幹部転職・経営職転職における、面接前の事前チェック4項目

皆さま、転職活動は順調に進んでいらっしゃいますでしょうか。今回はキャリアカーバーで転職活動されている幹部・経営層の皆さまが、いざ実際の応募・面接に進まれる前に自己チェックして欲しい4つの項目についてご紹介します。 これらは、もしかすると見逃しがちで、しかしあなたの幹部・経営層としてのキャリア、転職の成否を大きく分ける事項です。転職活動中での参考に、いざ企業との面接の前にぜひお目通し頂ければと思います。

「職歴書、面接であなたが最も伝えたいことは、何ですか?」

そもそもの質問からですが、今回の転職目的・こだわり、今後の自分のキャリア志向性、できること・やりたいことなどは明確になっていらっしゃいますか? 「何を、今更、そんなことを?」、そうおっしゃる読者の方が多いかもしれません。しかし、私が日々、転職活動中の幹部・経営層の皆さまとお会いしていて、この質問に対して明確かつ具体的に回答くださる方は、およそ3人に1人です。

職歴書はきちんと書いた。そうおっしゃる方からお預かりしたレジュメを拝見しますと、これまでの職歴を「ただ単に羅列しただけ」のものが少なくありません。その時々の部署での業務項目だけが書かれている。下手をするとそれさえ概要しか記載されていない。

あなたはこれまで、その時々の部署で、担当プロジェクトで、どのようなテーマや課題意識を持ち、それらにあたりどのようなプロセス工夫や推進のされ方をして、結果としてどのような成果をもたらしたのか。そうした一連のストーリーを、読み手である相手の経営者や人事責任者、部門責任者は知りたい、読みたいのです。もちろん、これまでの10年、20年の業務経歴の全てをこのようなところまで記載したら、膨大な枚数の職歴書になってしまいますが、主だったトピックス、特にここ5年以内くらいでの自分にとっての象徴的なプロジェクトワークについては具体的詳細な記述はマストです。

転職活動のきっかけ、背景は、現職への不満にあることが多いでしょう。それはもちろん当然のことであり、おかしなことではありません。しかし、現職を辞めたい理由は、必ずしも次の会社に参画したい理由となるとは限りません。なぜ辞めたいのか、ばかりが頭にあって、では心機一転、次の会社では自分はどのようなことをしたいのか、どんな貢献ができるのか、ということについて明確にしないままの活動を続けている方は、案外多いものです。

これらが不明確なままの応募、面接は、<玉の無駄打ち>。せっかくの貴重な応募先、自分自身が明確になっていればもしかしたらご縁があったものを、準備不足でみすみす逃してしまっている転職者のなんと多いことか!一度応募しNGとなった企業とのご縁は、基本的には今後なくなってしまうのですから、闇雲な書類応募と面接は相当に怖いことなのだと自覚ください。

ぜひ漠然とした想いだけで、企業面接に出向くことのないよう、もし現状、「では自分はいったい、転職をして新しい会社でどのような場を得て、何をやり、どのような貢献ができると思っているのか」が明確でない場合は、応募・面接よりも先に、急がば回れで、このことをしっかり棚卸ししてから臨むようお願いいたします。

 「今回、現職(退職済みの場合は前職)を辞めたい(辞めた)理由は**とのことですが、それ以外の理由を教えてください」

前述の通り、退職理由とは現職における不満であることが最も多く、それはおかしなことではありません。ただし、念のため、考えていただきたいことがあります。

① 本当にそれが正当な退職理由か(と相手が思うか?)

退職理由が「現職企業の経営者や上司のやり方が間違っている(自分の考えと合わない、違和感があるなど)」ということを、とうとうと語る転職希望者の幹部は少なくありません。

そもそもの自社の職場環境や経営の問題がある企業は多く存在します。幹部としてのそれなりの立場であるが故に自社の内情が見えてしまったりということもあるでしょう。それを見て見ぬ振りはできない、コンプライアンス上のリスクもある、自分自身に火の粉が降ってくる可能性も…こうした事態に陥ったので転職したいというご相談は私も多く受けてきましたし、それが事実であればもちろん、現社から一刻も早く脱出すべきですねと、全力で新天地のご紹介をいたします。

ただ、この「現職企業がおかしい」「自分の考えと合わない」「違和感がある」といった退職理由の場合、<間違っているのはあなたのほうかもしれない>ということは、念のため一度、冷静かつ客観的に、しっかり考えてみて欲しいのです。
現場の限られた視界からは正しく見えたり当たり前と思ったりしていることが、経営レベルの視界から見ると「それはまずい」「全体からみたらやるべきではない」というケースは決して少なくありません。ご自身の視座についていま一度確認してみてもよいでしょう。

② 次に繋がる辞め方か、中途半端or自己中心的な退職理由ではないか?

起きている状況は分かりました。では、あなたはそのことについて、社長や経営陣、上司にしっかり相談や提案、意見をしましたでしょうか?

