海外では事例多数! 企業間の垣根を超えた「オープンイノベーション」の成功条件

従来の企業は競合優位性を確保するために、自社のみで研究・技術開発を行ってきました。しかし、技術がより成熟した現在では企業間の技術開発能力は拮抗しており、自社のみで行う開発は、時間と労力に見合わない状況です。そのため自社が求める技術やアイデアをオープンにして、大学や他社などの社外と積極的に連携する「オープンイノベーション」を採用する企業が増えてきています。

そこで今回はアジア最大級のオープンイノベーションカンファレンス「イノベーションリーダーズサミット」を主催する、株式会社プロジェクトニッポン 代表取締役 松谷 卓也氏に、オープンイノベーションをうまく活かすには、失敗しないためにはどうすればいいのか、お話を伺いました。

従来の企業は競合優位性を確保するために、自社のみで研究・技術開発を行ってきました。しかし、技術がより成熟した現在では企業間の技術開発能力は拮抗しており、自社のみで行う開発は、時間と労力に見合わない状況です。そのため自社が求める技術やアイデアをオープンにして、大学や他社などの社外と積極的に連携する「オープンイノベーション」を採用する企業が増えてきています。

そこで今回はアジア最大級のオープンイノベーションカンファレンス「イノベーションリーダーズサミット」を主催する、株式会社プロジェクトニッポン 代表取締役 松谷 卓也氏に、オープンイノベーションをうまく活かすには、失敗しないためにはどうすればいいのか、お話を伺いました。

記事内写真提供元:イノベーションリーダーズサミット実行委員会(SEOU会、ドリームゲート/株式会社プロジェクトニッポン)

オープンイノベーションとは何か

登壇者ら

オープンイノベーションについて教えてください

オープンイノベーションは、社内で研究開発された自社技術だけではなく、スタートアップと連携してノウハウや技術、アイデアを共有して新しいビジネスを共創する仕組みです。 大企業にとっても、革新的なビジネスモデルをゼロから創るスタートアップと連携することで、今までとは異なる顧客開拓や将来の業務提携・買収などができると、有効な新規事業創出の方法として注目され始めています。

日本には突出した素晴らしい技術もあるし、大手企業は豊富な資産もあります。にも関わらず、Uberやアップルのようなグローバルスタートアップが日本から生まれていません。

尖ったベンチャーも出てきているのですが、世界の価値観を変えるようなグローバルイノベーションは生まれていないように感じます。仮説としては、大学や研究機関が持っているような最先端の技術と、大手企業がもっている「人・物・金」といった資産、ベンチャーの熱量が混ざらないとグローバルイノベーションは生まれないのではないでしょうか。

お互いの需要と共有のマッチングがオープンイノベーションの魅力

会場の様子

松谷さんが、イノベーションリーダーズサミット(大規模商談会や、セミナー、プレゼンなどを通して大手企業とベンチャーが出会うオープンカンファレンス)を開催した理由を教えてください。

日本は人材流動性が極めて低く、大企業の人は大企業で努め続けています。また大企業は大企業同士、研究機関は研究機関同士、ベンチャーはベンチャー同士の交流が多いように感じており、双方が交流する機会も少なかったのです。そこで、双方が交流できる機会を作る必要があると、このカンファレンスの開催に至りました。

実際に、イノベーションリーダーズサミットの参加者には、ベンチャー企業とそれを支援する国内外の主力ベンチャーキャピタルなどで構成されたアドバイザリー・ボード(顧問委員会)、大手企業、サミット運営を支えるスポンサーや、経済産業省を始めとした国の機関、発起人など多くの関係者がいますから、複数の企業がまとめて接点を構築できる、活発な交流の場を作ることができました。

イノベーションリーダーズサミットをきっかけとした成功事例は、どのようなものがあるのでしょう?

ベジタブルフードを扱う企業と航空会社の例では、共同開発したベジタリアン向けのスペシャルミールを国際線機内食として提供が開始されました。第1回イノベーションリーダーズサミットで、航空会社との商談後すぐに実際に試食する機会が設けられ、この試食会に参加した航空会社の担当者がベジタブルフードの美味しさに感動し、これを機内食にするプロジェクトがスタートしたとのことです。面談当時は会社化されていなかったこのベンチャー企業は、これを機に会社を設立しました。

他にも例があります。半導体検知機具で世界トップクラスのシェアを誇る企業とベンチャー企業が業務提携を行い、ダイサイズ半導体電気特性評価装置というものを販売開始しました。5年間研究を続けていた大手企業側は、自社で研究開発を続けて製品化するには、あと10年はかかる見込みでした。しかし、ベンチャー企業が持っていた技術はまさに大企業側が求めていた技術であり、一方のベンチャー側も技術はあるものの製品化・事業化の目途をつけられないでいたため、その大企業との提携は願ってもない話でした。

こういった出会いから、新たなビジネスが生まれてきています。

オープンイノベーションはどう仕掛ける?

ILS

オープンイノベーションを進めるために、まだ経営層ではないビジネスパーソンは何ができるでしょうか。

現場で働く方の中には、「世の中のトレンドに合った新しい事業を生み出せていない」「時代に取り残されてしまうのではないか」という思いを持つ方も少なくないのではないでしょうか。しかし大手企業では、役員で決議、機関決定をしないと動けないことが多いかと思います。また、やはり自社開発意識が強く、どうしても開発の突破口を自社だけでも生み出せるはずだ、と考える傾向があります。

ですが、私は一人のイノベーターから組織改革が生まれることもあると考えています。一人でも変えようと思っている人がいれば、それをサポートする方も出てくるでしょう。とにかく事例をつくることによって組織を動かすしかないと思います。

コーポレートベンチャーキャピタルを作ったり、オープンイノベーションの専門部署を作ったり、ファンドに出資しても、組織は簡単には変わりません。自らベンチャー村に突っ込んで、いいベンチャーと会って、思いを伝えて、社内を説得して、としていると、それが事例になっていく。すると、もっと仕組みを作っていこうとなるかもしれません。

オープンイノベーションを実施する上で、ベンチャー側が大切にするべきこと

会場で話す人々

ベンチャー企業と大企業が組む時に気をつけるべきことはありますか?

ベンチャーと大企業が組んでからといって、必ず上手くいく保証はありません。組むことが目的化している場合は、その後に上手くいかないことも多いでしょう。

ベンチャーと大企業は、お互いの利害も異なるしスピード感やカルチャーが違います。自らのやりたいことを追求しつつも、相手が期待通りに動かなかったとしても、その立場を理解する姿勢が大切です。大企業では、意思決定に多くの方から合意を得る必要がありますし、ベンチャーは大手ほど人手もありません。そういった事情もお互い意識したうえで協働する必要があります。

オープンイノベーションを実施するために求められるリーダーシップ

会場で話す人々

これからオープンイノベーションを仕掛けていきたい、と考えている方に一言お願いたします。

「イノベーションリーダーズサミット」という名前には、イノベーションをおこす個人やリーダーの集まり、という意味を込めています。それは、新規事業というのは熱い想いをもっている個人から生まれると考えているからです。

大企業はベンチャーのアイデアやマインドをもっと取り込めるはず。事業を立ち上げた経験やサービスをつくった経験は、日本社会全体が求めているという状況でもあるので、ぜひ積極的に事例を作っていって欲しいと思います。

そして、ベンチャー側も大企業に頼るばかりではなく、自立して自ら仕掛けていくような強い意思を持ち、グローバルなオープンイノベーションを仕掛けていって欲しいと思います。

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