「転職したい」悩んだときにやるべきことは?転職決断の判断ポイントと不安を解消する方法

タブレット端末を操作する人

「転職したい」と思っても、「今の自分は転職した方がいいのかわからずに不安…」「転職して後悔することが怖い」などと思い悩む方もいるでしょう。そこで、「転職したい」と悩んだときに確認しておきたいことや、転職する・しないを判断するポイント、不安を解消する方法などを組織人事コンサルティングSeguros、粟野友樹氏が解説します。また、「転職したいと思ったけれど、何から始めればいいのかわからない」という方に向けて、転職準備のポイントもご紹介していきます。

転職したいと悩んだときにやっておきたい4つのこと

転職したいと悩んだとき、最初にやっておきたい4つのことを解説します。

1:現状に対する不満を分析し、現職のままで解決できないか検討する

まずは現状に対する不満を分析し、「現職のままで解決できない不満なのか」を検討してみましょう。「職場の人間関係に悩んでいる」などが理由の場合は、部署移動などで解決できる可能性もあります。また、「仕事内容が合わない」「今の仕事のままでは経験・スキルが身につかない」などの場合は、社内制度を活用するなどで部署異動やプロジェクトへの参画、異職種へのキャリアチェンジができるケースもあるでしょう。さらに、「昇進・昇格ができない」なども、社内のキャリアパスや年収モデルなどを調べてみれば、実現できる可能性もあります。

現職のままで解決できる理由の場合は、転職せずそのままとどまった方が良いケースもあるので、「転職したい理由」について整理してみましょう。

2:転職によって何を実現したいのか考える

現職への不満だけを転職理由にしている場合は、転職後の環境にも不満を感じて再度転職を繰り返してしまう可能性があります。転職によって何を実現したいのかを考え、その上で、自身が「転職する目的」を明確にすることが重要です。今すぐ実現したいことだけでなく、中長期な視点を持って、5年後、10年後などにどうなっていたいのかをイメージし、キャリアの道筋を考えてみると良いでしょう。転職する目的を明確にしておけば、実際に転職活動を進める際にも「どういった企業を選択すればいいのか」を定めやすくなります。

3:自身の強みとなる経験・スキルを洗い出す

転職を実現するためには、これまでの経験・スキルを洗い出すことも重要です。過去の経験・スキルの棚卸しを行い、身につけた専門性や資格、マネジメント職やリーダーポジシションなどの経験、業務や組織で発揮できる強みなどを整理することがポイントです。自身の市場価値を客観的に把握することができるでしょう。

4:転職市場の相場観を調べてみる

転職サイトなどで、自身が転職したいと思うような企業・職種の求人を調べ、相場観を確認しておくことも大事です。転職先に求める条件に対し、自身の経験・スキルが見合っていなければマッチングは難しくなり、転職活動を始めても苦戦する可能性があります。
給与・待遇・任される業務・ポジション・求められるスキルなどを確認した上で、「現在の自身の経験・スキルで、採用の可能性があるのはどのような企業・求人なのか」を検討してみましょう。

「転職した方がいいのかわからない」転職を決断する際の判断ポイントを紹介

「今の自分は、転職した方がいいのか、しない方がいいのかわからない」と悩む方もいるでしょう。「転職する・しない」の決断は、人それぞれの状況や考え方にもよるため、一概には言えません。ここでは、「転職を前向きに検討する」「転職すること自体を再検討する」というそれぞれの判断をする際に、参考になるポイントをご紹介します。

「転職を前向きに検討する」判断ポイント

転職を前向きに検討するかどうかを判断するポイントをご紹介します。

現職のままでは、状況の改善が望めない

中長期的な視点で、現職のままでは状況の改善が難しいと感じた場合は、転職を視野に入れてもいいかもしれません。具体的には、ハラスメントや長時間労働、業績悪化、低賃金など、個人の力で(あるいは、短期に)状況を改善することが難しいケースが挙げられます。また、意に沿わない転勤・異動など、自身や家族・パートナーのワークライフバランスが崩され、長く改善できる見込みがない場合などもこれに当てはまるでしょう。

転職によって実現したいことが明確になっている

目指すキャリアや手に入れたい働き方が明確にありながらも、「現職では実現できない」という場合は、転職によってそれを実現できる環境を得られる可能性があります。転職を前向きに検討することで、自身の可能性を広げることもできるでしょう。

現職ですでにキャリアの目標を達成している

「現職でキャリアの目標を達成した」「描いていたキャリアパスをすでに実現できている」という場合は、転職によって環境を変えることで、新たな目標を設定できたり、次のキャリアを描けたりする可能性があります。さらなるステップアップを視野に入れている場合は、転職を選択肢に入れるのも一案です。

