転職までの空白期間(ブランク)は不利になる?面接での理由の伝え方や人事の見方を解説【回答例あり】

採用面接の様子

転職活動の際、キャリアに空白期間(ブランク)がある場合「選考に影響するのではないか?」と不安を抱える方もいるでしょう。空白期間が選考に与える影響やケース別の面接での伝え方、回答例などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職までの空白期間(ブランク)があることで選考は不利になるのか

筆者が支援した事例ですと、離職後の空白期間は3カ月程度であれば、企業が気にかけることは少ない傾向にあります。というのは、一般的に、転職活動にかかる期間は3カ月程度と言われており、「前職を退職してから転職活動を開始した」などの理由で3カ月程度の空白期間が発生することは珍しくないからです。

他方で、リクルートワークス研究所の調査(※1)によると、仕事を探している場合の離職から3カ月以内の再就職確率は、ブランクなしの場合に比べて15.6%低く、4カ月以上6カ月未満の再就職確率は21.4%低いという結果が出ています。ただし、6カ月以上の再就職確率は緩やかな推移であることや、ブランク期間が長引くにつれて再就職活動をやめる人が増えることから、就職活動をやめずに続けていれば、再就職確率の低下幅は小さくなると分析しています。この調査・分析結果から、空白期間が長くても、転職活動を続けていれば転職が実現する可能性はあると言えるでしょう。

再就職確率と再就職活動確率の推移グラフ

ただし、次に挙げる観点などから、企業は、空白期間の理由や状況を気にするものです。質問を受けた際は、背景も含めて納得感のある回答ができるよう準備しておきましょう。

(※1)リクルートワークス研究所「なぜ転職したいのに転職しないのか―転職の“都市伝説”を検証する―」P.13
https://www.works-i.com/research/report/item/tenshoku.pdf

空白期間(ブランク)のある応募者に対して人事が確認したい点とは

空白期間が長い応募者に対して企業が知りたいと思う点として、以下などが挙げられます。企業は、これらを、「空白期間は何をしていたのか?」「なぜ空白期間があるのか?」などの質問から把握しようとします。

仕事に対するモチベーションがあるか

「もし、働くことや仕事に対するモチベーション・意欲の低下が空白期間の理由ならば、入社しても力を発揮できないかもしれない/早期に退職してしまうかもしれない/組織や周囲に良くない影響を与えてしまうかもしれない」などの懸念から、仕事に対するモチベーションがあるかどうかは、企業が確認したいと考える点の一つです。

スキルを維持できているか

「各種のビジネススキルが鈍り、業務のキャッチアップに時間を要するかもしれない」「最新情報や知識に疎くスムーズに業務を遂行できないかもしれない」などの懸念から、スキルを維持できているかどうかも、企業が確認したいと考える点です。

空白期間の過ごし方とその背景にある事情・考え

「実現したいキャリアビジョン・プランの下で転職活動をしていたが、マッチする企業に出会えず空白期間が生じた」「プライベートの事情で空白期間が生じたが、その状況が変化したから今転職活動をしている」「資格取得のための勉強/留学をしていた」など、空白期間が生じた事情の背景にある求職者の考えや姿勢、また、空白期間に磨いてきたスキルなどが自社の募集にマッチするかどうかを判断したいと企業が考えるケースがあります。

ケース別 空白期間を伝える際のポイント【回答例あり】

では、選考において空白期間はどのように伝えると良いのでしょうか?面接や履歴書で空白期間について説明する際のポイントをケース別に紹介します。

履歴書での補足の仕方に正解はありませんが、「学歴・職歴」欄や「自己PR」欄を活用することができます。以下の例を参考に自身の事情に合った補足の仕方を検討しましょう。

希望に合う転職先が決まらず長引いたケース

仕事内容や年収条件、ワーク・ライフ・バランスなど、自身の希望にマッチする企業を求めて転職活動が長引いている場合、伝え方によっては、「転職先に望む条件が高く、入社しても不平不満を持ちやすく定着しにくい人材」「希望条件に市場価値が見合っていない人材」などの印象を与える可能性があります。

