
転職して半年ほどで様々な事情から「辞めたい」と思ったとき、再転職が可能かどうか不安を覚えることがあるかもしれません。その実情や転職活動をする場合の注意点、望む転職を実現するためのポイントなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
企業の人材要件にマッチすれば転職して半年でも再転職は可能
転職して半年での再転職は、状況によっては可能です。具体的には、自身の経験やスキル、実績が応募企業の人材要件にマッチすれば可能と言えるでしょう。
他方で、採用担当者によっては「短期間で再度転職する理由や背景を詳しく知りたい」「また短期間で転職しないだろうか」などの懸念を抱く可能性があること、また、同じような経歴やスキル、実績の人から多数の応募があった場合に、定着性への懸念から選考通過の難度が上がる可能性があることには留意しておきましょう。
転職して半年でも退職を検討しても良いと言えるケース
転職後の在籍期間が半年など短期間であっても、退職・転職を検討しても良いと言えるケースがあります。例えば、次に挙げる事情などが当てはまります。採用担当者も、定着性への懸念以上に「そういった事情があるのならば、転職を検討しても仕方ない」と受け止める可能性が高いでしょう。
- 入社前に提示された労働条件と実態が異なっていた(残業・休日出勤の多さ、給与・待遇の大幅な変更など)。
- 職場にハラスメントがある/職場でハラスメントに遭っている。
- 業績の悪化などによる将来性の懸念がある/M&Aなどによる組織や事業の大幅な変更が生じている。
- 業務内容や職場環境に伴う高ストレスにより心身の状態が悪化し、就業継続が困難と感じている。
また、入社前と実際とで仕事内容や役割などのギャップが大きく、様子を見て在籍し続けるよりも転職して早めに軌道修正したほうが、目指すキャリアにつながると感じられる場合も、転職を検討しても良いかもしれません。
留意しておきたい、転職後半年での再転職のメリット・デメリット
転職後半年で再度転職を検討する際には、そのメリット・デメリットも認識しておきましょう。
メリット:労働環境をリセットできる
労働条件や労働環境をリセットし、より良い条件・環境を求められることが、再転職のメリットと言えます。「こんなはずじゃなかった」という状況に伴う心身のストレスは再転職によって軽減され、仕事に集中できたり、やりがいを持って働けたりする可能性があります。また、目指すキャリアに向けて軌道修正できる機会にもなるでしょう。
デメリット:希望の転職が実現しづらい可能性がある
デメリットとしては、先述したように、選考で採用担当者が定着性への懸念を抱く可能性があることです。また、直近の転職活動で希望に合う企業に応募済であった場合には、応募企業の選択肢が限られる可能性があります。
加えて、企業によっては、ボーナスの査定対象期間を満たしていないためにボーナスが出ない、退職金の支給対象とならないなどの可能性があります。現職の規定を確認しておくと良いでしょう。
次の転職活動で希望する転職を実現させるためのポイント
前述したメリット・デメリットも踏まえた上で、再転職に向けて転職活動を進める場合、次の点に留意すると希望する転職の実現に近づけるでしょう。
前回の転職活動を振り返り、改善点を分析する
まずは、前回の転職活動を振り返り、次の転職活動に活かせることや、改善点を分析しましょう。前回の転職活動で評価されたことや現職で強みと感じたことは、次の転職活動でも自身の強みとして伝えることができるでしょう。また、転職活動の方法や、企業選びの条件・優先順位などに改善点がないかどうかも振り返ると良いでしょう。
そして、振り返りをもとに、希望条件の優先順位づけや応募業界・職種、応募企業数、利用する転職支援サービスの種類などを改めて検討しましょう。
退職理由の伝え方を工夫する
現職への不満を理由に退職するのであっても、応募企業に退職理由を伝える際には、不満や批判は可能な限り抑えて、不満の要因となっている環境や情報について「できるだけ客観性の高い事実」を伝えましょう。不満や批判はその程度・内容によって主観あるいは他責であると受け止められる可能性があります。「客観的に見て納得感のある理由や表現になっているか?」という観点で伝える内容と伝え方を検討しましょう。それが、採用担当者の納得度を高めることにつながります。
在職中に転職活動を進める
できれば、在職したまま転職活動を進められると、金銭面や精神面で安心できるでしょう。離職してからの転職活動は、安定収入のない中で進めることになるため、焦りからミスマッチな企業を選んでしまう可能性などが懸念されます。ただし、就業を継続することのストレスのほうが上回る場合などはこの限りではありません。
転職活動に新たな方法を取り入れてみる
情報収集や応募のチャネルには、転職エージェントやスカウトサービス、リファラル採用、ビジネスSNS、企業ホームページへの直接応募などがあります。これらの中から、前回とは異なるチャネルを活用してみる、同種のチャネルであっても利用するサービスを変えてみるなどすると、新たな求人が見つかったり、前回とは異なる提案・スカウトを受けられたりする場合があります。
転職エージェントやスカウトサービスの活用を検討するのも一案
転職エージェントでは、求職者に代わって求⼈情報を選定し、スキルや希望に合った企業を紹介します。自身のキャリアや経験、培ってきたスキル、現職での事情などを踏まえた選択肢の提示を受けることができるでしょう。また、応募企業とのやりとりや面接日の設定などのサポートのほか、履歴書や職務経歴書の作成や面接対策のアドバイスも受けられることもあります。
スカウトサービスでは、自身のキャリアに興味を持った企業や転職エージェントからスカウトメールが届きます。意外な業種・職種・ポジションからのスカウトが届く可能性もあるでしょう。これらのサービスの活用により、選択肢をより広く・多く持つことができるかもしれません。
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。