「転職すること自体を再検討する」判断ポイント

以下のようなポイントに当てはまる場合は、転職することを再検討してみてもよいかもしれません 。

明確な転職理由や転職の目的がない

明確な転職理由や転職の目的がなく、転職することそのものが目的になっている場合は、転職してもまた不満が募る可能性があります。例えば「現職への不満だけが動機になっている」「勢いや感情に任せて転職したいと考えている」「転職さえすれば状況を変えられる/問題は解決する」などのケースが挙げられます。
まずは「なぜ転職したいのか」「転職して実現したいことは何か」などを整理しましょう。

現職のままでも状況を改善できる方法がある

現在の業務内容に不満があるなどの場合は、上司に相談することで希望のプロジェクトにアサインしてもらえたり、新たな職務を任せてもらえたりするケースもあります。また、社内公募をはじめとした各種制度の活用などにより、異動や職種転換、責任あるポジションに就くなどの希望を実現できるケースもあるでしょう。現職で自分の状況を変えたり、転職の動機になっている課題・問題を解決したりすることができそうであれば、一度行動してみるのも方法です。

転職市場の情報収集や自身の市場価値の確認ができていない

「転職市場の動向や自身の市場価値を把握していない」「キャリアの棚卸しをしていないため、自身の強みがわからず、今後のキャリアについても検討していない」などの場合は、転職するべきか、現職のままでスキルアップやキャリアアップを続けていくべきかを判断しづらいと言えます。キャリアの棚卸しや情報収集を行った上で、再度検討してみると良いでしょう。

家族の賛同を得られていない

家族やパートナーに相談していない場合、転職することそのものを反対されるケースもあります。まずは「転職したい」という意向や、転職によってどのようなことを実現したいのかをきちんと伝え、同意を得ることが重要です。これをクリアできない場合は、転職先が決まっても同意が得られない可能性があり、強引に転職した場合は今後の家族関係に影響を与えることも考えられます。

【ケース別】よくある不安を解消する方法

転職に対して漠然とした不安を抱いている場合は、「何が不安なのか」を考えてみることが大事です。仕事と同様に、「不安の原因」=「課題」を認識するところから始めることで、具体的な解決策を導き出すことができるかもしれません。
ここでは、よく聞かれる転職に対する不安と、その解決策を6つ紹介します。

【ケース1】希望に合う転職先が見つからないことが不安

自身が転職で実現したいことを明確にしていなかったり、十分な情報収集をしていなかったりする場合は、こうした不安を抱きやすいでしょう。転職先に対する希望が漠然としている上に、どのような企業に採用の可能性があるのかを把握できていないことが不安の要因となっている可能性があります。

以下の2点に取り組み、自身の解像度を上げた上で、「希望にマッチする企業があるか」「採用の可能性があるか」「転職すべきか、現職にとどまるべきか」を検討してみましょう。

1:転職の目的や理由、転職の軸、条件面の優先順位づけを検討する
「転職によって実現したいことは何か」を明確にした上で、その実現に必要な条件を整理し、転職活動の軸とすることを検討しましょう。また、希望条件に優先順位をつけることもポイントです。

2:幅広く情報収集を行う
転職サイトなどで求人を探すだけでなく、転職エージェントと面談をしたり、スカウトサービスなどに登録したりして、転職市場の動向や、どのような求人があるのかを把握しましょう。

【ケース2】不採用になってショックを受けるのが怖い

誰しも不採用になることはありますし、「不採用=優秀でない」ではなく「不採用=その会社に合わなかった(年収などの条件が合わない/企業文化と合わない/現時点では希望に合う職種・役職がないなど)」だけのことなので、ショックを受ける必要はありません。「最終的に、自身にマッチする1社が見つかればOK」というスタンスで転職活動をとらえてみましょう。

また、企業研究や模擬面接を行うなどで、選考通過率を高めることも可能です。転職エージェントやスカウトサービスなども活用して、情報収集や面接対策に取り組みましょう。

【ケース3】転職できても現職よりも条件が悪くなるのは厳しい

転職する場合、「年収や休日休暇、福利厚生などの条件面を現職と同等以上にしたい」「条件を下げてまで転職することは厳しい」と考える方は少なくないでしょう。

リクルートエージェントの調査(※1)では、「2022年10-12月期にリクルートエージェントを利用して転職が決定した人のうち、前職と比べて賃金が1割以上増加した人の割合は33.4%」という結果となっています。転職によって年収増となった人は3割強にとどまっていますが、入社時点で一時的に減収となった場合でも、入社後に年収が上がるケースもあります。

こうした点も考慮して企業を選ぶ視点を持っておくと、より広い選択肢から検討できるでしょう。転職時点での年収の変化だけにとらわれすぎないことが大事です。また、選考が進む中で、企業に対して年収額を交渉することも可能です。

出典(※1)「2022年10-12月期 転職時の賃金変動状況」(リクルートエージェント)

