転職で求められるスキルは年代やポジションで違う?スキルの探し方とアピール方法を解説 

転職活動では、応募企業が求めている役割や、レベルに合致したスキルをアピールすることが成功の鍵となります。年代別、ポジション別に「転職に必要なスキル」とはどのようなものを指すのか、自分の武器になるスキルはどのように探し、整理してアピールに繋げればよいのかを、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント・粟野友樹氏が解説します。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

転職で企業が重視するスキルは年代、ポジションによっても異なる

転職で重視されるスキルは主に2種類

転職活動で求められるスキルには、大きく次の2種類があります。これらは希望する職種やポジション、年代、企業がイメージする人物像によっても異なることを知っておきましょう。

ポータブルスキル

ポータブルスキルとは、どのような業界、企業、職場でも通用する、汎用性の高いスキルのことです。「仕事の進め方」「人との関わり方」によって構成され、「論理的思考力」「コミュニケーション能力」「交渉力」などが一例です。特に、未経験の職種に転職するキャリアチェンジの場合は、ポータブルスキルをしっかりアピールすることが成功の鍵となります。

テクニカルスキル

テクニカルスキルとは、その業務を遂行するために欠かせない知識や技術、能力のことです。例えば、エンジニアならプログラミング言語を用いたプロダクトの開発力、営業企画ならマーケットの分析や戦略立案・実行力といった、与えられた職務で活かせる専門的なスキルを指します。

20代の転職で重視されるスキルとは

20代の転職では、「まだ若く伸び代がある」という観点から、ポテンシャル(基礎学力や素養)やスタンス(仕事に対する価値観や考え方)に注目されます。またスキルに関しては、テクニカルスキルというよりもポータブルスキルが求められる傾向があります。
例えば、課題を明らかにして考え抜く力、計画を立てて実行する力、上司からの指示への対応力、提案力など、自身の業務を遂行するうえで必要な、基本的な能力が求められるでしょう。

30代の転職で重視されるスキルとは

ポテンシャルやスタンスが評価される20代とは違い、即戦力の働きが求められる30代の転職では、ポータブルスキルに加えてテクニカルスキルがより重視される傾向があります。求められるテクニカルスキルは職種によって異なり、営業なら「提案力」や「交渉力」「プレゼンテーション力」、人事なら「人事・労務に関する知識」「戦略構築力」などがあります。ポータブルスキルに関しても、自ら難易度の高い課題を設定し、能動的に行動する力など、20代よりも一段上のレベルを求められるでしょう。

さらに30代は、メンバーをマネジメントするポジションに就く人が増える年代であり、管理職人材を募集する求人も増えてきます。したがってリーダーや係長などに対しては、「マネジメント力」が評価のポイントになります。現場の課題を解決する力、自分の考えを発信して周囲を動かす力など、自分の職場やメンバーに対して働きかける能力が求められるようになるでしょう。

40代の転職で重視されるスキルとは

40代になると、ポータブルスキルはすでに高いレベルで装着され、かつその影響力が広範囲に渡っているかを見られます。例えば社外の顧客やパートナーとの信頼構築力や、人材の指導・育成などにおいて高い影響力を発揮してきた経験は評価されるでしょう。また、それまで積み重ねてきた専門性から、新たな価値を創造するための「企画力」や「提案力」も重要になります。

40代の管理職では、ポジションが上がるほど個別の業務に関係するテクニカルスキルの領域が少なくなり、グループや部門全体など、より広い範囲を俯瞰してマネジメントする力が重視されるようになります。さらにマネジャーとして所属事業部の戦略立案に関わるだけでなく、経営環境の変化を踏まえて、新しい事業や仕組みを企画・推進する力や、組織風土を変革する力なども求められるようになるでしょう。

50代の転職で重視されるスキルとは

50代も40代と同様に、ハイレベルのポータブルスキル、新たな価値を生み出すための企画・提案力が重視されるスキルとなります。

管理職においてはマネジメントの範囲がさらに広がり、会社全体を俯瞰して影響を与える力が重視されます。特に経営に関わる人材には、高度なマネジメントスキルに加えて、知識や情報を体系的に組み合わせ、起きている事象を概念化して自社の戦略に繋げる能力が求められるようになります。加えて業界全体に関する深い知見を持っていることや、他社の経営層とも人脈があるといったことも強みとなるでしょう。

専門職の転職で重視されるスキルとは

一般的に、データサイエンティストやAIエンジニア、研究職など、スペシャリストとして高度な専門性を持つ人材は、マネジャーとしての働きを多くは求められない傾向があります。したがってどの年代であっても、経験年数に応じた専門性の高さが最も重視されるところでしょう。

専門職の中途採用では、既存組織にはない知見を持って事業に「+α」をもたらすことや、高い専門性を活かして企業のビジネスモデルの変革を担う力が期待されるため、求められる能力レベルは非常に高くなります。職務上の成果や実績はもちろん、ネット上で技術公開する、著書を出す、学会で発表する、講演に登壇するなど、専門領域における会社組織を超えた実績も高く評価されるでしょう。

