
転職して2年目で仕事を辞めたいと思った場合、「こんなに短い期間でまた転職して良いのだろうか」と悩んでしまう方がいるかもしれません。転職2年目で退職した場合の転職活動やキャリアへの影響、辞めるか留まるかの判断基準、ミスマッチを防いで希望の仕事に就くための転職活動のポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職2年目で会社を辞めるのは早すぎるのか
転職2年目、在籍期間1年余りで再び転職するのは早すぎるのでしょうか。また、それが次の選考に不利に働くことはあるのでしょうか。転職者の実態調査と企業の判断を基に解説します。
転職1年未満の約4割は、転職後の現状に「満足できていない」という結果に
まず、仕事に就いて早期離職する人がどのくらいいるのかをご紹介しましょう。
厚生労働省が発表した「令和2年転職者実態調査の概況」(※1)によれば、新卒ないし転職で入社した直前の勤め先を「1年未満」で離職している人は、転職者全体の17.7%を占めます。さらに「1年以上2年未満」で離職した人は、転職者全体の17.1%となっています。合計すると、入社して2年目までに仕事を辞めて転職した人は全体の34.8%となり、3割を超えることが分かります。
一方、株式会社リクルートが、転職後半年から1年の転職者を対象に行った調査(※2)によると、転職後に「いきいきと働けている・総合的に満足」という転職者が、全体の6割超を占めていました。しかし半面、「どちらともいえない」「いきいき働けていない・総合的に不満」という転職者も4割程度いることが読み取れます。
これらの結果を見ると、転職2年目までに再度転職を検討する人は、一定数いると考えて良いでしょう。
※1(出典)厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r02-2-01.pdf
※2(出典)株式会社リクルート「転職者に聞いた転職後実態調査(転職後半年~1年の方対象)」2023年
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20230530_hr_01.pdf
2年目の転職が早いかどうかの判断は、企業によってケースバイケース
このように近年、転職2年未満で再び転職するケースは珍しいことではありません。業界や職種によっては、採用側も応募者の転職歴をあまり重要視せず、経験・スキルのマッチ度や、これまでの実績などを中心に選考・評価する傾向があります。労働人口が減少し、多くの企業が人手不足の問題を抱えている今、前職の在籍期間や転職回数が大きく選考に影響することは、以前より少なくなってきているようです。
ただし、それ以前の経歴全体で、比較的短期間での転職を繰り返している場合は、企業に「定着性」への懸念を持たれたり、2年未満の在籍における経験・スキルや実績が「採用要件に達していない」「不足している」と判断されたりするケースもあるかもしれません。
転職2年目で会社を辞めたい場合によくある理由
転職して2年を待たずに「会社を辞めたい」と思うケースに、よくある理由をご紹介します。自分に当てはまるものがないかを振り返ってみましょう。
業務内容がミスマッチだった
「新規事業を担当するはずが既存事業にアサインされた」「想定していたよりも裁量権が狭かった」など、入社前に認識していた業務内容と、実際の業務内容や担当の範囲が異なっていたケースです。企業側の説明不足、選考時の確認不足など、会社側と求職者側の両方に原因がある場合があります。
社風や価値観が合わない
「売上重視の価値観に抵抗がある」「逐一申請が必要でスピード感がない」など、社風や価値観が自分と合わないことに、入社してから気づくケースです。「企業の成長性」や「待遇」など、働き方以外の要素を優先して入社を決めた場合に起こりがちです。入社前に社員にヒアリングを行うなどして、働く場面を具体的にイメージすることで、防ぐことができたかもしれません。
求められた結果が出せない
「前職でのマネジメント手法が通用しない」「担当業務の範囲が広すぎて対処できない」といったことから期待されていた働きができず、プレッシャーも相まって「会社に居づらくなった」などと感じるケースです。この場合も、選考時点での業務内容への理解が不十分だったことなどが考えられます。
