転職先の企業から「職歴証明書」の提出を求められるケースがあります。ただ、履歴書や職務経歴書のように一般的な書類ではないことから、「どのように記入すればいいのか分からない」「取得方法が分からない」という方もいるようです。そこで、職歴証明書の見本や取得方法について社会保険労務士の村松鋭士氏が解説します。
職歴証明書とは
職歴証明書とは、会社や公的機関、各種団体などに勤めていたことを証明するための書類です。国家試験を受ける際や公務員試験に合格した後などに提出することが多いほか、民間企業への転職でも提出を求められるケースがあります。
職歴証明書は、共通する記載事項はあるものの、企業ごとにフォーマットが異なります。転職先から提出を求められた際は、指定された形式に則って作成したものを提出するようにしましょう。
職歴証明書の見本
転職先で職歴証明書の提出を求められた場合は?
転職先の企業から職歴証明書の提出を求められたら、前職企業で所属していた部署または人事や総務などに記入してもらうよう依頼します。退職後に依頼することも可能ですが、退職時に受け取る各種書類と合わせて発行してもらうことが可能であれば、受け取る手間が省けてスムーズでしょう。
すでに退職している企業に依頼する場合は、電話もしくはメールで連絡を入れます。そして、記載をお願いする職歴証明書を郵便もしくはメールで担当者に送ります。郵送の場合は、宛先の間違いを防ぎ担当者の負担を減らすため、住所を記載し切手を貼った返信用封筒を同封することも忘れないようにしましょう。
職歴証明書を依頼する際は、転職先企業から指定された期日に間に合うよう、返信日の目安を必ず確認するようにしましょう。提出日の目安が明らかになったら、転職先の企業に伝えておきます。
「職歴証明書を作成してもらえるか不安」という場合は?
労働基準法では、退職者からの求めに応じた内容に関して証明書を発行することが義務付けられています(※)。前職の企業に発行を依頼すれば、これまで携わってきたすべての業務を記載してもらうことが可能です。
すでに退職してから一定期間が経過している、または円満に退社できなかったなどの理由から、依頼を躊躇してしまう方もいるかもしれませんが、法的に対応が義務づけられているので、遠慮なく依頼するようにしましょう。
ただ、企業側にきちんと対応する意思があったとしても、繁忙期などですぐに対応することが難しいケースも考えられます。まずは前職の人事や総務の担当者に電話で相談したうえで、どのくらいの日数がかかりそうなのかを確認しておくことが肝心です。
(※)労働基準法第22条で定められている在職中の契約内容等の証明書(退職証明書)に関する条文
第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
対応してもらえない場合、マイナンバーカードがあれば在籍証明が可能
法的義務があるとはいえ、前職の企業が対応してくれなかったり、すでに倒産していて記載を依頼することができなったりするケースもあります。その場合は、転職先企業に事情を説明したうえで、手元にある書類で代替することができないかを確認しましょう。例として、マイナンバーカードでその企業に勤めていたことを証明するのも方法の一つです。
前職の企業に在籍していたかどうかは、雇用保険の加入履歴によって証明することができます。ハローワークに足を運べば確認することが可能ですし、最近ではマイナンバーカードを持っていれば、マイナポータルにログインすることで、自身の雇用保険の加入記録を確認することができるようになりました。所属していた部署や役職などの詳細な情報までは確認できないものの、過去の雇用保険の加入記録があれば、少なくともどの企業に、どれだけ在籍していたのかを示す客観的な証拠として活用することができます。
なお、マイナポータルで雇用保険の加入履歴を確認するためには、あらかじめマイナンバーをハローワークに届け出ておかなければなりません。また、マイナポータルを利用するためには、マイナンバーカードと暗証番号が必要となります。
村松鋭士(むらまつ さとし)氏
2010年に【TFS&SPIRAL社会保険労務士事務所】を開業。また、社労士事務所と併せてチームビルディングを主体とした人材育成研修やコンサルティング、コーチングを行う【株式会社スパイラル・アンド・ゴーゴー】を設立。社労士として15年以上、企業の人事労務に携わってきた経験をもとに、労務相談や人材育成研修、評価制度などを一体的に実施。
記事掲載日 :
記事更新日 :