「忍耐力」を自己PRで伝える場合のポイントと自己PR例文

転職活動の自己PRで「忍耐力」を伝える場合、どのような点に注意すればより効果的なアピールにつなげられるのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、忍耐力を自己PRで伝える際のポイントや企業が確認していること、注意点などを伺いました。自己PRの例文や作成する際の構成要素なども合わせてご紹介していきます。

「忍耐力」を自己PRで伝える場合のポイント

仕事における忍耐力とは、「困難や逆境の場面でも、目標達成や目的に向かって考え、行動し続けられる力」を指します。自己PRで忍耐力をアピールする際には、単に忍耐力があるというだけではなく、それが成果につながったことまでをセットにして伝えるのがポイントです。「辛くても我慢できる」といった一般的な忍耐力ではなく、自身のエピソードに基づいた自分らしい「忍耐力」を伝えるといいでしょう。

一方で、忍耐力をアピールしたつもりが、伝え方によっては「本来ならその状況をもっと早く改善できたのではないか」「他の方法を試すことができたのではないか」「他の解決策を考える思考力が不足しているのではないか」などととらえられ、「単にその状況に甘んじていただけでは?」と誤解されかねません。また、自分では粘り強く取り組んで困難を乗り越えたと考えている事案でも、採用担当者の視点では、「困難や逆境に対するレベル感やビジネススキルが低いのではないか」「周囲とうまく連携できないのではないか」ととらえられることもあり、評価につながらない可能性もあります。「耐え忍んだエピソード」ではなく、「背景や目的」「忍耐力によって得られた成果」を中心において伝えることを意識するようにしましょう。

「忍耐力」の自己PR例文

「忍耐力」を強みとして伝える自己PR例文を職種別にご紹介します。

営業・管理職の自己PR例文

私の強みは、厳しい状況やストレス下でも、視点・発想を広げて組織で解決する方法を思考し、粘り強く実行できる「忍耐力」です。
会社としても自チームとしても業績がなかなか伸びず、経営陣からのプレッシャーとメンバーのモチベーション維持に苦労していた頃、足元を振り返ると営業部内の7チームはそれぞれ縄張り意識が強く、情報共有や連携に課題があると感じました。そこでマネジャー陣に働きかけ、情報共有ミーティングの実施頻度を週次に増やし、共有内容を成功失敗事例の結果だけではなく、具体的に直面している課題に絞り全体で解決する方向に転換。各チームメンバーの交流も促して、案件ごとのチーム組成・アイディア出し、個人やチームより営業部全体での目標達成を重視する意識づけも行いました。半年後には全体で営業目標を達成。営業部内の雰囲気も変わり、組織風土の改革にもつながりました。こうした経験は、営業管理職として貴社でも活かせると考えております。

Web・プロダクトマネジャー(PdM)職の自己PR例文

計画通りに行かない中でも、様々な打ち手を施し成果に結びつける「忍耐力」が私の強みです。
人事労務向けSaaSプロダクトのリニューアル案件で、企業ユーザー数増加に対応する安定稼働維持やUXの向上、開発陣の負荷低減のため新技術への移行計画がありました。社内におけるコミュニケーション不足によって、営業やCS(カスタマーサクセス)から顧客にリニューアルするメリットを説明できないなどの不満が数多く寄せられたため、コミュニケーション不足を反省して丁寧に説明会を実施しました。社内にはわかりやすさを心がけ、リニューアル前後の変化・改善点も明確に伝えるようにしました。大口顧客へは営業やCSに同行し技術観点からの説明やフォローも徹底。リニューアル後のサポートチームも新たに設置しました。リニューアル時期は3ヵ月ほど遅れましたが、結果的には社内メンバーの納得が得られたことからよりスムーズに移行が進められ、PdMとしてARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)〇億円規模のプロダクトリニューアルを達成。自身の意見に固執せず、周囲の反対意見に対しても真摯に応え、諦めずに解決策を探り実行できる力は、貴社のプロダクト成長にも寄与できると考えております。

