ビジネスパーソンの間では定着しつつある「セールスフォース(SFA)」。営業を主軸とする会社だけでなく、実は意外な業界でも取り入れられ、効率や業績アップに一役買っている。まだどんなものなのかよく知らない、活用しきれていない……という方のために、その実力を改めて紹介していこう。
ビジネスパーソンの間では定着しつつある「セールスフォース(SFA)」。営業を主軸とする会社だけでなく、実は意外な業界でも取り入れられ、効率や業績アップに一役買っている。まだどんなものなのかよく知らない、活用しきれていない……という方のために、その実力を改めて紹介していこう。
セールスフォースとは何か
セールスフォース(SFA=Sales Force Automation)とは、営業プロセスや進捗状況を管理し、効率アップを図る手法のこと。営業プロセスを効率化するためのツールそのものを意味する場合もある。
仕組みの基本となるのは顧客情報のデータベースだ。さらに、連絡履歴や商談のプロセス、営業スケジュールを蓄積し、営業案件の進捗状況や案件成立の見込みをチーム内で共有する。そうすることで、営業メンバー個人に集約されがちな情報を共有・分析し、組織として効率的な営業活動が可能になる。
SFAツールは大きく2種類に分けられ、自社開発システムとクラウドサービスがある。前者は安全性が高いが、開発の初期費用が高く簡単には導入できない。一方、クラウド型はインターネットを介してプロバイダ側で稼働するシステムを利用するため、導入コストが低く、利用しやすいという特徴がある。
セールスフォースを導入するメリットとは?
SFAツールの主な機能には、顧客や案件の管理、見込み客管理、レポート、ダッシュボード(リアルタイムで営業状況を把握できる機能)、モバイル機能、売上予測、ファイル共有などがある。
SFAは企業の現場でどのように活用されているのだろうか。まず、国内の有名サッカーチームの例を紹介したい。
ここでは、パートや契約社員などさまざまな雇用形態の従業員がいるため内部統制がとりづらい状況にあった。そこで全従業員の情報共有ツールとして、クラウド型のSFAを導入。主な利用方法は、社内の情報伝達、スケジュールや予約の管理だったが、特にイベント時の設備・備品の管理が効率化されたという。
他のチームでは、ファンクラブ会員のデータベースをSFAに移行。これを基にサポーターの声をプロモーションに活かしている。今後は年間シートの案内、チケットの告知、地域ごとに有効なプロモーションなどへの活用も予定しているようだ。
宿泊施設にも、SFAを導入した成功事例がある。
神奈川県・鶴巻温泉にある老舗旅館では、アナログな予約管理などによるトラブルもあった。そこでSFAを導入したところ、情報の一元管理や業務の可視化に成功した。SNS運営にも利用されるなど、SFAは経営に大きく貢献しているという。
ホテルやレストランなど18事業所を全国で展開する別の老舗ホテルでは、チェーン全体での情報蓄積や担当者間の情報共有を課題として、SFAを導入した。その結果、営業メンバーの情報共有はもちろん、リアルタイムでの売上予測や商談ごとの進捗状況の把握が可能となり、ビジネスチャンスの拡大につながっている。
課題と展望
SFAの導入が日本で始まった当初は、大企業の自社所有システムが中心だった。それがここ数年で、中小企業でも導入されるようになった。
SFAツールの市場規模は2014年には140億円を超えたという見方もあり、今後さらに拡大すると予測される。
市場拡大の大きな要因は、クラウド型SFAの普及だ。クラウド型の強みは組織の規模に関わらずすぐに導入できる点にあり、現在では市場の中心となっている。その背景には、スマートフォンやタブレットの普及や、無線LANが利用できるスポットの増加、ポータブルWi-Fiの普及など、通信環境が飛躍的に整ってきたことの影響も大きい。
このように、SFAは自社所有システムからクラウドへと移行しつつある。ただし、クラウド型SFAツールは導入しやすいが、きちんと活用するためには各社の提供するサービスから必要なものを見極めることが重要だ。また現在のサービスでは、導入後に自社システムとの連携でつまずく場合もある。そのため、今後はSFAに限らないより包括的なシステムの開発・サービス提供も進みそうだ。
まとめ
このようにセールスフォースは営業会社だけでなく、スポーツの分野や老舗旅館など、多様な業界で活用されている。
営業活動はどの業界でも必要な要素だけに、今後も通信環境やスマートデバイスの発展と連携しながら、ますます普及していくことだろう。
また、いちビジネスパーソンとしても、顧客情報や営業状況、スケジュールなどを一目で把握・蓄積できれば、より効率よく戦略を立てられる。今後、SFAのようなツールを使いこなすことも、デキるビジネスパーソンの1つの要素と考えられるようになるかもしれない。