株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンは、世界100ヶ国以上でビジネスを展開するロイヤルフィリップスの日本法人。「フィリップス」といえば、一般消費者の目には電気シェーバーや電動歯ブラシ、ノンフライヤーなどコンシューマーライフスタイル事業(家電事業)で高いシェアと認知度があるように思われがちですが、コンシューマーライフスタイル事業とヘルスケア事業(医療機器)とを合わせたヘルステックと、ライティング事業(照明)のフィリップスライティング、の二つを事業の柱とし、それぞれ国内外でトップシェア製品を多数保有しています。そんなフィリップスでは、いまグローバルで大きな組織改編が起こっており、新たなポジション、ミッションが多数生まれています。フィリップスが掲げるグローバル戦略や日本での戦略とはどのようなものなのでしょうか。人事本部長の水上雅人さんにお話を伺いました。
トータルソリューションやICTとの連携。成長市場の中で、新たなバリューを創造する重要性。
現在行われている大規模な組織変革は、どのようなグローバル戦略に基づくものなのでしょうか。
フィリップスでは、これまでヘルスケア、コンシューマーライフスタイル、ライティングの3分野を 展開し、多面的に“人々の生活の向上”や“健やかで満ち足りた(health and well-being)暮らし”を提供して参りました。この考え方はこれまでも変わらないものの、より幅広くトータルにサービスを提供していくことを目的として、ヘルスケアとコンシューマーライフスタイルを統合し、新たに「ヘルステック(HealthTech)」として事業を展開していきます。これは、医療だけでなく普段の生活を含めて“健康”に関わるあらゆるシーンを豊かに、便利にしていくのだという意思の表明。加えて、ICTの活用・連携を進めることで、まだ世の中にない新しいバリューを創っていくという意味で「ヘルステック」という名称を掲げています。
一方、ライティングの分野に関しては、個別の製品販売に加えて、例えば空港などの施設全体の空間を照明によってデザインするところから手掛け、そのシステムからメンテナンスも含めたトータルサービスに大きな価値があると捉えています。このような変化の中、よりスピーディーかつ柔軟に進化・成長していくためにライティング事業を分社独立することが決定しました。ロイヤルフィリップスとして長い歴史を誇る3事業体制を再編するのは、かつてないほどの大きな変化。しかしながらいずれの分野においても、より広く、更に深い視点で事業を進化させるのだという狙いなのです。
このようなグローバル戦略は、日本市場においてどのように価値を発揮できるのでしょうか。
まず、我々はグローバルな視点で捉えると、日本を成長市場だと位置づけています。その最も大きな理由は高齢化にともない医療の在り方が多様化していくということ。当社では医療機関で使われるような医療機器に加えて在宅医療に関連した機器の開発・販売にも注力しているのがその狙いの一つ。例を挙げれば、遠隔で医師の診断を可能にするような機器の需要は伸びていくと考えられており、日本はITインフラが成熟しているという点でも市場そのものが成長していく可能性が大きいのです。また、一般生活においても当社の電動歯ブラシは非常に高いシェアを誇りますが、それはあくまでも電動歯ブラシの中でのシェア。口腔ケア全体でとらえれば、約90%の方がアナログの歯ブラシを利用しているのが現状です。このように、伸びしろが大きい市場ではありますが、従来の事業・サービス軸の延長で物事を考えるだけでは、ユーザーが支持してくれるような革新的なイノベーションは生み出せないという危機感もありました。これからは、幅広くトータルに“健康”について考え、新たな価値を創造していくことが必要不可欠。だからこそ今回の新体制は日本においても大きな意味があると言えますね。
これまでの信頼と実績を大切にしながらも、私たちは変化していかなければならない。
これほど大規模な変化の中においては、当然人事戦略も変わってくるのではないでしょうか。
まず、当社の中だけの話ではなく、競合企業も含めた業界全体が非常に大きな転換点を迎えているという前提で、人事戦略をとらえています。上記のような市場の変化もさることながら、今回の事業体制の変更・統合をきっかけに幅広くサービスを展開していけば、かつては競合でなかった企業・業界が新たな競合となることもおおいにありえます。当然、他社が革新的なサービスを投下してくることも考えられるでしょう。成長市場とはいえ、決して楽観視はできないのです。そのため、人事・組織戦略においても、よりスピーディーな意思決定を可能にし、変化を生み出しやすい組織風土を形成しなければいけないのだと捉えています。これは人材においても同様。良い意味で当社の今までの成功パターンに固執することなく、常に挑戦を続けられるような方に今後の各事業・組織でリーダーやマネジャーを担っていただきたいと考えています。