良い人間関係が築けない
転職先に馴染んで活躍するためには、周囲の理解や適切な業務支援が受けられる、良好な人間関係が鍵となります。しかし、職場のコミュニケーション自体が少なかったり、考え方が合わないメンバーがいたりすると、信頼関係を築くのは難しいかもしれません。特に、管理職や管理職候補として転職した場合などは「予想より周囲に求められていない」「お手並み拝見という目で見られる」などの、やりづらさを感じるケースもあるでしょう。
転職2年目で再び転職する場合の注意点
上述したように、転職2年目で会社を辞めて再び転職することは可能ですが、以下のような注意点も把握した上で検討してみましょう。
市場価値が上がりにくくなる可能性がある
在籍期間が短い場合、担当業務で成果を出すまでに至らず、実績がつかなかったり、スキルアップにつながらなかったりすることがあります。もう少し経験を積めば、重要なポジションを任されるチャンスもあったかもしれません。そのため業務経験が十分な評価対象にならず、市場価値が上がりにくい可能性があります。
企業によっては懸念を抱くことがある
直近の経歴で2年未満の転職が複数回ある場合、企業によってはこれらを総合的に判断して「自社に入社しても2年未満で転職していく可能性が高いのでは?」と懸念を抱くことがあるかもしれません。そのため、面接ではこれまでの転職理由・背景、キャリア観、志望動機などを詳しく聞かれる可能性があります。
意図せず「転職ぐせ」がついてしまう可能性がある
不満に対する自分なりの対応策や、解決策を講じることなく会社を辞めることが続くと、その後の不満解消策が「転職一択」になってしまう可能性があります。転職先で嫌なことや、思い通りにいかないことがあると、ジョブ・ホッパー的にすぐ転職を選ぶケースです。多様な経験は積めるかもしれませんが、結果的に本人が望まないキャリア形成になることもあるでしょう。
「転職2年目の転職」が選考に大きな影響を与えかねないケース
「転職2年目」で転職する場合でも、以下のようなケースに当てはまれば、企業によっては採用選考で在職期間の短さが大きな影響を与えずに済む可能性があります。
採用要件を満たす経験・スキル・実績を持っている
「求める経験・スキルや実績を満たしている」と評価すれば、前職の在籍期間の短さは気にしないという企業もあるでしょう。例えば「さまざまな業界でのマネジメント経験が豊富」「AI分野で高いスキルを持っている」など、専門性の高い分野で培ってきた経験・スキルは一定のニーズがあり、採用されやすい傾向があります。
退職理由や志望動機をきちんと説明できる
多くの場合、面接では退職理由と志望動機を確認されます。その際は「なぜ2年目で退職することになったのか」を自己分析し、反省すべき点があればきちんと反省した上で、「何を実現するために応募企業を志望したか」を明確に伝えられることが重要です。採用担当者が納得できる説明ができれば、ネガティブな印象を与えることは少ないでしょう。
キャリアプランに一貫性がある
前職の在籍期間が短くても、例えば「営業職で多様な経験を積もうと考えている」「○年後には新規事業の立ち上げに関わりたい」など、描いているキャリアプランが明確で、一貫性が見られれば、採用担当者を納得させやすくなるでしょう。
会社都合による退職
会社都合退職にはさまざまな状況がありますが、会社の倒産や事業縮小などによる「整理解雇」など、本人に非がないケースであれば、在籍期間に関わらず、選考でマイナスに働くことはないでしょう。
激務やハラスメントによる退職
激務やハラスメントが原因で退職した場合も、前職の在籍期間を懸念されることはないでしょう。ただし、整理解雇なども同様ですが、そうしたケースで企業に退職理由を伝える際は前職への不満に終始せず、できるだけ客観的な事実のみを伝えることをおすすめします。
転職2年目で再び転職するかどうかを考える判断軸
「転職2年目で本当に会社を辞めて良いのだろうか」と迷った場合は、もう一度、次のポイントを検討した上で判断することをおすすめします。
具体的に伝えられる結果や経験・スキルがあるか