企業に評価されるスキルを見つける方法

ここでは、転職活動において自分の武器となるスキルを明確にする方法を解説しましょう。

キャリアの棚卸しをする

キャリアの棚卸しとは、これまで自分が積み重ねてきたキャリアを振り返り、どのような経験や成長があったかを確認する作業です。

これまで経験してきた業務内容や経験、実績を書き出し、「どのような役割を果たしたか」「何を工夫したか」「何にこだわったか」「周囲との関係性は」「何にやりがいを感じたか」などのポイントを振り返ってみましょう。そして、実績を上げたときの共通項を探すと、自分の成功パターンと強みが見えてくるでしょう。多様な経験を通じて、自分の行動特性や強みを整理するという意味で、ビジネス経験が長い人ほどキャリアの棚卸しは効果的です。

キャリアの棚卸しについては、以下の記事もご参考にしてください。

見つけた強みやスキルを言語化する

キャリアの棚卸しで整理した自分の行動特性や強みについて、スキルとしてどう表現できるかを考え、言語化してみましょう。例えばテクニカルスキルなら、業務に必要な知識や技術力、分析力、有効な資格など。またポータブルスキルなら「課題を俯瞰して捉える力」「周囲を説得して巻き込む力」「スピード感を持って業務を進める力」など、人によってさまざまな表現が見つかるでしょう。

企業が求職者のスキルについて重視するのは「○○事業を立ち上げた」「○○億のプロジェクトを実行した」という事実のみではなく「そこでどのような強みを発揮したか」「得た経験を今後どう活かせるか(再現性があるか)」といったプロセスです。自分のスキルを整理するときはその視点を忘れず、相手に伝えられるように準備しておくことが大切です。

転職活動の際の「活かせる知識・スキル」の表現方法については、以下の記事もご参考にしてください。

見つけたスキルを効果的にアピールする方法

ポジションや採用背景に紐づくスキルに的を絞る

上では年代別に重視されるスキルの概要を紹介しましたが、実際の転職活動で求められるスキルは、希望する職種やポジション、企業の募集背景によっても異なります。例えば、「新規事業を立ち上げたい」「既存事業を拡大させたい」「欠員を補充したい」など、求人によってさまざまな目的があるでしょう。そこで何が求められているのかを募集内容から読み取り、自分の年代ではどのようなスキルがどのレベルで求められているのかを考え、それに紐づく専門性やスキルを選んでアピールすることが大切です。

「STAR」でエピソードに落とし込む

自分のスキルレベルを企業にアピールするには、経験を「事実ベース」で整理し、エピソードに落とし込むと効果的です。例えば、スキルを事実ベースで整理するためのひとつの手法として「STARフレーム」と呼ばれるものがあります。

「S:どのような状況で(Situation)」
「T:どのような課題があり(Task)」
「A:どのような行動をして(Action)」
「R:どのような成果が出たのか(Result)」

これら4つの枠組みに当てはめてエピソード化すると自分自身でも整理がしやすく、その結果、企業側にも伝わりやすくなるでしょう。

転職におけるスキルのアピール例

ここでは、企業にスキルを伝える際の例を紹介します。伝えたい要素を把握し、自分自身がアピールしたい内容に置き換えてみましょう。

20代後半・一般社員のエピソード例

● 商品企画:分析力、提案力、リーダーシップ

〈状況〉
売上増のために既存顧客のリピート率を高める必要があると考え、新サービスの開発を提案したところ、開発プロジェクトのリーダーを任されることになりました。

〈課題〉
社内各部門からメンバーを集めて開発チームを組成しましたが、個別で相談した際に、担当者によってテーマの捉え方や懸案事項が異なることに気付きました。

〈行動〉
そこで一人ひとりのこだわりをヒアリングしたうえ、共通項を洗い出して目指す方向性をとりまとめ、個々の強みに応じて役割分担しました。

〈結果〉
最初に方向性を決めたことで目標からぶれることなく、モチベーションを維持してプロジェクトを進行できました。○カ月で新サービスを立ち上げ、リピート率○%アップという成果を挙げることができました。

【解説】
一般社員でも比較的若い人材の場合は、将来のリーダーや管理職候補として見られることが多いものです。したがって業務遂行に必要なテクニカルスキルと共に、組織を底上げするための能動的な働きかけや、チーム内でのリーダーシップも強いアピールになります。

管理職のエピソード例

● 管理職:若手の育成力、社内調整力

〈状況〉
前職では中堅社員が育たず、離職が多いという問題を抱えていました。人材不足で現場は逼迫し、中途採用で凌いでいましたが、また辞めてしまうことの繰り返しでした。

〈課題〉
3年目~5年目社員の育成を行わないと組織が成長しないことから、定着・成長の支援が必要だと考えました。

〈行動〉
そこで社内の各部署に協力をお願いし、部署を横断する育成専任チームを結成。OJTとオフJTのカリキュラムを作成・強化し、中堅社員が所属する現場との情報共有にも力を入れました。

〈結果〉
その結果、中堅社員の離職率を〇%減らすことに成功しました。さらに、マネジャーへの昇進者が2年で〇%増加するという成果を得ることもできました。

【解説】
企業の募集背景が、若手社員の育成にある場合の一例です。一口に管理職と言っても、組織の立ち上げ、人材育成、業務改善など、企業の課題やフェーズによって求められる役割が異なります。そこでどのようなスキルが求められているのかを見極めた上でアピールに繋げましょう。