
転職活動を進める中で「転職エージェントから応募するか、企業に直接応募するか。どちらがより受かりやすいだろうか?」などと迷っている方がいるかもしれません。転職エージェント経由と直接応募の違いやメリット、併用して転職活動を進める場合のコツや注意点などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職エージェント経由の応募と直接応募とで有利・不利はない
「企業へ直接応募する」とは、主に企業サイトの採用ページや、ビジネス向けのSNSからダイレクトに応募したり、採用担当者に直接メールで問い合わせの上、選考を受けたりすることを指します。
転職エージェント経由で企業に応募するケースと、直接応募するケースを比較した場合、「直接応募のほうが有利」と聞いたことがある方もいるかもしれません。しかし、結論から言うと、選考通過や採用に関して、両者に大きな差異はないと言えるでしょう。
転職エージェント経由と直接応募で求人の違いはあるか
同じ企業が、転職エージェントと自社サイトの両方で同じ職種の採用活動を行う場合、募集内容などには特に違いはないことが多いと考えられるでしょう。
ただ、同じ企業でも、一般社員の求人募集はホームページなどで公開する一方、管理職などは転職エージェント経由のみで非公開に設定するなど、ポジションなどによって非公開と公開を分けるケースはあります。その場合は当然ですが、非公開求人に直接応募することはできません。
企業の選考基準はどちらの応募でも同じ
「転職エージェント経由よりも直接応募の方が有利」と言われるのは、企業が転職エージェントの紹介で人材を採用した場合、紹介手数料や報酬などのコストがかかってしまうため、お金のかからない直接応募の人の方が採用されやすい、というのが理由のようです。
しかし、結論から言えば、採用されやすさ自体に大きな違いはないと考えられます。なぜなら、一般的に企業が重視しているのは、応募者が自社で活躍できる経験・スキルを持っているかどうかだからです。転職エージェントを利用している企業は、そのコストを見越した上で採用活動をしているため、多少コストはかかっても、自社によりマッチする人材を採用することを優先するケースが多いと考えられるでしょう。
転職エージェント経由と直接応募は「有利かどうか」ではなく、それぞれの特徴を踏まえて選択することをおすすめします。以下に転職エージェントを活用した場合のメリット、直接応募のメリットをそれぞれ解説します。
転職エージェント経由で応募するメリット
転職エージェントを通じて企業に応募する場合は、サービスにより、さまざまなサポートを受けることができます。その一例をご紹介しましょう。
自身にマッチした求人に出会える
転職エージェントでは、保有する幅広い求人の中から、求職者の要望と市場価値にマッチした求人を選んで紹介します。ときには、自身の経験・スキルに合致した意外な業界・職種や、これまで知らなかった新たな企業に出会うチャンスがあるかもしれません。
非公開求人に応募することができる
転職エージェントは、転職サイトや企業の採用サイトなどでは公開されていない「非公開求人」を数多く保有していることがあります。新規事業に関わる仕事や重要ポジションの仕事、公開すると応募が集中してしまう希少案件や人気案件など、転職エージェントでなければ出会えない魅力的な求人に応募できる可能性もあるでしょう。
書類作成や面接対策のサポートを受けられる
転職エージェントによっては、選考対策としてさまざまなサポートが受けられます。
例えば、応募企業の採用担当者にアピールできるよう、履歴書や職務経歴書の書き方のアドバイスや添削を行ったり、面接で伝える内容のチェックや、模擬面接を実施してもらえたりするケースもあります。
転職支援のプロであるキャリアアドバイザーからアドバイスを受けられるため、特に初めての転職や久しぶりの転職の場合、疑問や不安を解消しながら進められることがメリットでしょう。
推薦状を書いてもらえる
転職エージェントを経由して応募する場合、求職者の経歴やスキルなどの強みをまとめた推薦状を添えてもらえることがあります。企業の採用ニーズをとらえた転職エージェントが、職務経歴書などの書類だけでは伝えきれない魅力を推薦状で伝えることで、採用担当者へアピールすることができるでしょう。
面接の日程調整をサポートしてもらえる
