「新たな挑戦に踏み出したい優秀な40代」が増えているという。彼らの多くは既存の転職チャネルに乗りにくく、発見されずに埋もれているようだ。小濵氏はそうしたミドルの一人を発掘し、運命の出会いを提供することに成功した。果たしてどうやったのか。GOOD AGENT AWARD 2021 特別賞を受賞したマッチングを紹介したい。
転職市場で完全に誤解され、埋もれていた人材と出会う
小濵氏が初めて会ったとき、Iさんは「見つけてくれて、ありがとうございます。運命の出会いです」と言ったそうだ。なぜか。Iさんの転職活動がうまくいっておらず、あと数日遅かったら、Iさんは納得しきれていない転職を決断するところだったという。そんなとき、小濵氏が「運命の出会い」を提供したのだ。
「Iさんの転職活動がうまくいかないのには、理由がありました。Iさんが極めて特殊に映っていたからです。何しろ経営陣だった人が、在籍している会社に籍を残したまま仕事を探したい人になっていました。多くの企業やエージェントが副業を探していると勘違いし、書類選考アウトの連続だったそうです。Iさんは転職市場で誤解されていました」。しかし、小濵氏は詳しく話を聞き、深く納得したという。「Iさんは小さな頃から慕ってきた野球部先輩が経営する6人の地元酒屋さんに大学卒業後入社して、独学で多くの資格を取得して勉強し、社内の仕組みのすべてをほぼ一人で作り上げ、100人の酒類商社へ成長させた人です。今回の転職活動は、後進に自分のような成長のチャンスを与えたい、自分はさらにもっと成長するためにゼロから再挑戦したい、という想いで始めたものでした。『この会社は社長と共につくってきた自分の会社であるという感覚があり、辞めるという意識がない。給与は貰わないが、籍はあり続けるものだと思っている』とIさんは話してくれました」。小濵氏は“籍を置く”という言葉の裏にある深い意味や背景を知ったとき、Iさんが他の中小企業でも必ずや活躍するだろうことを確信したという。
真の役割が見え、検索ワードを変えた事が運命の出会いを引き寄せた
今回の事例は、そもそもはJ社が、DX推進責任者と管理部長候補を採用したい、と小濵氏に相談したところから始まった案件。「実はこれらのポジションの採用は約1年苦戦していました。J社社長と何度も対話し、何名かの候補者の面接を通じて、社長自身も明確になっていなかった期待する具体的な役割、必要な人材の要件が見え始め、事態が進展しました。J社社長がいうDX推進とは、まず中核の事業、卸部門の在庫管理と物流のDX改革のことだったのです」。このように、企業自身が採用ターゲットを絞りきれないケースは、実は珍しくない。
小濵氏が、「IT」「SE」「DX」から「在庫管理」「物流」という検索ワードに変えたことで、見つかったのがIさんだった。「Iさんは前職で、商品管理と物流のシステムをゼロベースから開発した経験があったのです。しかも、私が勤務地も市町村レベルで検索ワードに加えていたことで、Iさんの前職オフィスとJ社は、歩いていけるほど近所でした。しかもそこはIさんの出身地でもありました。Iさんが『運命の出会いです』とおっしゃったのは、そんなマッチングポイントもあったのではと思います」。
J社がIさんを採用する決め手はほかにもあった。Iさんは、経営企画、経営管理経験も豊富で、取締役経験がある。在庫管理と物流のDXが一段落したら、管理部長まで任せることができることが想定できた。この管理部長求人も選考を進めるうち、いきなり外部から直接登用は難しい、一定期間社内で活躍いただいた人材であるほうがいいと判断していた。Iさんを、DX推進で活躍していただいたのちに管理部長というシナリオが描けた事、現職専務の年収から大きくスタート年収がダウンしても、挑戦、ワクワクを優先するというIさん。J社にとっても運命の出会いだった可能性が高い。
新たな挑戦に踏み出したい40代が埋もれてしまっている
小濵氏によれば、Iさんのように新たな挑戦に踏み出したい40代が増えているという。「優秀な方が、膨大化複雑化した転職手段の中で、Iさんのように埋もれてしまっています。履歴書と求人票は無数にあっても、企業も個人も、デジタル情報だけではお互いに判断できずにいたりします。」なかにはIさんのように、40代後半にして転職活動が初めてという方も少なくない。「そうした方々は、自分一人で今の転職チャネルを駆使して活動する事はとても難しい。そうした方々にこそ、コンサルタントの介在価値は大きい。力になれることがきっとあります」(小濵氏)。
転職者・企業へのメッセージ
【転職者の方へ】
守るべきものが増え、悩みも多くなる一方で、挑戦したい気持ちが増すミドル世代の方々に、楽しく刺激ある公私を過ごして欲しい。そのためにありたい姿を整理し、目指す将来像を明確にし、その目標にむけて、深い情報を提供することで応援します。
【企業様へ】
関西圏の人的課題、組織課題を抱える中小企業の経営者の方々に、外部パートナーとして、課題解決に向けた伴走・濃いサポートを心がけております。
株式会社ファイブセンス
小濵豊弘氏
大学卒業後、タカラスタンダード(株)で住宅設備機器営業に約3年半従事。その後(株)リクルートエイブリック(現リクルート)にて人材紹介事業に13年間従事。法人営業7年、営業マネジャー、中四国支社長、大阪南支社長、計8年チームビルディング、マネジメントに従事。キャリア・人生設計に悩み起業を決断。2013年株式会社ファイブセンスを創業。関西中小企業経営者向けの人材紹介事業を運営。現在9期目。