「課題解決力」を自己PRで伝える場合のポイントと自己PR例文

転職活動の自己PRで「課題解決力」を伝える場合、どのような点に注意すればより効果的なアピールにつなげられるのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、課題解決力を自己PRで伝える際のポイントや企業が確認していること、注意点などを伺いました。自己PRの例文や作成する際の構成要素なども合わせてご紹介していきます。

「課題解決力」を自己PRで伝える場合のポイント

課題解決力とは、一般的に「論理的に思考・分析して適切な課題設定をし、解決する策を企画・実行する力」と定義されています。
「課題」を「問題」と同義に捉える方もいますが、「問題=目標とする未来の理想と現状の間にギャップが発生し、障壁を抱えている状態」であり、「課題=そのギャップを埋め、障壁をなくすためにやるべきこと、実行すべきこと」を指します。課題解決力とは、「現状の問題」を見極めた上で分析し、解決に向かうためにやるべきことを「適切な課題」として設定・実行していく力と言えるでしょう。

課題解決力の自己PRを作成する際には、具体的なエピソードを通じて「どのような背景・状況があったのか」「どのような考えと視点を持って課題を設定したのか」「どのように実行したのか」「どのような成果につながったのか」を伝えることがポイントです。課題に取り組んだシチュエーションをイメージできるようにし、自身の考え方やそれに伴う行動まで伝えることで、採用担当者の理解を深めると同時に説得力を増すことができます。また、面接時には応募書類に記載されている内容を深掘りされます。取り組んだ課題と成果の事実のみを羅列した場合、面接担当者に興味を持ってもらえず、アピールしたいことについて質問してもらえない可能性もあります。こうした点も踏まえて、より具体的に書くことを意識しましょう。

また、課題解決力をアピールする際には、自身のエピソードに基づいて「自分らしい課題解決力」に言い換えをすることも大事です。単に「課題解決力がある」と伝えても、同じような強みを持つほかの応募者との差別化がしにくいので「組織を巻き込んで、コミュニケーションを取りながら課題解決・成果につなげる実行力・具現化力がある」など、よりイメージしやすい表現とすることがポイントです。そのほかにも「ゼロベース思考で先入観を持たずに問題を分析する力がある」「本質をつかむ想像力と、未来志向でポジティブに問題を解決する力がある」などの言い換えができるでしょう。

「課題解決力」の自己PR例文

「課題解決力」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。

マーケティング・管理職の自己PR例文

ゼロベース思考を通じた「本質的な課題解決力」を強みとしております。
前職は大手飲食チェーンで本社マーケティング部署のマネジャーを務め、自社アプリの利用促進に取り組みました。
当時、アプリ利用率が低迷し、その要因は本社の戦略が地域店舗に浸透していない点にあると考え、連携体制の再構築とユーザーエクスペリエンス分析を実行しました。ゼロベースでアプリ利用の定量データ分析やユーザー調査を行い、分析結果を基に各店舗と議論を交わしたところ、UI/UX面の操作性の複雑さに課題があるとわかりました。
ユーザーエクスペリエンスを高めるためにアプリの全面刷新を提案し、役員を粘り強く説得して実現へ。これにより利用率は前年比○%に向上し、売上増加にも貢献。根本的な解決につなげることができました。
ゼロベースで本質的な課題を抽出し、周囲を巻き込み解決する力を活かし、貴社のユーザー層の幅をさらに広げるために貢献したいと考えております。

ITコンサルタント職の自己PR例文

顧客の課題解決という目的に対し、最適な課題解決案を提案・実行する力を強みとしております。
現職はITコンサルティング会社にてRPAコンサルタントを務めております。直近では、○○社の○○部門に対して、RPA導入ありきではない現行業務の分析を行い、業務プロセスの改善・再構築案に加え、○○部門の事業の在り方や従業員の働き方の変化などを見据えた未来像を提案しました。これにより、広範囲の業務変革に向かう○カ年の大規模プロジェクトを任せていただき、社内外の専門人材を集めたチームを組成しました。過去にない大規模案件として自社の業績に貢献できた上、顧客との深い信頼関係を築くことができ、他部門の案件獲得にもつながりました。
顧客の事業・組織課題に対する最大価値を提供し、目的達成に最適な解決策を提示・実行する力を活かし、入社後は多様な企業の課題解決と共に、新規顧客の開拓や新規案件の獲得にも貢献していきたいと考えております。

労務・管理職の自己PR例文

短期と中長期の双方で「課題解決策を実行できる力」を強みとしております。
現職では人材紹介会社の管理部門にて労務領域のマネジャーを務めております。コロナ禍におけるテレワーク推進により、労働状況・労働時間の不透明化に加え、メンタル不調者が出る問題も発生したため、全社員に労働状況の調査を実施しました。
部門間で働き方に差がある点がモチベーション低下の要因と判明し、人事担当役員と現状を分析し、緊急で解決すべき課題や今後の働き方の変化を見据えたリスクを洗い出し、テレワーク勤務における労働時間規定・服務規定などの就業規則を作成。ITツール導入など各種環境も整備しました。
その結果、社員満足度は大幅改善し、労働環境の改善と生産効率の向上に貢献したことで社内表彰も受けました。
社会の環境変化に対応し、短期的・中長期的に課題解決を実行する力を、貴社のエンゲージメント向上と生産性の向上に活かしていきたいと考えております。

自己PRで採用担当者が確認していること

採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。

  • 職務経歴だけでは掴めない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
  • その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか

さらに、課題解決力については、本質を捉えた課題を設定できる分析力とともに、実行力があることも前提となります。自己PRでは「物事を構造的に捉え整理する力」「クリティカルシンキングを用いて分析する力」「考えることを諦めない思考の体力・継続力」「組織全体とコミュニケーションを取りながら課題解決・成果につなげる実行力」などを総合的に確認していると言えるでしょう。

これらについて採用担当者が納得できるような説明がされていない場合は「なぜその課題を設定したのか」「任された仕事に対応しただけではないか」「成り行きで、偶然成果につながったのではないか」と疑問視される可能性があるでしょう。また「成果が伴っていない」「成果に納得感がない」と判断された場合は「課題設定の思考力や分析力が十分ではないかもしれない」という判断につながることもあります。課題解決に取り組んだシチュエーションや自身の考え、行動、成果までより具体的に伝えることで評価につなげることができるでしょう。

自己PR文を作成する際には、これらのポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。

自己PR文の作り方のコツ

履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。

【1】書き出し

書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「課題解決力」を入れておくとわかりやすいでしょう。

【2】【1】を裏付けるエピソード

最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くと要点が掴みにくくなります。200~400文字程度にまとめてください。

【3】成果

【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。
数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。

【4】締め

応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。

自己PR文を作成する際の注意点

自己PR文を作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
自己PR文の作成にあたり、以下のポイントに注意してください。

企業が求める人物像にマッチしていない

自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかを掴みましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールすると良いでしょう。

具体性に欠け、人柄がイメージしにくい

曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。

要点が絞られていない

アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。

専門用語が多く、分かりやすさに欠ける

異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意しましょう。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用せず、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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