転職活動の面接では、「自己紹介」と「自己PR」を求められることが良くありますが、それぞれの質問の違いやアピールしたい内容などを、明確に理解していない方もいるかもしれません。自己紹介と自己PRの違い、それぞれにおいて企業が見ているポイント、伝え方のコツや注意点などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
自己紹介と自己PRの違い
自己紹介と自己PRの違いと目的、「伝える内容が被ってしまいそうな場合はどうすれば良いか」について解説します。
自己紹介と自己PRは目的が違う
自己紹介は、基本的に面接の冒頭で求められ、初対面の採用担当者に対し、自身がどのような人物であるのかを簡単に説明するためのものです。自身の職歴・経歴などを大まかに伝えることで、相手に興味を持ってもらい、その後の会話につなげていきましょう。
一方で自己PRは、自身の強みやスキル、仕事に取り組む姿勢などを掘り下げて伝え、応募企業で活躍・貢献できるポイントをアピールするためのものです。面接の中では良く聞かれるので、その企業に対して最もアピールしたいことを整理しておき、分かりやすく話せるように準備しておきましょう。
自己紹介と自己PRの内容が被ってしまう場合は?
「自己紹介と自己PRの内容が一部被ってしまうが、大丈夫だろうか」と心配する方がいますが、特に問題はないでしょう。自己紹介では自分についての「概要説明」を行い、その中でも特にアピールしたい強みに関して「詳細説明」をするのが自己PRであることから、一部同じ表現が使われるのが自然なことだからです。例えば、自己紹介では「〇〇を強みとしております」と簡潔に説明し、自己PRでは「〇〇が私の強みであると考えております。具体的には…」と深掘りしていけば良いでしょう。
もちろん、自己紹介では説明が長くなりすぎるために省略した他の強みを、自己PRで伝える方法もあります。
自己紹介と自己PRで企業が見ているポイントと伝えたい内容
自己紹介と自己PRにおいて、企業が見ることの多いポイントと、伝えたい内容を解説します。
自己紹介では「第一印象」
一般的に企業は、自己紹介を通じて「応募者の第一印象」「簡潔に要約して伝える力」「相手に分かりやすく伝えるコミュニケーション能力」などを見ています。従って、短い時間で自分の経歴などの要点を、簡潔に分かりやすく伝えることがポイントです。
特に第一印象は大切で、必要以上に緊張したり、萎縮したりしている印象を与えれば、面接全体にも影響するかもしれません。そのため、内容を事前に整理し、落ち着いて話せる準備をしておくと安心です。「準備不足でうまく話せていない」「内容にまとまりがない」といったことから、志望度やコミュニケーション能力について懸念される事態も避けられるでしょう。
自己PRでは「自社で発揮できそうな強み」
一般的に企業は、自己PRを通じて「応募者に自社で発揮できそうな強みがあるか」「活躍・貢献できそうか」「定着性があるか」などを見ることが多いようです。具体的な経験・スキル・実績はもちろん、仕事に対する姿勢や考え方なども含めて「自社の企業文化にマッチするか」を知りたいと考えています。
従って自己PRでは、これまでの経験・スキル・実績・仕事への取り組み方などをアピールしながら、入社後にそれらをどのように活かし、貢献できるかを伝えましょう。
自己紹介と自己PRの適切な長さ
自己紹介・自己PRとも、最初の質問に答える際の長さは、1分程度(文字数では300字程度)を目安としてまとめることをおすすめします。
面接スタート時の自己紹介で長々と話してしまうと、「伝えたいことをまとめる力が足りない」といった印象を与えかねず、採用担当者が興味を失うことも考えられるため、注意が必要です。特にキャリアが長い方の場合は、職歴・経歴を全て話そうとするとポイントがぼやけることもあるので、応募企業にマッチしている部分に絞って話すことを意識すると良いでしょう。
自己PRも、最初の回答で全てを伝えきろうとすれば長くなってしまい、採用担当者に「プレゼン力不足」という印象を与えるかもしれません。従って、まずは要点を簡潔に伝えるようにしましょう。その後に、強みの根拠となるエピソードや成果・実績の詳細について採用担当者が深掘る質問をするので、そこでより具体的に回答しながらアピールにつなげていくと良いでしょう。
自己紹介の構成と注意したいポイント
自己紹介をまとめる際の構成と、回答する際の注意ポイントをご紹介します。
自己紹介で話す要素と構成
自己紹介のまとめ方は、下記を参考にしましょう。
自己紹介で話す要素と構成
・氏名と挨拶
・現職または前職について(社名・所属・職種などを伝える)
・職務経歴・実績(アピールしたい経験・スキル・実績の要点を簡単にまとめる)
・締めの言葉(入社意欲や面接への意気込みなどを伝える)
