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キャリアカーバーで転職活動されている幹部の皆さまの中には、これからの時代を担うベンチャー企業への参画をご希望されていらっしゃる方も多くいらっしゃると思います。
私は経営者JP運営の経営者・幹部向けサイト「KEIEISHA TERRACE」で注目経営者のインタビュー連載も行っていますが、今回はその中から、非常にユニークなビジネスで次の時代を牽引されるであろうベンチャー企業の経営者の方々が、どのような幹部を求めているかについてのお話をご紹介いたします。
6人の成長ベンチャー経営者の生の声、ぜひご参考にしてみてください。
ビジョンへの共鳴は最低限。「自分たちはできる」という強い心と妥協しない姿勢。
「いま空いているか、1秒でわかる優しい世界」をうたい、あらゆる空席情報を提供している株式会社バカン。各場所にカメラあるいはセンサーを設置し、人工知能による解析や独自の情報処理で空席かどうかを判別、その上でデジタルサイネージやスマホ・パソコンに情報を送る仕組みを主要百貨店の飲食街やターミナルのトイレなどで提供しています。2020年までに2,000店への導入をめざすと同時に、今後は、集中治療室や駐車場・駐輪場、空港、ホテルでの各種サービスなど、生活のあらゆるところでの普及が期待されています。
同社代表取締役の河野剛進さんは、自社で求める幹部像についてこう語ります。
「最低限、ビジョンに共感していることやプロダクトへの愛情があることが大前提になります。その上で大事なのは、「本当に自分たちはできるんだ」という前向きな心です。苦しい局面であっても耐えることができること、そのために自分を高め続けられること、さらには、誠実であることも大事だと思っています。それは性格が真面目というよりも、品質に対して妥協しないとか、誰かが使って嫌な体験にならないということに対して誠実であり、プロであるということです。」
当たり前のことと思いますが、自社の事業、プロダクトの社会的意味・意義を心から感じ、それを何としても成功させるのだという強い想い、そのために自社の商品やサービスの品質に妥協しない姿勢が、世の中に新しいものを生み出し提供していこうというベンチャー企業への参画には、まず必須です。
道無き道を信じて歩けるリーダー。自分の専門領域外に気軽に行けるリーダー。
株式会社О:(オー)は、「体内時計」に特化した事業を展開する世界で唯一の会社。『O:SLEEP(オー・スリープ)』という従業員の健康を一括管理するツールを企業向けに提供しています。従業員はプライバシーを保護された中で自分にあった「睡眠コーチング」を受けられる一方、会社側は従業員の健康データを一括管理できるというサービス。生産性の向上や予防・未病、退職防止などに寄与します。
同社代表取締役 Founder /
CEOの谷本潤哉さんは、「睡眠そのものよりも、睡眠できないことで出てくるさまざまな問題を可視化し、生産性やメンタルの状態、事故率などを予測すること、そして、それらを改善するために、睡眠の改善と同時に、組織の問題やプライベートの問題などを包括的に解決していくようなサービスを目指している」と話しています。
そんな谷本さんが求める幹部像は、次のようなものです。
「これは二つあって、一つは、経営者の仕事は正解がないところに正解をつくっていくことだと思いますが、同じように、周りにいる人たちも道なき道を一緒に歩んでいます。当然、誰かが大失敗をして、下手すると会社が潰れるようなことになる可能性もありますが、そうなったときに、「コイツがやって失敗したのならしょうがないな……」と思えるような人であるとうれしいですね。
もう一つは、「他流試合」というか、自分の専門領域外に気軽に行ける人です。というのも、私は大学卒業後に、新卒の採用を蹴ってブラジルに行って生活をしていたんですが、これは自分の中に意図があってやったことでした。私は昔から移民にあこがれがあって、それはなぜだろうと考えたときに、自分がもともといたコミュニティではない場所に行って、違う文化に適合していける人だからです。異なるコミュニティに入って困難を乗り越えられる力が活躍の源泉なのではと思っています。
場合によっては適合できないこともあると思うんですが、そのときに非常にストレスがかかっても、生きていける力というか、そのときに得られる学習したものというのは、非常に大きいと思っています。 我々の会社では「越境力」という言葉がよく飛び交います。Slackのスタンプにもなっていますが(笑)、今の社員は呼吸するように「他流試合」できるとか、未開拓なフィールドを楽しめるような人が比較的多いと感じますが、そういう人が周りにいてくれるといいなとは思いますね。
リーダークラスで言うと、今我々がやろうとしていることというのは、本当の働き方改革だと思っています。だから、「今の働き方ってヘンだな」とか、違和感を持っていて「こういうふうになったらいいな」といった想いがある方だと、とても嬉しいです。期待するのは、そうしたメンタル的なところですね。」
道無き道を信じて歩ける、他流試合ができる、そして、「(世の中の)ここが変だ、こうあるべきだ」という想いがあるリーダー。ベンチャー企業の幹部として、これも必須のことと思います。
方向性、価値観が合致する人。地頭が良くて性格が良ければなんでもできる。
株式会社スマートドライブは、主に車載デバイスの開発と、そこから集まったデータの解析を通じて「データプラットフォーム」の提供などの事業展開を行っている会社です。
同社が集めたビッグデータには、自社のサービスに活用するほか、外部サービスと連携することで、例えば、リアルタイムの車両管理、ドライバーの安全管理、物流の最適化、事故リスク分析、高齢者や運転初心者の見守り、毎月定額で乗れて安全運転をすると得をする「コネクテッドカー」の提供などの、新しい移動体験やさまざまなモビリティサービスを実現しています。
2013年、東京大学大学院在学中に同社を創業した代表取締役の北川烈さんは、国内外でさらなるサービス拡充を企図しつつ、2020年には少なくとも当社が今やっているコネクテッドやテレマティクスの領域では、一番多くのデータを持っているプレイヤーになりたい」と話しています。
若き起業家の北川さんが思う理想の幹部像は、どのようなものでしょう?
