転職活動で内定が出たが、判断に迷っている場合の対処法

興味を持った企業に応募し、選考をクリアして内定を獲得――しかし、いよいよ転職する決断に迫られると、迷いが生じることもあります。内定を承諾していいものかどうか迷ったとき、どのように対処すればいいのでしょうか。そこで、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏にアドバイスいただきました。

内定を承諾するかどうか迷う場合は、面談の時間をもらおう

内定通知を受けたが、入社を承諾するかどうか迷う――そんなときは、気にかかっている点をクリアにするため、まず面談の場を設けてもらいましょう。

「給与」「待遇」「評価制度」などの条件・制度面に対して疑問を抱いている場合は、人事担当者との面談を依頼します。給与額については、待遇を含めて内定を出しているため、内定後に増額を求めても受け入れてもらえない可能性があります。ただし、面談で「入社後、どのような成果を挙げれば給与アップ・昇格につながるのか」「過去、自分と同等レベルのキャリアで入社した人は、何年後にどのようなポジションに就き、年収はいくら上がったのか」といった例を尋ねてみるという方法があります。転職時は希望年収に届かなかったとしても、入社後に成果を出すことで年収アップを実現することができるでしょう。

「仕事の進め方」「働き方」の実態が気になり、「社風に溶け込み、人間関係をうまく築けるだろうか」といった不安を抱いている場合は、現場で一緒に働くメンバーと話をさせてもらうという方法もあります。昨今は、オンラインでのカジュアル面談も多く導入されているので、対話の機会を設けてもらえる企業もあるかもしれません。

他にも、自身が気になっているポイントに応じて、「最近中途入社した、キャリアやポジションが近い社員」「人物タイプ・志向・キャリア観などが似ている社員」など、話をしてみたい人物のリクエストを出すと、企業が面談をアレンジしてくれることもあります。例えば、幼い子どもを育てている方であれば、子どもを持つ社員と面談させてもらい、「仕事と育児をどのように両立させているか」「育児支援制度は活用できているか」などを確認してみる方法もあるでしょう。

なお、転職エージェントを活用して転職活動をしている場合は、気になっているポイントについて担当のキャリアアドバイザーから詳しい情報を聞けることもあります。まずは転職エージェントに相談してください。

1社のみ内定が出ており、判断に迷っている場合の対処法

1社のみ内定が出た場合、状況により対応の仕方が異なります。パターン別にお伝えします。

他に選考中の企業がある場合は日程調整を行う

1社から内定が出たものの、複数の企業に応募しており、まだ他の企業が選考中である場合、内定が出た企業に入社意思の回答期限を延期できるか相談してみましょう。

内定通知からの回答期限は、一般的には1週間~10日間程度です。規定の期限よりも延長してもらえるかどうかは企業の考え方や事情によって異なります。「納得したうえで入社してほしい」と考える企業であれば、他社の選考結果が出るまで待ってくれることもあります。ただし、企業側が採用を急いでいたり、他の候補者を待たせていたりするケースが多いため、基本的には期限までの回答を求められるでしょう。

一方で、選考中の企業に対して面接日程を前倒しするなど、早く結論を出してもらえるように交渉することで、内定の回答期限に間に合わせるという方法もあります。いずれにしても、迷っているだけでは先に進まないので、応募企業・選考中の企業に相談してみることが大切です。

他に選考中の企業がない場合、現職に残るかどうか、メリット・デメリットを比較する

他に選考中の企業がなく、内定を承諾して転職するか、現職にとどまるかで迷っている場合は、内定企業と現職のメリット・デメリットを比較して整理してみましょう。どの観点で比較するかは、下記の項目を参考にしてください。

<比較検討する項目例>

企業理念
ビジョン
事業戦略
事業・商品の特徴
仕事内容
社風
経営者
社員
評価・教育制度
給与
設備
勤務場所

また、今回の転職で望んだことが現職では本当に実現できないのかを、今一度考えてみましょう。「社内異動を願い出る」「新たな取り組みを自ら提案する」といった手段により、転職しなくても現状への不満を解消できたり、希望を叶えたりすることができるかもしれません。

なお、メリット・デメリットを整理しても、どうしても内定企業と在籍企業のどちらも選べない場合は、「せっかく内定が出たから」といって無理に転職せず、内定を断って転職活動を再開するという選択肢もあります。今後のキャリアのために何を選択するのか、客観的に判断しましょう。

2社以上で内定が出て判断に迷っている場合の対処法

2社以上から内定を得て、どの企業を選ぶか迷った場合は、次のような方法で検討してください。

転職理由を基準に比較検討する

様々な企業の面接を受けていると、想像していなかった企業の魅力を知ることもあります。当初は年収アップが転職理由だったのに、面接で話をしているうちに応募企業の採用担当者や経営層の人柄に惹かれ、「年収アップよりも、優秀な人たちと一緒に働きたい」などと考え方が変わってしまうこともあります。そこで、2社以上で内定が出て迷っている場合は、なぜ転職しようと思ったのか、原点に立ち返ってみてください。転職を決意した理由・目的を改めて確認し、その目的を最適な形で実現できるのはどの企業なのかを考えてみましょう。

転職理由や希望条件を数値化する

転職先に求める条件を数値化して比較する方法もあります。Excelなどに、「企業理念」「仕事内容」「給与」など、転職で重視する条件項目を入力し、候補企業ごとにスコアをつけてみてはいかがでしょうか。各社のメリット・デメリットのバランスが可視化され、判断しやすくなるかもしれません。

第三者の意見を仰ぐ

自分一人で考えても判断がつかない場合は、第三者に相談してみるのも一つの方法です。なぜ転職するのか、転職することで何を得たいのかについて誰かと話をするうちに、自身の考えが整理されることもあります。また、第三者の意見を聞くことで、自分にはなかった視点に気付けるかもしれません。信頼できる友人・知人と対話してみてはいかがでしょうか。

なお「ワークライフバランス」や「ライフプラン」を踏まえて検討する場合、家族の意見も聞いてみるといいでしょう。

転職エージェントを活用している場合は、担当のキャリアドバイザーにアドバイスを受けるのも有効です。複数の転職エージェントを利用していて、他の転職エージェント経由で応募した企業で内定が出ている場合でも、状況を詳しく伝えることで適切なアドバイスを受けることができるでしょう。

最後の判断は必ず自身で決めることが重要

迷った時に、誰かに相談して様々な視点や意見を取り入れるのは有効ですが、最終的には必ず自身で決断してください。第三者から勧められるままに決めてしまうと、入社後、少しでも違和感や不満を抱いた時に後悔することもあります。自身で決断すれば、多少のギャップを感じたとしても、納得感を持って働けるものです。

適切な判断をするためにも、自身が迷っている原因を明らかにすることが大切です。懸念点について、企業や転職エージェントなどから情報を得て、疑問をクリアにしたうえで決断しましょう。

【アドバイザー】

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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