【転職先の選び方】転職して後悔しないために知っておきたい判断基準

転職エージェントには残念ながら、「転職したが後悔している。再度転職したい」という相談が寄せられることもあります。転職先選びがうまくいかなかった原因は何でしょうか。どうすればそうした後悔を防ぐことができるのでしょうか。組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏にアドバイスしていただきました。

転職に後悔することがある3つのケース

人生の大きな転機である転職において、後悔するような事態は避けたいものです。転職後に後悔してしまう場合、一般的によく見られるのは、次の3つのケースです。

「思っていた（聞いていた）業務内容や働き方と違った」というケースは、面接時の約束が守られなかったり、説明が不十分であったり、求職者側の「思い込み」が原因のことも多いようです。これは、面接時にこちらからしっかりと確認を取り、双方の認識をすり合わせることで、ある程度回避できるでしょう。

一方で、「社風に馴染めない」「経験・スキルが合わず活躍できない」というケースについては、そもそも転職先の選び方に問題があったともいえます。まず、後悔しないための転職先選びのポイントをご紹介しましょう。

転職先選びに重要なのは「転職の軸」を明確にすること

転職活動を始めるにあたっては、「転職の軸」を決めていないと方向性が定まらないため、入社後の後悔につながりやすい傾向があります。なぜかというと、「今と比べて条件が良い」など、転職で実現したかった本来の目的以外の条件に目を奪われがちになるからです。まずは長期的な視点で、「転職先で何を実現したいのか」を軸として定めることが大切です。

転職の軸を整理する一つの方法として、「人が企業や組織に期待するポイント」から考えるやり方があります。まず次の4つの観点をベースに、転職するに当たって自分が何にこだわりたいのかを考えてみましょう。

1：「目標への共感」

企業理念やビジョンの明快さ、事業戦略や目標の将来性など

2：「活動内容への魅力」

自社の事業や商品・サービスの特徴、仕事内容やミッションのやりがいなど

3：「構成員への魅力」

社風や風土・慣行の親和性、経営者や人材・人間関係の豊かさなど

4：「特権への魅力」

評価制度・教育制度や給与・待遇の充実度、施設・社内環境や勤務場所の利便性など

それぞれの観点で、自身が企業に求めるものを書き出し、それらに「優先順位」をつけることで、自身が転職先に求める「軸」が明確化してきます。

転職の軸が見つからない場合

上の方法で転職の軸が整理できないという場合は、次の方法を試してみてください。

自己分析を行う

まずは「自身を知る」ことから始めてみましょう。自身の強みは何なのか、どのようなことに喜び、あるいは苦手だと感じるのか、自身の特性や志向を整理します。例えば、次の項目をもとに考えてみてください。その上で、自分が転職で何を実現したいのかを見つめ直してみましょう。

現職での不満をもとに、何を実現したいのか考える

現職への不満が、転職を考えるきっかけになっている場合は、何に不満を抱いているのかを具体化してみてください。次の観点をベースに、不満を洗い出してみましょう。

現職への不満点を明確にしたら、「～が嫌だ」を「～したい」というように、ポジティブな表現に変換してみましょう。例えば、次のように言い換えてみると、これがそのまま転職活動の「軸」になります。

「評価に納得できない」→「働きが正当に評価される会社で、納得感を持って働きたい」
「休みが取れないのが辛い」→「ON／OFFを切り替えられるメリハリのある働き方をして、パフォーマンスを上げたい」

「転職の軸」をもとに企業を選ぶ際の具体的な方法

自身の「転職の軸」に沿って実際に企業を選ぶときに着眼したい点と、参考にしたい情報源について解説します。転職エージェントを利用している場合は、自身が重視する要素について、担当のキャリアアドバイザーに聞いたり、企業に確認してもらったりするのが早道でしょう。

自身の経験・スキルと仕事内容がマッチしているか

転職先で活躍するためには、自身の経験・スキルと合致した仕事かどうかを見定めることが重要です。求人情報の人材要件をチェックすることが基本ですが、ほかには社員インタビューを読んだり、ビジネスSNSで社員の情報を検索したりして、どのような経歴やスキルを持つ人が活躍しているかを確認する方法もおすすめです。
ただし、同じポジションの募集であっても、その時によって企業が求めるものが変わることもあります。従って、面接の中でも「求人情報等にある人材要件の中では、何が重視されるのか」「どのくらいのレベルが求められるのか」を直接確認することが大切です。

経営理念や事業戦略に共感できるか

「ビジョン・ミッション・バリューはどうか」「現在と今後の事業展開は」「成長性はどうか」など、企業理念、ビジョン、事業戦略への共感を「転職の軸」と考える場合は、企業ホームページや経営者の発信や記事、IR情報、ニュースなどでも情報を探してみましょう。
転職の面接においては、「（経営理念を具現化するために）どのような施策やアクションを起こしているのか」「社員に浸透させるために何を行っているか」などを確認するといいでしょう。