現職に転職して2年目でも、「成果を出してきた」「こうした経験・スキルを身につけてきた」と企業に対して具体的にアピールできる内容があれば、転職に踏み切っても良いかもしれません。そうした実績が語れないのであれば、まだ会社で学ぶべきことが残っているとも考えられます。気持ちを切り替え、現職に留まって経験を積むことも一つの方法です。
社内で解決できない問題があるのか
現職への不満を解消するためには転職以外の方法がないか、他の選択肢を考えてみることも一案です。社内で解決できる問題なら、チーム替えの検討、業務改善の提案など、自分なりに解決行動を試してからでも遅くないかもしれません。自身の希望をどうしても現職で実現できない場合は、転職を前向きに検討しても良いでしょう。
今後得られる経験やチャンス、他社と相対比較した場合の現職のメリットなども含めて、客観的に判断しましょう。
過去・現在・未来のキャリアについて言語化できるか
転職をするかどうかで迷う場合、「転職する目的」が明確になっていないケースもあるでしょう。特に短期間で転職を繰り返す場合は、応募企業からキャリアに対する主体性を確認される可能性もあるため、これまでのキャリアの歩みと今後のキャリアプラン・キャリアビジョンについて、面接などで説得力を持って話せることが必要になるでしょう。
転職2年目で再度転職を実現させるためのポイント
転職2年目で再び転職をする場合に、転職活動で意識したいポイントについて以下に解説します。
キャリアプランを明確にする
短い在籍期間で転職する場合、定着性を懸念し、「採用しても、またすぐ辞めてしまうのでは」という不安を抱く企業もあります。それを払拭するために、応募企業で実現できそうな自身のキャリアプラン・キャリアビジョンをアピールしましょう。これまでの転職経験を踏まえ「ここで何を目指したいのか」を明確に伝えると、「自社で腰を据えて頑張ってくれそうだ」との印象を持ってもらいやすくなるでしょう。
転職理由を不満ではなく前向きなものにする
現職に不満や不安を抱いて転職活動を始めた場合、不満の解消だけを目的にしてしまうと、応募企業に「現状から逃げたいだけなのではないか」と受け止められる可能性があります。きっかけは不満であったとしても、自身のキャリアにおいて「転職によって実現したいことは何か」を考えた上で、前向きな転職理由を打ち出すようにしましょう。
書類作成や面接準備を綿密に行う
上述したように、面接では多くの場合、退職理由・転職理由・志望動機・キャリアプランなどを聞かれます。事前に自分の考えを整理し、しっかりと回答ができるように準備しましょう。
また、職務経歴書は履歴書と違い、時系列で職歴や経歴を書く必要はありません。転職回数が多い場合などは、職種・業務・プロジェクトごとに「キャリア式」で記述すると、核となる強みをアピールしやすく、転職理由などの背景も伝わりやすくなるでしょう。
在職中に転職活動をする
前職を短期で離職している場合、転職活動の進め方や面接への取り組み方によっては、希望する企業に評価されにくく、転職活動が長引く可能性もあります。そのため、情報収集だけでも良いので、退職後ではなく在籍中に転職活動を開始することをおすすめします。経済的にも経歴的にもブランクを作らないことで、焦ることなく転職活動に取り組みやすくなるでしょう。
転職エージェントやスカウトサービスの活用も一案
転職2年目で再び転職を考えている方は、転職エージェントに相談してはいかがでしょうか。
通常の転職支援に加えて、「在籍期間より経験・スキルを重視する企業」の情報などを紹介してもらえる可能性があります。また、再び転職する理由・背景を第三者の立場から応募企業に説明して橋渡しをしてもらえたり、転職理由や志望動機、自己PRの伝え方についてアドバイスを受けられたりすることもあるでしょう。
スカウトサービスを通じて転職エージェントを利用しても、同様のサポートを受けられる可能性があります。また、スカウトサービスの場合は、登録しておいたあなたの経験やスキルを見て、企業や転職エージェントからスカウトが届きます。それによって自身の市場価値を知るきっかけになったり、思いもよらなかった企業からスカウトが届いたりすることで、新たな気づきを得られるかもしれません。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。