職務経歴書の「職務要約・職務概要」の書き方と職種別・ケース別の例文9選

書類を確認する人たち

職務経歴書の「職務要約・職務概要」の役割や具体的な書き方、注意したい点などを組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。職種別の書き方の例や、転職回数が多い場合などの書き方ポイントも合わせてご紹介します。

職務経歴書の「職務要約・職務概要」とは?

「職務要約」とは、「職務概要」とも言われ、求職者のこれまでの職歴をまとめた「あらすじ」のようなものです。職務経歴書の冒頭に記載し、「採用担当者が経験・スキルを一目で理解できるようにすること」を目的としています。

職務経歴書のフォーマットによって、「職務要約」と記載している場合と、「職務概要」と記載している場合がありますが、どちらを使用しても問題はありません。

【職務経歴書に記載する「職務要約・職務概要」サンプル】

「職務要約・職務概要」と、「職務経歴」「職務内容」の違いは?

「職務経歴」とは、これまで経験した職務の経歴のことです。

「職務内容」では、それぞれの職務について、経験した業務・身につけたスキル・挙げた実績などの詳細を記載します。これらを端的にまとめて要約したものが「職務要約・職務概要」となります。

また、「職務内容は、業務内容と違うのか」と悩むケースもありますが、「業務内容」は、部署や事業部全体で取り組んでいる仕事を指します。これを細分化した上で、個々の従業員が担当している業務・役割が「職務内容」です。

「職務要約はいらない」という説は本当?

職務経歴書の書式は自由なため、「職務要約・職務概要」を記載することは必須ではありません。しかし、採用担当者は、限られた時間のなかで、たくさんの応募者の職務経歴書に目を通しているため、冒頭の「職務要約」で興味を持たれるようにすることが重要です。

また、職務経歴書は、書式だけでなく、記載する内容も自由なので、応募企業にマッチする経験・スキルや、よりアピールしたい自身の強みをクローズアップして書くことができるので、選考通過にもプラスに働くケースがあります。

「職務要約・職務概要」を書く前の準備

「職務要約・職務概要」を書く前にやっておきたい準備をご紹介します。

キャリアの棚卸しを行い、経験・スキル・実績を整理する

これまでの経験・スキル・実績を整理し、キャリアの棚卸しを行いましょう。詳細を覚えていないと思う場合でも、過去に経験した業務内容をしっかりと振り返ることで洗い出せるでしょう。

応募企業にマッチするアピールポイントを精査する

企業研究を行い、応募企業が求めている人材像や、業務に必要とされる経験・スキル、仕事の進め方などを理解しましょう。その上で、キャリアの棚卸しで整理した経験・スキル・実績の中から、応募企業にマッチするようなアピールポイントを精査します。また、経験・スキルがわかりやすく伝わるようなキーワードも洗い出しておくと良いでしょう。

「職務要約・職務概要」を作成する際の書き方と注意点

「職務要約・職務概要」を作成する際の注意点と書き方例をご紹介します。

3~5行程度を目安に、時系列で簡潔にまとめる

「職務要約・職務概要」は、これまでの職務経歴を要約する項目なので、ポイントを押さえて簡潔に書くように心掛けましょう。目安となるボリュームは3~5行(200文字)程度となります。会社名、職務・職種の内容と時期など、現在までの経歴を時系列でまとめていきます。

企業は求める経験・スキルを確認し、共通することを中心にまとめる

単純に時系列で経歴をまとめるだけでは、どうしても内容が散漫になりがちです。特に、社会人経験が長く、多くの経験・スキルを持っている方の場合は、これまでかかわった業務やプロジェクト、身につけたスキルなどを全て書くこと自体が難しいでしょう。志望する企業が求めている経験・スキルにマッチする部分を強調し、メリハリを付けてまとめることが大切です。

実績は数値を交えて客観的に伝わるようにする

過去の実績について書く場合には、客観的に伝わるよう、数字を交えてまとめることがポイントです。「生産量が30%増加」「売上3,000万円アップ」「コストを5%削減」「30名のメンバーを率いるリーダー」といったように、定量的な書き方を心掛けるようにしましょう。

