転職で給料が上がる人の特徴は?年収アップ転職と給与交渉のポイント、年収ダウン転職の傾向も解説

転職で重視される要素のひとつが「年収」です。前職よりも高い年収を実現することができれば、仕事に対するモチベーションも高まるでしょう。転職における給与の変動をデータでご紹介し、転職で年収が上がる人の特徴と給与交渉のポイント、さらに年収ダウン転職の傾向について、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説していただきました。

転職における給与の変化

厚生労働省が発表した統計データから、令和3年(2021年)の転職者の賃金変動状況を見てみると、前職の賃金に比べて「増加」した割合は34.6%。その中でも1割以上増加した割合は23.7%となっています。

転職入職者の賃金変動状況

 増加1割以上の増加1割未満の増加変わらない減少
令和3年34.6%23.7%11.0%29.0%35.2%
令和2年34.9%24.7%10.2%28.4%35.9%

厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」転職入職者の賃金変動状況

令和2年(2020年)に比べると、転職後に賃金が増加した割合は0.3%下がりましたが、賃金が減少した割合も0.7%下がっています。統計データからは、転職時に年収がアップするケースよりも、減少するケースの方が若干多いことが分かります。

転職で年収がアップする人の特徴

一般的に、転職で年収がアップしやすい人にはどのような特徴があるかを解説します。

マネジメント経験がある

自社が求める領域のマネジメント経験があることは、企業が求職者を高く評価するポイントになります。「業務改善によりコストを大幅に削減した」「新事業を立ち上げて拡大させた」「管理職として会社の上場に貢献した」など、目に見える実績を挙げていると年収がアップしやすくなります。

高い専門性を有している

特定の業種・職種における専門性の高い経験・スキルを持っていることも、転職の際の強みになります。スペシャリストとして、既存の組織にはない「+α」の知見や発想力において貢献できる人材であれば、企業の評価は上がり、年収アップの可能性が高まるでしょう。

書類選考や面接で的確なアピールができている

年収アップを実現した人の多くは、書類選考や面接において、自身の専門性・経験・スキル・実績を明確にし、それらが応募企業で再現可能であることを的確に伝えています。企業が最初に目を通す応募書類に、自身の強みを具体的に落とし込むことができれば、採用担当者の期待値が上がり、面接を通じてさらに評価を上げることもできるでしょう。

経験・スキルがマッチしたポジションに応募している

上述した理由で年収がアップするには、自身の経験・スキルを必要としている企業に応募することが大前提となります。企業の募集背景、求めているスキルレベル、自身の市場価値を理解した上で、より高く評価されるポジションを選ぶことが大切です。

年収アップ転職を実現するための業界・企業の選び方

では、年収アップを実現するためには、どのような観点で転職先を選べばよいのでしょうか。転職をきっかけに年収アップを目指す場合の、転職先の選び方について解説します。

給与水準の高い業界に転職する

同じ職種でも、業界によって給与水準が異なります。例えば、大手商社、コンサルティングファーム、金融機関、医薬メーカーなどは、他の業界に比べて給与水準が高い傾向にあります。給与水準が高い業界を目指すことで、年収がアップする可能性が高まるでしょう。

外資系企業に転職する

外資系企業は、国内の企業よりも給与水準が高い傾向にあります。成果主義で、シビアに結果が求められますが、年収アップを目指しているのであれば、有力な選択肢のひとつと言えるでしょう。

実力・実績を評価する企業に転職する

年功序列の要素が強い評価制度を導入している企業では、年齢や在籍期間を基準に給与が決定します。そのため、高度な専門性やスキルを持っていても、社歴が浅いという理由で年収が上がらないことがあります。年収アップを目指すなら、実力や実績をフラットに評価した上で給与が決まる企業や、実績に応じたインセンティブを導入している企業を視野に入れましょう。

成長性のある企業・業界に転職する

事業を拡大している企業や業界は人材採用に積極的であり、優秀な人材を確保するために、競合他社よりも高めの給与を提示する可能性があります。また業績が伸びると、賞与額にも反映されやすくなります。さらに組織を拡大させる過程にあるため、昇進昇給のタイミングも早めに来るかもしれません。

年収ダウン転職の傾向とは?

