中小企業への転職、特に、今いる会社よりも規模の小さな会社に転職する際に、自分に合う会社と出会い、転職を成功させるには、どのような観点で企業を選ぶとよいのでしょうか。中小企業への転職のメリット・デメリットや転職成功のためのポイントとあわせて、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に伺いました。
大手から中小企業に転職する場合のメリット・デメリットとは
事業規模や従業員数、働く環境、組織風土などの違いにより、大手企業から中小企業に転職する際には、メリットに感じる点とデメリットに感じる点が出てきます。それらを把握し、自分が望む環境・働き方を得られるかどうかを検討するのも、自分に合った中小企業を選ぶ上で重要なことです。代表的なメリット・デメリットを以下に挙げるので、検討してみましょう。
メリット
- 会社全体の戦略づくりや計画づくりなど、会社のコアな部分に関与できる可能性がある
- より上位の役職に就き、裁量権のある経験を積むことができる可能性がある
- 昇進・昇格のスピードが大手企業よりも速い可能性がある
- 部署間の調整が少ない、意思決定のスピードが速いなどの要因から、スムーズに業務を進めることができる
- 会社や事業の全体を把握することができ、一体感を持って働ける
- 上場を目指す企業の場合、ストックオプションやRSU(譲渡制限株式ユニット)などの経済的なメリットを得られる可能性がある
デメリット
- 働く環境や制度(人事制度、福利厚生制度など)、デジタル化などが不十分な可能性があり、その結果、非効率な業務や労働時間の超過、有休の取得のしづらさが存在している場合がある
- 給与額が大手企業より低い場合がある
- 経営陣と近いため、経営方針と自身の考えが合わないと仕事しづらい場合がある
- 大手企業のような部署の異動やグループ会社への出向、海外赴任といった幅広いキャリアパスがない場合がある
- スタートアップやベンチャー企業の場合、ビジネスの基盤が固まっていないために事業の停止・廃止などが起こり得る
- 事業によっては、経済・社会の変化の影響を受けやすい
自分に合った中小企業を見極めるための4つの観点
自分に合った中小企業を選ぶには、次の4つの観点から企業を見ることをおすすめします。
1.経営陣と考え方や価値観が合うか
経営陣と考え方や価値観が合うかどうか、また、その考え、価値観に共感できるかどうかは、入社後の働きやすさやパフォーマンスの発揮しやすさに影響します。企業のホームページなどでどのような発信がなされているかを確認しましょう。
2. 経営状況、事業状況
一定期間働く上では、企業の安定性や将来性を把握するのも重要です。売上や利益、業界内でのシェア、主要取引先などを押さえておくとよいでしょう。インターネット上に情報がなければ、転職エージェントのキャリアアドバイザーに確認することをおすすめします。
3. 組織文化、人、社風が合うかどうか
これらも、働きやすさやパフォーマンスの発揮しやすさに影響します。中小企業は規模が小さいため、「合わない」となったときに異動して環境を変えることが難しいもの。面談や面接、また、応募先の採用ホームページの情報(テキスト、動画など)などから読み取り、合う・合わないを見極めましょう。
4. 年収、福利厚生、研修、残業時間
経営陣の考えや価値観に共感していたとしても、年収が下がりすぎたり、残業が増えたりすると、生活に支障が出ることもあると思います。自分が望む働き方ができるかどうかなどを、開示されている情報をもとに判断していきましょう。
【年代別】中小企業が求めるもの
大手企業での経験がある人材に対し、中小企業がどの年代にも共通して求めているものは、「ビジネスパーソンとしての基本的な素養があること」でしょう。中小企業には体系的な教育・育成の仕組みがない場合もあります。そのため、個々の社員のスキルや素養にばらつきが生じる可能性があるのです。
そこで、外部からの人材、特に大手企業からの人材であれば、大手企業ならではの体系的な質の高い研修や業務を通じた各種経験から、抜け漏れなく仕事を進めることや、関係各所と調整して合意形成する術を持っていること、適切なコンプライアンス意識があることなどが期待されます。
また、年代別に求めるものとしては、次のものが挙げられます。
20代
将来のリーダー候補として、どの組織でも必要とされる、いわゆる「ポータブルスキル」や自走力、行動力など。
30代(課長クラス)
現場のリーダーや管理職として事業や組織を最前線で牽引する力、また、仕組み化や効率化など大手企業の業務ノウハウを導入・遂行できること。
40代以上(部長、本部長クラス)
大手企業の洗練された事業・組織づくりのノウハウを持ち込み、事業・組織全体のマネジメントや活性化、変革・再生、あるいは新しい組織・事業づくりができること。また、本部長クラスにおいては、これらに加えて経営視点での戦略・ビジョンづくりができること。
また、スキル・経験とは別に、40代以上には、以下も求められることが多いでしょう。
・変化対応力、アンラーニングする力、成長欲
中小企業は大手企業のように業務が細分化されていないため、大手企業では部下に任せていたような業務も、自らやらなければならない場面が出てきます。そこで嫌がらず、学ぶべきことは学びながら適応していくことが求められます。
・業界内外との、また、該当分野における人脈
40代、50代には、事業を伸ばしていくために必要な外部とのつながりを社内に還元する存在であることも期待されます。他社とアライアンスを組むことを検討している企業であれば、人脈があると選考でプラスに働く場合もあります。
・専門性
特に、セキュリティや内部統制、IR、人事、営業などの高い専門性は、中小企業の機能として不足しているところですし、これまで外部に委託していたところを内製化したいという過程にいる中小企業もあります。したがって、これらを補い牽引してくれる人材は重宝されるでしょう。
中小企業への転職を成功させるポイント
中小企業への転職を成功させる上で重要なポイントとして、大きく次の2つが挙げられます。
1. 経営陣の考え、会社のミッション、ビジョン、バリュー、組織文化に共感している
中小企業は大手企業に比べて従業員数が少ないため、経営陣の考え、あるいは、会社のミッション、ビジョン、バリューのもと、一丸となって事業を成長させていくことが求められます。
したがって、募集企業も求職者がこれらに共感しているかどうか、似た価値観で仕事ができるかどうかなどは選考で見ていくところです。また、求職者自身も、共感・納得していないと入社後十分に力を発揮できず「こんなはずじゃなかった」となりかねません。
特に、40代・50代など管理職以上の役職での活躍が期待される人においては、メンバーに指示する立場としてうまく指示が出せませんし、事業を推進していく立場としてもパフォーマンスを発揮できず成果も乏しくなる可能性があります。
2. 働き方や環境の変化を受け入れられる
大手企業から中小企業へ移ることによって、処遇や労働環境、組織風土などに対して大きな変化を感じることは往々にしてあります。特に、年収は下がることの方が多いですし、オフィス環境やリモートワークの実施状況なども、大手企業に比べると劣る場合が多いでしょう。
それらを理解・納得して適応していくことは、転職先でパフォーマンスを発揮していく上で重要です。
【アドバイザー】
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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