転職時の引き継ぎをスムーズに進めて円満退職する方法

転職が決まったら、円満に退職して新たな仕事に集中できるようにするためにも、引き継ぎをしっかりと行っておくことが重要です。引き継ぎのプロセスで押さえておくべきポイント、スムーズに運ぶためのスケジューリングなどについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏にアドバイスいただきました。

引き継ぎタスク一覧を作る

引き継ぎにとりかかるとき、最初に行うのは次の作業です。

タスクをリストアップする

まずは自身が担当している業務をすべてリストアップします。
このとき、次のような項目を設定しておくと整理がしやすくなります。

  • 通常の業務内容
  • 業務発生の頻度・時期
  • 工数
  • 所要時間
  • イレギュラー業務の内容

これらを一覧にしておくと、上司が業務のボリュームや難易度などを把握できるため、後任の選定がしやすくなるでしょう。

リストアップ例(マーケティング職の場合)

分類 業務内容 頻度 作業時間
請求管理 月次の計画と実際にかかったコストを入力 月1回程度 1時間
計画立案 3カ月ごとの集客計画を立て、目標と費用対効果を入れる 3カ月に1回 6時間
定例資料作成 定例会の資料を作成する 週1日 1時間
分析レポート作成 ○○を使用し、分析レポートを作成する 週1日 2時間

マニュアルの有無を確認する

後任が決まっていれば口頭で説明し、一緒にやってみながら引き継ぐこともできますが、自身の退職後に後任が決まる(入社する)状況であれば、後任者が理解しやすく、すぐに業務にとりかかれるようにマニュアルを準備しておく必要があります。

担当している業務や使用しているシステムに関して、既にマニュアルやルールブックなどが存在することもあります。その有無を確認しましょう。なければ、業務の流れや重要なポイントを整理し、マニュアルを作成します。

営業職やコンサルタント職などの場合、顧客管理システムなどに入力してある情報が十分でない場合、顧客情報について次のような項目の記録を残しておくといいでしょう。

  • 顧客名
  • 担当者の連絡先
  • 現在の契約状況
  • 過去の取引状況
  • 今後見込まれるニーズ
  • 折衝時の注意点
  • 過去にあったトラブルとその経緯

エンジニアの場合は、プロジェクトの進捗状況が一目でわかるようにしておき、案件ごとに仕様書・必要書類をまとめて保管しておきましょう。そして、データを保管するフォルダは、何がどこにあるかすぐに見つけられるように分類し、わかりやすい名称をつけておきます。

退職スケジュールを作る

タスクのリストをもとに、退職日までにそれぞれのタスクの引き継ぎをどのように進めていくかを計画します。

後任の着任時期を上司に確認する

後任者が他部署から異動してきたり新たに採用したりする場合は、着任時期を上司に確認します。
場合によっては、複数の人数にタスクを割り振ることになる可能性もあります。早く後任が決定・着任したタスクから引き継ぎを進めていきましょう。後任の状況によっては、一部業務を別の部署に渡したり、業務を縮小したりすることも検討する必要があります。

退職までのスケジュールを作成する

残務処理にかかる期間、有給休暇の消化期間も踏まえ、いつまでにどのタスクの引き継ぎを完了させるか、スケジュールを組み立てましょう。営業やコンサルタントなど、退職の挨拶と後任者の紹介を兼ねた顧客への訪問が必要な職種の場合、後任者と顧客との日程調整が必要となります。

また、管理職やプロジェクトの責任者なども、後任の着任に時間がかかったり引き継ぐ項目が多かったりします。こうした職種・ポジションの方々は特に、ゆとりを持たせた引き継ぎ期間を設定した方がいいでしょう。特に、外部の取引先への挨拶回りには時間を要しますので、訪問しての挨拶が必要な取引先がいくつあるのかを早めに把握しておきます。

引き継ぎのミーティング・取引先への訪問などのアポイントをとる

既存のメンバーに引き継ぐ場合、後任者は自身の通常業務を行いながら、引き継ぐ業務をキャッチアップすることになります。後任者に仕事の状況を確認し、引き継ぎのためのミーティングのアポイントをとりましょう。また、営業職やコンサルタント職など、顧客やパートナーに後任者を紹介するための訪問が必要な場合は、後任者とスケジュールのすり合わせを行った上で、訪問先の担当者にアポイントをとります。

先方担当者の多忙や出張などで、アポイントがとれるタイミングが先になる可能性もあるので、早めに連絡しましょう。

スムーズな引き継ぎのポイント

引き継ぎが不十分なまま退職すると、次の会社で働き始めてからも、前の会社から問い合わせがきてしまうかもしれません。転職後は新たな仕事に集中できるように、スムーズに引き継ぎを済ませるためには、次のポイントを押さえておきましょう。

引き継ぎの進捗を上司に報告しておく

それぞれのタスクの引き継ぎについて、進捗状況を上司に報告しておきます。
もし引き継ぎが十分ではない案件などがあれば、状況を上司に伝えておき、退職後に後任者をフォローしてもらうよう依頼しておくといいでしょう。

関係者の連絡先などをまとめ、権限を付与しておく

後任者が引き継いだ業務で協業する関係者、また、わからないことが発生した場合などの問い合わせ先など、必要な連絡先を一覧にまとめておきましょう。業務で使用するシステム、チャットツール、ファイルサーバーなどへのアクセスに必要なIDについても、早めに後任者に付与するか、一覧にしておきます。

重要なメールはバックアップして引き継ぐ

業務上、重要な連絡事項が記載されているメールは、バックアップをとって後任者に引き継ぐか、後任者のアドレスに転送しておきましょう。

管理職の引き継ぎ

管理職が引き継ぎを行う場合、次のような理由から、想定よりも時間がかかる可能性があります。

  • 引き継ぐ案件・業務が多い
  • 責任が重く、かつ慎重に行わなければならない案件もある
  • マネジメント下にあるメンバー個々の情報も、次の管理職に引き継ぐ

特にメンバーについては、人物タイプを踏まえて、引き継ぐマネジャーに評価や育成プランを伝えたりしておくことが望ましいといえます。場合によっては、自身とメンバー、新しいマネジャーとの3者面談も必要になるでしょう。

管理職の場合は、丁寧な引き継ぎを行えば長期に及ぶことを想定し、スケジュールを組んでください。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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