人事・管理職の自己PR例文

困難な状況でも本質的な課題や解決策は何かを冷静に分析し、中長期的な解決行動を実直に遂行できる「忍耐力」が、私の強みです。
急激な人員増加に対して組織体制の整備が追い付かなかったことで、人事部への要望や批判が増え、経営陣への不満も高まっていました。その際、要望への短期的な対応(メンター制度の導入、研修の充実、人員配置の見直しなど)も実施しつつ、従業員満足度の調査結果を詳細に分析しました。結果、仕事内容への不満は少なく、組織としてビジョンの一貫性がないことへの不満、特に古参の管理職によるマネジメントへの不満が多いことが判明。しかし、特定の管理職への責任問題とはせず、人事として共に解決するスタンスで個別に説明し協力を依頼し、全社での活動は経営陣と、各部門での打ち手は管理職やチームごとの課題に応じて考え、アクションをしていきました。1年後には離職率は〇%に低下、従業員満足度も向上して現組織に対してポジティブな見方をする従業員が〇%超になりました。場当たり的な解決ではなく、持続的に成長できる組織づくりに人事として貢献できると考えております。

自己PRで採用担当者が確認していること

採用担当者が、履歴書や職務経歴書の自己PRを読んで確認しているポイントは次のとおりです。

  • 職務経歴だけではつかめない、その人の強み(スキル・実績・取り組み姿勢)など
  • その強みを活かし、自社でどのように活躍・貢献してくれそうか

忍耐力を強みにしている応募者の場合、「ストレス下での対応力」や「継続力」があるかどうかも見ています。
例えば、ビジネスの中で未知の事柄への対応や困難な状況といったストレスがかかる場面は往々にしてあり得ますが、その際にどのように考えて行動し乗り越えていけるのかという点。また、仕事上すぐに成果が出ないこと、チャレンジやアクションが失敗することもあるでしょう。そういった状況で、成果が出るまで粘り強く継続して思考・行動できるかという点もチェックしています。その中には、その人なりの仕事の進め方や思考スタイル、対応力などを伝えることができ、その企業の社風・ポジションに合致するかといったチェックポイントも含まれています。

自己PR文を作成する際には、これらのポイントを意識してみてください。
自己PR内容が興味を持たれれば、「よりくわしい話を聞いてみたい」と、面接に招かれる確率が高まります。

自己PR文の作り方のコツ

履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。

【1】書き出し

書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「忍耐力」を入れておくとわかりやすいでしょう。

【2】【1】を裏付けるエピソード

最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。
ただし、長文をダラダラと書くと要点が掴みにくくなります。200~400文字程度にまとめてください。

【3】成果

【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。
数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。

【4】締め

応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
入社後にどのような活躍・貢献がしたいかという意思表示をすることで、採用担当者の期待が高まります。

自己PR文を作成する際の注意点

自己PR文を作成する際、内容や表現が不適切だと、アピールポイントが伝わらないばかりか、マイナス印象を与えてしまうこともあります。
自己PR文の作成にあたり、以下のポイントに注意してください。

企業が求める人物像にマッチしていない

自身では「強み」と認識しているアピールポイントも、応募企業がそれを求めていなければ、自己PRの効果は望めません。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業ではどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかを掴みましょう。
その上で、企業が求める要素と自身の強みが一致しているポイントをピックアップし、アピールすると良いでしょう。

具体性に欠け、人柄がイメージしにくい

曖昧で抽象的な表現は避けましょう。例えば「コミュニケーション力に自信があります」だけでは、日頃の業務でコミュニケーション力がどのように発揮されているのかが伝わりません。
「どのような相手と」「どのような場面で」「どのようなスタイルで」「どのようなことを心がけて」など、スキルの要素を細かく分解し、具体的なエピソードを交えて記載しましょう。そうすれば、読み手は入社後の活躍のイメージを描くことができます。

要点が絞られていない

アピールポイントが多すぎると、読み手の印象に残りにくくなります。文章が冗長になると、「要点をわかりやすく伝えられない人」と、マイナスに捉えられてしまうこともあります。
伝える強みは1つ、多くても3つ以内に絞りましょう。

専門用語が多く、分かりやすさに欠ける

異業界に応募する場合、これまでの業界の専門用語を多用しないように注意しましょう。
読み手は内容を理解できないばかりか、「配慮に欠けた人」とマイナスの印象を抱くかもしれません。
専門用語はなるべく使用せず、業界以外の人にも伝わるような一般的なワードに置き換えるか、括弧書きなどで説明を添えるといった工夫をしましょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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