「やりたい仕事がない」場合の転職先の見つけ方

「今の仕事は自分に合っていないような気がする」「何か新しいことにチャレンジしてみたい」と転職を視野に入れながらも、「特にやりたい仕事がない」という悩みを抱える方は多いものです。一見、やりたいことを持っているように見える豊富なビジネス経験を積んだ方でも、多くの役割を担っているからこそ、実は本当にやりたいことを見失っているというケースもあるようです。
転職に臨むにあたり、「やりたい仕事」をどう捉えるか、どのように見つけるか、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に解説いただきました。

企業への応募の動機が「やりたい仕事」という方は56%

そもそも、世の中のビジネスパーソンはどの程度「やりたい仕事」を意識しているのでしょうか。リクルートが全国の20代~50代の転職活動者を対象に実施したアンケート調査によると、企業へ応募する際に最も重視する点は「やりたいことを仕事にできる」が最も多く、56.3%でした。

「企業へ応募する際に最も重視する点」に関するグラフ

引用:「コロナ禍での転職活動者動向」より

「やりたいことを仕事にできる」が半数を超えてはいますが、逆の見方をすれば、4割強の人は仕事選びの最優先条件は「やりたい仕事」ではないことを意味します。アンケート調査からは「収入面」「ワークライフバランス」などを重視する人も多い事実が見てとれます。転職に臨むにあたり、必ずしも「やりたい仕事」を見つけなければ前へ進めないわけではありません。

「やりたい仕事」がないときの、転職先選びの視点

やりたい仕事はわからないが、転職はしたい――その場合、どのようにして納得のいく転職先を見つければいいのでしょうか。検討するにあたってのポイントをお伝えします。

「やりたい」より「得意」「適している」で考える

そもそも「やりたい仕事」「興味を持てる仕事」が見つかったとして、自分がそれを得意とするかどうかはわかりません。中途採用においては即戦力を期待されるため、やりたい仕事の求人に採用されるとも限りません。

個人の価値観によって異なりますが、「高く評価される」「必要とされる」ことでモチベーション高く仕事に取り組むことができ、やりがいを感じられることもあります。考え方の一つとして、「得意な仕事=適職」という視点で探してみてはいかがでしょうか。

やりたい仕事とは「憧れや興味から就いてみたいと思う仕事」であるのに対し、「モチベーション高く取り組めて、成果も出せる仕事」も適職と言えるかもしれません。自身にとっての「適職」を洗い出すために、これまでの経験を振り返り、次のポイントを整理してみてください。

高い評価を得られた仕事

仕事の好き嫌いに関わらず、褒められたり高評価を受けたりした仕事があれば、それは適職である可能性が高いと言えます。業績に限らず、「こんな行動をとった」「周囲のメンバーにプラスの影響や刺激を与えた」など、プロセスにおいて評価されたことも思い出してみましょう。

自然に没頭できた仕事

「やりたい・やりたくない」の意識はなく、取り組んでいると自然に集中・没頭できていた仕事は何でしょうか。例えば「○○の企画を練っているときは時間を忘れて集中した」など。過去に没頭した仕事に共通点がないか探してみましょう。

第三者から見た自身の強み

信頼できる上司や先輩、同僚に「私の強みは何だと思いますか」とたずねてみるのもいいでしょう。自身では意識していなかった、人より優れている力・得意なことに気付けるかもしれません。

「やりたくない」から考える

「やりたいこと」がないとしても、「やりたくないこと」はあるのではないでしょうか。これまでの仕事経験を振り返り、「この仕事・役割は嫌だった」と思うものをリストアップしてみましょう。自身が経験していなくても、他者の仕事や求人などを見て「やりたくない」と感じる仕事を選別してみるという方法もあります。

さらには「なぜやりたくないのか」を考えてみると、自身の志向性が認識できることもあります。やりたくないことを避けて働く方法を探っていけば、「やりたいこと」にたどり着くかもしれません。

モチベーションが上がった体験を思い出す

社会人になって、本業以外の活動で面白かったこと、モチベーションが上がったことを思い出してみましょう。例えば、「多様な部署から集まったメンバーでディスカッションをしたワークショップが楽しかった」「業務改善プロジェクトで、作業効率化のアイデアを考えたのが面白かった」など。その中に、「やりたいこと」のヒントがあるかもしれません。

「やりたいこと」を探そうとするとき、「業種」「職種」「商品・サービス」などで考える人も多いのでは。そうではなく、「自分がモチベートされる場面は?」「ワクワクする課題は?」といった価値観・志向性から考えてみてはいかがでしょうか。

例えば、「営業の管理職は特にやりたいことではない」と思っている人であっても、「IPOを目指すテック企業で、一から営業組織の構築を担う営業マネジャー」であれば、捉え方が変わるかもしれません。「成長力や勢いがある環境」「一からの仕組み作り」といった状況に魅力を感じ、「やりたい」意欲が喚起されることもあります。

「将来ありたい姿」から考える

5年後10年後を想像したときに「このような自分になっていたい」「ビジネスパーソンとしてこうありたい」とイメージする姿はあるでしょうか。尊敬するビジネスパーソンでも、映画やドラマの主人公でも構いません。そのような「将来ありたい姿」から逆算し、今からどのような経験を積んでいけばいいかを考えてみるのも一つの手です。

他者の力を借りて適職を見つける方法

手軽に活用できるツールやサービスを活用し、適職を探る方法もあります。一例をご紹介しましょう。

『グッドポイント診断』で自身の強みをつかむ

『グッドポイント診断』は、リクルートが提供する「強み」の診断サービスです。質問に答えることにより、「受容力」「決断力」「俊敏性」「挑戦心」「独創性」など18種類の特性から5つの強みを導き出します。診断で表示された「強み」の項目を認識することで、それにひもづく過去の仕事の成功エピソードを思い出せるかもしれません。

スカウトを受け取ることができるサービスを利用してみる

「リクルートダイレクトスカウト」など、匿名のレジュメを登録しておくことで、経験・スキルを見た転職エージェント・企業からスカウトを受けることができる転職支援サービスがあります。自ら求人を探す必要がなく、経験・スキルにマッチしたスカウトが届くため、「いい企業があれば…」と考えている方にも向いています。また、思いがけない業種や企業で、自身の経験・スキルが活かせることがわかることもあります。これまで気づいていなかった、新たな選択肢に出会えることもあるでしょう。

転職エージェントに相談してみる

転職を決意していない段階でも、転職エージェントにキャリアについて相談することは可能です。転職エージェントでは、これまでの経験を一緒に振り返って整理する「キャリアの棚卸し」のサポートを受けることができます。客観的な視点を持つ第三者との対話を通じ、自身の強み・志向・価値観などに気付けることもあります。

やりたい仕事が明確でなくても、納得のいく転職はできる

転職においては、やりたい仕事が明確になっていなくても、自身の強みを活かすことで納得のいく選択肢が見つかる可能性があります。また、やりたい仕事を明確にしてから転職活動を開始するのではなく、転職活動を進めていく中でやりたい仕事を探してもいいでしょう。

さまざまな求人を見て、各社の理念やビジョンに触れたり、面接で経営者や働く人たちと対話したりする中で、やりたいことを発見する人は少なくありません。方向性が決まっていなくても、まずは情報収集から一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。