多くの転職エージェントでは、面接日や入社日などの日程調整を、担当キャリアアドバイザーがサポートします。求職者と企業との間に立ち、面接日時や時間、面接方法などについて応募者の要望を伝えながら調整を行います。複数企業に応募する場合などは「内定が出る時期を揃えてほしい」といった要望にも応えてもらえる可能性もあります。
企業に直接応募するメリット
転職エージェントを経由せず、企業に直接応募するメリットの一例をご紹介します。
自分のペースで転職活動に取り組める
直接応募をする場合、求職者自身が自由に求人情報を選別し、自由に応募することができます。第三者が間に入らないため、応募企業とより直接的なやりとりをしたい方に適しています。自分自身のペースで志望度の高い求人に応募できるため、スピード感を持って転職活動を進めることも、じっくり時間をかけて取り組むことも可能になるでしょう。
「志望度が高い」と判断される可能性がある
企業の採用サイトなどに直接応募することで、企業によっては「自ら応募先を探してアプローチをしてくれた」など、志望度の高さを評価する可能性はあるでしょう。採用サイトのメッセージ欄や、採用担当者に宛てたメールなどの文面で、入社への熱意や志望度を直接伝えられるメリットもあります。
ただし、企業の採用基準はあくまでも自社が求める経験・スキル・実績などであるため、意欲だけではなく、企業の求める強みをアピールできることが前提となるでしょう。
転職エージェント経由で不採用になった企業に直接応募できるのか
転職エージェント経由で選考を受けて一度不採用になったものの、その企業への志望度が高く、どうしても諦めきれないというケースをときどき耳にします。そうした場合は、自分で直接応募して、再度チャレンジすることも可能です。
ただし、一度選考を通過できなかった以上、転職エージェント内もしくは応募企業内において「採用の基準を満たしていない人材」と判断されていたことが考えられます。したがって、どうしても再応募したい場合は、現職や他の転職先で経験・スキルや実績を積むなどして、一定時間を置いてから再度チャレンジすることを検討してみましょう。
転職エージェントと直接応募を併用するコツと注意点
転職エージェントと直接応募にはそれぞれメリットがあり、両者の特徴を理解した上で併用するのも一つの方法です。その際のポイントを解説しましょう。
両方を併用するメリットとは
転職エージェントと直接応募では、応募できる求人の幅に違いがあります。ただ、いずれも他方にはない求人に出会える可能性があるため、転職活動を進めるに当たって可能な限り選択肢を広げたい方は、転職エージェントのサポートを受けながら、企業の採用サイトなどからも情報収集をすることがおすすめです。
興味がある企業は転職エージェントでも応募できないか確認する
転職エージェントからの提案とは別に、興味があって応募したい企業がある場合は、利用している転職エージェントに「その企業の募集がないか」「その企業に応募することはできないか」を確認してみるのも一つの方法です。
転職エージェントのほうで求人を保有していれば、上述したようなサポートを利用しながら選考を受けられる可能性があります。転職エージェント経由での応募が難しい場合は、直接応募を検討しましょう。
同じ企業に重複して応募しないようにする
転職活動で複数の手段を併用する際に気をつけたいのは、異なるルートから同じ求人に重複応募してしまうことです。直接応募と転職エージェント経由からの両方から応募したり、複数の転職エージェントから重複応募したりしてしまうと、応募企業に管理能力や計画性、志望度の低さなどの印象を与えてしまう可能性があるため注意が必要です。
したがって、応募企業の管理は自身でしっかりと行い、転職活動の進捗状況を担当キャリアアドバイザーとこまめに共有しておくことをおすすめします。
選択肢を広げるためにはスカウトサービスの活用も有効
転職活動の選択肢をさらに広げるには、スカウトサービスの活用も一案です。
レジュメを登録しておき、それを見た企業からのスカウトがあれば、興味のある非公開求人に応募できる可能性があります。転職エージェントからのスカウトによっても、新たな応募先企業の選択肢を広げることができるかもしれません。
どちらの場合も、自身の経歴などに興味を持ってコンタクトしてくるため、よりマッチした応募先との出会いや、自身の市場価値を知ることにつながる可能性があるでしょう。
粟野友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
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