「自動運転」と聞くと、「無人で街を走るクルマ」といったSF的なイメージを浮かべるかもしれない。
しかし、自動運転技術にはドライバーが不要になるだけでなく、より幅広いメリットがある。
そして、近い将来「無人で街を走るクルマ」が現実のものとなる可能性も大きい。
今回は、そんな進化する自動運転技術を紹介していく。
「自動運転」と聞くと、「無人で街を走るクルマ」といったSF的なイメージを浮かべるかもしれない。しかし、自動運転技術にはドライバーが不要になるだけでなく、より幅広いメリットがある。そして、近い将来「無人で街を走るクルマ」が現実のものとなる可能性も大きい。今回は、そんな進化する自動運転技術を紹介していく。
自動運転技術によって改善が期待される5つの課題とは
交通事故の減少
人間の状況判断には限界があるが、自動運転車は各種センサーの統合により人間を上回る反応速度で危険を回避できる。
車間距離短縮による渋滞の緩和
自動追従走行などのシステムにより、無駄なアクセルやブレーキ、車線変更がなくなり、車間距離の短縮が可能に。
運転可能者の範囲拡大
これまでのルールでは運転が許されていなかった人や、運転する事が困難だった人が車を利用できるよう規制緩和される可能性がある。
駐車場不足の緩和
乗員の降車後、無人で遠くの駐車場への駐車が可能になる。自動駐車によって駐車スペースの削減も可能に。
乗り心地の向上
ステアリングやその他の運転装置が無くなり、車内が広くなる。
自動化レベルは4段階 どこまで実用化されている?
2013年の米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の発表によると、自動運転は次の4つのレベルに分類される(日本政府もこの分類を採用)。
【レベル1】特定機能の自動化
操舵、制御、加速のうちいずれかを自動車のシステムが行う状態。衝突被害軽減ブレーキ、ACC(全車速追従式クルーズ・コントロール)などがある。
【レベル2】複合機能の自動化
操舵、制御、加速のうち複数の操作をシステムが行う状態。ただしドライバーが乗車し、常に状況を監視する必要がある。CACC(複数車両による全車速追従式クルーズ・コントロール)などがある。
【レベル3】限定的な自動運転
緊急時やシステムの限界時にはドライバーが操作を行うが、通常はシステムがほぼ全ての制御を行う状態。ただし事故時の責任はドライバーにある。
【レベル4】完全な自動化
操舵、制御、加速の全てを自動車のシステムや外部が行う状態。
このうち、現在の市場に投入されているのはレベル1だ。さらに2017年頃からはレベル2が投入される見通しで、レベル3についても多くの自動車メーカーが実用化に向けた開発を進めている。 日本政府も2020年までに高速道路などの限定条件下にはなるが、レベル3の実用化を目標としている。 レベル4については、海外の鉱山、建設現場などで無人のダンプカーがすでに運用され、限定された環境(建設現場)や特殊な条件下(戦場など)ではロボットカーの実用化が進んでいる。
クリアすべき課題と今後の展望
自動化レベル4の公道での実用化へ向けて、欧州では限定的なコミュニティエリアでの無人輸送・移動の実証実験が盛んに行われている。これは、主には電気自動車を利用して、定められたルートを低速(時速20km程度)で走行するモビリティサービスなどだ。このサービスの実現によって不要な加減速の低減による渋滞の緩和や抑制、その結果として燃費の向上や二酸化炭素排出量の抑制も期待されている。
また、物流業界のコストの大幅な低減と人手不足の解消、駐車場の多くが不要になることによる土地利用の効率化など、サービス実現に期待する業界は多岐にわたる。そのほかにも、自動運転車に装備される通信機による車々間通信の仕組みを利用し、携帯電話などが災害などで通信ができない状態に陥った際の非常用ネットワーク(迂回通信路)としても期待されている。
日本ではJARI(一般財団法人日本自動車研究所)が小型電気自動車の自動走行による過疎地などでの高齢者移動補助を提案しているが、これには課題もある。人工知能開発などの技術面に加え、もう1つの大きな課題は制度面の整備だ。現行制度ではジュネーブ道路交通条約に「自動車には運転者がいなければならない」と定められており、無人走行には法制度の改正が必要になる。また、事故発生時の責任や保険制度も検討が必要であり、保険に関する今後の動きにも注目が集まっている。
まとめ
このように課題はあるものの、現地の法令によって公道走行実験が可能となった一部エリアなら、完全な無人走行サービスの実現もそう遠くはないだろう。 ドライバーの負担軽減だけでなく、これまで車を運転できなかった人も移動手段を得ることができ、幅広い業界への影響が予測される自動運転技術。今後の動向から目が離せない。