キャリアカーバーユーザーである幹部、経営陣の皆さまが、仮に会社の間違った判断や行動があったとした場合、黙って見過ごしたのでは困ります。会社や部署のことを考えれば、改善改革の提案をできてこそ、有能な幹部・経営陣です。
実際、転職面談などでこういったことが現職で起きているとお聞きした際に、「社長や上司と相談してみましたか」と問うと、かなり多くの割合で「いえ、まだ話をしていません」と。であれば、そもそも転職活動を始める前に(活動しながらでもよいですけれども)、まずは現職でしっかり対応してみたほうがよいです。実際これらのケースで、このアドバイスをいたしました転職ご相談者の何割かの方々が、改めて社長や上司に相談や提案をしてみたところ、ちゃんと理解され受け入れられて良い方向に向かい、現職に踏みとどまることになったケースも折々ありました。

③「うちに来ても、同じことを言うんじゃないの?」

面接で現職不満の話をした場合、特に社長が面接相手のときは確実に、頭の中でこう呟いているでしょう。(「なんだ、この人、転職活動先のあちらこちらで、こんな現職の不満を言って回っているんだな。うちの会社だってパーフェクトじゃないし、色々強化したりテコ入れしたいからこそ、幹部を採用したいと思っているのに。ということは、うちに入社しても、いずれ同じようなことを思って、俺には言わずに、外で言い回るようになるんだろうな」)と。
採用結果は言わずもがな、ですよね。

「あなたにとってマネジメント(幹部人材)、経営(経営人材)とは、どのようなものですか?」

直接こんな風に聞かれることは多くはないと思いますが、幹部層、経営層の採用では、相手側の社長や経営陣は、幹部クラスの方であればあなたのマネジメントについての考え方、価値観について、経営クラスの方であれば、事業観、経営観について知りたいところですし、それが我が社の価値観と合致しているか否かを確認します。

あなたなりの持論、一家言あるか、ということですが、ここでお伝えしたいのは、「相手企業に合わせて迎合しない」ということです。
面接時に応募先企業の企業理念やコンセプトなどを読み込み、それに合わせようとする方をよく見かけるのですが、もちろん自分の価値観と合致していれば、それを素直に伝えて欲しいのですが(それこそがよい転職先です)、面接対応で相手に合わせて「いいですね」などと言っても、やはり本心で響いていなかったとすれば底が浅く相手に伝わってしまうものですし、それなりの社長であれば、「逆に**さんとしてのこだわりとか、ないの?」と切り返されるでしょう。
こればかりは泥縄は効きません。あなたがこれまで取り組んでこられたマネジメントご経験、事業執行ご経験、経営ご経験から具体的かつ体験的に培われた持論、一家言を、ぜひとも相手企業の社長などにぶつけてください。それこそ、相手が採用候補者としてのあなたから、一番聞きたいことです。

「色々と応募されていますが、複数企業から内定が出た際、どうされますか?」

ここでご確認頂きたいことは、ご自身の強み・ウリを把握できているか、その上で応募企業を選択〜絞り込みできているか、ということです。

キャリアカーバーユーザーの幹部・経営層の皆さまに限って、そのようなことはないと思いますが、そもそもの応募先企業が、統一性なく、あなたのどのお強みと志向にミートしているものなのかが不明、となりますと、これは相談先のエージェントに対しても、実際の応募先企業に対しても、印象含めてマイナスポイントです。闇雲に、年収条件や単純な職種検索だけでエントリーをしまくる方が時折いらっしゃいますが、やめましょう。ご自身の事前の評価を相当落としています。

もちろん現実との折り合いもありますし、実際に転職活動でいくつかの企業と会ってみると、元々考えていた優先順位と最終判断時の優先順位が入れ替わったり、別の軸が浮上したりすることもあります。それは悪いことではありません。
具体的な意思決定軸は、皆さん個々の価値観、ご状況、バックグラウンドや家庭環境などもありますから、これが正解というものはありません。 あなたにとっての優先順位、価値観がはっきりされているか。付帯条件などで(最も多いのはやはり年収面ですね)キャリア志向の軸が本質的にブレたりずれたりはしていないでしょうか?

一つお願いしたいのは、最終意思決定ポイントが、幹部、経営層として相応しいものになっているでしょうか?(大義がある、ビジョンがある、顧客・市場や組織・事業への貢献志向である、など)
ぜひご確認頂ければと思います。入社はゴールではありません。ご入社後、志高く幹部、経営陣としてご活躍頂ける場の選択を、憂いなく曇りなく、ご決断頂けることを祈念いたします。

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4項目ご紹介いたしました。

補足として、もう一つ。
面接や面談、会食などの場で、「何か質問はありますか」という相手からの投げ掛けに対して、「いえ、大丈夫です」という回答だけはやめましょう!

幹部、経営者らしい具体的かつ本質的な質問が、常に、どの場面においても応募先企業に対してできるか否かで、入社前にあなたの新天地での活躍可能性は8割がた決まっています。

ではまた、次回!

井上和幸氏

井上和幸

1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。

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