前回は「番頭」「参謀型」タイプのNO.2について着目してみました。こちらはいわば、“守り型”のNO.2。対して今回は、トップの下で「事業を統括・執行する」“攻め型”NO.2について紐解いてみたいと思います。
トップの下で事業を統括・執行するNO.2としては、COO、事業部長、あるいはこれらを兼ねる副社長・専務・取締役などが考えられますね。CFOは一般的には管理部門を統括する“守り型”ですが、主幹が戦略や資金調達、M&Aなどの“攻め型”タイプも存在しますので、この攻め型CFOについても見てみます。
夢・ビジョンのCEOと現実・合理のCOO、はホントか?
CEOとCOOの違いは何か?「構想を描く人」と「執行を統括する人」。概ねこんな回答が一般的で、それが正解と思われているかと思います。
ではCEOは執行しないのかと言われれば、現実的にはCEOこそがしゃかりきになって執行しているという企業は少なくありません。COOが本来機能を果たしていないということかもしれませんが…。
「CEO」「COO」という執行役職が日本企業にも多く使われるようになり始めた頃(90年代に入ってでしょうか)は、それまで「社長」「副社長」だったものが「社長兼 CEO」と「副社長 兼 COO」などと肩書き変更(追加)されて、社長と副社長の役割が明確化された感がありました。
その後、複数事業のグループ会社を多数抱える企業がホールディングス化することが増えるのと並行して、「会長 兼 CEO」「社長 兼 COO」というフォーメーションが多く見られるようになりました。私は個人的には、こちらの「会長 兼 CEO」+「社長 兼COO」の組み合わせのほうが、実体的な役割分担のしっくり具合を感じます。
会長 兼 CEOがグループ全体の方向付け・戦略責任を負い、社長 兼 COOは中核の事業本社の統括・執行責任を追う。会長 兼CEOが新規事業やグローバルを管轄し、社長 兼COOは国内現行事業を推進する。そのような役割分担が、当社クライアントなどを見ても、多く見られます。
CEOとCOOの機能を分けるとすれば、本質的には「時間軸」だと私は捉えています。
「明日の、未来の我が社のあるべき姿を構想し、そのための布石を打つ」のがCEO。「現行の事業を成功に導き、収益を上げ、事業成長させる」のがCOO。
この“時間軸的視野の違い”が、結果として「いまの当社事業」をどの“広さ”で捉え動かすかの差にもつながる。社長やオーナーが、時折一見突拍子もない(とNO.2以下の社員たちが思う)ことを言い出したりやったりするのは、見ている時間軸が異なる〜今は現行のことをやっていれば良いが、先々を考えると、いま、こんな布石を打っておいたほうがよいと、トップならではの嗅覚で思い行動する〜からなのです。
先々を見る、妄想もするのがCEO。今日の現実にロックインしているのがCOO。だからCEOは夢・ビジョンドリブンで、COOは現実・合理主義者だと言われるのでしょう。これはある面、役割がしっかり機能していることの表れでもあるのです。
社長と事業部長は、何が違うのか?
このことから、社長と事業部長の違いも、自ずと明らかになります。
事業部長も「事業単位の一国一城」。となれば、これは、事業部においては社長・CEOなのではないか?
しかし、上記に照らし合わせて、CEOとCOOの役割分担を見れば、事業部長も「事業部のいま」にロックインし現行の事業を執行し成功・成長させることがミッションだということになります。
ここで皆さんは、カンパニー制、ホールディングス化の意味を、キャリアカーバーを利用され転職活動されているマネジメント人材の立場で、合点いくかたちで理解されるのではないかと思います。
そう、「事業部長に、中長期的な観点から事業執行して欲しい」、その役割を事業部長に負わせたいなら、カンパニー制、あるいはホールディングス傘下で事業単位で分社化し、事業部長をCEOにするのです。(あえて機能的な観点から言えば、「事業部長に、中長期的な観点から事業執行して欲しい」ならば、そうしなければならない、のです。)
逆に、社長(CEO)が、「当社はCEOである自分の構想の元、描かれた方向性に基づき、各事業はそれぞれ現行の執行をしっかりやって欲しい」となれば、カンパニー制や分社化・ホールディングス化ではなく(逆に、そうしてはいけない!)、ワンカンパニー内に事業部を設置するかたちを堅持するべきでしょう。
さて、こんなかたちでCEO、COO、事業部長の役割を明確化した上での、全社・事業部の運営のされ方を見てみた上で、あなたの現職企業はどのようなフォーメーションとなっているでしょうか?あるいはいま転職を検討している先の企業の経営体制・事業の置かれ方はどのようになっていますか?
