【転職準備の始め方】転職活動の基本的な流れとスケジュールを徹底解説

社会人経験が豊富なビジネスパーソンであっても、初めての転職活動に臨む際には、どのように進めていけば良いか戸惑うものです。転職活動の基本的な流れと、それぞれのステップで行うことを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

転職活動の基本的な流れと期間の目安 

転職活動の基本的な流れとして、大きく5つのステップがあります。「転職準備」「応募書類の作成」「応募」「面接」「内定・退職準備」です。転職活動に要する期間は人によって異なりますが、働きながら転職活動を行う場合、一般的には「3カ月程度」が目安とされています。 

それぞれのステップに要する期間の目安は、下記を参考にしてください。 

転職活動のスケジュール例
作成:編集部

Step1. 転職準備

ここからは、転職活動のステップを具体的にご紹介します。まずは「準備」として、「キャリアの棚卸し・自己分析」「情報収集」から着手しましょう。 

キャリアの棚卸し・自己分析 

今後のキャリアの方向性を見定め、企業選びの基準や選考でアピールする自身の強みを整理するために、キャリアの棚卸し・自己分析をしましょう。以下の手順で行うとスムーズです。 

  1. これまでの経験を振り返り、身につけた能力やスキルをすべて書き出す。 
  2. 書き出した経験・スキルから共通点を探り、自身の強みや得意分野を明らかにする。
  3. 「なぜ転職したいのか」「転職することで何を実現したいのか」を言語化する。
  4. 上記を踏まえ、転職先を選ぶ基準・条件を決める。キャリアの方向性や取り組みたい仕事に加え、年収やポジションなどの希望も整理し、条件に優先順位をつける。  

情報収集 

転職市場の相場観や自身の「市場価値」をつかむための情報収集、また、どのような求人が出ているかの情報収集を行いましょう。情報収集の手段としては、次のような方法があります。 

  • 転職サイトやビジネスSNSなどで、さまざまな求人情報を閲覧する。
  • 転職エージェントに登録し、転職市場動向や求人の情報を得る。
  • スカウトサービスを利用し、企業や転職エージェントからのスカウトを受ける。
  • ハローワークの職業相談・職業紹介サービスを利用する。
  • 転職支援企業や業界団体などが主催する転職イベントに参加する。

Step2. 応募書類の作成 

Step1で行ったキャリアの棚卸しをもとに、「履歴書」「職務経歴書」などの応募書類を作成します。 

クリエイティブ関連職種であれば、「ポートフォリオ」(作品集)も作成しましょう。これまで制作に関わってきた作品のコンセプトやデザインなど、自身の制作実績をプレゼンテーションするツールとして応募時に提出します。

履歴書 

履歴書は、テンプレートをダウンロードして作成すると効率的です。 厚生労働省が作成した様式が一般的ですが、インターネット上からダウンロードできる履歴書や市販の紙の履歴書など、複数の様式があります。 

「履歴書」の「学歴・職歴」欄には、学校への入学/卒業(修了)した学歴と、これまで在籍したすべての企業の入社・退社歴を省略せずに記載します。このほか、「免許・資格」「志望動機」「自己PR」「趣味・特技」「本人希望記入欄」などの項目がありますが、書くことがない場合は空欄を作らずに「特になし」と記載しましょう。 

職務経歴書 

「職務経歴書」は、A4サイズ2枚程度にまとめるのが一般的ですが、書式に決まりはありません。職務経験や転職回数が多い場合は、時系列ではなく、職務内容や分野ごとにまとめる「キャリア式」を選択し、よりアピールしたい内容に重点を置くと良いでしょう。 

企業は応募書類を通して、「入社意欲の高さ」「入社後に活躍・貢献できるか」「長く定着して働けるか」などを判断しています。「自己PR」欄や「志望動機」欄などを活用し、強みや意欲をアピールしましょう。 

Step3. 応募 

応募書類を作成したら、企業への応募へ進みます。選択肢の幅を広げるために、求人は絞り込み過ぎないようにしましょう。 

応募方法の選択

企業への応募ルートは複数あります。以下に主な手法・サービスをご紹介しますので、自身に合うものを選ぶと良いでしょう。 

  • 転職サイトやビジネスSNSなどを通じて応募する。 
  • 企業の採用ページから直接応募する。
  • 転職エージェントを通じて応募する。
  • ハローワークを通じて応募する。
  • スカウトサービスでスカウトを受けた企業に応募の意思を伝える。 

応募する求人の選定

興味を持った求人について、業界・企業をより詳しく調べ、自身の希望や志向によりマッチする求人を選定しましょう。業界・企業研究の方法としては次のようなものがあります。

  • 企業のホームページ、採用ページ、SNS、ニュースリリースなど
  • ニュースサイト、ビジネスサイトなどの掲載記事 
  • 企業の特色や各種データをまとめている本やメディア 
  • 日本取引所グループ・アナリストレポート(上場企業の場合)
  • 企業の口コミサイト