そこで、空白期間が長引いた理由を聞かれた際は、まず「どのようなことを実現したくて転職活動を進めていたのか」を伝えましょう。さらに、転職活動が長引いた理由を振り返り、転職先に求めることがどのように変化したのかを伝えると良いでしょう。その上で「なぜその企業を志望したのか」を、熱意を持って語り、自身の過去のスキル・経験・実績をどう活かして貢献できるのかまで伝えることがポイントです。

面接回答例

前職では、銀行にて法人営業を担当していました。事業会社の経営企画職にキャリアチェンジしたいと考えて転職活動を進めましたが、自身にマッチしていないと感じ、再度、キャリアの方向性を見つめ直しました。事業会社で新たな領域に挑戦するより、銀行時代の経験をベースに専門性を高めていきたいと考え、現在、金融領域のコンサルタント職を目指して転職活動に取り組んでおります。

事業承継やM&A領域のコンサルティングにおいて深い知見を持つ御社に魅力を感じて志望いたしました。金融業界での営業経験を活かし、クライアントに寄り添うコンサルタントとして貢献していきたいと考えております。

履歴書記入の際のポイント

履歴書には、「自己PR」欄に、上記の面接回答例に盛り込んだ、空白期間が長引いた理由と活動状況、そして自身のスキル・経験をどう活かして貢献できるかを端的にまとめると良いでしょう。

退職後、すぐに転職活動を行わず長引いたケース

退職してから転職活動を始めようと考え、準備を進めていなかったケースなどが当てはまります。また、一定のキャリアがあるために「すぐに転職できるだろう」と考え、退職後、すぐに転職活動を開始せず、空白期間が長引いてしまったケースなどもあるでしょう。こうした場合は「仕事に対する意識が低い」といった印象を与える可能性があります。

空白期間が長引いた理由を聞かれた際は、転職活動の準備が遅れた背景や、活動をすぐに開始しなかったことに対する自身の考えを伝えましょう。「現職の業務の引き継ぎに集中していたため、転職準備の時間が取れなかった」「家族との時間を大切にする時間を作ろうと考え、転職活動を○月から開始する計画を立てた」など、具体的に伝えることがポイントです。また、転職活動を本格的に開始した時期を伝え、仕事に対する意欲の高さをアピールすることも一案です。

面接回答例

前職の退職間際まで担当プロジェクトを完遂し、引き継ぎ体制の構築に集中していたため、転職活動の準備が遅れておりました。退職後、キャリアの振り返りや今後の方向性の検討を進めてから企業研究を行い、〇月より本格的に転職活動を開始しております。

前職では業務に追われ、家族との時間がなかなか取れなかったため、退職後の1カ月間を子育てに主体的に取り組む期間とした上で、転職活動の計画を立てました。○月より活動を開始し、現在、複数社の選考に進んでおります。

履歴書記入の際のポイント

この場合も、「自己PR」欄に、上記の面接回答例に盛り込んだ、転職活動をしなかった理由と活動状況、そして自身のスキル・経験をどう活かして貢献できるかを端的にまとめると良いでしょう。

スキルアップ・留学・資格の勉強をしていたケース

仕事に役立てることを前提とし、スキルアップや留学、資格の勉強などに時間を割いていた場合は、前向きな理由と捉えてもらいやすいでしょう。ただし「何を目的とし、どのようなことに取り組んでいたのか」を明確に伝えることが重要です。目的が特にない場合「キャリアについて考えず、突発的な思いつきで行動している」「入社しても、何かのきっかけですぐに離職するのではないか」となどの印象を与える可能性があります。

空白期間が長引いた理由を聞かれた際は、学んだことや経験したことのみを羅列するのではなく「何を目的とし、どのようなキャリアを目指したのか」を伝えましょう。さらに「実際にどのようなことを学び、どのようなスキル・知識を身に付けたのか」を具体的に語った上で「入社後、その企業や仕事においてどのように役立てられるのか」を伝えることがポイントです。

