根拠となる「理由・背景・エピソード」を伝える
【3】強みによる「成果・実績」を具体化、数値化して伝える
【4】志望する企業や業種で、その強みが「どう活かせるか」を伝える
【1】は、応募先の職種やポジションのニーズに合わせ、かつ【2】のエピソードに紐づいた自分らしい表現で伝えます。「やり抜く力が強み」「達成意欲高く取り組む」など、端的に表現できると良いでしょう。そして【2】【3】を具体的に伝えることで、【1】を裏づけます。最後に【4】で、強みを入社後どのように活かしていきたいかなど、意欲を端的に伝えて締めとします。
書類に書ききれなかった状況や詳細を盛り込む
面接で自己PRを伝える際は、職務経歴書に書ききれなかった情報を加えて、より実感を伴って聞き手に伝わるようにエピソードを膨らませると良いでしょう。その際、次の4つの順番（STARフレーム）でまとめると、自分自身も話しやすく、相手にも伝わりやすくなります。
IT系技術職を例に紹介しましょう。
Situation（状況）：「PL（プロジェクトリーダー）として社会人歴の浅いチームのスキル向上に取り組みました」
Task（課題）：「マネジメント職として、まず業務改善に取り組む必要がありました」
Action（行動）：「メンバーのレベルに合わせた業務配分及び、勉強会を実施しました」
Result（結果）：「残業時間を約1時間削減することができました」
事前に原稿を作って練習しておく
職務経歴書に記載した自己PRと同じ内容を伝えるとしても、「書き言葉」と「話し言葉」では、話の流れが異なります。要点がまとまらないまま長く話してしまうと、聞き手はポイントを把握できず、評価に繋がらない可能性もあります。面接用にはおおむね1分前後、文字数にすると300〜350文字前後で原稿をまとめ、スムーズに話せるよう口に出して練習をしておくと安心でしょう。
履歴書・職務経歴書と面接での自己PR例文
「営業職」「IT技術職」「経理職」の3つの職種における、職務経歴書用の自己PR例と、それを面接用に膨らませた回答例を紹介します。職務経歴書用の文例は250字前後でまとめているため、履歴書に書く際には要約が必要であることに留意してください。
営業職
職務経歴書用の文例
・現場目線での提案力
専門機器メーカーの法人営業に10年間従事して培ってきた、現場目線での提案力が私の強みです。常に顧客目線を大切にし、ものづくりの現場が抱える課題を解決する提案を行うことを、意識してきました。
例えば、ある大手企業のお客様に対し、現場の生産性を○％と大幅に改善する設備を導入いただいたときには、「常に当社のことを考え、伴走してくれる○○さんには本当に助けられています」と嬉しい言葉をいただきました。
現場の課題解決に繋がる提案力を活かし、貴社の○○領域の売上向上に寄与したいと考えております。
面接での回答例
【出だし】専門機器メーカーの法人営業に10年間従事して培った、現場目線での提案力が強みです。
【状況・課題】長年担当する大手製造企業の顧客から「時間がかかっても根本的な改善に取り組み、製造現場の生産性を大幅に向上させたい」というご相談がありました。
【行動】そこで、自社の技術者と協力会社でプロジェクトチームを結成し、○カ月かけて顧客の製造現場での分析や、担当者からの詳細なヒアリングを行いました。そして複数の解決案を段階的に提示しながら、課題解決の方策を顧客と半年かけて協議しました。
【結果】ご相談から導入まで約2年、生産性向上の成果が安定するまでに3カ月の長期となりましたが、現場の生産性○％アップを実現することができ、顧客から感謝の言葉をいただけました。
【締め】こうした、現場の課題解決に繋がる提案力を活かし、御社の○○領域の売上向上に寄与したいと考えております。
IT技術職
職務経歴書用の文例
・目指す成果への手立てを考え、周囲を巻き込み実行する力
プロジェクトリーダーとして携わったある開発業務においては、メンバーのスキルアップが成果に直結すると考え、メンバーのレベルに合わせた業務配分をしながら勉強会を実施しました。その結果、開発スピードが向上し、1日1時間程度の残業時間の削減を実現。時間のゆとりができたことによって顧客へのサポートも素早く丁寧になり、他部門の開発案件をご紹介いただくことで、年間4件の受注に繋げることができました。
こうしたマネジメント経験を活かし、貴社でより大きな案件での経営課題解決に携わりたいと考えております。
面接での回答例
【出だし】目指す成果に必要な手立てを考え、メンバーを巻き込んで実行できることが私の強みです。
【状況・課題】ある金融機関向けの開発プロジェクトのリーダーを務めた際、メンバー○名のスキルレベルにバラツキがあり、手を打たずにプロジェクトを進めては品質も納期も十分なものにならないと判断しました。
【行動】そこでメンバーを対象に勉強会を毎日実施し、バディ制度でベテランと若手をペアにして、通常業務の中でもスキルの向上を図れる仕組みを作りました。
【結果】開発スピードが向上し、1日当たり1時間の残業時間を削減できました。また時間にゆとりが生まれて提案やサポートが手厚くできたことで高評価をいただき、同じ金融機関の他部門もご紹介いただいて、年間4件の受注に繋げることができました。
【締め】こうしたマネジメント経験を活かし、より大きな案件での経営課題解決に携わりたいと考えております。
経理職
職務経歴書用の文例
・経理職としての幅広い実務経験
現職の経理部門では本社の決算業務に関わるだけでなく、入社3年目から子会社の経理全般を行い、連結決算についても一人で担当してきました。入社して12年目の現在は、管理職として6名の部下を指導しています。また、専門知識を高め、業務の幅を広げるために税理士や中小企業診断士などの資格取得に向けて勉強に励んでいます。
これらの知識や経験を、創業期にある貴社において活かし、決算業務体制を整えながら企業運営の力となれるよう努めたいと考えております。
面接での回答例
【出だし】経理職としての幅広い実務経験が私の強みです。
【状況】入社3年目からは子会社の経理全般を担当し、連結決算も一人で対応してきました。入社12年目の現在は6名の部下を指導し、マネジメントの経験も積んでいます。
【課題】ただ、税務知識や、経営視点といった部分はまだまだ不足していると認識し、
【行動】税理士、及び中小企業診断士の資格取得を目指して、○年ほど前から勉強を続けてきました。
【結果】専門性の高い資格のためまだ取得には至っていませんが、学びで得た知識は経営陣に対するレポート作成や、提案で活かせています。中小企業診断士については、昨年度1次試験に合格し、今年度の2次試験合格を目指しています。
【締め】これらの知識や経験を、創業期にある貴社において活かし、決算業務体制を整えながら企業運営の力となれるよう努めたいと考えております。
「強み・長所」を活かす自己PR例文
以下に「強み・長所」のキーワードごとに自己PR例文を複数紹介した記事を用意しています。キーワードごとにリンクを貼っているので、自身の強み・長所にあてはまる言葉からリンク先の記事を参照してください。
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組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹（あわの ともき）氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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