それは、あなたが望む経営役割のかたちと合致しているでしょうか?
攻め型CFO、はありなのか?
“攻め型”タイプのCFOは、主幹が戦略や資金調達、M&Aなど(そこに強みを持つ)が故に、「(経営に)物言う」方が多いです。
CEOが描き、決め、実行に移すべき経営の大局的なところ〜次の大きな一手、大型投資、M&Aなど〜について、攻め型CFO自身も発案し実行したいという欲求を持ちます。ここに、時としてCEOとの抗争・禍根の種が撒かれます。職務の領空侵犯となるのです(それをCFOもCEOも自覚していないことも少なくないですが)。
このときは、CEOが、ある面のCEO的役割を攻め型CFOに渡す・依存するという前提をしっかり持てているか否かが非常に大事です。そうでないと、お互い優秀な経営陣でありながら、自分の思い通りにしたい二人が内部で争い合う構図になる訳です。(これは、非常に多いケースです。)
攻め型CFOだけでなく、COOや事業部長においても一緒でしょう。
機能・役割としては、これまで述べてきた通りですが、だからCOOや事業部長は今のことだけ考え執行していれば良いという訳ではありません。逆に概ねの社長、CEOは、自社のCOOや事業部長にも「CEOと同じ」未来のスコープを期待していることが多いでしょう。
ですから、役割定義としては今回みてきたような分掌となるけれども(通常それが望ましいが)、我が社はそれでOKなのか。あるいは違う役割・ミッションをお互いに定義付けたいのか。これをはっきりさせることが、非常に大事です。
「現行の事業を伸ばす、極める」ことと「見えていない未来を見て、他の誰も取れないリスクを取る」ことの二つが、成長して永続する経営には必須です。
CEOがやるべきこと、COO、CFOがなすべきことが、一般的な職務定義的にてか、あるいは自社特有のスタイルかで、明確になっており役割分担されているか?
理想は、本来機能のCEO/COO/CFO/事業部長キャラ分けと役割分担がされることですが(それが最も効果的だからこそこうCxO職が分化したのです)、それ以上に大事なことは、経営チームとして必要なCEO/COO/CFO/事業部長機能が、肩書きとはズレていても、誰かが幾つかを兼ねていても、全カバーされていることです。
マネジメントチームの話ではありませんが、例えば野球チームも、9名の揃え方はそれぞれですよね。
4番でピッチャーが主軸のチームもあれば、守備は下手だが打撃力で打ち勝つチーム、打点は少ないが鉄壁の守備で守りきるチーム、手本のように1番から9番までのキャラクターが揃っているチーム。それぞれの個性に合わせて選手がラインアップされます。
そういう意味では、あなたはマネジメントチームにおいては、何番打者で守備位置はどこタイプなのか?御社は、転職検討先は“何型野球のチーム”なのか?お互いのスタイル確認をしておくことが、自分が自分らしく経営参画できる決め手となります。
ちなみに、創業経営者は、やはり「4番でピッチャー、監督兼任」が多いですね(笑)。もしあなたが、そのような会社に参画するとしたら、自分のポジションはどこになるか?オーナー会社で幹部が上手くやるための、必須の確認事項です。
ではまた、次回!
井上和幸
1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。