応募

応募企業に応募書類を送り、書類選考を受けます。職務経歴書の「活かせる経験・スキル」「自己PR」「志望動機」欄は、自分の持っているスキルなどを応募企業に合わせて記載すると良いでしょう。 

Step4. 面接 

書類選考を通過したら、面接日程の調整を行い、面接に臨みます。 

なお、転職エージェントから紹介を受けた場合やスカウトサービス経由で企業や転職エージェントからスカウトを受けた場合などは、応募する前に「面談」が設けられることもあります。

面接と面談の違い

面接は「選考」の場であり、面接の評価によって採否が決定されます。一方で、企業によっても異なりますが、面談はリラックスした状態で「相互理解」を図る場であり、「カジュアル面談」とも呼ばれます。多くの場合、企業が求職者に対して、事業内容や組織、仕事内容、待遇、福利厚生、募集背景などを説明し、求職者からの質問に答えるという形がとられます。 

面接

面接でよく聞かれる質問として、「自己紹介」「転職理由」「志望動機」「自己PR」「逆質問」などが挙げられます。これらに対する回答を準備しておきましょう。回答のポイントは以下のとおりです。 

【自己紹介】 

「氏名」「略歴」「アピールしたい強みと実績」「入社意欲」「入社への意気込み」などを1分程度で端的に伝える。 

【転職理由】 

現職(前職)に対する不満や批判などは伝えず、転職によって実現したいことなど、前向きな理由を伝える。 

【志望動機】 

「応募企業に魅力を感じているポイント」「応募企業で活かせる自身の経験・スキル」「入社後に実現したいこと」「目指したいキャリアパス」を簡潔に伝える。 

【自己PR 

「自分の強み」「根拠となるエピソード」「強みを活かして挙げた成果・実績」「入社後にどのような領域でその強みを活かせるか」を簡潔に伝える。 

【逆質問】 

求人情報や企業ホームページなどに掲載されている情報を質問することは避ける。面接担当者のポジションに応じて、質問の切り口を変えることもポイント。 

Step5. 内定・退職準備

採用が決定したら「内定通知」が届きます。内定承諾をしたら、在職中の場合は現職との退職交渉に入ります。 

内定

企業から内定が出たら、承諾するかどうかを検討し、企業が提示した期限までに回答します。判断に迷った場合は、企業にもよりますが面談希望を相談し、設定してもらえたら、気になっていることについて確認すると良いでしょう。他社での選考も進んでいる場合、回答期限を延長してもらえるか相談したり、選考中の企業に面接日程を前倒しにしてもらったりするなどして対応します。 

十分に納得した上で入社を決めることが重要です。内定を承諾するか検討するために、以下のことを行うと良いでしょう。 

  • 「他社に転職する」「現職にとどまる」など、他の選択肢とメリット・デメリットを比較検討する。 
  • 家族やパートナーと相談しておくことも有効。 
  • 「労働条件通知書」の内容を確認し、認識に齟齬があった場合は内定企業に確認する。

退職準備(在職中の場合)

現職に在籍中の場合は、引き継ぎ期間なども踏まえた上で、無理のないスケジュールを相談しましょう。 

在籍企業に強く引き留められ、退職交渉が長引くケースも少なくないので、しっかりと準備しておいてください。 

トラブルを避け、スムーズに退職するためにも、以下のポイントをあらかじめ押さえておきましょう。 

  • 就業規則で「退職の申し出」を行う時期や、退職届を提出する時期などのルールを確認しておく。
  • 繁忙期などを避け、退職しやすいタイミングを選ぶ。 
  • 退職理由を聞かれた際には、現職に対する不満・批判は伝えず、「現職では実現できないこと」をポジティブに伝える。 
  • 感謝の気持ちを持ちつつ、毅然とした姿勢で転職する意思が固いことを伝える。 

また、退職の際に必要な手続きや入社準備に必要な書類などについても、きちんと確認しておきましょう。 

転職活動のスケジューリングのコツ 

転職活動のスケジューリングのポイントや注意点は、大きく4つあります。 

在職中の場合は希望の退職時期から逆算して、余裕のあるスケジュールを組む 

在職中の場合は、まず退職時期の目安を決めましょう。そこから逆算して、応募から内定までの大枠のスケジュールを組むという方法があります。 

転職活動は、「仕事が忙しく準備が間に合わない」「家族に反対された」「現職に退職を申し出た際に強く引き留められた」など、思うように進まない事態が発生するケースもあるため、余裕のあるスケジュールを組むことがポイントです。 

複数企業の選考を同時に受けられるように応募する 

1社に応募し、不採用になったら次の1社に応募……というペースで進めると、転職活動が長引く可能性があります。また、1社のみ内定が出た場合、比較検討ができないので悩んでしまうかもしれません。複数企業から絞り込んだ方が転職への納得度が高まるため、できる限り複数企業を並行して応募すると良いでしょう。 