自己紹介をする際の注意点
話し方や表情にも気をつける
自己紹介は基本的に面接の最初に求められるため、緊張から表情が硬くなったり、暗く見えたりしてしまうケースもあるでしょう。従って、適度に明るくにこやかな表情と、やや大きめの声でハキハキと話すことを、いつも以上に意識するようにしましょう。
「その場に行けば話せる」と考えず、きちんと準備する
自己紹介で良くあるのは、「その場に行けば話せる」と考えて、準備をしていかないケースです。その結果、伝えたいことをまとめられず、第一印象が良くないまま面接が進行し、アピールにつなげられない事例もあります。これは、社会人経験が短い方だけでなく、キャリアが長くトークに自信がある方にも良く見られます。自己紹介の内容はきちんとまとめておき、一度口に出して練習するなどの準備をしておく方が安心できるでしょう。
自己PRの構成と注意したいポイント
自己PRをまとめる際の構成と、回答する際の注意ポイントをご紹介します。
自己PRで話す要素と構成
自己PRのまとめ方は、下記を参考にしましょう。
自己PRで話す要素と構成
・冒頭で「結論=自身の強み」を端的に伝える。
・強みの根拠として「理由・背景・エピソード」を伝える。
・強みを発揮したことによる「成果・実績」を具体的に伝える。
・応募企業・職種において「強みをどう活かせるか、どう貢献していきたいか」を伝える。
自己PRをする際の注意点
強みを具体的に表現する
強みを表す際には抽象的な表現ではなく、自分なりの表現で具体的に伝えることが大切です。例えば「柔軟性がある」という場合は「顧客の要望に臨機応変に対応できる力がある」などの表現で、よりイメージしやすいように伝えることをおすすめします。
数値なども交えて根拠を示す
「根拠となるエピソード」には、開示できる範囲で数字や固有名詞などを交え、携わった仕事やプロジェクトの規模感・難易度を分かりやすく伝えることもおすすめです。その際は「どのような背景の中、どういった視点・姿勢を持って取り組んだのか」という考え方や、自身として工夫・努力した点なども伝えましょう。「成果・実績」を伝える際には、数字や周囲からの評価など、客観的な事実を伝えて説得力を持たせましょう。
特に、専門職や管理職などのボジションに応募する場合は、求められていることや任せたいことが具体的に設けられています。それに応えられる人材であることを伝えるために、専門スキルやマネジメント経験などについてより具体的なエピソードを伝えると良いでしょう。個人としてのみならず、組織に対して発揮していける強みもアピールになります。
志望動機に紐づけて一貫性を持たせる
自己PRは、志望動機と一貫性があることも大切です。「入社後に実現したいこと」「活躍・貢献できると思うこと」などを踏まえ、志望動機に紐づけて語ることで、入社意欲の高さをアピールすることができるでしょう。「入社後にどのようなキャリアを築いていきたいのか」をイメージし、応募企業の中で実現していきたいことを伝えるのがおすすめです。
自己紹介の質問例と回答例
面接における自己紹介の質問例と回答例をご紹介します。
自己紹介の質問例
自己紹介は、単独で求められるケースもあれば、志望動機や転職理由と合わせて聞かれるケースもあるため、それぞれどう答えるかを想定してまとめておく方が安心できます。
いずれにしても、応募書類に書いてある内容を単に説明するのではなく、その後の面接でアピールしたい内容(自己PRにつながる経験・スキル・実績など)をキーワードで盛り込み、採用担当者にインプットすることを意識しましょう。
自己紹介の質問例
「簡単にこれまでのご経歴を教えていただけますか?」
「あらためて、ご経歴の概要と当社にご応募いただいた理由をお話しください。」
「ご経歴の概要と今回の転職を考えられた背景を教えていただけますか?」
自己紹介の回答例
【氏名と挨拶】
○○職を志望しております〇〇と申します。
本日は、貴重なお時間をいただきありがとうございます。
【前職・現職について】
株式会社○○にて、約6年間、法人営業職を務めております。
【職務経歴・実績】
直近の2年間は、DX活用におけるカスタマー行動を分析した上でのサービス提案に注力し、顧客に向けて情報共有を行うWebセミナーの企画運営なども手掛けております。
これにより、昨年度はチームの売上目標120%達成に貢献することができました。
【入社意欲を伝える締めの言葉】
従来の方法のみでなく、新たな成果を出す方法に自ら挑戦していくことを強みとしており、今後、さらなる事業拡大に向かう御社でその力を活かしていきたいと考えております。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
自己PRの質問例と回答例
面接における自己PRの質問例と回答例をご紹介します。
自己PRの質問例