「やはり当社の目指している方向性と価値観の近い人がいいと思っています。具体的に言うと、当社は短期的にIPOして終わりとか、イグジットしてどうこうというビジネスではないので、ロングスパンで考えていただける方とか、社会的な意義との両輪を大事に考えられる方ですね。社会的意義だけではビジネスではないし、サスティナブルではない。どちらもないとダメですが、そのバランスを理解されていて、うちのその価値観と合う方であることが一つです。
また、僕個人的には、地頭が良くて性格が良ければなんでもできると思っているので、素直で頭がいい人と働けると嬉しいですね。
もう少し抽象的な話をすると、モビリティなどの領域は、優秀な人が参画し切れている領域ではないと思っているんです。最近外資の金融とかコンサルの優秀な方々がちょっとずつベンチャーに来ていますが、その中でも特にモビリティの領域に良い人を集めるということができてくると、産業として成り立ってくると思っています。優秀な人には、どんどんこの領域に興味を持ってもらいたいですね。」
ベンチャーというと、とかくIPO、急成長、イグジットなどに目がいく経営者や参画希望転職者もいますが、北川さんの考えはそういうこと(のみ)ではなく、自社の社会的意義や産業としての成長、発展、優秀人材の充実にあることが窺えます。
補完的能力と、「このために自分の命を燃やすぞ」という大義。
「プログラミング教育以外にも、日本の子供たち・中高生が身に付けたら、大人になったときにより幸せになれる確率が高いもの、例えばシステム教育やアントレプレナーシップ教育などを教えていきたい。それを各地域に広げて、その次に学校を創り、そもそもの教育の仕組みを変革していく会社を目指しています」
こう語るのは、ライフイズテック株式会社 代表取締役CEOの水野雄介さん。
同社は、中学・高校生向けITキャンプ(国内外)の開催、オンライン教育などプログラミングスクールを運営しているベンチャー企業。2010年の創業から、これまで延べ3万7,000人の子供たちが同社のITキャンプに参加。これは国内で最大、世界では第2位の規模です。2018年4月からサービスを始めたオンライン型のプログラミング学習教材も大人気を博しています。
2014年に『Google Rise Award』を、2016年には『EdTechXEuropeグロース部門最優秀賞』を受賞している同社の次の戦略は、グローバル展開。プログラミング教育が世界的に必修化される流れの中(日本は2020年から)、教える先生が足りないのは、どの国でも共通の課題。そのニーズに応える形で海外進出を企図している水野CEOは、その中でどのような幹部を求めているかについて、次のようにおっしゃいます。
「幹部に関していうと、自分の持っていない能力を持つ人材が欲しいですね。基本的に、幹部はそこをバンと任せられるような、トップの人、トップとなり得る人を採用したいですね。世界で勝てるチームをつくりたいので。
また、幹部候補の皆さんは、それなりの経験と実績、能力をお持ちの方々だと思うので、「それを今後の人生においてどこでどう生かすのか?」と考えたときに、自分の心の内なるものに火をつけて、「このために自分の命を燃やすぞ」くらいの、そういう何か大義めいたものを持って仕事がしたい人たちに、ぜひ門を叩いてほしいと思います。
教育は誰にとってもすごく身近なものです。今まで教育を受けてきて、「もっとこうなったらいいのにな」と思ったことは誰にもあるはず。そこに自分の能力やパワーを使って、より良い世界に変えていくことにチャレンジできるのがライフイズテックの魅力です。そこに共鳴、共感いただけるような方は大歓迎ですね。」
水野さんの挙げる「補完的な能力」は、もちろんベンチャーのみならずどのような企業を転職先として検討される際にも非常に重要なポイントですが、特にベンチャー企業においては、今まだその会社が充分に満たせていない機能を、あなたが満たせるならば、それこそがまたとないチャンスとなり、参画後のご活躍機会が非常に大きくなるでしょう。
事業オペレーション力と事業開発力、いずれかに強いリーダー。