複数社を経験している場合の「職務要約」のポイント【例文あり】

複数社を経験している場合に意識したいポイントをご紹介します。

応募職種・ポジションによりマッチしている経験・スキルを書く

転職回数が多く、複数社に勤務した経験がある場合は、前述の社会人経験が長い場合と同様に、「応募企業の求める経験・スキルに合致している内容」や「よりアピールにつながりそうなこと」を書きましょう。そのほかの職歴は、入社年と社名、職種程度の記載で問題ありません。

マッチしていることが多い場合は、直近の経験を中心に書く

応募職種やポジションにマッチする経験・スキルが多数ある場合は、なるべく直近の経験を中心に書くと良いでしょう。例えば10年前の経験より、前職などで直近に経験したことの方が、現時点での経験・スキルの幅や度合いが伝わりやすいと言えます。業界知識や専門知識などについても、直近の経験を伝えれば、きちんと知識をアップデートできていることが伝わるでしょう。

職務経歴書のフォーマットはキャリア式がおすすめ

転職回数が多く、さまざまな経験・スキルがある場合は、冒頭の「職務要約」をシンプルにまとめきれないケースもあります。また、端的にまとめることができても、時系列でそれぞれの職務経歴を伝える「編年体式」の職務経歴書では、アピールしたいポイントが伝わりにくくなる可能性があります。

「キャリア式」の職務経歴書は、時系列ではなく、職務内容や分野ごとにまとめる形式です。職務経歴書の前半部分で応募企業や応募職種にマッチする経験・スキルをまとめることができるので、よりアピールしやすいでしょう。

異業界転職などの経験が多い場合は、応募職種・ポジションにマッチする要素を抽出

異業界・異職種への転職経験が多いなどで、これまで経験してきた業界・業種・職種がバラバラという場合は、応募企業にマッチする要素を抽出することがポイントです。例えば「事業・組織の立ち上げ」「若手人材育成などのマネジメント」「チームビルディング」「プロジェクトマネジメント」など、過去の経験の中で共通する要素を打ち出すと良いでしょう。

また、キャリア式の職務経歴書を使えば、応募企業で発揮できる強み別に経験・スキルをまとめることができます。

複数社を経験している場合の職務要約・職務概要の例文

【例文】

SIer2社にて、SEと大企業向けのプリセールスを経験した後、外資系IT企業でソリューションセールスを経験しました。その後、外資系・日系というカルチャーが異なる組織にてマネジメントスキルを磨きたいと考え、外資系・日系のITスタートアップ2社で営業組織の立ち上げとマネジメントを手掛けました。組織デザインや人材育成、営業戦略などを実行し、前職の日系ITスタートアップでは、営業責任者として約3年で売上を約◯倍、組織規模を◯倍にグロースさせることに成功しております。

未経験業界・職種に挑戦する場合のポイント【例文あり】

未経験職種・職種への転職を目指す場合、これまでの経験・スキルの中から応募企業で発揮できる強みをアピールすることがポイントです。業界・職種が違っても、共通して求められる経験・スキルを抽出しましょう。

また、応募企業の業界や職種で活かせるような異業界・異職種の知見を提示することもアピールにつながるでしょう。現在の事業内容や今後の事業展開など、応募企業の方向性にマッチしている要素を伝えることが大事です。

【例文】

前職では、経理として決算業務などの財務会計を中心に経験を積んだ後、予実管理や収益性分析にも挑戦し、管理会計の知見を身につけました。現職では、財務M&A業務のサポート、金融機関の融資や社債の発行などの業務に加え、グループ会社のエクイティファイナンスのサポートにも業務範囲を広げ、資金調達の多様な仕組みを学んでおります。経理という守りの要素と、財務における資金調達やM&Aなどの攻めの要素における知見や、予実管理の管理会計知識、財務分析力などを活かし、企業の経営戦略の企画・実行を担っていきたいと考えております。

