自己PRでコミュニケーション力をアピールするコツ【例文・言い換え例あり】

オフィスにて打ち合わせをしている様子

転職活動の自己PRで「コミュニケーション力」を伝える場合、どのような点に注意すればより効果的なアピールにつなげられるのでしょうか。組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、コミュニケーション力を自己PRで伝える際のポイントや企業が確認していること、注意点などを伺いました。自己PRを作成する際の構成要素や、職種別の例文も合わせてご紹介していきます。

仕事におけるコミュニケーション力とは何か

コミュニケーション力とは、「人と意思疎通できる能力」「人と関係性を築く能力」といえます。以降で詳しく解説していきます。

コミュニケーション力を構成する3つの主な「力」

コミュニケーション力を構成する3つの主な力として、「聞く力」「伝える力」「連携する力」が挙げられます。

聞く力

「聞く力」とは、相手の話に耳を傾け、相手が伝えたいことを理解する力を指します。相手の話をただ聞くのではなく、そこから相手の伝えたいことの真意や裏側にある思いなどを汲み取ったり、問いかけをしたりすることで、共通認識を持って深い理解につなげていく力と言えるでしょう。

「グラフィックレコーディング(文字やイラストを使ってリアルタイムに記録すること)」という手法のように、相手が話している内容を可視化し、共通認識を持つなどで、より理解を深めていける力は、さまざまなビジネスにおいて大きな強みとなります。

伝える力

「伝える力」とは、自身が伝えたいことを相手に理解してもらう力を指します。
自身が伝えたい内容、要点、結論を明確にしたうえで、相手の役職や立ち位置、認識の度合いなどに応じて工夫し、齟齬なく伝えることができる力です。
例えば、資料をまとめたり、図解で説明したり、メタファーを入れたりして相手にわかりやすくすることや、エビデンスをそろえて説得したりすることも「伝える力」の一部と言えます。また、フレームワークを活用するなどで、短時間で相手の理解を深める工夫をしている場合も、「伝える力」を持っていると言えるでしょう。

連携する力

「連携する力」とは、相手を説得したり、交渉して協力を仰いだりする力を指します。伝える力や聞く力はコミュニケーションの基盤ではありますが、これらを応用して他者と連携することも大切です。

ビジネスにおいては、社内外問わず、多様な立場や価値観を持つ人と仕事をする機会も多くあるため、それぞれの間に立って利害調整をしたり、共通認識を持ってゴール設定をしたり、目標達成に向けて関係各所を取りまとめ、時間軸の設定や物事を推進していったりする力も必要になります。そのため、関係各所への気配りや協調性、チームワーク、問題解決力、柔軟性、巻き込み力なども「連携する力」に含まれると言えるでしょう。

言語能力だけでなく、非言語能力も含まれる

言語に関連する能力だけでなく、身振り手振りや、相手の意図や思いを汲み取る力などもコミュニケーション力に含まれます。

例えば、相手が話しやすい場づくりができることも、「聞く力」に含まれると言えます。質問攻めにすることなく、頷いたり相槌を打ったり、考える間を持たせたり、アイコンタクトをしたりすることで、相手の考えを引き出すことができます。

自己PRで「コミュニケーション力」をアピールするコツ

応募書類や面接の自己PRで「コミュニケーション力」をアピールするコツをご紹介します。

「コミュニケーション力」を自分ならではの強みに言い換える

仮に「私の強みはコミュニケーション力です」とだけ伝えても、それだけでは企業の採用担当者が応募者の人物像をイメージすることはできません。ましてやほかの応募者との差別化も不可能でしょう。 応募する企業や職種・ポジションで求められる力を踏まえたうえで、「コミュニケーション力」を自分ならではの強みに言い換えてアピールすることが重要です。

まずは、過去の経験・実績をベースに自身のコミュニケーション力を「聞く力」「伝える力」「連携する力」に分解し、どこをクローズアップして伝えたらいいのかを考えてみましょう。自身の強みの解像度を高めて具体的に言い換え、「入社後にこの職種・このポジション・この領域で、このような強みを発揮できる」とアピールしましょう。