面接回答例

前職で経営企画を経験し、財務に興味を持ったことから公認会計士を目指しました。退職後、2年間勉強を続けましたが、公認会計士試験の合格には至らず、簿記1級の資格を取得しました。 もう1年、勉強を続けて再チャレンジするべきか悩んだ結果、資格取得に時間を費やすよりも実務でキャリアを積みたいと考え、転職活動を開始しました。

公認会計士資格取得に向けた学びや簿記1級を取得した知識を活かし、御社の経理・財務職で貢献していきたいと考えております。

履歴書記入の際のポイント

この場合、「学歴・職歴」欄と「自己PR」欄で補足できます。
「学歴・職歴」欄では、職歴の末尾に「資格取得(留学)のため退職」などと記入すると良いでしょう。また、「自己PR」欄で、上記の面接回答例に盛り込んだような、留学(資格取得、スキルアップ)に取り組んだ理由と転職活動状況、そして自身のスキル・経験をどう活かして貢献できるかを端的にまとめて補足することもできます。

やむを得ない理由による空白期間(ブランク)を伝える際のポイント【回答例あり】

家庭の事情や会社都合による離職、ケガ・病気の療養など、やむを得ない理由で空白期間が生じた場合、自身のセンシティブな部分にも関わるため「理由や背景を伝えにくい」と悩む方もいるでしょう。選考では、空白期間の有無と具体的な期間以外の情報を企業に伝える必要はありませんし、面接担当者から詳細な理由まで踏み込んで聞かれることもないでしょう。ただ、もし伝えられることがあれば、最低限伝えることで、入社の際に考慮してもらえることもあります。その場合の伝え方のポイントをご紹介します。

育児・介護などの家庭の事情

育児や介護など、家庭の事情で空白期間がある場合、「自身とその周囲に仕事に復帰する環境が整っているかどうか」を企業が確認したいと思うこともあります。現在の状況と、問題なく働けることを伝えましょう。

また、空白期間中に「仕事に役立つ本を読んでいた」「今後のキャリアについて見つめ直していた」など、復帰するための努力をしていた点を伝えるとプラスの評価につながる可能性があります。仕事への意欲や熱意、志望度の高さを伝えることが大切です。

面接回答例

家族の介護のため、1年前に退職し、介護に比重を置いた生活をしていました。この間、前職で担当していたマーケティングのトレンドをキャッチアップするべく、業界誌の購読やWebセミナーへの参加などを続けていました。

このたび、家族の病状改善や他の家族の協力により、平日日中の勤務が可能になったため、10年間のマーケティング経験を活かして御社に貢献できればと考えております。

履歴書記入の際のポイント

履歴書においては、次の方法で補足できます。

  • 「学歴・職歴」欄…職歴の末尾に「介護(育児)のため退職」などと記入。
  • 「自己PR」欄…自身のスキル・経験をどのように活かして貢献できるかや、空白期間中に取り組んでいた復帰のための努力や自己研鑽、現在は仕事に必要な時間を確保できることなどを伝える。

会社都合による退職

整理解雇や倒産など、会社都合で退職し、気持ちの切り替えや物理的な転職準備ができなかったために転職活動が長引くケースもあります。こうした場合、「自身の能力や勤務態度が離職の要因ではないこと」を理解してもらうことがポイントです。

前職企業の状況や再就職に至った背景について客観的に説明しましょう。前職の愚痴や不満にならないよう、事実を簡潔に伝えることが大切です。その上で、志望企業や志望職種で自身の経験・スキルをどのように活かして貢献できるかを伝えましょう。

面接回答例

前職の廃業に伴う整理解雇による離職後、じっくりと今後の方向性を考えるため、4カ月ほどかけてキャリアの振り返りやキャリアプランの検討、企業研究を行い、〇月より本格的に転職活動を開始しております。

御社は前職とは業種は異なりますが、前職で人事・教育担当として培ってきた人材育成や組織開発の経験・スキルを活かして貢献できればと思っております。

履歴書記入の際のポイント

履歴書においては、次の方法で補足できます。

  • 「学歴・職歴」欄…職歴の末尾に「会社都合により退職」などと記入。
  • 「自己PR」欄…自身のスキル・経験をどのように活かして貢献できるかや、空白期間中に取り組んでいた復帰のための努力や自己研鑽などを伝える。