これからのフィリップスで求める人材とは、具体的にはどのような方なのでしょうか。
前述したようなスピード感や変化への柔軟性を持ったような方であることはもちろんですが、これからの当社は課題解決型のサービス展開に注力していこうとしているため、この考え方で働かれてきた方を歓迎したいと考えています。具体的に言えば、医療従事者や患者、一般の消費者といったユーザーを第一に物事を捉え、動ける方。これまでの当社では、どちらかというと優れた技術を駆使して最高の製品を世に送り出すという考え方が先行していたかもしれません。しかしながら、これからはユーザーが何に困り、何を求めているのかを深く理解した上でサービスを提供する、既存になければ新しくサービスを開発するくらいの気持ちがなければ、市場優位を保てないと考えています。言い方を変えるならば、これまで当社が培ってきた技術力・製品力を武器にしながら、それぞれのお客様を豊かに、便利にする最適なサービスを提供していくことこそが、最も注力したいことであり、このような動きを牽引する存在であってほしいのです。
だからこそ、新しくお迎えしたい人材は、私たちの業界・分野に限った話ではありません。“スキルではなくアティテュード(姿勢・心構え)”が今後の採用におけるキーワード。当社のやり方や、その方がこれまで経験してこられた実績を、上手く融合させながら、進化していくような働き方を社内に発信していけるような人にぜひ参加していただきたいですね。
オランダに本社を構え、ヘルステック、ライティングソリューションの分野において世界展開するグローバル企業の日本法人。ヘルステックにおいては、健康的な生活と予防から、診断、治療、回復、そしてホームヘルスケアに至る一連のヘルスケアプロセスにおいて、医療機関向けと消費者向けマーケットとの両方をリードする製品多数。ライティングソリューションにおいては、LED照明、照明器具等、魅力的なビジネスを展開してます。
設立:1953年7月
従業員数:932名(連結:1949名)※グローバルでは11万5000名
資本金:30億円
売上高:233億ユーロ(2013年グローバル実績)
株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン 人事本部長 水上 雅人氏
日系・米系企業で14年間人事部門を担当した後、1998年日本エリクソン株式会社に入社。2002年からは人事部長として組織再構築を中心にビジネスに軸を置いた人事施策の立案と実行に注力。その後、2011年に住友スリーエム株式会社にて人事本部人事ビジネスパートナー部長を務める。2012年12月より株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパンにて現職。組織・カルチャーの変革とビジネスの成長を支える人事施策の推進・実行に取り組んでいる。
担当ヘッドハンターの目線
株式会社ムービングストラテジックキャリア エグゼクティブ・コンサルタント 中村 浩一郎氏
一橋大学社会学部卒業。経営者との距離の近さに魅力を感じ、ベンチャーの人材派遣会社に入社。営業を経験後、社内プロジェクト推進室に異動。評価・研修制度構築や採用計画の立案、社内業務のBPR等に尽力する。その後、ERPパーッケージベンダーへ転職。コンサルタントとして国内大手企業へのHRモジュールの導入・保守や顧客の制度構築・業務改善に従事する。2011年、株式会社ムービンストラテジックキャリアに入社。コンサルタント職・事業会社企画職を中心に様々な方々の自己実現に向けた新たなキャリア形成を支援している。
私がこれまでフィリップスとお付き合いしている期間の中でも、今回の組織変革は大変大きな流れだと感じています。特にライティング事業は、同社で主要かつ創業事業でもあり世界トップシェアを誇ります。それを分社化するということがどれほど大きな決断であったでしょうか。だからこそ、今後はフィリップスが確固たる意思を持って個々の専門性を磨きながら事業展開のスピードを加速させていくということをヘッドハンターとしても大いに期待してしまいます。イノベーションが生まれやすい環境へと進化している中だからこそ、将来的なキャリア形成の面でも非常に高いアドバンテージとなれる環境だと言えますね。
このような変化の中、求める人材要件も変わってきており、新しいことにチャレンジしていく気持ちや変化への柔軟性を重視されている傾向にあります。さらに同社での仕事は基本的にチームワークを重視していますので、個々を尊重しながら前向きに進化していくような姿勢が大切。“変化をチャンス”と前向きにとらえていただけるような方であれば、これまでも日系・外資系問わず多様なタイプの方がご入社されていますので、ぜひ一度お会いしたいと考えています。