例えば、応募後の配属先となる部門が「組織体制の変革」を課題としていた場合は、チームや組織の改善・改革の経験や発揮した力をベースに、コミュニケーション力の言い換えをすることがポイントです。

<言い換え例>

・現職の○百名規模の組織で実行してきた組織変革の経験値とノウハウが強み
・組織内の多様な関係者間の思惑や利害を整理し、全体最適を図りながらプロジェクトを遂行する力が強み

「聞く力」「伝える力」「連携する力」の言い換え例を後述するので、そちらも参考にしてみましょう。

シチュエーションやスタイルを具体的に伝える

自己PRでは「どのようなシチュエーションで」「どのような人々を相手に」「どのようなスタイルで」コミュニケーションをとってきたのかを伝えることも重要です。
例えば、以下のような例が挙げられます。

・例1:ニーズが明確化されていない顧客にさまざまな角度から質問を投げかけ、潜在課題を掘り起こした
・例2:プロジェクトの方針に反対している部門と対話を重ね、双方が納得できるポイントを探して説得した
・例3:関係各所への根回しを周到に行い、組織全体で連携していくための協力を取り付けた」

過去のエピソードを通じて具体的に伝えることで、採用ポジションで求められるコミュニケーション力を持っているかどうかを判断してもらいやすくなります。

面接中のコミュニケーションにも注意する

自己PRでコミュニケーション力をアピールしている場合は、面接中のコミュニケーションにも注意が必要です。これまでコミュニケーション力を発揮して実績を積んできた人物でも、面接の場で以下のようなコミュニケーションをした場合は、「説得力に欠ける」と懸念を持たれてしまう可能性もあります。

  • 自身が話したい経験・スキル・実績・成功事例などを一方的にアピールする
  • 専門用語や略語、横文字などを多用し、誰にでも伝わるような話し方を意識していない
  • 面接担当者が自社の特徴や魅力などを説明した際に、興味を示さず、相互理解を深めるためのコミュニケーションをとろうとしない
  • 応募企業の問題点や競合他社と比較して劣っている点などをそのまま指摘し、面接担当者の立場や心情に配慮しない
  • 面接担当者との対話の中で、自身がわからないことや理解・把握していないことが出てきても、あえて触れずに話題を変えようとする

「コミュニケーション力」の言い換え例

「聞く力」「伝える力」「連携する力」を言い換えする際の例を紹介します。自身ならではの強みをアピールするためにも、以下の言い換え例を参考にしてみましょう。

「聞く力」の言い換え例

  • 相手の潜在ニーズを引き出し、具現化する力
  • 相手が本音を話せるように最適な場づくりをする力
  • 多様な角度からの問いを立て、新たな課題を発見する力
  • 複雑な事柄や抽象的な物事も的確に整理する力

「伝える力」の言い換え例

  • 論理的かつ感情にも訴えるプレゼンテーション力
  • 場面に応じた柔軟な交渉力
  • 相手を説得する力
  • 他者の意見を引き出し、物事を深化させる力

「連携する力」の言い換え例

  • 社内外の関係者を巻き込む力
  • 組織のチームワークや団結力を高める力
  • 新しいスキームを構築する力
  • 組織を統率し、プロジェクトを推進する力
  • 多様な関係者間の合意形成力

自己PR文を作成する際のポイント

自己PR文の構成要素や作成の際のポイント、注意したい点をご紹介します。

自己PR文の構成要素と作成のポイント

履歴書や職務経歴書に自己PRを記載する際は、以下の構成を意識して文章を作成しましょう。

【1】書き出し

書き出しには、強み、経験領域、こだわりなどを記載します。ここで「コミュニケーション力」を入れておくとわかりやすいでしょう。

【2】【1】を裏付けるエピソード

最初の一文で打ち出したアピールポイントについて、これまでの経験の中でどう発揮されてきたのかを読み手がイメージできるよう、具体的なエピソードを記します。
開示できる範囲内で数字や固有名詞なども盛り込むと、手がけてきた仕事の規模感やイメージが伝わりやすくなります。

