生保・損保業界の2023年転職市場の求⼈・求職者の動きを、業界に精通した株式会社リクルートの人材領域で活躍するキャリアアドバイザーがレポートします。「2023年の転職市場や業界トレンドを知りたい」「納得感のある転職活動のために、採用動向を知っておきたい」という方はぜひご一読ください。
生保・損保業界の2023年転職市場の展望を一言でいうと
生保:DX関連ポジションを中心に採用職種は幅広い。リテンションに課題。
損保:ビジネス範囲の広がりに応じて求人も多様化。
1.【生保・損保業界】業界・企業側の動き
採用は活発に動いています。生保・損保どちらも特に営業職とDX(Digital Transformation)関連の求人が多い状況は変わりません。
生保では、DX関連ポジションの採用は引き続き旺盛ですが、他の職種でも採用が進んでいます。コロナに関する規制が緩和されていく中で、営業機会が増え、顧客接点も戻りつつあります。個人への営業だけでなく中小企業のオーナーへのタッチも増やしているため、引き続き営業の採用が強化されています。リテール営業や代理店営業、それをサポートする契約事務の求人もあり、経済活動が戻ってきていることに比例して採用が活発化しています。また、サステナビリティを意識して資産運用をする金融専門職も求められているが採用難易度は高い傾向にあります。
損保では、DXに関連する職種と、ファイナンスに関連する職種の採用が中心です。特に、気候変動や感染症に対応する商品開発が加速しており、近年の新しいリスクに対応するシーズをいかに商品化していくかが重要になっています。自動運転や宇宙開発など、新しい技術が出てくることでビジネスの範囲も広がっていく印象です。
生保・損保ともに、採用は活発ですが充足は難しい状況です。各社欲しい人材は似通っており、デジタル領域やサイバーリスク領域などは特に熾烈な争奪戦になるでしょう。各社、選ばれるための人事制度を作り上げる必要があります。このような採用で企業の競争力が変わる可能性があるため、採用の競合優位が、事業の競合優位につながる可能性が高くなります。職種を限定してチャレンジングな制度を取り入れている企業もありますが、その後の定着の観点で課題も見られます。営業職でも定着懸念はあり、今後労働人口が減少していくことを考えると、いかに社内の制度やリテンションに力を入れるかが重要となってきます。
2.【生保・損保業界】求職者側の動き
一定の動きがありますが、金融業界内でも銀行系へ転職する方がやや目立ちます。資産運用経験者は、銀行でもポジションがある状況です。人事制度の新しさも異業界の方が進んでいる現実があります。例えば女性のキャリアアップの道に関して、他社の方が広く見えてしまうことから、異業界へ転職する動きがあります。新卒採用で優秀な方が入社している各社ですが、専門性を身に付けていきたいという最近の働く個人の志向に対応しきれず、短期間で何回も部署異動があることにキャリアの一貫性が保てないことを懸念して転職する方がいるのが事実です。各社キャリアパスについて、どのようにステップアップする道を提示するのか、多様化させていくのかが、中途採用においても既存社員のリテンションにおいても重要になってきます。
異業界からは、IT職種やリテール営業のポジションでの志望者が多く、一定のボリュームで人材が入ってきています。
<金融業界の転職動向>
注:こちらのグラフは、生保・損保業界だけでなく、銀行・証券業界なども含む金融業界全体のグラフとなっています。
出所:リクルート『リクルートエージェント』転職決定者数の分析
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佐川啓子
中途入社以来、金融業界にて生命保険会社や信託銀行を中心にリクルーティングアドバイザーとして採用支援に従事。現在はコンサルタントとして企業と個人双方を支援。