ケガや病気療養が理由の場合

ケガや病気療養が理由の場合も、どこまで伝えるかは自身の判断であり、話したくないことを伝える必要はありません。他方で、空白期間中、仕事に対する勘やスキルを鈍らせないよう何らかの努力をしていた場合、それも伝えられるとプラスの評価につながる可能性があるため、伝えておくことは一案です。

また、入社後に定期的な通院・受診・検査が必要な場合は、自身の体調を守るためにも正直に伝える必要がある事項です。その上で、仕事に影響させない対策をどのように取るのか伝えれば、さらに企業が判断できる材料を与えることができます。

面接回答例

病気療養のため1年前に退職し、治療に専念していましたが、勤務に差し支えない状態まで回復したため、再度、システム開発に携わりたいと考え、〇月より本格的に転職活動を開始しております。定期検診のために3カ月に1回の通院が必要ですが、それ以外は通常の勤務が可能です。

治療中、セキュリティ関連の知識をさらに付けるために、情報処理安全確保支援士試験の勉強を進め、◯月に受験予定です。これまでの経験と新たに学んだ知識を活かして御社の事業に貢献したいと考えております。

履歴書記入の際のポイント

履歴書においては、次の方法で補足できます。

  • 「学歴・職歴」欄…職歴の末尾に「病気療養のため退職」「現在は回復し、業務に支障はありません」などと記入。
  • 「自己PR」欄…自身のスキル・経験をどのように活かして貢献できるかや、空白期間中に取り組んでいた復帰のための努力や自己研鑽、現在は業務に支障がないことを伝える。

「空白期間(ブランク)あり」から転職を実現させた事例

空白期間がある状態から転職を実現させた方の例を経験を基にご紹介します。

1年半の空白期間(資格取得を断念)から転職を実現

金融機関で法人営業を担当していたAさん。公認会計士を目指して離職し、勉強を進めたが、自身の適性などから勉強の継続が困難と判断。日商簿記2級のみを取得し、空白期間1年半弱で転職活動を開始。選考では、空白期間の背景や資格取得を断念したことを正直に伝えるとともに、空白期間を経て考え直したキャリアプラン、すなわち、金融機関時代に培った財務分析力やコミュケーション力、提案力を活かしてコンサルタントとして顧客企業の事業成長に貢献したいことを志望動機に。また、M&A領域での専門性を培っていきたいことなども伝え、マッチしたコンサルティング会社への転職を実現した。

半年間の育児期間から転職を実現

ベンチャー企業で営業企画を担当していたBさん。多忙により家事・育児を共働きのパートナーに任せきりにしていたことからパートナーとの関係が悪化し、働き方を見直すために離職。半年間、家事・育児に専念しながらパートナーと話し合いを行い、働き方を検討した結果、家事・育児との両立を最重要視して転職活動を進めることに。働き方の面でマッチせずに不採用となる企業もあったが、最終的には、リモートワークやフレックス勤務が可能で、経営陣や管理職がワーク・ライフ・バランス重視に理解のある別業種の企業から前職の実績や経験・スキルが評価され、営業企画として転職が実現した。

空白期間(ブランク)の伝え方に悩むときは、転職エージェントやスカウトサービスを活用することも一案

空白期間の伝え方に悩むときは、転職エージェントを活用する方法も一案です。

転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談すれば、空白期間の理由の伝え方についてアドバイスをもらえることがあります。企業が納得しやすいと思われる回答を考えるヒントを得られるでしょう。また、企業に応募者を推薦する際に、空白期間の事情や応募者の人物像について第三者の視点で補足説明を加えてもらえることもあります。判断材料が増えることで、選考にプラスに働くかもしれません。

一方、スカウトサービスでは、レジュメなどに空白期間の情報やその理由・背景が記載されていた場合、それらも把握した上でスカウトメールが送られるため、自身にマッチする企業に出会いやすいというメリットがあります。

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粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。