【社労士監修】転職活動で内定が出てから、退職・入社までの流れや手続きを解説 

転職活動で内定が出たら、様々な手続きが発生します。在職中であれば現職の企業に対して退職手続きを、すでに退職していて雇用保険の基本手当を受給している場合はハローワークに入社が決まった旨を報告する必要があります。また、内定が出た企業への入社手続きも行わなくてはなりません。内定が出た後の退職までの流れや、入社日までに行う手続きについて詳しく解説します。

内定が出てから入社までの流れ 

内定が出てから入社までの一般的な流れをご紹介します。内定から入社までは、企業に在籍している場合は1~2カ月、退職している場合は数週間~1カ月程度が目安です。

内定通知書と労働条件を確認する 

志望する企業から内定が出た場合、企業または転職エージェントから「内定通知書」や「労働条件通知書」が届きます。この通知が届いたら、記載されている内容を細かく確認し、面接時に聞いていた内容と相違がないかをチェックします。 

内定が出た企業以外に選考を進めている場合は、選考中の企業に内定が出るまでのスケジュールを確認しましょう。内定への回答期限は、通知から1週間程度に設定されていることが一般的です。内定を出している企業は、内定の回答があるまで他の選考を見合わせているケースも考えられるため、回答に時間がかかる場合は、企業の採用担当者や転職エージェントになるべく早く連絡しましょう。 

内定への回答をする

労働条件を十分に確認し、他に疑問がなければ、内定承諾、または辞退の返答をします。転職エージェントを利用している場合は企業に直接連絡を入れるのではなく、必ず転職エージェント経由で連絡するようにしてください。なお、内定承諾後の入社辞退はトラブルになる可能性があります。内定承諾前にきちんと条件を確認してから承諾することが重要です。 

入社までのスケジュールを決める 

在職中に転職活動を行っている場合は、内定承諾を決めたら退職手続きを進めていくことになります。退職をスムーズに進めるために、まず就業規則をあらかじめ確認しておくことが重要です。多くの企業で、「退職希望日の○カ月前までに退職を申し出なければならない」と、申し出の期間を明記されているからです。 

また、ボーナスの支給条件、残りの有給休暇などについても調べておくと良いでしょう。入社日から逆算し、引き継ぎ期間や有給休暇日数を考慮して、自身にとって最も都合がいい希望退職日と最終出社日を事前に決めておきましょう。 

雇用契約を結ぶ

内定承諾の回答をした後に、内定先の企業または転職エージェントから雇用契約に関する書類が届きます。内定時に送付された内定通知書や労働条件通知書の条件と比較しながら、内容に問題がないかを改めてチェックし、一般的に署名や捺印をして正式に雇用契約を結びます。なお、雇用契約書の提出日を入社初日に定めている企業が多いようです。 

退職の意思を伝える

在職中に転職活動を行っていた場合、まず直属の上司に退職意思を伝えるようにしましょう。いきなり部門長・人事担当者に相談したり、身近な先輩や同僚に先に伝えたりすると、上司の立場や感情を損ねる可能性があるからです。 

引き継ぎ・退職手続きを進める

在職中に転職活動を行っていた場合は、後任に業務を引継ぐ必要があります。そこで、引継ぎに要する期間や、具体的な業務内容を事前にリストアップしておきましょう。やるべきことを整理しておけば、上司が後任を手配しやすくなり、後任が見つかったらすぐに引き継ぎを始めることができるからです。 

また、退職手続きも進めておきましょう。退職届の提出や、現職の企業に返却する書類と、受け取る書類があります。上司や人事に確認しておきましょう。 

入社手続きを進める 

内定先の企業から、入社手続きに関する案内が届きます。案内に従って手続きを進めましょう。免許や資格の証明書や卒業証明書など、退職する前に取り寄せることができる書類と、退職証明書のように退職後でないと取り寄せられない書類があります。案内に記載されている締め切りを確認し、必要書類を揃えましょう。 

円満退職のための退職交渉のポイント

在職中の場合、前述の通り現職の企業へ退職の旨を伝える必要があります。場合によっては引き止められることもあるので、円満退職のための退職交渉のポイントをご紹介します。 

就業規則を確認する 

就業規則に退職の申し出期間を明記している企業が多く、退職希望日の1~3カ月前を設定しているケースが一般的です。企業が定めている期間を過ぎて退職を申し出ると、トラブルの元になります。退職の申し出は就業期間を確認し、余裕を持って伝えましょう。 

伝え方や姿勢に気をつける 

所属企業に不満があって退職を決めたとしても、退職の申し出時に不満を伝えたり、一方的な姿勢で臨んだりするのは、退職交渉がこじれる原因になります。退職を告げられた相手の立場に立って、気持ちよく退職を認められるように退職理由を工夫したり、感謝の意思を伝えたりしましょう。 