株式会社アグリゲートは食農業界において、①生産から販売までを一気通貫させるSPF(Specialtystore retailer of private label food)事業(旬八青果店を起点とした生産・流通・販売事業)、②優秀な人材が食農業界で活躍できるよう支援する教育事業(『旬八大学』の運営)、③地域や地産商品などのPR・ブランディングを行うコンサルティング事業――を展開している注目企業。
代表取締役の左今克憲さんは、「日本の食農業界をなんとか良くしたい」との思いから、新卒で入社したインテリジェンスを2年弱で退職し、独立されています。
「消費者ニーズに応えた青果物を中心にした食品小売店『旬八青果店』を〝インフラ〟にしていきたい」と語る CEOの左今克憲さんの求める幹部像は、
「2種類あると思っています。もしワンブランドで伸ばしていると、基本的にはマネジメントする人は担当事業のやり方もわかっているので、人材マネジメントをしっかりやれるかが大切です。それはオペレーションが歴史的に積み上げられてきているのでそこまでオペレーションシステムを疑う必要がなく、人材マネジメントによりモチベーションを上げたり、教育する必要があるということだと思っています。
でも、うちの場合は、例えば僕が仕入れのプロだとしたときに、他に販売も製造もある。ということは、創業社長ですらわかっていないことが既にあるという状態なので、マネジャーはオペレーションの組み立てからできないといけないし、もっと言うと、戦略から考えて「この戦略ならばオペレーションをこう変えよう」と言えると、ものすごいスピードで変えていける。幹部陣にはどちらかのタイプであってほしいと思っています。」
成長ベンチャーにおいて、「事業を拡大再生産できるリーダー」=オペレーションに強いマネジャーと「事業を創出できるリーダー」=事業開発型マネジャーは成長の両輪として必要です。前回ご紹介した「3つの動機タイプ」の把握などと合わせて、自分自身がどの側面で成長に寄与できるのかの自覚とすり合わせはエントリーの段階から欠かさず行いましょう。
「何をやればよいですか」ではなく、「自分はこれができます」という人。
いかがでしょう?様々な視点がありつつ、かなり共通する点があるとお感じになられたのではないでしょうか?
・事業・サービス・商品への、心からの共鳴共感
・決められたこと、決まったことをやるのではなく、未知の世界、未経験の場所にも飛び込んでいける
・自分がこれを成功させるんだという大義、情熱
こうしたことが、独自性を持つ成長ベンチャーへの幹部としての参画には必須なのです。さて、あなたはどうでしょう?
そして、もう一つ、非常に重要なことがあります。それを語ってくださったのは、モノを収納するだけでなく収納されたモノを必要な人が必要な時に使うことができるサービス『TRUNK(トランク)』を提供する株式会社トランクの代表取締役・松﨑早人さんです。
「そのときの規模やシーンなどによって必要なポジションというかパートはどんどん変わってくるので、「我こそは」と思う人は、ぜひ当社の門を叩いてください。何を募集しているかというよりも、「自分はこれができます」という方をお待ちしています。」
そう、成長ベンチャー企業は、時々刻々と自社の事業、組織体制が変化していきます。その分、マネジメントのオポチュニティも時々刻々と変化します。「自分はこれができる」「自分はこれがやりたい」とその成長ベンチャー企業の事業や理念が合致するならば、ぜひ門戸を叩いてみましょう。
(ご興味ある方は、お気軽に当社までお問い合わせください。)
皆さんが、次の時代を創る企業でご自身の力をいかんなく発揮され、更なる自己成長とキャリア展開をされることを、私、経営者JPも最大限ご支援してまいります。
(*今回ご登場頂いた経営者各位のインタビューは「KEIEISHA TERRACE」の連載「イマ、ココ、注目社長!」に収録されています。詳細な事業内容や歩みについてご興味がおありの方はアクセス、ご一読いただければ幸いです。)
ではまた、次回!
株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
井上 和幸(いのうえ かずゆき)
1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。