自己PRではシンプルに強みを聞かれるだけでなく、より具体的な事柄に対して質問されるケースもあります。例えば、「これまでの経験を通じて周囲と差別化できる強み」や、「応募職種に対する考え方」、「成功体験」などをクローズアップする質問が挙げられます。語ろうとしていた強みを、質問内容に的確に結びつけていくことがポイントです。
自己PRの質問例
「○○職として、ご自身の強みはどのようなものだと認識されていらっしゃいますか。」
「現職のほかのマネジャーの方と比べて、ご自身が抜きんでていると思われる部分を教えてください。」
「仕事をする上で、ご自身の核となっているものを教えていただけますか。」
「弊社に貢献できるとお考えになられた理由・背景を教えてください。」
「これまでの仕事の中で、事業戦略を考える際に大事にされていることを教えてください。」
「キャリアの中で、最も成功した仕事を教えてください。」
自己PRの回答例
【自身の強み】
法人営業職としての私の強みは、組織全体に貢献できる新たな戦略を自ら考え、挑戦していく実行力にあると考えております。
【理由・背景・エピソード】
現職では、DX活用が推進される時代の中でカスタマー行動が変化している点に着目し、顧客に向けて意義のある情報の発信を行い、自社サービスの活用提案に結びつけていこうと考えました。そこで担当している大手企業20社に向けてWebセミナーを開催し、自社サービスの新たな活用方法を提案しました。
【成果・実績】
これにより、利用拡大が進み、個人として前年比125%の売上目標を達成しました。また、成功事例としてチームに施策を共有し、自らWebセミナーの企画運営を手掛けた結果、チーム全体でも前年比120%の売上目標を達成し、貢献することができました。
【貢献していきたいこと】
既存の手法に頼らず、新たな施策にチャレンジしていく実行力を活かし、御社が注力されている新たなサービスの利用拡大に貢献していきたいと考えております。
「自己PRを兼ねた自己紹介」の質問例と回答例
自己PRを兼ねた自己紹介の質問例と回答例をご紹介します。
自己PRを兼ねた自己紹介の質問例
面接冒頭では、単なる自己紹介ではなく「自己PRを兼ねた自己紹介」が求められるケースもあります。ただ、この場合も基本的には自己紹介パートとなるため、冗長にならないようできるだけ簡潔にまとめることがおすすめです。下にご紹介したように、「職務経歴・実績」に自己PRを述べる文言をプラスし、アピール要素を厚めに伝えると良いでしょう。
質問例
「最初に自己PRを交えて自己紹介をお願いします。」
「自己PRと併せて自己紹介をしてください。」
自己PRを兼ねた自己紹介の回答例
【氏名と挨拶】
○○職を志望しております〇〇と申します。
本日は、貴重なお時間をいただきありがとうございます。
【前職・現職について】
株式会社○○にて、約6年間、法人営業職を務めております。
【職務経歴・実績】
私の強みは、組織全体に貢献できる新たな戦略を自ら考え、挑戦していく実行力にあると考えております。直近の2年間は、DX活用におけるカスタマー行動を分析した上でのサービス提案に注力し、顧客に向けて情報共有を行うWebセミナーの企画運営なども手掛けております。
これにより、昨年度はチームの売上目標120%達成に貢献することができました。
【入社意欲を伝える締めの言葉】
従来の方法のみでなく、新たな成果を出す方法に自ら挑戦していくことを強みとしており、今後、さらなる事業拡大に向かう御社でその力を活かしていきたいと考えております。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
自己紹介・自己PRの作成は転職エージェントのアドバイスも参考に
面接における自己紹介・自己PRの作成や、回答の準備を十分に行いたい方は、転職エージェントのアドバイスを活用するのも一つの方法です。
自己紹介では、内容が応募者の特徴や強みを適切に伝えているか、応募企業にマッチした内容か、表情や話し方・スピードなどが伝わりやすいものかなどをチェックしてもらえる可能性があります。自己PRでも、長さや内容、構成、表情・話し方・スピードなどのチェックに加えて、模擬面接でキャリアアドバイザーが採用担当者役となり、内容を深掘る質問をしてもらえるかもしれません。それによって自己PRをさらにブラッシュアップし、面接でも戸惑わずスムーズに回答がしやすくなります。
また、スカウトサービス経由で転職エージェントを利用する場合も同様のサービスを受けられる可能性があります。ぜひご検討ください。
粟野友樹
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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