ただし、長々と文章を続けても相手にとって読みにくく、アピールしたいポイントも伝わりにくくなってしまうので、200~400文字程度にまとめましょう。

【3】 成果

【1】の強みが発揮され、【2】のプロセスを経て、成果が挙がったことがあれば記載します。数字や周囲からの評価など、客観的な情報を伝えましょう。

【4】締め

応募企業で働くことへの意欲が伝わるような言葉で締めくくりましょう。
「入社後にどのような活躍・貢献がしたいか」という意思表示をすることで、採用担当者の期待値を高めることができます。

自己PR作成の際に注意したい点

自身では「強み」と認識しているポイントを自己PRでアピールしても、応募する企業や職種・ポジションに必要な力とズレている場合は、評価にはつながりにくいでしょう。企業のホームページや採用情報などを読み込み、その企業でどのような人材が活躍しているのか、どのような人材を求めているのかを理解することがまず大事です。「企業が求める力」を踏まえ、一致している自身の強みをピックアップし、アピールすることがポイントです。

【職種別】コミュニケーション力の自己PR例文

職種別にコミュニケーション力をアピールする自己PRの例文をご紹介します。

営業職の自己PR例文

顧客の潜在ニーズを引き出し、個別提案につなげる力を強みとしております。
現職の精密機器メーカーでは、営業対象となる顧客層は中小企業の経営者だったため、初回訪問時にはいきなり商品の案内をするのではなく、雑談からスタートする形式をとっています。まず自分自身についてオープンに話すことで、お客様が気軽に本音を話しやすい空気を作り、その上で創業から今に至るエピソードを語っていただき、現在の経営課題のヒアリングにつなげていくように心掛けています。また、お客様が気にかけていることを調べて情報提供したり、自分なりに仮説を立てて提案したりして、会話のキャッチボールを促進し、潜在的なニーズを掘り起こしています。その成果として、昨年は前年比○%で売上目標を達成しました。
これからも経営者の懐に飛び込んでニーズを引き出す力を活かし、さらに高度な経営課題を解決できるようになりたいと考えています。

人事・管理部門職の自己PR例文

多様なバックグラウンドのメンバーと協働する場面で、組織全体の意識をすり合わせていく力が私の強みであると考えております。
前職では、人事部門にて採用活動の方針とオペレーションを大きく刷新したことがありました。もともと、正社員・派遣スタッフ・業務委託など、多様な雇用形態のメンバーで構成された組織であり、加えて各部門の採用責任者、情報システム担当者も巻き込んでのプロジェクトです。そこで、一人ひとりの立場や考えを汲み取り、その人の目線に合わせ、その人に適した表現で、経営陣がこの取り組みを行う意義・目的を繰り返し伝えました。こうして目標への目線を合わせたことでチームに一体感が生まれ、リニューアルプロジェクトを完遂。採用実績が前年比○%に向上しました。
これからも、経営トップの意思を現場に伝達する役割を担い、組織全体の意識を同じ方向に導く力を発揮して、管理部門の円滑な運営に貢献したいと考えています。

システムエンジニア・プロジェクトリーダー職の自己PR例文

複数のステークホルダーと連携し、合意形成へと導く力が私の強みです。また、これまでシステムの開発と運用のどちらも手がけた経験があるため、双方の開発意図を踏まえ、実現可能な範囲を理解した上で取捨選択ができる点も強みとしております。
協力会社3社が参加する1億円規模のプロジェクトでリーダーを務めた際には、顧客の要望と社内外の各領域のエンジニアの考えをすり合わせるために情報共有ツールを導入。関係者が集まる月次定例会では進捗や方針の確認と着地点の共有を行いました。段階的に合意形成を行うことを意識し、顧客も含めた全関係者のゴールがぶれないようにしたことで、要望通りの予算・納期・仕様を実現することができました。
今後もプロジェクト全体を見渡し、多くの人と連携する力を活かして、より大規模な案件にチャレンジしたいと考えています。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。