3つの動機タイプで分かる、あなたがエグゼクティブとして最も輝ける転職先はココだ!

自分に適した企業、職場、職務はどこなのか——?働く人にとっては、常日頃から頭をよぎり続ける<永遠の問い>ですが、転職活動を始めると、改めてこの問いに向き合うこととなります。
もちろんポジションや年収といったものが大事なことは論を待ちませんが、しかし、これらの条件と同等以上に重要なものがあることに、皆さんはお気づきでしょうか?それは、皆さんの中にある「動機タイプ」です。

働く全ての人にとって、自分の動機タイプを知り、活かすことは非常に大事なことですが、特に幹部層、経営層の皆さんにとっては、より一層、ご自身の動機タイプと職務をフィットさせることが重要だと私は考えています。
拙書『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)で、上司が最小限、把握すべきタイプは「関係動機型」と「課題動機型」の2つとご紹介しましたが、これに加えてもうひとつ、「好奇心動機型」を加えて、今回は、幹部としての皆さんのご自身の3タイプ分類と転職先選択の考え方をご紹介してみたいと思います。

「何をやるか」とその達成こそが大事な、課題動機型タイプ

「課題動機型タイプ」は、職務の課題やテーマ自体が行動の動機付けとなり、その達成に向けて行動を起こします。設定した課題を全力で解くことが仕事の中心となり、実力・実績重視、そのためのパフォーマンスを重んじ、自分のペースを乱されることがタブーとなります。
”ドライな人”、”お山の大将”もしくは”一匹狼”に見える人が、このタイプであるケースが多いです。

「課題動機型タイプ」の方には、業界構造がはっきりしていて競合との競争が激しいような場が、最も力を発揮しやすいでしょう。KPIを徹底的に追う、業界NO.1を目指して徹底的に走る。フェーズで言えば、成長拡大期、あるいはターンアラウンドフェーズでのNO.2や事業執行責任者などの役割で輝きます。

逆に、人間関係軸で動かなければならないような職場だと「合理的でない動き」をしなければならないことがストレスとなり、「アホくさい、やってられない」と転職を考えることになるでしょうね。
一方、ベンチャー企業や事業開発的な仕事に就くときには注意が必要です。この「課題動機型」の人には2タイプ、「好奇心動機型」のエンジンも併せ持つ人と持たない人がいます。後者の場合、ベンチャーや事業開発職に就くと、課題やテーマを自分で設定しなければならないことに(結構多くが、自覚なく)戸惑い手足が動かないという方が少なからず存在します。一見ベンチャータイプと自他共に認められていた大手企業出身者の方がベンチャー企業幹部に転じて失敗するのが、このケースです。

「誰とやるか」とその良好な関係性維持が命の、関係動機型タイプ

「関係動機型タイプ」は、人間関係を重視し選択・行動する傾向が強く、指示された内容よりも、「誰のためにやるのか」「誰と一緒にやるのか」を優先します。信頼関係や仲間を最も重視することから、他の人に嫌われることがタブーであり、それがゆえに仕事の進め方に慎重になるきらいもあります。
”いいひと”、”気配り派”に見える人が、このタイプです。

「関係動機型タイプ」の方には、一定以上の組織体がしっかりあり、その中で和を保って仕事を進めることが求められる組織、企業に向いています。
あるいは成長ベンチャー企業やオーナー企業などでトップが明確な指針を出し、それを忠実に実行していくための参謀役、各部のマネジャーなどでもパフォーマンスを上げるでしょう。

気をつけたいのは、上にも下にも他部門にも、「これで自分の行動は正しいのだろうか」「嫌われないだろうか」という意識が常に働きがちなため、動きが遅くなったりプロセスが冗長(関係者への説明などが過剰)になったりすることです。所属企業がスピードや成長を求める風土であったりすると、幹部職でこのタイプは、あまりできない人、のレッテルを貼られてしまうリスクが少なくありません。
基本的には関係動機型タイプのエグゼクティブは、ベンチャー企業やアジャイルに動く企業、業務が定型化されにくいクリエイティブ系やコンサルティング系の企業にはあまり適さないと言えます。

「自分で決める」ことが大事で、縛られると死んでしまう、好奇心動機型タイプ

「好奇心動機型タイプ」は、課題は与えられるものではなく自分で作るもの、個人の興味関心や問題意識がベースで仕事に邁進します。逆に言えば、会社や部署、上司が何を言おうが、自分が興味関心、テーマを感じることがなければやる気が発動されません。
”自由人”、”変わり者”、”勝手な人”に見られがちな人が、このタイプです。

起業家に多いタイプで、事業開発、新規事業関連、研究開発業務に適して活躍する属性です。
既存の事業部門のマネジメントでも、ミッション・ビジョン軸で、創意工夫を常に繰り返し、新規顧客の開拓が求められる領域では高い業績を残します。

一方でビジネスモデルが固まっている事業、部署やルートセールスなどには全く向きません。飽きてしまい、新天地に移るか、あるいは実は最もよくないケースは、一定以上の年齢世代で、粛々と業務を最低限処理し、自分の興味関心は余暇か副業…という”あがり”を決め込む人たちです。

マクレランドの、3つの社会性動機

3つの動機タイプと適する場、不適切な場をご紹介しました。皆さんは、どの動機タイプ?適する場は、どこでしょうか?

ちなみに、個々人の持つ動機のタイプと仕事の業績の間に強い相関関係があることを最初に明らかにしたのは、ハーバード大学の行動心理学教授だったデイビッド・マクレランドだそうです。マクレランドは職務適性や成果・業績が3つの社会性動機に影響されることを発見しました。「達成動機」「親和動機」「パワー動機」です。

・「達成動機」=設定した目標、水準を達成したいという動機
・「親和動機」=他者と親密で友好な関係を築き、維持したいという動機
・「パワー動機」=自分の行為、存在によって社会や組織に影響を与えたいという動機

「達成動機」「親和動機」は、それぞれ「課題動機型タイプ」「関係動機型タイプ」と重なり(同一)ます。

「パワー動機」型人材は、切り込み方が少し異なりますが、自分のやったことが、周囲〜広く社会から注目と賞賛を集めることにモチベートされる人をさします。マクレランドは、組織を率いて大きなイノベーションを実現するエグゼクティブには、共通して非常に高い「パワー動機」を持つ人たちが多いと研究結果で明らかにしています。事業レベルの事を成すには、高次の承認欲求も事業をドライブするエンジンとして欠かせないということでしょうね。

大切なことは「適所適材」。ぜひともご自身の「動機タイプ」が、無理なく、如何なく発揮できる新天地を選択いただけるよう願っております。

ではまた、次回!

井上和幸氏

井上和幸

1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。

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