【職種別】「職務要約・職務概要」の例文7選

職種別の「職務要約・職務概要」の例文7つをご紹介します。

営業職の例文

【例文】

新卒入社した○○株式会社で、スーパー・コンビニ向けの冷凍食品を扱う営業部に所属。主に新規顧客開拓に従事し、企画立案・提案・プレゼンテーションに携わりました。冷凍食品を担当した○年間で○円の売上アップを達成し、昨年は○名の営業部の中でトップの成績を収め、社長賞を獲得しました。現在はチームリーダーとして○名の部下の育成も行っております。

コンサルティング営業の例文

【例文】

株式会社○○に入社後、人材採用コンサルティング営業として、採用戦略や研修・教育、人事制度の構築などの提案や運用サポートを手掛け、○○業界の上場企業など大手企業を中心に、延べ○社を担当いたしました。20XX年に全社MVPを受賞し、営業マネジャーとしてマネジメントも経験しております。20XX年に○○株式会社へ転職し、人事リーダーとして新卒・中途・アルバイトなどの採用および人事制度設計を担当しております。○年間で○名の増員と、人員の定着率改善に貢献いたしました。

業務コンサルタントの例文

【例文】

金融関係シンクタンクにてITを活用した銀行向けの経営改善のコンサルティング業務に○年◯カ月従事してきました。銀行の取引先管理の改善プロジェクトでは、取引先の経営状態診断システムを開発し、導入まで見届けるなど、情報収集や分析レポート作成にとどまらず、導入という泥臭い領域までを経験しております。近年はDX推進の支援にも携わっております。

経営企画の例文

【例文】

新卒で入社したコンサルティングファームにて新規事業戦略の立案、○○メーカーにて新規事業企画/投資企画および実行業務に従事。現職の○○メーカーでは、短・中期から長期までの全ての実行計画において、データ分析から実行計画の立案推進まで計画全般に携わってまいりました。特に、中期開発ロードマップの策定・実施では、プランの策定から実際の遂行まで、仮説検証型のビジネス手法によって業務改革を達成することができました。20XX年にマネジャーになってからは、メンバーマネジメントとプロジェクト全体の統括を任されております。

生産技術職の例文

【例文】

自動車部品メーカーの○○株式会社に○年間勤続し、生産技術担当として工程設計・設備保全などを担当しました。20XX年に新規ラインを立ち上げる際には、○名ほどのメンバーのリーダーを任され、仕様の検討段階からラインオフまで、全ての工程に携わりました。同ラインの立ち上げにより、出荷量の○%アップと同時に、不良率の○%低減を達成しました。入社後も、リーダーとしての経験を活かし、生産現場の改善に貢献したいと考えております。

IT系技術職の例文

【例文】

○○株式会社に○年間勤続し、20XX年~20XX年の○年間は、主に自動車部品メーカー向けの生産管理システム(開発環境はLinux)の詳細設計・開発・導入後のメンテナンスを担当しました。20XX年以降は、工作機械メーカー向けの業務システムを開発するプロジェクトのPL(プロジェクトリーダー)として、要件定義や案件見積と並行し、業務効率化についても担当しています。

人事の例文

【例文】

○年間にわたり、労務管理・採用・教育・制度企画など人事業務全般を経験してまいりました。HRBPの導入にも携わり、エンジニア部門のHRBPマネジャーとして採用、人事課題の解決に取り組みました。直近数年は全社の制度規格の見直し、新規導入により、従業員エンゲージメント向上の成果を挙げています。

職務経歴書の作成で迷ったら転職エージェントやスカウトサービスを活用する方法もある

効果的な職務経歴書を効率良く作成したい場合は、転職エージェントやスカウトサービスを活用して書類作成のサポートを受ける方法もあります。

特に「経験が長い」「転職回数が多い」などの場合、その全てを伝えようとしてメリハリのない職務経歴書を作成してしまうケースもあります。転職エージェントでは、客観的に見たキャリアのハイライトやアピールしたい要素、盛り込みたい数字などについて具体的なアドバイスを受けることができます。

また、ダウンロードした職務経歴書のフォーマットをそのまま使うのではなく、個々の経験・スキル・経歴や応募企業の求めることなどに合わせてカスタマイズする方法や、プロジェクト実績を別紙にまとめる方法などについてもアドバイスします。より読みやすく伝わりやすい、効果的な職務経歴書を作成できるでしょう。

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アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。