ビジネスシーンで用いられる「ゼネラリスト」とはどのような人材を指すのでしょうか。ゼネラリストの主な特長や適性、転職市場での需要、対比で用いられることがある「スペシャリスト」との違いなど、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
ゼネラリストとは
ビジネスシーンにおける「ゼネラリスト(generalist)」とは、幅広い知識と多角的な視点を有し、オールラウンダーとして活躍できる人材に対して用いられることがある呼称です。英和辞典では「多方面の知識を持つ人、博学な人、万能家」などと訳されています。
ゼネラリストの主な特長
ゼネラリストには過去に多様な分野や職種を経験している方が多い傾向にあり、主な特長として下記のようなことが挙げられます。
より豊富で幅広い知識
多岐にわたる領域での経験によって、幅広い知識をより多く有している特長が見られます。
多角的な視点と客観的な判断力
様々な分野に精通していることから、特定の分野に偏重することなく多角的な視点で物事を捉えられ、客観的かつ公正な判断ができることもゼネラリストの特長と言えるでしょう。
柔軟な対応力
豊富な経験と知識を活かし、不測の事態においても臨機応変に課題解決ができる傾向が見られます。また、コミュニケーション力とバランス感覚に優れ、各分野のスペシャリストと連携した柔軟な組織運営に貢献できるのも特長の一つとされています。
ゼネラリストの弱み
ゼネラリストは様々な職種や分野についての経験を積んでいる一方で、それぞれの分野に関して専門的な知識や経験を持ち合わせていないことが考えられます。しかし、それは各分野のスペシャリストと連携することでカバーすることができるでしょう。
また、特定の分野に特化せず多岐に渡る業務に対応できることから、組織内での役割の明確化が難しいと認識されることがあるため、、その場合は対応可能な分野の中から「この領域は特に得意だ」と思える部分にフォーカスして、経験・スキル・実績をアピールするといいでしょう。
ゼネラリストとスペシャリストとの違い
ゼネラリストと対で用いられることの多いキーワードに、スペシャリストがあります。複数の分野に渡って幅広い知識と経験があるゼネラリストに対して、スペシャリストは特定の分野に特化した深い知識と経験を持つ人材に対して用いられることがある呼称です。
深い専門性が必要な場面ではスペシャリストの活躍が望まれ、複数の分野を縦断するようなプロジェクトではゼネラリストの活躍が求められます。それぞれに異なる役割があり、組織では両方の人材を適材適所に配置することが重要とされています。
ゼネラリストとスペシャリストに求められる適性
ゼネラリストは広く浅くカバーするような全方位型、スペシャリストは狭く深く掘り下げるような一点集中型と考えると、求められる適性の矢印が異なる方向を向いていることがイメージしやすいでしょう。それぞれの適性についていくつか紹介しますが、企業規模や業務内容によっては必ずしも当てはまらないことがあります。下記はあくまでも一例として参考にしてください。
ゼネラリストに求められる適性
- 様々なことへの好奇心が強い。
- 幅広い分野での学習意欲が旺盛。
- 他人の意見に耳を傾け、臨機応変に柔軟な対応ができる。
- 人をまとめる立場や上に立って指導した経験がある。
スペシャリストに求められる適性
- 強い探究心がある。
- 特定分野の知見を深めることが得意である。
- 忍耐強くひとつのことを極める集中力がある。
- 凝り性で、長く続けていることがある。
転職市場でのゼネラリストの需要
近年は事業や業務の細分化や複雑化が進んでいることから、転職市場においてはゼネラリストよりも、特定分野に特化したスペシャリストが求められる傾向があります。一般社団法人日本経済団体連合会が2020年に実施した、人事・労務に関するトップ・マネジメントの意識・意見などの調査結果(※1)を見ても、中途・経験者採用においては「ジョブ型雇用」の導入および導入検討が進んでいることがわかります。ジョブ型雇用導入理由の上位には、「専門性を持つ社員の重要性が高まったため」「仕事・役割・貢献を適正に処遇へ反映するため」「優秀な人材を確保・定着させるため」などが挙げられています。
この調査における「ジョブ型」とは、「当該職務・仕事の遂行に必要な知識や能力を有する社員を配置・異動して活躍してもらう専門業務型・プロフェッショナル型に近い雇用区分」が想定されています。経験・スキルが特定分野に特化していないゼネラリストは転職市場での需要が少ないように見えますが、組織を円滑に回すためには、広い視野で各分野のスペシャリストの力をまとめることができるゼネラリストも一定数のニーズがあると言えるでしょう。さらに、上級管理職や経営層などの場合では、ゼネラリストの要素がより多く求められる傾向があります。
(※1)出典:一般社団法人日本経済団体連合会「2020年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」(https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/004.pdf)
ゼネラリストに適した仕事
ゼネラリストに適した仕事(ポジション、職種、企業規模)の例を紹介します。企業規模や業務内容によっては必ずしも当てはまらないことがありますので、下記はあくまでも一例として参考にしてください。
広い視野が求められるポジション
例えば、「管理職」「リーダー」「プロジェクトマネジャー」など、広い視野を持ち、他者に適切に指示することを求められるポジションが適していると考えられます。
幅広い分野に関する知識と経験を必要とする職種
例えば、「総務」「人事」「コンサルタント」など、幅広い分野に関する知識と経験を必要とする職種に適していると言われています。
ある程度土台が整っている企業
企業規模では一概に言い切れないところがありますが、例えば「スタートアップ企業」でいうと、ビジネスが軌道に乗り始め、成長の道筋が見えてきた「ミドルステージ」や、事業が拡大・安定し、IPOも視野に入る「レイターステージ」などで、ゼネラリスト人材が求められる傾向が強まるようです。
業務の細分化が進む「大企業」においても、ゼネラリストが活躍する場は広いいと言われています。例えば、社内外の多様なスペシャリストを束ねるためにはゼネラリスト人材が必要と考えられます。また、ジョブローテーションなどで「幅広さ」と「専門性」の両方の経験・スキルを身につけられれば、管理職候補や経営幹部候補としての道も開ける可能性が出てくるでしょう。
ゼネラリストとしての転職を目指す場合は転職エージェントやスカウトサービスの利用も有効
複数の分野に渡る幅広い知識と経験・スキルを活かして活躍できるのがゼネラリストです。自分の適性がゼネラリストにあるか相談したい時や、ゼネラリストとしてどのような求人があるかを知りたい時などは、転職エージェントやスカウトサービスを利用するのも有効と言えるでしょう。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。