ただし、「第1志望の結論が出る前に第2志望以下の企業から内定を得て、入社意思の決断を迫られる」といったケースもあります。転職エージェントを利用している場合は、キャリアアドバイザーに内定時期の調整を相談しておくと、内定時期を合わせてもらえるケースもあります。自身で応募している場合は、面接のタイミングを揃えたり、応募企業に内定時期の希望を伝えたりすると良いでしょう。 

条件や志向にある程度合っている求人には、積極的に応募する 

条件や志向に合っている求人、興味を持てる求人には積極的に応募するのも一案です。特にハイクラス層の場合、採用枠が少ないケースも多いため、すぐに応募しなければ募集が終わってしまうかもしれません。内定後、入社するかどうかは慎重に検討すべきですが、応募のタイミングは逃さないようにしましょう。 

面接日程の調整は迅速に行う

在職中に転職活動を進めている場合は、業務時間内の面接が難しく、日程調整を先送りにしてしまうこともあるでしょう。しかし、中途採用の選考は、面接日程の調整ができた応募者から順次進めていくため、早期に採用枠が埋まってしまう可能性もあります。 

近年はオンライン面接も定着しているほか、平日の夜間や土日に面接を組んでくれるケースもあるため、自身が面接を受けやすい方法を相談してみると良いでしょう。 

転職活動でよくあるお悩みと解決策 

初めて転職活動をする方や転職経験が少ない方などによくあるお悩みと解決策をご紹介します。 

未経験の業界・職種に転職できる? 

未経験の業界・職種にも転職できる可能性はあります。これまでの経験・スキル・実績の中から、目指す異業種・異職種で活かせるものをピックアップしてアピールしましょう。 

一足飛びで目指す業界・職種に転職することが難しい場合、経験を活かせるポジションへの転職を経て、段階的に近づいていくのも一つの方法です。 

転職活動と仕事の両立はどうしたら良い? 

有給休暇などで時間を作ったり、進め方を工夫したりすることで、両立する方法を考えてみましょう。以下に、参考例をご紹介します。

  • 長期休暇中に情報収集や書類作成を進め、応募は一気に短期集中で行うなどで時間を確保する。
  • 業務が落ち着くタイミングを選んで活動する。 
  • 「約3カ月」という一般的な転職活動期間にこだわらず、じっくりと時間をかける。 
  • 転職エージェントを活用し、求人情報収集や面接対策、面接の日程調整などのサポートを受け、効率的に進める。

転職活動を長期化させないコツは? 

まずは自己分析と情報収集を行い、キャリアの方向性や企業選びの基準を明確にしておくことが重要です。また、最初から選択肢を絞り過ぎないこともポイントです。より多くの選択肢を持った上で、面接でマッチするかどうかを判断していきましょう。 

転職活動をしていることは会社にバレない? 

転職活動が現職の企業に知られる原因には、服装が変わった(業務で必要ないにもかかわらずスーツで出社しているなど)、早退や有休取得数が増えた、社内に公開している個人スケジュールで非公開にしている時間帯が増えた、仕事への熱量の低下が見て取れる、などがあります。これらの変化が顕著に表れないようにするのが、転職活動中であることを知られないためのコツです。また、不安であれば同僚などに話さないようにしましょう。 

退職してからor在職中、転職活動はいつから始める? 

退職後の転職活動と在職中の転職活動、それぞれのメリット・デメリットを理解し、自身の状況と照らし合わせてどちらを選択するのがベターかを検討しましょう。 

【退職してから転職活動をするメリット】 

  • 転職活動に集中して取り組める。 
  • 面接の日程を調整しやすい。
  • 内定後、入社日を調整しやすい。

【退職してから転職活動をするデメリット】 

  • ほかに収入源がない場合、安定した収入を得られない。
  • 離職期間が長期化した場合、企業から業務にあたっての影響がないか確認される場合がある。

【在職中に転職活動をするメリット】 

  • 収入面の不安が少ない。 
  • 離職期間がなく次の仕事に就ける。
  • 現職にとどまる選択肢がある。 

【在職中に転職活動をするデメリット】 

  • 現職の業務と並行して行うため、活動時間が限られる。 
  • 退職時期と入社時期の折り合いがつかない場合がある。 

やりたい仕事がない場合の応募企業の見つけ方は?

「やりたい仕事がない」と悩んでいる場合、次の方法を試してみるという方法があります。 

自分に向いていそうな方法を選んでみましょう。

  • 「やりたい」より「得意」「適している」で考える。 (これまでで高い評価を得られた仕事、自然に没頭できた仕事に注目する) 
  • 「やりたくない仕事」から考える。
  • モチベーションが上がった体験を思い出す。
  • 「将来ありたい姿」から考える。 
  • さまざまな企業・業界を研究してみる。 
  • 転職支援サービスに登録して実際の求人を見てみる。
  • スカウトサービスを利用し、スカウトを待ってみる。 
  • 転職エージェントに相談してみる。
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アドバイザー

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。