年収アップとは逆に、転職時に年収がダウンするのは、どのようなケースが考えられるでしょうか。年収ダウンにつながりやすい転職の傾向について紹介します。

キャリアチェンジを伴う転職

年収がダウンする典型的なパターンは、業界・職種未経験の転職です。教育コストと戦力になるまでの時間を鑑みて、経験者よりも低い年収を提示されることが多いでしょう。また、給与水準が低い業界へ転職した場合も、前職に比べて年収がダウンする可能性が高いでしょう。

大手からベンチャーなど規模の小さい企業への転職

大手企業の多くは、スケールメリットを活かした仕入れの効率化や、高い知名度による営業力があるため、中小企業やベンチャー企業と比較して利益率も高い傾向があります。前職よりも規模の小さい企業に転職した場合、将来的に年収がアップする可能性もありますが、転職当初は年収が下がるケースが多いようです。

地方に本社がある企業への転職

給与水準は、地域によっても差があります。地方に本社を置く企業の場合、大都市に比べて生活コストが安いなどという理由から、給与水準が低めに設定されているケースがあります。東京などの大都市から地場の企業に転職した場合、年収ダウンの可能性があるでしょう。

年収アップ交渉のポイント

年収アップを実現するために、どのような交渉をすればいいのでしょうか。年収交渉を切り出すタイミングと伝え方の例文を紹介します。

希望額の根拠を伝えられるようにする

年収交渉をする場合、「現在の年収」や「昇給額」などを用いて、希望額の根拠を明確に伝えることが重要です。企業の多くは給与テーブルが設定されているため、あらかじめ志望先の業界や企業の相場を調べておき、応募先企業の想定を大きく逸脱しないように注意しましょう。他の企業からすでにオファーが届いている場合は、そこで提示された給与額を伝えてみるのも有効な方法のひとつです。ただし、他の企業の話を出す場合は、伝え方によっては駆け引きされていると捉えられる可能性もありますので、十分に気を付けましょう。

給与交渉は内定が出る前に行う

年収の希望額を伝える際は、タイミングにも注意しましょう。基本的に、内定がでるときは給与額が決定しているケースが大半であるため、交渉は「内定前」に行うことになります。

1次面接から最終面接までの間で、採用担当者から給与額の希望について聞かれた時に、希望年収を切り出すのがベストです。または、応募企業から条件面談が設定された場合や、面接の最後に「質問はありますか?」と聞かれた場合も、年収の希望を伝えやすいでしょう。ただし、年収を伝える際は一方的な姿勢を見せるのではなく、「希望額とどうしても譲れない最低ラインの額」をセットで提示するなど、企業側が調整しやすい伝え方を心掛けることが大切です。

年収アップ交渉の伝え方例

年収の交渉をする場合、どのような言い方をするとスムーズでしょうか。好印象な年収交渉の切り出し方・伝え方例をご紹介します。

直接希望年収を聞かれた場合

「お話をうかがい、御社の○○に大きな魅力を感じています。年収については、御社の募集要項に記載がありました○○万円を希望しています。その理由は、現職の○○において収めた実績を持って、御社の事業拡大に十分貢献できると考えているからです。難しい場合は、最低でも現年収と同額の○○万円は頂戴できると幸いです」

給与テーブルに基づいた金額が提示された場合

「御社の○○に大変魅力を感じ、前向きに入社を検討しています。想定年収ラインの○○万円という金額についても理解しました。ただ、現職で○○万円の年収があり、住宅の購入も予定しているため、生活の安定と仕事に集中するためにも年収○○万円を希望しておりますが、ご検討は可能でしょうか」

面接で年収の話が出ず、自身で切り出す場合

「業務内容について詳しくお話を聞けたことで、御社で働くイメージが明確になり、前向きに入社を検討しています。つきましては、今後磨くべきスキルと、御社の給与体系について確認させていただけないでしょうか。数年内に結婚や子育てを想定しており、○○万円ほどの収入が必要であると考えております。私の経験・スキルの場合、どこを伸ばすことによってどの程度の昇給ができるでしょうか」

転職における年収の考え方

現職よりも低い年収を提示されて、「自身への評価が下がった」「自分の市場価値は低い」と幻滅する方もいるかもしれませんが、現職の年収は、これまでに積み上げた現職での実績や信用による報酬です。「転職先で一から信用を積み上げて昇給する」という考え方もあるため、年収ダウン自体を必要以上にネガティブに捉える必要はありません。

転職において年収はとても大きな判断材料のひとつですが、年収だけにこだわりすぎると、応募できる求人が少なくなり、キャリアの可能性が狭くなってしまいます。仕事のやりがい、勤務地、休日・休暇、福利厚生など、年収以外に譲れない希望があるのであれば、「年収ダウンはいったん受け入れる」という選択肢も検討してみましょう。

粟野友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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