商品やサービス内容、顧客は誰か

商品や仕事内容の魅力を重視する場合は、「誰に対して何を提供しているか」「シェアはどのくらいか」「業界内での優位性は何か」などに注目し、仕事内容をイメージしてみましょう。
企業ホームページや求人情報、社員インタビューやユーザーの口コミ、ホワイトペーパー（商品サービスに関する説明資料・レポート、製品カタログ、導入事例、市場調査など）を読み込んでみるほか、実際に自分で使ってみるのもおすすめです。
面接では、競合他社との違い（顧客、サービス、ビジネスモデルなど）について担当者に確認するといいでしょう。

社風や風土、一緒に働く人に共感できるか

社風や従業員の魅力を「軸」にする場合、求人情報やホームページ、社員インタビューなどから、経営者や従業員の人柄、職場の雰囲気がある程度は把握できるでしょう。
ただ「実情はどうか」「ギャップはないか」については、自分の目で確認するのが確実です。面接はもちろん、職場見学や面談の場を利用して複数の社員と会い、「職場の雰囲気はどうか」「仕事の進め方はどうか」などに注目して、社風や文化を判断する材料にしましょう。

福利厚生や働き方、人事制度に納得できるか

給与や福利厚生、勤務場所、評価、教育制度などを優先する場合も、ホームページや求人情報で基本情報を確認するほか、口コミやニュース、政府系サイトで開示されている情報（※）も参考にすると良いでしょう。
面接の中では「制度の実際の運用状況はどうか」「どのような成果を上げると評価され、昇進昇格の実例はどうか」などを、面接担当者に確認することをおすすめします。

※女性の活躍推進企業データベース
※安全衛生優良企業マーク推進機構

転職して後悔しないための「転職活動の進め方」

転職後に後悔しないためには、転職活動の進め方にもポイントがあります。

転職に踏み切る前に現職で可能性を探る

面接で仕事内容や働き方について確認したとしても、多かれ少なかれ入社後のギャップは生じるものです。「前の会社の方が良かった」といった後悔を極力避けるためには、まず現職で不満を解消したり、希望を叶えたりする道がないかを探ることが大切です。

例えば、上司に率直に考えを伝え、じっくり話し合うこと。直属の上司に相談しにくい場合は、さらに上の上司、あるいは人事担当者に相談したり、担当変更・異動・出向などを願い出たりする方法もあるでしょう。また、現在の職場で「改善」や「新たな取り組み」への提案をしてみてもいいかもしれません。そのプロジェクトの責任者に手を上げて、自ら推進することで、転職しなくても、求めている仕事や環境を手に入れられる可能性もあります。

勢いで転職先を決めない

当然ながら転職は「ゴール」ではなく「スタート」であり、入社後に活躍することが何よりも重要です。しかし、「とにかく今の状況から脱したい」「環境を変えたい」といった不満解消の気持ちだけが先走ると、転職すること自体が目的になってしまいがちです。

選考で高く評価されて自信を得たり、採用担当者と意気投合したりすると、そのままの勢いで転職を決めてしまうケースもありますが、自身が本当に得たいものがこの転職で得られるかどうかを、しっかりと見極めたうえで決断することを忘れてはいけません。

心から「働きたい」と思う企業が見つからないのであれば、転職を焦らず、腰を据えて長期スパンで臨むという考え方もあります。そもそも転職先選びに迷っているようなら、今はまだ転職すべき時期ではないのかもしれません。

「すべてを満たす転職先はない」と覚悟する

転職という一大決心をするからには、「やりがいがあって年収もアップ。人間関係が良く、働きやすい制度も整っている」と、あれこれ希望を叶えたくなるものです。しかし、すべての条件において満足できる企業は存在しないと考えておいたほうがいいでしょう。過度な期待を抱いて転職すると、入社後に少し不満を感じただけで、後悔してしまうかもしれません。納得感を持って働くためにも、「転職の優先順位」をつけておくことが大切なのです。

面接では企業側と「共通認識」をすり合わる

面接はリアルな「一次情報」を得ることができる貴重な場です。転職後の後悔を防ぐためには、自身の重要ポイントを面接の場でしっかり確認しましょう。その際に注意したいのは、言葉の定義を曖昧にしないことです。例えば、「入社後の早い段階で新規事業の立ち上げを任せたい」と言われたら、「早い段階とはいつか」「新規事業は決定事項なのか」まで、しっかりすり合わせをしておきましょう。また、内定後に「労働条件通知書」を受け取ったら、必ず内容を確認し、疑問があれば面談でクリアにすておくことをおすすめします。

転職エージェントを活用し、アドバイスを得よう

転職活動をしていると、ときに「自分自身が何を望んでいるのか」を客観視できなくなることもあります。客観視できないまま転職先を選んだ結果、転職後の後悔につながってしまうかもしれません。転職エージェントを活用すると、自身の経験・スキルの市場価値や今後のキャリアについて、客観的な視点で助言してもらえるでしょう。

最近は、オンラインで気軽に面談ができる転職エージェントも増えています。転職のプロと一緒に、現在抱えている課題や今後の目標を整理することで、迷いが解消され、納得度の高い転職を実現することができるでしょう。