無理のないスケジュールを立てる 

退職希望日から逆算して、有給休暇の消化と引き継ぎ期間が十分にあるか確認しておきます。退職までの日数が短すぎる、または有給休暇を消化するために引き継ぎ期間がないなど、スケジュールに無理があると職場に迷惑をかけてしまいます。特に、営業やコンサルタントなど顧客がいる仕事の場合は、後任への引き継ぎと顧客への挨拶が必要です。引き継ぎが不十分な場合は今後の取引に影響する可能性があるため、責任を持って取り組みましょう。 

退職・入社に必要な手続きと書類 

退職・入社に必要な手続きや書類をそれぞれご紹介します。以前は、年金手帳や雇用保険被保険者証を企業に預けるケースもあったようです。辞める際にどちらが持っているのか確認しておきましょう。 

退職に必要な手続きと書類

退職にあたり必要な手続きや書類は、3つの種類があります。1つは退職届の提出、2つ目は社員証や名刺などの企業への返却、3つ目は離職票や源泉徴収票など書類を受け取ることです。 

退職届の提出 

現職の企業に退職の意思を伝えた後、一般的には退職届の提出を求められることになります。様式は企業によって異なりますので、上司や人事などに確認してみるといいでしょう。

現職の企業に返却する書類・備品

  • 健康保険被保険者証 
  • 社員証・入館証 
  • 名刺
  • 仕事で使用した書類・データ 
  • パソコン・携帯電話・タブレットなど 

所属企業から受け取る書類 

  • 離職票
  • 源泉徴収票
  • 雇用保険被保険者証(預けている場合)
  • 年金手帳(預けている場合)
  • 退職証明書(必要に応じて)

入社に必要な手続きと書類 

入社にあたり必要な手続きは大きく2種類あり、1つは健康保険や年金などの公的な手続き、もう1つは卒業証明書や免許・資格の証明書など、企業によっては提出を求められる書類の手続きです。

公的な手続きに必要な書類 

  • マイナンバー(個人番号) 
  • 健康保険被扶養者(異動)届(被扶養者がいる場合) 
  • 雇用保険被保険者証(被保険者番号が分かるだけでも良い時があります) 
  • 年金手帳(提示を求められた場合) 
  • 源泉徴収票 
  • 扶養控除等(異動)申告書 
  • 給与振込先届出書 

企業によっては提出が必要な書類 

  • 健康診断書 
  • 退職証明書 
  • 入社承諾書・入社誓約書 
  • 身元保証書 
  • 免許や資格の証明書 
  • 卒業証明書 

雇用保険の基本手当(失業保険)を受給している場合の手続き 

企業を辞めて、雇用保険の基本手当(失業保険)を受給している場合は、ハローワークに報告して手続きを行う必要があります。基本手当を受給している人の手続きを説明します。 

ハローワークに報告する

基本手当を受給している方の転職が決まった場合は、入社日の前日までの失業の認定を受けるため、本人が入社日の前日にハローワークへ足を運び、失業認定申告書と再就職先の事業主に証明を受けた採用(内定)証明書を提出します。 

なお、月曜日から就職する場合など、就職日の前日が休日の場合は、その休日の前日に来所する必要があります。就職日の前日に訪問できない場合は、あらかじめハローワークに相談しましょう。 

「再就職手当」の受給手続き 

再就職手当とは、雇用保険の受給資格決定を受けた人が、早期に安定した職業に就いた際に受け取れる一時金のことです。再就職を促進するために設けられた制度で、以下の条件を満たした場合に支給されます。 

  • 失業保険受給の手続き後、7日間の待期期間(仕事をしていない期間)を満了後に、就職または自営業を開始したこと 
  • 就職日の前日までの失業認定を受けた上で、基本手当の支給残日数が所定給付日数(受給資格決定時にもらえる日数)の3分の1以上であること 
  • 退職した会社に再び就職していないこと。また、辞めた会社と資本金・資金・人事・取引面で密接な関わりがない会社に就職すること 
  • 正当な理由のない自己都合退職や懲戒解雇によって給付制限(基本手当がもらえない)期間がある場合、受給資格決定日から待期期間満了後の1カ月間については、ハローワークや人材紹介会社の紹介によって就職していること 
  • 1年を超えて勤務することが確実であること。なお、契約期間が1年以下の契約社員や派遣社員でも、更新する見込みがあれば支給対象となる 
  • 自営業を開始した場合を除き、雇用保険の被保険者となっていること 
  • 過去3年以内に再就職手当、または常用就職支度手当の支給を受けたことがないこと 
  • 受給資格決定(求職の申込み)前から採用が内定していた会社ではないこと 
  • 再就職手当の支給決定の日までに離職していないこと 

再就職手当の受給要件は多岐にわたり、非常に複雑です。受給できる可能性のある方は、事前にハローワークに確認しておきましょう。 

社会保険労務士法人 岡佳伸事務所 岡 佳伸(おか よしのぶ)氏

アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。

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