【ケース4】転職先に馴染めない・活躍できないことが心配

転職先の人間関係に馴染めなかったり、仕事内容の変化などで活躍できなかったりすることに不安を感じてしまう方もいるでしょう。

しかし、厚生労働省が発表した「令和2年 転職者実態調査」(※2)によれば、「現在の転職先の人間関係」に対し、「満足」と回答した人は59.7%、「どちらでもない」は25.3%となっており、「不満足」は14.2%にとどまっています。また、「現在の転職先の仕事内容・職種」については、「満足」が69.2%、「どちらでもない」は21.3%となっており、「不満足」は8.7%となっていました。もちろん、転職者のすべてが満足しているわけではありませんが、多くの場合は、転職先の人間関係や仕事内容に不満を感じるまでには至っていないと言えるでしょう。

とはいえ、ミスマッチな転職先を選んでしまったり、転職先で担当する業務や任される責任などが想定していたものと違っていたりするケースもあります。そのため、選考段階で、職場の雰囲気や具体的な仕事の進め方、成果が求められるようになる時期などについて、しっかりと確認することが必要です。

出典(※2)「令和2年転職者実態調査の概況」(個人調査「転職について」より) 厚生労働省

【ケース5】仕事をしながら転職活動ができるのか不安

現職が忙しい場合は、時間の使い方などを工夫して転職活動に割く時間を捻出する必要があります。「転職準備を進める際には、タスクを分割し、すき間時間を活用して進める」「活動期限を決めて、集中して取り組む」「繁忙期を避けて活動スケジュールを組む」などの方法があります。

また、転職エージェントやスカウトサービスを活用して、企業の情報収集や面接日程などの調整を任せられるか相談してみるのも良いでしょう。自身は応募書類の作成や面接対策などに注力することができます。

【ケース6】希望の職種やポジションに対し、自身のスキル・キャリアに自信がない

「希望の職種やポジションに対し、自身のスキルや経験が不足している気がする」「自身のキャリアでは、企業の応募要件を満たせる自信がない」という不安を抱く方もいます。しかし、スキルや経験が多少足りなかったり、提示している応募要件をすべて満たしていなかったりしても、採用されることは多々あります。

例えば、マネジメント経験が少ない方がマネジャー職に応募した結果、入社後の成長性などを評価され、募集されていなかった「マネジャー候補」での採用されるケースもあります。また、未経験の業界・職種などにキャリアチェンジする場合でも、ポータブルスキルや異業界・異職種の経験を活かして活躍できると判断されて採用されるケースもあります。

求人情報に掲載されている募集要件のみで判断せず、チャレンジしたいと思ったならぜひ応募してみましょう。どうしても不安であれば、現職でさらに経験を積み、スキルを磨く選択もありますが、今後も同じ求人が出るとは限らないことは念頭に置いておきましょう。

あるいは、応募したいと思った企業・ポジションだけにとらわれず、ほかに類似の募集がないかどうか探すのも一つの手です。

「転職したいと思ったら何から始めればいい?」転職準備のポイント

転職に対する不安を払拭し、転職活動を始めようと思った場合は、自己分析で「転職によって実現したいこと」を整理し、転職の目的を明らかにしましょう。さらに、今後のキャリアの方向性を見定め、企業選びの基準や選考で伝えるべき自身の強みを整理するために、キャリアの棚卸しを行います。

キャリアの棚卸しは、次の3つのステップで行うことができます。

1:これまでの経験を振り返り、獲得してきた能力やスキルをすべて書き出す。

2:書き出した経験・スキルから共通点を探り、自身の強みや得意分野を明らかにする。

3:1と2を踏まえて、転職先を選ぶ基準を決める。キャリアの方向性や取り組みたい仕事に加えて、年収やポジションの希望も整理し、優先順位づけまで行う。

自己分析で整理した「転職の目的=転職先で実現したいこと」も併せて、転職先に望む希望条件を考え、優先順位をつけることがポイントです。

転職エージェント・スカウトサービスの活用で、一歩を踏み出すこともできる

「自分を採用する企業はないのではないか」「年収や待遇が下がるのではないか」といった不安に対しては、転職エージェントやスカウトサービスに登録してみるのも有効です。

転職エージェントでは、採用の可能性がある企業の紹介を受けることができます。また、スカウトサービスでは、自身のキャリアに興味を持った企業や転職エージェントから直接スカウトを受けることができるので、希望にマッチした求人の情報収集に役立つでしょう。

さらに、転職エージェントでは、応募書類の作成や面接対策のサポートを行うケースもあり、選考の通過率を高めたり、転職準備に必要なことを把握したりするのに役立ちます。

リクルートダイレクトスカウトは、リクルートが運営する会員制転職スカウトサービスです。リクルートの求職活動支援サービス共通の『レジュメ』を作成すると、企業や転職エージェントからあなたに合うスカウトを受け取ることができます。レジュメは経験やスキル、希望条件に関する質問に答えるだけで簡単に作成可能です。一度登録してみてはいかがでしょうか。

粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。