面接では好感触。なのに内定に至らない採用企業側の「ありがち」な3大ケースとは?

キャリアカーバーで転職活動中の管理職・経営幹部の皆さんは、現職での多忙な時間の合間を縫って、また家族サービスなどの時間の一部を振り分けて、貴重なお時間を投資する形で転職活動をされていらっしゃることと思います。同時に、そのような皆さんを獲得しようと採用活動されている企業もまた、自社への優秀人材獲得のために採用活動に積極投資をされている訳です。

このような貴重な時間やお金を投資しての活動ですから、良縁に巡り合ったら確実に良いお話になると思うでしょうが、ところが面接では企業側の評価が非常に好感触であるにも関わらず、なぜか最終局面で企業側の事情・都合で内定に至らず採用がひっくり返ってしまう残念なケースがあるのです。

今回はその、よくある「残念な、ありがち」3大ケースをご紹介します。

ケース1 見切り発車の採用計画

まず一つ目のケース。

10数年前、僕がこの業界に入ってまだ間もない頃、折しも2000年代前半、世はIPOを狙う新興ベンチャー企業ブームに沸いていました。現在と似ていますね。

そんな中、設立間もないITベンチャー企業のCFOより、急成長のためのCxO人材や部長人材を複数名急ぎで採用していくので手伝って欲しいという依頼を受けました。年収条件も非常によく、役員クラスや部長クラスを複数どんどん採用するという。これはいいクライアントだ!と、当時の僕は色めきだち、早速候補者サーチに動き、各役職候補者をどんどんとCFOに推薦していきました。

CFOも初回の面接はご自身が会うということでスピーディにどんどんお会いしてくれて、「これは早期で複数の役職者をご紹介決定できるぞ」とほくそ笑んでいました(業績目標もありますからね 笑)。「いい人だね」「求める人材像にぴったりだ」と一次の役員面接を高評価で終えたものが早速多数出て、「次回、社長および他の役員での最終面接を」ということで日程調整に入ります。

ところがそのあたりから急に一転、雲行きが怪しくなりました。初回面接は速やかにセットされるのに、最終面接がどうにもこうにも日程が決まらない。「社長のスケジュールが合わない」「役員に突発対応が入ってしまった」、一度仮予定が組まれてもリスケされてしまう。そんなこんなで2ヵ月程が過ぎました。

さすがにおかしいと思った僕は、当該のCFOには内緒で社長にアポイントを取り、状況と事情を話しました。するとなんと社長は「一切聞いていないし、彼に幹部採用など任せていない」と!

ことの仔細は長くなりますので割愛しますが、なんと一連のアクションはCFOが社長や他の役員には黙って勝手に動いていたことだったのです。そこから僕の方で全体を仕切り直して、ポジションや要件には大きな変更もありましたが、なんとか通常の取引へと軌道修正し候補者の皆さまにお詫びもしつつでチューニングを行い、なんとか事態を収束させました。

僕の体験した実際の例をご紹介しましたが、このケースはベンチャー企業で”偉そうなNO.2”がカウンターパート/応募先相手のときに起こりがちな事象です。

注意頂きたいアラームがあるとすれば「うちのトップは何もわかってないんだよね」「我が社は僕が実質回しているから」などと発言するNO.2が出てきたら、この手のリスクがないか念のため注意しましょう。

「俺が決める」などとカッコいいことを言っていて、実は最終決裁権を持っていないため、選考で振り回すだけ振り回したあげくに話が流れるパターンです。困ったものです。

ケース2 社内のすり合わせ不足

二つ目のケースは、一つ目と類似しているものの、まだ”たちがいい”とも言える「あるある」です。

一次、二次と高評価で通過。企業からのフィードバックでもそれまでの面接者からの評価ポイントと「ぜひご一緒できれば」との言葉。応募されているあなたとしては「やった、この件はご縁を頂けそうだな」と入社意欲も高め、いざ、最終面接へ!

ところが、これまでの面接者各位とすり合わせてきた内容で話を進め、面接を終えて吉報を心待ちにすると「ご縁がありませんでした」。聞いてみれば、社長が「求めている人物と違う!」と。青天の霹靂ですが、確かに思い返せば、最終面接の時の社長の顔がどうも冴えなかったのと、質問も少なくという感じでしたが、後の祭りです。

原因は色々と考えられますが、要するに現場や幹部と社長がすり合わせていないという状況。

現場は現場の課題感やテーマで人材像を決めていて、トップはトップでの幹部要件への不満や課題、あるいは優先順位などもあるものですが、ここをしっかり同期させて貰えていないと、採用企業側も少なからずの関係者、幹部、トップの時間を割いて選考を進めている訳ですから時間の浪費であり、何よりも応募されたあなたからすれば、「それまでは一体なんだったんだよ?」という感じですよね。一連のプロセスに要した時間や気持ちを考えるとやるせないばかりです…。

ケース3 トップの意思が不明確

三つ目は、トップ自体の意思が固まっていない。人物像が不明確だというケースです。

当初言われていた要件や人物像が、選考が進むにつれ変化し続ける。これも困りますよね。
ある企業のケースで、最終面接で社長とお話し頂いた後、候補者の方に「どうでした?」と終了後の所感を伺うと、「今回、このポジション、どんな方を採用すべきだと思いますか?と社長に素で相談されました…(苦笑)。」

社長や役員・人事責任者などの最終決裁者ご自身の求めている要件、人材像が曖昧なままであったり、意思決定ができなかったりというのは、ある面ありがちな課題であったりします。

しかしそれであれば、まずやらなければならないのはその要件や人材像固めであり、要件や人材像が決まっていないのに選考を先に進めても、誰を採用すれば良いのかがわかっていないのですから当然望ましい選考もできませんし、ましてやベストな方を特定し採用することができるはずがありません。

面接では好感触なのに内定に至らない採用企業側の「ありがち」な3大ケースについてご紹介いたしました。

こうしたことについては、そもそもエージェント自体が採用企業に振り回されているケースが多いのです。候補者であるあなたとしては、案件の紹介を受けたら、その担当エージェント自体がクライアントを握れているか、しっかりコミュニケーションできているか、について確認したいところです。案件の情報内容の密度、背景情報、その企業や経営者に関する情報、そもそものその企業とエージェントの関係性については、ぜひ初動で欠かさずにヒアリングしましょう。

特にキャリアカーバーで転職活動される管理職・経営幹部の皆さんにとっては、転職成功の50%以上を応募先企業と担当エージェントの関係性が握っているということ、ぜひ覚えておいて頂きつつの活動をお薦めいたします。

ではまた、次回!

井上和幸氏

井上和幸

1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。

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